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お転婆なツェツィーリアは恥を知れと言った
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「予想していた通りの展開になったが、大丈夫だろうか」
聊か不安になってしまったアンカソン公爵はペルセウスの顔を見た。
窓の外を見ていたペルセウスは両手の手のひらを上に軽く肘を追ってフイっとあげる。
「ノープロブレム。ご安心召されよ。魔法などは使えませんがこの腕一本で部隊を率いてきました。この程度の人数で怯んでいてはツィーを娶る資格はありません」
安心しろという言葉にアンカソン公爵は驚きながら窓の外を見る。屋敷の周りを囲う兵たち以外はいつもと何ら変化は見られないがこの数を一人で相手にするのかと思うと体が震えた。
「あの槍はまだ現役なのでしょうか」
壁に掛けられたアンカソン公爵が現役の騎士の頃に使っていた長槍を指差すとゆっくりと歩み寄り槍を手にする。
穂が十文字になった長槍を手にすると、柄が木製ではなく金属製でかなりの重さがある事に笑みをこぼした。
手掴みの緒に右手を掛け、柄をブンブンと振り回す。
大柄なペルセウスに長槍は他の兵士が持つ槍と長さが違わずに見えるが、実はかなり長い。これを騎乗し現役時代は振り回していたアンカソン公爵は二の腕もかなりの太さだが、それよりも肩から背の筋肉は歪だが槍によって鍛え上げられた筋肉を纏っている。
「それをそこまで振り回せるとは。手入れだけはしておりますから充分まだこいつは現役です」
「相棒をお借りしても?」
「息子に託すのは父の役目。存分に振り回してくだされ」
ペルセウスは背に剣をたすき掛けに背負い、槍を小脇に抱えて部屋を出ると廊下にツェツィーリアが騎士服を着てサーベルを手に。髪は後ろで一纏めにして微笑んでいた。
「ペルセウス様。似合います?」
クルリと1回転する姿に「ファゥッ」と声を漏らし口を手で塞ぐペルセウス。
髪が遅れて周り揺れる姿に父のアンカソン公爵が「お転婆は封印しろとあれほど‥」と言いながら駈け寄るがサッと身を翻しペルセウスの背に隠れるようにして舌をペロっと出す娘に苦笑いである。
「まぁ!お父様の槍を?!わたくしには触らせても下さらないのに!」
そうは言ってもおそらく柄も鉄製の槍。
重量は50キロ以上でツェツィーリアの体重よりも重い。
「参りましょうか。ペルセウス様」
「ツィー。決して無茶はしないと約束だからな」
並んで廊下を歩く2人の背を眺めていると、甲冑に身を包んだ一人息子のマークスが後ろからやって来る。文官でもあるマークスは幼少期からツェツィーリアに剣では勝てず、早々に剣の道は諦めた。
だが、今は苦手だと言っている場合ではないと若かりし頃の父が付けていた甲冑を身に纏っている。細身のマークスでもそれらしく見えるものだと目を細める。
「私も邪魔にならない程度に猫の手を貸してきます」
小走りになり、ツェツィーリアとペルセウスに追いついたマークス。3人は開かれた玄関から馬にのり門道を駆け、外門に向かった。大勢の騎士を従え中央にいるのは頭部全体を包帯で巻いたアルフレッドだった。
「なんと無様な…よく人前に出ようと思った事ですわ」
200人を超える騎士と3人は鉄門を挟んで向かい合わせになった。
「殿下、暴行罪とは何事でしょうか。明らかに正当防衛でございましたが」
「リア、君だけは少しだけ捕縛を我慢すればいいだけだ。この門を開き裁きを受けるんだ」
「お断りいたします。殿下、この事は陛下はご存じなのですか」
