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第9話♡元婚約者とその奥様
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心に諦めを付ける前に、御者や従者は別室を用意してくれるレストランの前に御者は馬車をつけた。
王族や高位貴族はあまり利用はしないが伯爵位から裕福な商人あたりがよく使用するレストラン。外見からはどう考えても「割引券」が発行されているような店には見えない。
「本当にここで割引券が使えるのですか?」
「勿論」
即答したガウルテリオだが大嘘である。
支払いは現金オンリーで貴族が良く使う後払いは効かない。
裕福な街並みに住む奥様方は「リーズナブルなランチですの」と言うのはこの店で一番価格が安いお昼限定のランチ。お値段3750ポポ@チップ、税別。
奥様方の夫はきっと昨夜の夕食をもう一度味わえる弁当か、リッチと呼ばれる者でもワンコインな税込500ポポの日替わり定食。ここは異世界だがどこの世界でも同じである。
そんな店のディナー。どう考えてもお1人様「万」は下らない。
馬車を下りた2人に御者が駆け寄る。
倹約家でもあるマリーは「うーん」当然考える。
「大丈夫だ。ほら、割引券もあるだろう?」
胸ポケットからピロっとだした2枚のチケットは文字が読み取られないように高速で振られている。本当は失敗した裏紙。それでも!男にはやらねばならぬ時と場合があるのだ。
「あまり持ち合わせがないので‥‥」
「誘ったのは俺だ。俺の顔を立てると思ってこの割引券を使わせてほしい」
「いえ、全額と言うわけには参りませんので一部は出します」
「まぁ、いいか。じゃぁ入ろうか」
「では、旦那様、わたくしはあちらの控室のほうにおりますので」
御者はこれ幸い!っと満面の笑みで2人を見送ろうとした。
だが…時刻は19時半過ぎ。満席だった。
「旦那様、空席があるか聞いて参りましょうか?」
「いや、私が行く。ここで彼女と待っていてくれ」
それなりなレストランだと従者ならまだしも御者に対しては軽くあしらう店もある。ガウルテリオは御者にマリーを頼むと店の中に入って行った。
そんな時だった。
「誰かと思ったら、ウェルバーム様では御座いませんの?」
棘を含んだ声にマリーと御者が声の主を見る。
「おやおや。年に一度の背伸びでもするつもりか?」
「おやめなさいよ。きっとコースのスープだけでもありつけるかも?って精一杯のお洒落をして、なけなしのお金を握りしめてやって来てるんだから。くくくっ」
そこにいたのはモール伯爵家を継いだばかりのエドウィン。
そしてエドウィンの妻となったカテリーン。
エドウィンとマリーの婚約期間は1年にも足りていない。
日頃から素行の悪いエドウィンを何とか更生させようと先代モール伯爵がウェルバーム侯爵に頼み込んでの婚約だった。それはウェルバーム侯爵が懲役刑を言い渡され、服役を終えた元受刑者たちの受け皿となるように就労支援もしていた事から根性を叩き直してくれると期待したもの。
だが、王太子襲撃と言う事件が起きて、モール伯爵はウェルバーム侯爵家に対しての恩も忘れて「棚から牡丹餅」いやいや「先見の明」があったとばかりに慰謝料を毟り取りに走ったのだ。
結局のところエドウィンの素行の悪さは遺伝だったのだろう。
そんな2人は多くの人が見ている前でも口撃の手を緩める事はない。
婚約が破棄になる時、何故かウェルバーム家にはカテリーンもエドウィンと共にやってきた。ずかずかとマリーの私室にも従者を連れて入って来て、引き出しの中身をひっくり返し、クローゼットの中身も引っ張り出した。
『小さいけどイミテーションじゃないわね。これも貰っておくわ』
そう言って宝飾品の中から金になりそうなものを選り始めた。
2人は婚約をした当初から付き合いがあり、実はその事で度々婚約については解消若しくは破棄の話し合いが持たれていた所だったのだが、不貞行為が吹き飛ぶような「王太子襲撃事件」が起こったとなれば立場は逆転する。
当主であるウェルバーム侯爵は憲兵に聴取をされており不在。その間に現金の他に慰謝料になりそうなものを、書類にサインするついでに物色にやって来たのだ。
当時からエドウィンの横暴さには辟易していたし、カテリーンの振る舞いにも目を覆うものはあった。結婚をした2人は益々拍車がかかっているようにも見える。
「まぁエド見て。このお店で食事をするのにまるで作業着のようよ?」
「これは酷い。庶民も利用するからと言ってこれでは…お里が知れるよ」
「噂じゃ騎士団で「オツトメ」してるそうよ?唯一の子爵と言う爵位。使い道があったのね」
「良かったんじゃないか?天職とも言える場を選ぶなんて落ちぶれたお前らしいよ。独り寝の寂しさを毎晩違う男と紛らわせるためだけの職場。昼間から何をしてるんだか。フハハハ」
余りの言いように言い返そうとするマリーの腕にそっと触れた御者は小さく首を横に振り、マリーの前に出た。すると、エドウィンとカテリーンは目を見合わせて笑い出した。
「この方は主の大切な客人。そのように蔑むのは許しませんっ」
「やだ、こんな年齢の男性もお相手をしてるの?」
「蓼食う虫も好き好きと言うが、男なら誰でも良いとなると逆に感心するな。ファハッハ」
「きっと、お食事と今夜の対価が同じなのね?大変ねぇ。貴女も。クククッ」
あろうことか御者とマリーを扇でツンと小突きだしたカテリーン。
