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第25話 ゆでたまごに咽る
翌日、朝食の席でエルフィンがアリアにゆで卵の殻を剥いている時だった。
パクリとパンを頬張ったアリアはふと思った。
(このパンにブドウのポマースを練りこめないかな?)
もぐもぐと咀嚼しながら齧ったパンをじぃぃっと見ているとまだ咀嚼中なのにゆで卵が唇にあたった。
「食べなさい。どうせ今日も胴長のゴム長靴を着て泥を取るんだろう?」
「そうなんだけどエルフィン様、搾ったばかりの皮とか乾燥させて粉末って出来ないものかしら」
「粉末に?」
「そう。粉末。乾燥させたら日持ちはするでしょう?」
「日持ちはするだろうが、それをどうするんだ?澱みたいに料理の隠し味のように使うのか?」
「澱?」
「ワインの底とかに溜まる不純物だ。成分が固まったものだから毒ではないがそのままだとエグ味が強いからビーフシチューなんかに料理長は使っていたと思うが」
言われてみれば今、テーブルにあるワインも底を凝視すると澱が見える。
目から鱗でアリアは目をぱちくりとさせてまた瓶の中の澱に見入った。
「これが料理に使えるなら皮とか乾燥させて粉末にしても使えるってことよね」
「粉末かどうかは判らないが長靴王国ではクルミとかリンゴなんかと一緒に煮込んでコニャと呼ばれるジャムを作ると聞いたことがある。砂糖を使わない自然な甘さが癖になるそうだ」
「それよ!!泥パックは限定的だけどそれならいけるわ。グラッパを作った残りを食品用に加工すればいいわ」
悩んでいたのは泥パックは効果絶大なのだが、長い期間腐敗とも発酵とも呼べる時間が必要で来年作るワインの搾りカスはグラッパを作ることに使いたい。
グラッパを作った後のカスでアルコール度の低い酒を造っても搾りかすは残る。それで低濃度の泥パック用の泥土を作るとしてもおそらく余る。
捨てるところを無くせばゴミは出ない事を考えればコニャというジャムを作ればいい。
「エルフィン様、やっと方向性が決まりましたわ(あむっ)」
アリアはエルフィンが剥いてくれて手に持ったままのゆで卵を半分齧った。
「まじゅ…ごほっごほっ!!」
「慌てるな。黄身ってパサパサだからな」
「失礼ねっ!!ごほっ。泥パックでパサついてないわよ。クリーム塗ってくれるんだから知ってるでしょうに!」
エルフィンは言えなかった。
(パサパサなのは君ではない。黄身だ)と。
気を取り直し、アリアのために早朝ホルスという乳牛の乳を手ずから搾ったミルクをエルフィンは差し出した。
「ミルクを飲め」
「ふあい…ごほっ!ごほっ」
「ゆっくりだ。ゆっくりでいい。まるで子供だな。本当に目が離せない」
「そこは、手がかかるでしょうに」
「手を掛けるのは当然だ。私の妻なんだから」
「契約のね。あ~!このミルク、美味しい」
「だろう?搾りたてだ」
「郊外っていいわぁ。牛も馬もヤギも執事さんもいるんだもの」
「ねっ」とアリアが執事に微笑む。執事は居たたまれない。
(奥様、こんなに判りやすく旦那様がアプローチしているのにお気づきにならないなんて。うぅっ)
同時にBOYと言われる年齢はもう遥か昔でも気にしない。
カラスボーイように心で連呼。
(牛、馬、ヤギの次には是非とも私でなく、旦那様、旦那様をよろしくどうぞ)
執事の熱い応援に応えたのか?
エルフィンはアリアに言った。
「アリア、一旦屋敷に戻ろう」
「え?どうしてです?」
「アリアはブドウの皮を乾燥させたものを使って食事を美味しくするための物を作れないかと考えているんだろう?」
「それは、まぁ、そうですけど」
「ここにはブドウがない。留まったのは腐敗泥の下にある泥で美容的なことが出来るか?だったはずだ。屋敷に戻れば温室にあるブドウ棚に使えそうなブドウが実っているかも知れない」
そういえばエルフィンの屋敷の庭には全く違う真逆の時期にもキュウリやらが実っている温室があった事をアリアは思い出した。
「判りました。帰ります。そうとなったらのんびり食事をしてられないわ」
アリアはエルフィンの手に残る半分になったゆで卵をパクリ…としようとしたが、エルフィンの指まで咥えることになると直前で気が付き、指でスルンと摘み取ると口の中に入れ流し込むために腰に手を当ててミルクをがぶ飲み。
たんっ!!空のグラスをテーブルに置いたアリアは目をキラキラさせて言った。
「食事終わりっ!帰りますよっ!」
元気よく扉を指さすアリアにエルフィンは優し気に目を細め応えた。
「妻の仰せのままに」
パクリとパンを頬張ったアリアはふと思った。
(このパンにブドウのポマースを練りこめないかな?)