ツェツィーリアの言葉に予想通りアルフレッドの両脇にいた騎士は【??】っとアルフレッドの顔を見やる。4大公爵家の1家であるアンカソン公爵家に対しての行為は当然陛下の命令もあるものだと思っているようである。
「殿下…王命だとの事でしたが、まさか独断ではないでしょうね」
「それが何だと言うのだ。私が負傷しているのが証拠だ。この者たちを捕らえよ」
「いえ、しかし‥‥」
「ゴチャゴチャ言うな!私がやれと言っているのだ!」
やはり戸惑い始める騎士たち。
スゥーっと息を吸うとペルセウスは近くにガラスでもあれば即座に砕け散るのではないかと思うほどの大声を張り上げ、鉄門を挟んで向かいにいる騎士に問いかけた。
「私はマイセレオス帝国、第一騎兵隊総督シルグラ。貴殿らに告ぐ。剣を棄てよ。今ならば無抵抗とみなし手出しはしない。もう一度言う。剣を棄てよ!」
ビリビリと空気も裂けそうな大声だが、騎士たちが反応したのは声の大きさではなくその名前だった。シルグラ総督と言えば騎士の間で知らぬ者がいればそれは騎士ではない。
他国の騎士とは言え、降伏をせぬ者には無慈悲な上に容赦が一切ない戦場の殺戮魔という二つ名は知れ渡っている。次々に戦意喪失を示し、剣を仕舞い、馬を下りる騎士、その場に座り込む騎士たちばかりとなった。
「何をしてるんだ!座るな!立て!斬り殺しても構わぬ!亡骸でも良いからヤツを捕らえよ!おいっ!聞こえているのか!」
「殿下!何を我々に死ねと仰るのですか!彼は戦場の殺戮魔と呼ばれマイセレオス帝国の最終兵器とも言われているんですよ!我々だって命は惜しい!1つしかないんですッ」
「五月蠅い!五月蠅い!私がやれと言っているのだ!黙って従えっ!貴様らの命など代りは幾らでもいるのだ。束になってかかれば最小限で済むだろうが!」
虚しく響くアルフレッドの声にツェツィーリアはペルセウスに向かって頷いた。
騎乗したままで鉄門に馬を横向きにつけると、長槍を数回頭上でブンブンと回す。
「ヤァァッ!!」 ジャンッ!!
何が起こった?と目の前で斜めに一振りした槍を見つめる騎士の目の前に鉄門がざっくりと斜めに切られ大きな音を立てて倒れ込んだ。
アルフレッドは腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
ツェツィーリアは低くなった鉄門を馬を走らせ飛び越え「ハァッ!!」声と同時に馬から飛び降りサーベルをアルフレッドの股間に向かって突き刺し、ビィィン!!と言う音が響き渡る。
指2本ほどの位置で土に突き刺さり、振動するサーベルにアルフレッドはその場を濡らした。
「殿下、騎士の命を守るのも王族の務め。盾になってくださる騎士様達を蔑ろにして良いと思われているのであれば、その腐った性根はもう矯正は出来ません」
「私は王太子なのだ。私の代わりこそいないではないか」
「何を仰っているのです。王太子の代わりこそ何人もいるのです。ですが身を盾にしても良いという騎士はそうそうにいる者ではありません。恥を知りなさいませ」
王子教育、王太子妃教育には剣術があり自分の身を最後に守るのは自分であり、その他に盾となる騎士が倒れた後は王子なり王太子を身を挺して守らねばならないと叩きこまれている。
父のアンカソン公爵が槍の名手だった事から屋敷でも色々と鍛えていたツェツィーリアには騎士団の団長が自ら手合わせをしており、最後の身を守る手段である事から「マトモ」な剣術ではなくどんな汚い手を使っても生き延びる手段の剣を身につけているのだ。
最も得意とするのが剣の中でも比較的重量がなく、長さのあるサーベルだった。
「やだっ‥‥剣先が汚れちゃったわ」
「ツェツィ、気にするのそこか?あと指2本で串刺しだったぞ」
「大丈夫よ。そんなに大き――」
「ツェツィ!言うな!その先は言わなくていい。尊厳に関わる」