4人の周りには人だかりができ、ざわざわと騒がしくなってしまったのだった。
王族や高位貴族はあまり利用はしないが伯爵位から裕福な商人あたりがよく使用するレストラン。外見からはどう考えても「割引券」が発行されているような店には見えない。
「本当にここで割引券が使えるのですか?」
「勿論」
即答したガウルテリオだが大嘘である。
支払いは現金オンリーで貴族が良く使う後払いは効かない。
裕福な街並みに住む奥様方は「リーズナブルなランチですの」と言うのはこの店で一番価格が安いお昼限定のランチ。お値段3750ポポ@チップ、税別。
奥様方の夫はきっと昨夜の夕食をもう一度味わえる弁当か、リッチと呼ばれる者でもワンコインな税込500ポポの日替わり定食。ここは異世界だがどこの世界でも同じである。
そんな店のディナー。どう考えてもお1人様「万」は下らない。
馬車を下りた2人に御者が駆け寄る。
倹約家でもあるマリーは「うーん」当然考える。
「大丈夫だ。ほら、割引券もあるだろう?」
胸ポケットからピロっとだした2枚のチケットは文字が読み取られないように高速で振られている。本当は失敗した裏紙。それでも!男にはやらねばならぬ時と場合があるのだ。
「あまり持ち合わせがないので‥‥」
「誘ったのは俺だ。俺の顔を立てると思ってこの割引券を使わせてほしい」
「いえ、全額と言うわけには参りませんので一部は出します」
「まぁ、いいか。じゃぁ入ろうか」
「では、旦那様、わたくしはあちらの控室のほうにおりますので」
御者はこれ幸い!っと満面の笑みで2人を見送ろうとした。
だが…時刻は19時半過ぎ。満席だった。
「旦那様、空席があるか聞いて参りましょうか?」
「いや、私が行く。ここで彼女と待っていてくれ」
それなりなレストランだと従者ならまだしも御者に対しては軽くあしらう店もある。ガウルテリオは御者にマリーを頼むと店の中に入って行った。
そんな時だった。
「誰かと思ったら、ウェルバーム様では御座いませんの?」
棘を含んだ声にマリーと御者が声の主を見る。
「おやおや。年に一度の背伸びでもするつもりか?」
「おやめなさいよ。きっとコースのスープだけでもありつけるかも?って精一杯のお洒落をして、なけなしのお金を握りしめてやって来てるんだから。くくくっ」
そこにいたのはモール伯爵家を継いだばかりのエドウィン。
そしてエドウィンの妻となったカテリーン。
エドウィンとマリーの婚約期間は1年にも足りていない。
日頃から素行の悪いエドウィンを何とか更生させようと先代モール伯爵がウェルバーム侯爵に頼み込んでの婚約だった。それはウェルバーム侯爵が懲役刑を言い渡され、服役を終えた元受刑者たちの受け皿となるように就労支援もしていた事から根性を叩き直してくれると期待したもの。
だが、王太子襲撃と言う事件が起きて、モール伯爵はウェルバーム侯爵家に対しての恩も忘れて「棚から牡丹餅」いやいや「先見の明」があったとばかりに慰謝料を毟り取りに走ったのだ。
結局のところエドウィンの素行の悪さは遺伝だったのだろう。
そんな2人は多くの人が見ている前でも口撃の手を緩める事はない。
婚約が破棄になる時、何故かウェルバーム家にはカテリーンもエドウィンと共にやってきた。ずかずかとマリーの私室にも従者を連れて入って来て、引き出しの中身をひっくり返し、クローゼットの中身も引っ張り出した。
『小さいけどイミテーションじゃないわね。これも貰っておくわ』
そう言って宝飾品の中から金になりそうなものを選り始めた。
2人は婚約をした当初から付き合いがあり、実はその事で度々婚約については解消若しくは破棄の話し合いが持たれていた所だったのだが、不貞行為が吹き飛ぶような「王太子襲撃事件」が起こったとなれば立場は逆転する。
当主であるウェルバーム侯爵は憲兵に聴取をされており不在。その間に現金の他に慰謝料になりそうなものを、書類にサインするついでに物色にやって来たのだ。
当時からエドウィンの横暴さには辟易していたし、カテリーンの振る舞いにも目を覆うものはあった。結婚をした2人は益々拍車がかかっているようにも見える。
「まぁエド見て。このお店で食事をするのにまるで作業着のようよ?」
「これは酷い。庶民も利用するからと言ってこれでは…お里が知れるよ」
「噂じゃ騎士団で「オツトメ」してるそうよ?唯一の子爵と言う爵位。使い道があったのね」
「良かったんじゃないか?天職とも言える場を選ぶなんて落ちぶれたお前らしいよ。独り寝の寂しさを毎晩違う男と紛らわせるためだけの職場。昼間から何をしてるんだか。フハハハ」
余りの言いように言い返そうとするマリーの腕にそっと触れた御者は小さく首を横に振り、マリーの前に出た。すると、エドウィンとカテリーンは目を見合わせて笑い出した。
「この方は主の大切な客人。そのように蔑むのは許しませんっ」
「やだ、こんな年齢の男性もお相手をしてるの?」
「蓼食う虫も好き好きと言うが、男なら誰でも良いとなると逆に感心するな。ファハッハ」
「きっと、お食事と今夜の対価が同じなのね?大変ねぇ。貴女も。クククッ」
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4人の周りには人だかりができ、ざわざわと騒がしくなってしまったのだった。
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