殿下の御心のままに。

cyaru

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番外編☆2人の結婚式

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朝から真っ青な空が広がっております。

既に超絶便利なお屋敷に腰を据えて3カ月目。お兄様も先日いらっしゃって今日はついにペルセウス様との結婚式ですわ。朝から使用人さん達がバタバタと忙しなく動き回っております。

シルグラ侯爵家は皇都の隣に位置する侯爵領で馬車で小一時間ほどの所に御座います。
そこにある教会でお式を挙げるのですが、緊張の面持ちなペルセウス様。どうなされたのでしょう。


「ツィー…本当に俺で良いんだろうか」

まぁ!この期に及んで何を仰るかと思えば。今更引き返す事など出来るはずも御座いません。先だってお式を挙げられた皇太子殿下ご夫妻も出席くださるというのに。

「ペルセウス様はわたくしとの婚儀を取りやめたいのですの?」
「いや、逆だ。この場に神父がいれば今すぐに誓ってもいいくらいだ」
「わたくしは楽しみでやっと今日が来た事が嬉しいですわ」



教会に向かう沿道には大勢の騎士様がご家族を伴い、馬車に手を振ってくださいます。

「閣下をもらってくれてありがとうございます~!」
「返品は出来ませんので最後まで飼ってくださ~い!」
「リサイクルマークついてませんので回収はできませ~ん!」

おめでとうございますの言葉に交じって不思議な声援はどういうことなのでしょう。思わず首を傾げて隣に座るペルセウス様を見ると石像のようになっておられます。

おかしいですわね。何時の間に金剛力士像になられたのかしら。
ふと見ると、今日の日に備えて髪も短く揃えられて新たな発見が御座いました。

「ペルセウス様。こんな所にホクロがあったのですね」
「ふぁっ?はっ?ど、何処だ?今からでも遅くない。直ぐに消さねば」
「いいえ?可愛いホクロですもの。そのままで結構ですわ」
「ど、どこだ?どこに?」
「ここですわ」

チョンと指先でうなじの生え際に顔を近づけて触れると、声にならない声をあげられ太ももの間に両手を挟まれてしまいました。そんなに指先が悴むほど本日は寒くは御座いませんわよ?

「どうなさいましたの?」
「ツ、ツィー…息が耳に…」
「息が?ペルセウス様のお鼻はここですわ。とても届きませんわ」
「ち、違う…ツィーの息が…」
「わたくしの?‥‥(ふぅー)」
「ワヒャァッ!!」

反応が面白く、ついつい何度もやってしまうと何度目だったでしょう。

「あ・・・」

何やら小さく声をあげて、絶望的な表情になられてしまいました。
反対側に置いてあったコートをひざ掛けのようにされて‥‥寒かったのですね。と、馬車にある温度計を見ると気温28度。ペルセウス様は相当な寒がりだという事が判りましたわ。

ですが、額と首には汗をびっしょりと掻いておられます。
まさか!30歳と言う若さで更年期障害?そうきっとこれはホットフラッシュ。
若くても男性でもあり得る事です。これはお式が終われば早々に対処せねばなりません。

「ペルセウス様、ご心配には及びません。どんな事になってもお世話致しますわ」
「あ、いや…着替えれば済む事だから心配は要らない」
「いいえ、いけません。殿方ですから気恥ずかしいとは思いますが付き添いますわ」
「いやいや、大丈夫だ。全く心配をするような事ではないんだ」
「甘く見てはいけません。生理現象ですがお辛いでしょう?」
「ま、まぁ…は辛いな」
「わたくし、誠心誠意お世話致しましてよ」


11歳も離れているのですもの。ペルセウス様の介護が先に必要になるのは必然。
益々汗をかかれているペルセウス様、なんとお労しい。日頃の激務で体調を崩され…それでも尚、わたくしを望んでくださるのです。尽くさねば女が廃ると言うもので御座います。