土に刺さった剣を引き抜き、剣先を兄のマークスにフイフイと近づけると「汚いだろ!止めろよ」寸でのところで剣先をかわし逃げている。試しに騎士の前にフイっと出せば騎士もサッと身をかわし剣先を避ける。
「やぁん…皆逃げるなんて酷いっ」
「ツェツィ、そんなものを人の近くに寄せるんじゃない!」
「ツィー。貸してみろ。そういう時はこうするんだ」
サーベルを受け取ったペルセウスはアルフレッドの上着に剣先を丁寧に擦り付けるが、細い目になっているツェツィーリア。
「いや、戦場では血糊が付いた剣はこうするんだって!」
「本当ですの?でもなんか‥‥新調しようかしら」
お気に入りだったサーベルがもう使えないと半べそのツェツィーリアを横目に見ながらマークスはアルフレッドの目の前に座り込んだ。
「殿下?オイタの責任は取ってもらいます。虚偽の申請で身勝手に騎士団を動かした事、人には我慢の限界と言うものがあるのだという事もその身を以て知る時が来たようですね。妹の夫となる者に対しての無礼は外交問題にもなるのですよ。ある意味、彼とは運命の出会い…かも知れませんね」
「あ、あぅ‥違っ…」
「言い訳は通用しませんよ。さぁ殿下の父上の元に参りましょうか」
公爵家の者達を捕縛するための縄はアルフレッドを縛るために使用されていく。
縛られた事はアルフレッドには耐えがたい屈辱なのだろう。突然に喚き始めるが騎士たちによって荷馬車の荷台に乗せられ広い荷台で揺れに体を打ち付けながら王城に向かって送られていくのだった。
「あら?もう行きますの?女性の支度には時間がかかりますのに。ところでペルセウス様」
「なんだろう?新しいサーベルは俺が買っ――」
「戦場の殺戮魔は以前に聞き及んだことが御座いましたが、マイセレオス帝国の最終兵器ってまさかペルセウス様の事ではございませんわよね?」
「さ、さぁ?なんだろう?この頃耳の聞こえが悪くなったと言われないか?」
ぷぅと頬を膨らませるツェツィーリアに胸がキュンとなるのはペルセウス特有の持病であろうか。しかしそんな表情もしてくれる事が嬉しくて思わずツェツィーリアを引き寄せてしまうのだった。
聊か不安になってしまったアンカソン公爵はペルセウスの顔を見た。
窓の外を見ていたペルセウスは両手の手のひらを上に軽く肘を追ってフイっとあげる。
「ノープロブレム。ご安心召されよ。魔法などは使えませんがこの腕一本で部隊を率いてきました。この程度の人数で怯んでいてはツィーを娶る資格はありません」
安心しろという言葉にアンカソン公爵は驚きながら窓の外を見る。屋敷の周りを囲う兵たち以外はいつもと何ら変化は見られないがこの数を一人で相手にするのかと思うと体が震えた。
「あの槍はまだ現役なのでしょうか」
壁に掛けられたアンカソン公爵が現役の騎士の頃に使っていた長槍を指差すとゆっくりと歩み寄り槍を手にする。
穂が十文字になった長槍を手にすると、柄が木製ではなく金属製でかなりの重さがある事に笑みをこぼした。
手掴みの緒に右手を掛け、柄をブンブンと振り回す。
大柄なペルセウスに長槍は他の兵士が持つ槍と長さが違わずに見えるが、実はかなり長い。これを騎乗し現役時代は振り回していたアンカソン公爵は二の腕もかなりの太さだが、それよりも肩から背の筋肉は歪だが槍によって鍛え上げられた筋肉を纏っている。
「それをそこまで振り回せるとは。手入れだけはしておりますから充分まだこいつは現役です」
「相棒をお借りしても?」
「息子に託すのは父の役目。存分に振り回してくだされ」
ペルセウスは背に剣をたすき掛けに背負い、槍を小脇に抱えて部屋を出ると廊下にツェツィーリアが騎士服を着てサーベルを手に。髪は後ろで一纏めにして微笑んでいた。