もぐもぐと咀嚼しながら齧ったパンをじぃぃっと見ているとまだ咀嚼中なのにゆで卵が唇にあたった。
「食べなさい。どうせ今日も胴長のゴム長靴を着て泥を取るんだろう?」
「そうなんだけどエルフィン様、搾ったばかりの皮とか乾燥させて粉末って出来ないものかしら」
「粉末に?」
「そう。粉末。乾燥させたら日持ちはするでしょう?」
「日持ちはするだろうが、それをどうするんだ?澱みたいに料理の隠し味のように使うのか?」
「澱?」
「ワインの底とかに溜まる不純物だ。成分が固まったものだから毒ではないがそのままだとエグ味が強いからビーフシチューなんかに料理長は使っていたと思うが」
言われてみれば今、テーブルにあるワインも底を凝視すると澱が見える。
目から鱗でアリアは目をぱちくりとさせてまた瓶の中の澱に見入った。
「これが料理に使えるなら皮とか乾燥させて粉末にしても使えるってことよね」
「粉末かどうかは判らないが長靴王国ではクルミとかリンゴなんかと一緒に煮込んでコニャと呼ばれるジャムを作ると聞いたことがある。砂糖を使わない自然な甘さが癖になるそうだ」
「それよ!!泥パックは限定的だけどそれならいけるわ。グラッパを作った残りを食品用に加工すればいいわ」
悩んでいたのは泥パックは効果絶大なのだが、長い期間腐敗とも発酵とも呼べる時間が必要で来年作るワインの搾りカスはグラッパを作ることに使いたい。
グラッパを作った後のカスでアルコール度の低い酒を造っても搾りかすは残る。それで低濃度の泥パック用の泥土を作るとしてもおそらく余る。
捨てるところを無くせばゴミは出ない事を考えればコニャというジャムを作ればいい。
「エルフィン様、やっと方向性が決まりましたわ(あむっ)」
アリアはエルフィンが剥いてくれて手に持ったままのゆで卵を半分齧った。
「まじゅ…ごほっごほっ!!」
「慌てるな。黄身ってパサパサだからな」
「失礼ねっ!!ごほっ。泥パックでパサついてないわよ。クリーム塗ってくれるんだから知ってるでしょうに!」
エルフィンは言えなかった。
(パサパサなのは君ではない。黄身だ)と。
気を取り直し、アリアのために早朝ホルスという乳牛の乳を手ずから搾ったミルクをエルフィンは差し出した。
「ミルクを飲め」
「ふあい…ごほっ!ごほっ」
「ゆっくりだ。ゆっくりでいい。まるで子供だな。本当に目が離せない」
「そこは、手がかかるでしょうに」
「手を掛けるのは当然だ。私の妻なんだから」
「契約のね。あ~!このミルク、美味しい」
「だろう?搾りたてだ」
「郊外っていいわぁ。牛も馬もヤギも執事さんもいるんだもの」
「ねっ」とアリアが執事に微笑む。執事は居たたまれない。
(奥様、こんなに判りやすく旦那様がアプローチしているのにお気づきにならないなんて。うぅっ)
同時にBOYと言われる年齢はもう遥か昔でも気にしない。
カラスボーイように心で連呼。
(牛、馬、ヤギの次には是非とも私でなく、旦那様、旦那様をよろしくどうぞ)
執事の熱い応援に応えたのか?
エルフィンはアリアに言った。
「アリア、一旦屋敷に戻ろう」
「え?どうしてです?」
「アリアはブドウの皮を乾燥させたものを使って食事を美味しくするための物を作れないかと考えているんだろう?」
「それは、まぁ、そうですけど」
「ここにはブドウがない。留まったのは腐敗泥の下にある泥で美容的なことが出来るか?だったはずだ。屋敷に戻れば温室にあるブドウ棚に使えそうなブドウが実っているかも知れない」
そういえばエルフィンの屋敷の庭には全く違う真逆の時期にもキュウリやらが実っている温室があった事をアリアは思い出した。
「判りました。帰ります。そうとなったらのんびり食事をしてられないわ」
アリアはエルフィンの手に残る半分になったゆで卵をパクリ…としようとしたが、エルフィンの指まで咥えることになると直前で気が付き、指でスルンと摘み取ると口の中に入れ流し込むために腰に手を当ててミルクをがぶ飲み。
たんっ!!空のグラスをテーブルに置いたアリアは目をキラキラさせて言った。
「食事終わりっ!帰りますよっ!」
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