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第34話 予想を超える関係
それまでが本題ではなかったのか?
ダリオンは偉そうな物言いをする執事が勿体ぶって本題を最後にしたことに本気で腹を立てた。
しかし、理由を聞き絶望的な気持ちになった。
「ハース男爵からも貴方については訴え出ると承っております。そのことをお伝えするために来たのですが、お喋りが過ぎたようで失礼しました」
ダリオンはハッとした。
「まさか!アリーの親父が?だってあの親父はアリーに関心なんかなかったはずだ!」
「貴方、本当に判っていないのですが?平民の貴方はアリア様を使ったつもりでしょうけど、男爵家の当主はアリア様ではないのですよ?」
ダリオンは当たり前すぎて忘れていた。
アリアの父親は家族も捨てて遠い領地に行ってしまい、生活費すら家族の手元にわたる手筈も整えなかった男。
その父親がアリアのためにダリオンを訴え出るはずはないと高を括っていたのは否めないし、最初に名を出して騎士団から借り入れをした時は「どうせアリアと結婚するし」と自分もハース男爵家の人間になるから構わないだろうと考えていた。
デリスとの結婚が決まってから借り入れをしたのは結婚式の2日前だけではない。数回借り入れをしているが、問題になったのは最後の1回だけ。明らかに結婚する気もないのに名を使ったと判断されてしまった。
最後の1回は弁解の余地もなくダリオンも「しくじった」と思っているが、デリスと結婚をしてからもハース男爵は何の動きも無かったので安心してしまっていた。
(なんだかんだ言ってやっぱり娘は別格って事か)
ダリオンは馬鹿馬鹿しくなった。
「ハッ。今になって娘可愛いかよ。図々しい親父だな」
「何を仰います?」
「はいはい。相手はお貴族様だ。また不敬ですかねッ!」
開き直ったダリオンだったが、執事の言葉はダリオンの予想を超えていた。
「ハース男爵からアリア様については何も伺っておりません。聞きしに勝るお方ですな。私も信じられず問い直したくらいですから」
「何を問うたと言うんだ」
「ハース男爵は、ファヴァビーン伯爵領で研究をする上で瑕疵となるような事をされるのは迷惑。娘が誰とどうなろうとそんなことはどうでもいい。と仰ってましたよ」
「そんなこと…アリーの相手は誰でもいいって事か?!あり得ないだろう!」
「いいぇ。言葉の通りです。彼にとって自分の研究が第一。それが全てです。研究の弊害になるもの、邪魔をする者は何人たりとも許さないという事です。考えてもごらんなさい。産みの母が余命幾ばくもないと手紙を出しても王都に戻ることも無いどころか返事すらしない人ですよ」
ダリオンはアリアから父親のハース男爵の事は何度も聞かされていた。
アリアも「父が亡くなって男爵家をどうするかと言われたら爵位返上する」と言っていたので希薄な親子関係であることは判っていたけれど、まさかここまでとは思わなかった。
「ファヴァビーン伯爵家はハース氏が男爵なので研究室を領地に作り迎えることが出来たのです。その男爵家を平民が勝手に利用したとなればファヴァビーン伯爵家もハース男爵に是非を問うでしょう。それが煩わしいという事です」
執事は問い直したというが、おそらくはそれすらも煩わしいとハース男爵は感じたのだろう。
(これじゃ、借金を返し終わっても刑罰が終わらねぇじゃねぇかよ!)
平民が勝手に貴族の家名を使う事は当然ながら禁止をされている。
今までまかり通ってきたのはアリアと付き合っていたので、何も言わなくてもアリアが防波堤になっていただけ。
保証人にはなっていない事もあり爵位を返上するかはその時にならないと判らないので騎士団も問い合わせはしなかっただけ。
「ア、アリーに会わせくれ。話せば判ってくれる。デリスとはすぐに離縁する。アリーに結婚するからと伝えてくれよ」
執事は憐みの目でダリオンに言葉を返した。
「貴方が離縁するのは勝手ですが夫婦なので奥方の稼ぎも借金返済に充てられているんですよ。あと半年もすれば完済です。己のしたことですから最後は自分で尻を拭いたらどうです?」
「こんなことになるとは思わなかったんだよ。頼むよ…アリーに会わせてくれよぅ。俺はアリーと別れるつもりなんて微塵もなかったんだ。アンタだって判るだろ?据え膳食わぬは男の恥っていうだろ?ちょっとつまみ食いしただけだ」
執事はやれやれとダリオンから距離を取った。
「同類項で括らないでください。据え膳を食うような男は男から見ても最低ですよ」
執事が帰って行ったあと、ダリオンは激しく後悔した。
「くそっ!デリスなんかに騙されなかったら!ハース男爵を怒らせることも無かったしアリーだって…他の男に取られずに今頃俺が泥を売り出して金持ちになっていたはずなのに!!」
悔しくてダリオンは地面剝き出しの床に何度も拳を叩きつけた。
手の痛みを感じると、過ぎ去りし日に騎士団で負傷し帰宅したダリオンを気遣うアリアの献身を思い出した。
「アリー。アリー。会いたいよ。俺を本当に捨てたのか?違うよな…アリーは俺の事を愛していた…そう!愛してたんだ。嫌いになるわけがない。きっとあのくそ爺にアリーは俺に会う事も制限をされてるんだ。ヨハンの店でもあの爺がいたから本当の気持ちを言葉にして俺に言えなかった、そうだ、そうに違いない!!」