「ペルセウス様。似合います?」
クルリと1回転する姿に「ファゥッ」と声を漏らし口を手で塞ぐペルセウス。
髪が遅れて周り揺れる姿に父のアンカソン公爵が「お転婆は封印しろとあれほど‥」と言いながら駈け寄るがサッと身を翻しペルセウスの背に隠れるようにして舌をペロっと出す娘に苦笑いである。
「まぁ!お父様の槍を?!わたくしには触らせても下さらないのに!」
そうは言ってもおそらく柄も鉄製の槍。
重量は50キロ以上でツェツィーリアの体重よりも重い。
「参りましょうか。ペルセウス様」
「ツィー。決して無茶はしないと約束だからな」
並んで廊下を歩く2人の背を眺めていると、甲冑に身を包んだ一人息子のマークスが後ろからやって来る。文官でもあるマークスは幼少期からツェツィーリアに剣では勝てず、早々に剣の道は諦めた。
だが、今は苦手だと言っている場合ではないと若かりし頃の父が付けていた甲冑を身に纏っている。細身のマークスでもそれらしく見えるものだと目を細める。
「私も邪魔にならない程度に猫の手を貸してきます」
小走りになり、ツェツィーリアとペルセウスに追いついたマークス。3人は開かれた玄関から馬にのり門道を駆け、外門に向かった。大勢の騎士を従え中央にいるのは頭部全体を包帯で巻いたアルフレッドだった。
「なんと無様な…よく人前に出ようと思った事ですわ」
200人を超える騎士と3人は鉄門を挟んで向かい合わせになった。
「殿下、暴行罪とは何事でしょうか。明らかに正当防衛でございましたが」
「リア、君だけは少しだけ捕縛を我慢すればいいだけだ。この門を開き裁きを受けるんだ」
「お断りいたします。殿下、この事は陛下はご存じなのですか」
ツェツィーリアの言葉に予想通りアルフレッドの両脇にいた騎士は【??】っとアルフレッドの顔を見やる。4大公爵家の1家であるアンカソン公爵家に対しての行為は当然陛下の命令もあるものだと思っているようである。
「殿下…王命だとの事でしたが、まさか独断ではないでしょうね」
「それが何だと言うのだ。私が負傷しているのが証拠だ。この者たちを捕らえよ」
「いえ、しかし‥‥」
「ゴチャゴチャ言うな!私がやれと言っているのだ!」
やはり戸惑い始める騎士たち。
スゥーっと息を吸うとペルセウスは近くにガラスでもあれば即座に砕け散るのではないかと思うほどの大声を張り上げ、鉄門を挟んで向かいにいる騎士に問いかけた。
「私はマイセレオス帝国、第一騎兵隊総督シルグラ。貴殿らに告ぐ。剣を棄てよ。今ならば無抵抗とみなし手出しはしない。もう一度言う。剣を棄てよ!」
ビリビリと空気も裂けそうな大声だが、騎士たちが反応したのは声の大きさではなくその名前だった。シルグラ総督と言えば騎士の間で知らぬ者がいればそれは騎士ではない。
他国の騎士とは言え、降伏をせぬ者には無慈悲な上に容赦が一切ない戦場の殺戮魔という二つ名は知れ渡っている。次々に戦意喪失を示し、剣を仕舞い、馬を下りる騎士、その場に座り込む騎士たちばかりとなった。
「何をしてるんだ!座るな!立て!斬り殺しても構わぬ!亡骸でも良いからヤツを捕らえよ!おいっ!聞こえているのか!」
「殿下!何を我々に死ねと仰るのですか!彼は戦場の殺戮魔と呼ばれマイセレオス帝国の最終兵器とも言われているんですよ!我々だって命は惜しい!1つしかないんですッ」
「五月蠅い!五月蠅い!私がやれと言っているのだ!黙って従えっ!貴様らの命など代りは幾らでもいるのだ。束になってかかれば最小限で済むだろうが!」
虚しく響くアルフレッドの声にツェツィーリアはペルセウスに向かって頷いた。
騎乗したままで鉄門に馬を横向きにつけると、長槍を数回頭上でブンブンと回す。
「ヤァァッ!!」 ジャンッ!!
