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第26話 手羽先より手羽元
屋敷までの帰り道でアリアは来るときに持ってきた巾着袋の口を解き、中を覗き込んで天井を見上げ、何やらブツブツ言いながら数えているのか指を折る。
「どうしたんだ?」
「・・・・だから小麦粉…卵…屋にあったはず…かしら」
「アリア?」
「・・・っ?!え?は、はい。どうしました?」
他の事を考えていて突然名を呼ばれたアリアはびっくりして腰を浮かせた。
「ふはっ。そんなに驚くな」
「お、驚いてませんよ?失礼ですね」
「ならそうしておこう。で?何を考えていた?」
「あ~…それはですね、帰り道でちょっと寄り道してくれると嬉しいかな~っとか思ってまして」
「なら屋敷に呼べばいい」
「だぁめ!ダメダメ!トンデモナイ!」
いろんな仕事を経験してきたアリアは知っている。
家に配達をしてもらったりすると別途料金がかかるし、自分で買い物に行くことが出来ない高齢者が多い区画には商会が屋台に荷を満載して移動店舗を引いてやってきて買い物が出来たが、欲しいものがあるとは限らないし量り売りはしてくれないので小麦粉などを買っても余らせてしまう。
侯爵家で使ってもらえればいいのだろうが、アリアが日頃買っていたランクの小麦粉なんて口の肥えたエルフィンが食すような材料としては使わない。
面倒でも自分で店に買い物に行き、必要なものを必要なだけ買わねば手持ちの金で足らなくなってしまう。ちょっと寄り道してもらえば馴染みの店がある。そこなら代金の端数を切ってくれたり。
時に「これも持ってきな」とおまけをくれたりする。
そういう店でいいのだ。
「買い物には買うの他に、見るとか選ぶとか、比べるとか値引きの駆け引きっていう楽しみがあるんです。それを抜きに買い物とは呼べません」
どやぁ!アリアはフンフン鼻息荒くエルフィンに語った。
「いいよ。このまま屋敷に帰っても昼になる。戻ることを伝えていないんだから昼食をどうするか調理長も困るだろう。軽く屋台で昼食も食べていこうか」
「え?エルフィン様…屋台の食べ物って食べられるんですか?」
生きてきて1番とは言わないが、間違いなくエルフィンの屋敷で目覚めてから1番の驚きだ。
「何を言っている。私には好き嫌いはほとんどないぞ?」
「そういう事ではなく、庶民の食べるような――」
庶民の食べるようなものは食べませんよね?と言いかけたが極上スマイルでアリアの二の句をぶった切ったエルフィンは「違うぞ?」とアリアの言いたいことを先読みしたらしい。
「庶民も私も人間だ。どちらかと言うとマナーだなんだと畏まって冷えた食事をダラダラ食むより、屋台で垂れる肉汁も豪快に野菜と一緒に口の中に放り込むほうが美味いし、チキンは手羽元。スパイスに揉みこんだカラッと揚げたてを手で抓んで食べるのが一番美味い」
(おわっ!!判ってるじゃない!手羽先も捨てがたいけど私も手羽元派!一緒だわ。それにコロッケも揚げ物も揚げたてが一番おいしいのよ!あのハフハフしながら食べるのが仕上げの絶品ソースなのよ)
チキンにも部位がある。精肉店に行くとムネ、モモの肉はお高くて手が出せないが、手羽先、手羽元はそれよりも安く買える。手羽元推しなのは筋を切り、肉を捲るようにしてチューリップと呼ばれる型に変形させて庶民的ささやかなオシャレ感を楽しめるからでもある。
それよりも驚くのはエルフィンでも屋台の料理を食べるのだということ。
「私、エルフィン様は豪華な料理しか食べないと思ってました」
「馬鹿なことを。パミル家はそれまで捨てていたゴミで成り上がった家だ。愛でる花より食べられる植物。自給自足の質素倹約な家だぞ」
「そうなんですか?お屋敷で出てくる野菜ってシャキシャキで味がしっかりしてるから高級品かと思ってました」
「その言葉を庭師に言ってやってくれ。間違いなく喜ぶ」
身分に関係なく共通点を見つけたアリアは嬉しくなった。
エルフィンは「どこの店だ?私も行ってみたい」と量り売りにも対応してくれる店に興味津々。