ダリオンはアリアを思い、その夜は寝付くことが出来なかった。
ダリオンは偉そうな物言いをする執事が勿体ぶって本題を最後にしたことに本気で腹を立てた。
しかし、理由を聞き絶望的な気持ちになった。
「ハース男爵からも貴方については訴え出ると承っております。そのことをお伝えするために来たのですが、お喋りが過ぎたようで失礼しました」
ダリオンはハッとした。
「まさか!アリーの親父が?だってあの親父はアリーに関心なんかなかったはずだ!」
「貴方、本当に判っていないのですが?平民の貴方はアリア様を使ったつもりでしょうけど、男爵家の当主はアリア様ではないのですよ?」
ダリオンは当たり前すぎて忘れていた。
アリアの父親は家族も捨てて遠い領地に行ってしまい、生活費すら家族の手元にわたる手筈も整えなかった男。
その父親がアリアのためにダリオンを訴え出るはずはないと高を括っていたのは否めないし、最初に名を出して騎士団から借り入れをした時は「どうせアリアと結婚するし」と自分もハース男爵家の人間になるから構わないだろうと考えていた。
デリスとの結婚が決まってから借り入れをしたのは結婚式の2日前だけではない。数回借り入れをしているが、問題になったのは最後の1回だけ。明らかに結婚する気もないのに名を使ったと判断されてしまった。
最後の1回は弁解の余地もなくダリオンも「しくじった」と思っているが、デリスと結婚をしてからもハース男爵は何の動きも無かったので安心してしまっていた。
(なんだかんだ言ってやっぱり娘は別格って事か)
ダリオンは馬鹿馬鹿しくなった。
「ハッ。今になって娘可愛いかよ。図々しい親父だな」
「何を仰います?」
「はいはい。相手はお貴族様だ。また不敬ですかねッ!」
開き直ったダリオンだったが、執事の言葉はダリオンの予想を超えていた。
「ハース男爵からアリア様については何も伺っておりません。聞きしに勝るお方ですな。私も信じられず問い直したくらいですから」
「何を問うたと言うんだ」
「ハース男爵は、ファヴァビーン伯爵領で研究をする上で瑕疵となるような事をされるのは迷惑。娘が誰とどうなろうとそんなことはどうでもいい。と仰ってましたよ」
「そんなこと…アリーの相手は誰でもいいって事か?!あり得ないだろう!」
「いいぇ。言葉の通りです。彼にとって自分の研究が第一。それが全てです。研究の弊害になるもの、邪魔をする者は何人たりとも許さないという事です。考えてもごらんなさい。産みの母が余命幾ばくもないと手紙を出しても王都に戻ることも無いどころか返事すらしない人ですよ」
ダリオンはアリアから父親のハース男爵の事は何度も聞かされていた。
アリアも「父が亡くなって男爵家をどうするかと言われたら爵位返上する」と言っていたので希薄な親子関係であることは判っていたけれど、まさかここまでとは思わなかった。
「ファヴァビーン伯爵家はハース氏が男爵なので研究室を領地に作り迎えることが出来たのです。その男爵家を平民が勝手に利用したとなればファヴァビーン伯爵家もハース男爵に是非を問うでしょう。それが煩わしいという事です」
執事は問い直したというが、おそらくはそれすらも煩わしいとハース男爵は感じたのだろう。
(これじゃ、借金を返し終わっても刑罰が終わらねぇじゃねぇかよ!)
平民が勝手に貴族の家名を使う事は当然ながら禁止をされている。
今までまかり通ってきたのはアリアと付き合っていたので、何も言わなくてもアリアが防波堤になっていただけ。
保証人にはなっていない事もあり爵位を返上するかはその時にならないと判らないので騎士団も問い合わせはしなかっただけ。
「ア、アリーに会わせくれ。話せば判ってくれる。デリスとはすぐに離縁する。アリーに結婚するからと伝えてくれよ」
執事は憐みの目でダリオンに言葉を返した。
「貴方が離縁するのは勝手ですが夫婦なので奥方の稼ぎも借金返済に充てられているんですよ。あと半年もすれば完済です。己のしたことですから最後は自分で尻を拭いたらどうです?」
「こんなことになるとは思わなかったんだよ。頼むよ…アリーに会わせてくれよぅ。俺はアリーと別れるつもりなんて微塵もなかったんだ。アンタだって判るだろ?据え膳食わぬは男の恥っていうだろ?ちょっとつまみ食いしただけだ」
執事はやれやれとダリオンから距離を取った。
「同類項で括らないでください。据え膳を食うような男は男から見ても最低ですよ」
執事が帰って行ったあと、ダリオンは激しく後悔した。
「くそっ!デリスなんかに騙されなかったら!ハース男爵を怒らせることも無かったしアリーだって…他の男に取られずに今頃俺が泥を売り出して金持ちになっていたはずなのに!!」
悔しくてダリオンは地面剝き出しの床に何度も拳を叩きつけた。
手の痛みを感じると、過ぎ去りし日に騎士団で負傷し帰宅したダリオンを気遣うアリアの献身を思い出した。
「アリー。アリー。会いたいよ。俺を本当に捨てたのか?違うよな…アリーは俺の事を愛していた…そう!愛してたんだ。嫌いになるわけがない。きっとあのくそ爺にアリーは俺に会う事も制限をされてるんだ。ヨハンの店でもあの爺がいたから本当の気持ちを言葉にして俺に言えなかった、そうだ、そうに違いない!!」
ダリオンはアリアを思い、その夜は寝付くことが出来なかった。
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