何が起こった?と目の前で斜めに一振りした槍を見つめる騎士の目の前に鉄門がざっくりと斜めに切られ大きな音を立てて倒れ込んだ。
アルフレッドは腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
ツェツィーリアは低くなった鉄門を馬を走らせ飛び越え「ハァッ!!」声と同時に馬から飛び降りサーベルをアルフレッドの股間に向かって突き刺し、ビィィン!!と言う音が響き渡る。
指2本ほどの位置で土に突き刺さり、振動するサーベルにアルフレッドはその場を濡らした。
「殿下、騎士の命を守るのも王族の務め。盾になってくださる騎士様達を蔑ろにして良いと思われているのであれば、その腐った性根はもう矯正は出来ません」
「私は王太子なのだ。私の代わりこそいないではないか」
「何を仰っているのです。王太子の代わりこそ何人もいるのです。ですが身を盾にしても良いという騎士はそうそうにいる者ではありません。恥を知りなさいませ」
王子教育、王太子妃教育には剣術があり自分の身を最後に守るのは自分であり、その他に盾となる騎士が倒れた後は王子なり王太子を身を挺して守らねばならないと叩きこまれている。
父のアンカソン公爵が槍の名手だった事から屋敷でも色々と鍛えていたツェツィーリアには騎士団の団長が自ら手合わせをしており、最後の身を守る手段である事から「マトモ」な剣術ではなくどんな汚い手を使っても生き延びる手段の剣を身につけているのだ。
最も得意とするのが剣の中でも比較的重量がなく、長さのあるサーベルだった。
「やだっ‥‥剣先が汚れちゃったわ」
「ツェツィ、気にするのそこか?あと指2本で串刺しだったぞ」
「大丈夫よ。そんなに大き――」
「ツェツィ!言うな!その先は言わなくていい。尊厳に関わる」
土に刺さった剣を引き抜き、剣先を兄のマークスにフイフイと近づけると「汚いだろ!止めろよ」寸でのところで剣先をかわし逃げている。試しに騎士の前にフイっと出せば騎士もサッと身をかわし剣先を避ける。
「やぁん…皆逃げるなんて酷いっ」
「ツェツィ、そんなものを人の近くに寄せるんじゃない!」
「ツィー。貸してみろ。そういう時はこうするんだ」
サーベルを受け取ったペルセウスはアルフレッドの上着に剣先を丁寧に擦り付けるが、細い目になっているツェツィーリア。
「いや、戦場では血糊が付いた剣はこうするんだって!」
「本当ですの?でもなんか‥‥新調しようかしら」
お気に入りだったサーベルがもう使えないと半べそのツェツィーリアを横目に見ながらマークスはアルフレッドの目の前に座り込んだ。
「殿下?オイタの責任は取ってもらいます。虚偽の申請で身勝手に騎士団を動かした事、人には我慢の限界と言うものがあるのだという事もその身を以て知る時が来たようですね。妹の夫となる者に対しての無礼は外交問題にもなるのですよ。ある意味、彼とは運命の出会い…かも知れませんね」
「あ、あぅ‥違っ…」
「言い訳は通用しませんよ。さぁ殿下の父上の元に参りましょうか」
公爵家の者達を捕縛するための縄はアルフレッドを縛るために使用されていく。
縛られた事はアルフレッドには耐えがたい屈辱なのだろう。突然に喚き始めるが騎士たちによって荷馬車の荷台に乗せられ広い荷台で揺れに体を打ち付けながら王城に向かって送られていくのだった。
「あら?もう行きますの?女性の支度には時間がかかりますのに。ところでペルセウス様」
「なんだろう?新しいサーベルは俺が買っ――」
「戦場の殺戮魔は以前に聞き及んだことが御座いましたが、マイセレオス帝国の最終兵器ってまさかペルセウス様の事ではございませんわよね?」
「さ、さぁ?なんだろう?この頃耳の聞こえが悪くなったと言われないか?」
ぷぅと頬を膨らませるツェツィーリアに胸がキュンとなるのはペルセウス特有の持病であろうか。しかしそんな表情もしてくれる事が嬉しくて思わずツェツィーリアを引き寄せてしまうのだった。
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