馬車はアリアの道案内で庶民が行きかう通りに入って行った。
「どうしたんだ?」
「・・・・だから小麦粉…卵…屋にあったはず…かしら」
「アリア?」
「・・・っ?!え?は、はい。どうしました?」
他の事を考えていて突然名を呼ばれたアリアはびっくりして腰を浮かせた。
「ふはっ。そんなに驚くな」
「お、驚いてませんよ?失礼ですね」
「ならそうしておこう。で?何を考えていた?」
「あ~…それはですね、帰り道でちょっと寄り道してくれると嬉しいかな~っとか思ってまして」
「なら屋敷に呼べばいい」
「だぁめ!ダメダメ!トンデモナイ!」
いろんな仕事を経験してきたアリアは知っている。
家に配達をしてもらったりすると別途料金がかかるし、自分で買い物に行くことが出来ない高齢者が多い区画には商会が屋台に荷を満載して移動店舗を引いてやってきて買い物が出来たが、欲しいものがあるとは限らないし量り売りはしてくれないので小麦粉などを買っても余らせてしまう。
侯爵家で使ってもらえればいいのだろうが、アリアが日頃買っていたランクの小麦粉なんて口の肥えたエルフィンが食すような材料としては使わない。
面倒でも自分で店に買い物に行き、必要なものを必要なだけ買わねば手持ちの金で足らなくなってしまう。ちょっと寄り道してもらえば馴染みの店がある。そこなら代金の端数を切ってくれたり。
時に「これも持ってきな」とおまけをくれたりする。
そういう店でいいのだ。
「買い物には買うの他に、見るとか選ぶとか、比べるとか値引きの駆け引きっていう楽しみがあるんです。それを抜きに買い物とは呼べません」
どやぁ!アリアはフンフン鼻息荒くエルフィンに語った。
「いいよ。このまま屋敷に帰っても昼になる。戻ることを伝えていないんだから昼食をどうするか調理長も困るだろう。軽く屋台で昼食も食べていこうか」
「え?エルフィン様…屋台の食べ物って食べられるんですか?」
生きてきて1番とは言わないが、間違いなくエルフィンの屋敷で目覚めてから1番の驚きだ。
「何を言っている。私には好き嫌いはほとんどないぞ?」
「そういう事ではなく、庶民の食べるような――」
庶民の食べるようなものは食べませんよね?と言いかけたが極上スマイルでアリアの二の句をぶった切ったエルフィンは「違うぞ?」とアリアの言いたいことを先読みしたらしい。
「庶民も私も人間だ。どちらかと言うとマナーだなんだと畏まって冷えた食事をダラダラ食むより、屋台で垂れる肉汁も豪快に野菜と一緒に口の中に放り込むほうが美味いし、チキンは手羽元。スパイスに揉みこんだカラッと揚げたてを手で抓んで食べるのが一番美味い」
(おわっ!!判ってるじゃない!手羽先も捨てがたいけど私も手羽元派!一緒だわ。それにコロッケも揚げ物も揚げたてが一番おいしいのよ!あのハフハフしながら食べるのが仕上げの絶品ソースなのよ)
チキンにも部位がある。精肉店に行くとムネ、モモの肉はお高くて手が出せないが、手羽先、手羽元はそれよりも安く買える。手羽元推しなのは筋を切り、肉を捲るようにしてチューリップと呼ばれる型に変形させて庶民的ささやかなオシャレ感を楽しめるからでもある。
それよりも驚くのはエルフィンでも屋台の料理を食べるのだということ。
「私、エルフィン様は豪華な料理しか食べないと思ってました」
「馬鹿なことを。パミル家はそれまで捨てていたゴミで成り上がった家だ。愛でる花より食べられる植物。自給自足の質素倹約な家だぞ」
「そうなんですか?お屋敷で出てくる野菜ってシャキシャキで味がしっかりしてるから高級品かと思ってました」
「その言葉を庭師に言ってやってくれ。間違いなく喜ぶ」
身分に関係なく共通点を見つけたアリアは嬉しくなった。
エルフィンは「どこの店だ?私も行ってみたい」と量り売りにも対応してくれる店に興味津々。
馬車はアリアの道案内で庶民が行きかう通りに入って行った。
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