ですが、教会に馬車が到着するや否や、ペルセウス様はわたくしを突然小脇に抱えて走り出し、わたくしを花嫁の控室に連れて行くと、挨拶もそこそこに新郎の控室に向かわれてしまいました。
そうなっても尚、片時もコートを手放さない。余程に酷い冷え性ですのね。
わたくしは柿の葉茶やドクダミ茶を早速注文するべく侍女に伝えました。



しかし、お式が始まると先程までのペルセウス様とはうって変わってまさに武将という貫禄十分な立ち姿でございます。精神力の強さにわたくしは頬を染めてしまいました。

マイセレオス帝国の結婚式は新郎が花嫁に誓いの言葉を述べ、了承した花嫁は新郎の額にキスを落とすのです。向かい合ったわたくしとペルセウス様。

「ペルセウス・レガン・シルグラはこの命が尽きようともツェツィーリア・ベルン・アンカソンを生涯の伴侶とし、いつ如何なる時も愛し、守り、ともに泣き添い遂げる事を誓う」

少しだけ屈んだペルセウス様の額に唇が触れます。
神父様の【神は2人を何時までも見守るでしょう】という言葉で短いお式が終わります。

花びらが舞う中教会を出たわたくし達を大歓声で騎士様達が祝福してくださいました。


日のあるうちに披露宴が行われ、残す事が許されない祝いのお酒を恐ろしい量飲まされているペルセウス様ですが、お酒はお強いようであまり表情に変化は御座いません。
呂律が回らなくなると言う者もいるようですが、そのような事もないようです。
やはり戦場で鍛えられた騎士様は違うのですね。思わず見惚れてしまいました。


日没を知らせる鐘が鳴るとわたくしは先に退場を致します。
そう、初夜の準備をするのです。

湯で体を洗われている時にふと気が付きました。

「大変ですわ」
「どうなさいました?まさか…月のものが?」

「え?あ、いいえ。違います。ペルセウス様が教会に行くまでに不調を訴えられておられたのです。それであのようにお酒をお飲みになり、湯あみをされるのは危険ですわ」

「大丈夫御座いますよ。お式の装いにお召し物を着替える時も普通でした。まぁスラックスと下着は余分に必要でしたが準備も万端。それに披露宴のお酒は半分は清涼飲料水ですから心配には及びません」

ですが!と何度か申しましたが、体調に変わりはなかったと一点張りの侍女さん。
心配で寝室に向けて破廉恥とも言える装いを恥ずかしがることも忘れわたくしは【では、失礼いたします】という侍女さんの言葉に、心配が先に立って寝室に飛び込んだのでございます。


先にわたくしが退場したのですが、ペルセウス様は既に寝室に来られておられました。

「ペルセウス様っ」
「うわっ…ちょっと待て。刺激が強すぎるッ」
「いいえ、待てません。さぁ早く横になってくださいまし」
「いや、そう言うのは男の俺からするべき事で―――」
「何を仰るのです。全てわたくしにお任せくださいませ!」

寝台にペルセウス様を寝かせ、早くほてりを覚ましてあげなくては!気が急いておりました。ガウンを脱がしたところで何故か上下反転。どうしてわたくしが組みし抱かれておりますの?!

「ツィー。やっと君を抱ける日が来た。初めてだが…優しくする」
「いえいえ、ペルセウス様それどころでは御座いませんでしょう?」
「どうして?こんなに積極的な妻の期待に応えねばならんだろう」

ふと‥‥これは…

覆いかぶさるペルセウス様はわたくしのあらゆるところをクンクンされておられます。
そして、不調を押してペルセウス様の俺様が俺様感を満載にされておられます。

「そんなところを‥‥本当に積極的な奥様だ」
「ちっ違うのですっ…あぁっ…ハァッ…」

☆~☆~☆ R指定ないので ここまで ☆~☆~☆



美味しく頂かれてしまったわたくし。ペルセウス様の不調は何処に行ったのでしょう。
そして思い知ったのです。騎士を夫に持てば体力勝負だという事を。

本当に妖精に別れを告げたペルセウス様。わたくし達は夫婦になったのです。

折角頼んだ柿の葉茶とドクダミ茶。
この先あのような不調がない様にと、食卓に出されるようになったのは言うまでも御座いません。
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