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第06話 暴君??国王シュルタス
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王城は伏魔殿。
いや、見るからに醜悪な顔をした者達がメリルを見る。
ずっとカルボス村で倹しく暮らしてきたメリルが着替えにと持ってきた衣類はいかにも村娘が来ている服。誰かに借りようにも知り合いなどいる筈もない。着替えをする服もないが時間もなかった。
一刻も早く会いたいという国王が挨拶をするというので連れて行かれた部屋は謁見の間だった。
明らかに場違いなのは否めない。
数段高い位置にある椅子にはまだ誰も腰を下ろしていないが、ぞろぞろと集まって来た王族や貴族はみんな豪奢な装い。夜会には出た事は無いが「謁見ではなく昼なのに夜会?」とメリルが思うのも仕方がない。
その中で1人、メリルに近づいて来た女性がいた。
年のころはメリルと変わらない。同じ年齢もしくは離れても1、2歳。
半月型に歪めた目から舐めるような視線をメリルに向け、口元を扇で隠すのは国王の第一子で第1王女キュリアナ。年齢は15歳になったばかり。
言葉を発する事は無かったが、メリルはその態度に嫌悪感を覚えた。
キュリアナが去った後、隣に立っていたマイケルから「第1王女殿下です」と聞かされて「なるほど」と思ってしまった。
王都に向かう道中は確かに緊張も感じたのだが、謁見の間に入った時にはもう開き直ったメリル。今更暴れようが泣き喚こうがどうにもならない事くらいは判る。
ならば見たもの、聞いたものを土産話で村の皆に話して聞かせた方がいい。
生きている間に1度行くかどうかの王都なのだからネタは溢れているだろうと完全に開き直った。
そうこうしていると、部屋の空気が一遍する。
国王が入って来たのだ。
ゆっくりと玉座に腰を下ろした国王シュルタスは暫く何も言わずにメリルを見た。
「フランソワーノによく似ているな。よく来た。メリル」
やっと言葉を発したシュルタスだったが、メリルとしてはマナーや所作はある程度教えては貰ったが実地訓練はなかったし、披露する場もなかったので返事を返すタイミングが判らない。
「メリル様、陛下にカーテシーを」
ぼそっと小さな声でマイケルが教えてくれるが、居並ぶ王族や貴族からはクスクスとこちらも小さな笑いが聞こえて来るがそれどころではない。
――カーテシー・・・カーテシー、どうだったっけ――
スカートの裾を軽く抓んで片足を後ろに引き、腰を落とそうとした時だった。
ダンッ!!
大きな音がしてメリルは動きを止めた。
「先程笑った者。一歩前に出よ」
シュルタスの声が謁見の間にビリビリと響く。
クスクスと笑い声は幾つも聞こえたのに誰も動こうとしない。
「自ら名乗り出れば温情も考えたが、必要はなさそうだな」
先ほどメリルがキュリアナにされたように今度はシュルタスが居並ぶ物をゆっくりと舐めるように見回すと、1人、2人と前に出て片膝をついた。
「殊勝な事だ。私の前で失笑しておいて誤魔化し切れると考える愚か者がまだその身を隠せると思っているとはな。前に出たものは絞首刑、名乗り出なかった者は斬首とする」
「お、お待ちください!兄上!違うのです。虫が!虫が目の前を飛びクシャミが出るのを堪え――」
「ならば虫を入れてしまった者も処分をせねばならんな」
言い訳をしたのは王弟となった元第3王子だったが「王族だからと忖度も容赦もしない」シュルタスは言い放った。
「メリルは訳がありここに来た。呼んだのは私だ。つまりは国賓級の扱いをして然り。それを失笑するなど私を笑ったも同然だ」
――ひぇぇ。国王陛下ってこんな独裁者みたいな人だったのぉ?――
バタバタと倒れる音がするのはご夫人方だろうか。
メリルはどうやらシュルタスは有言実行でこんなに空気がヒリついているのは誰もが恐怖を感じているからなのだと感じた。
しかし、だとしても自分が原因で絞首や斬首など穏かな話ではない。
「お待ちください!国王陛下!」思わず声を出していた。
「メリル。どうしたのだ」
「み、見ての通りここで明らかな場違いは私なのです。陛下だって見世物小屋の芝居や喜劇、珍獣を見れば笑ってしまわれると思います。日頃見慣れないものが目の前にある!つい笑ってしまうのは喜怒哀楽の有る人間である証拠です!彼らを処罰されるというなら原因を作った私も同様にしょ・・・処分を!」
生唾を飲み込む音すら響きそうな静寂の中、シュルタスは目を細めた。
「どこまでもフランソワーノに似ているな。慈悲深いところも。相判った。メリルの頼みとあれば聞き入れよう。だが、二度目はない心得よ」
謁見の間の空気が少し和らぐ。
ホッとしたメリルは足がガクガクと生まれたての仔馬のように震えた。
いや、見るからに醜悪な顔をした者達がメリルを見る。
ずっとカルボス村で倹しく暮らしてきたメリルが着替えにと持ってきた衣類はいかにも村娘が来ている服。誰かに借りようにも知り合いなどいる筈もない。着替えをする服もないが時間もなかった。
一刻も早く会いたいという国王が挨拶をするというので連れて行かれた部屋は謁見の間だった。
明らかに場違いなのは否めない。
数段高い位置にある椅子にはまだ誰も腰を下ろしていないが、ぞろぞろと集まって来た王族や貴族はみんな豪奢な装い。夜会には出た事は無いが「謁見ではなく昼なのに夜会?」とメリルが思うのも仕方がない。
その中で1人、メリルに近づいて来た女性がいた。
年のころはメリルと変わらない。同じ年齢もしくは離れても1、2歳。
半月型に歪めた目から舐めるような視線をメリルに向け、口元を扇で隠すのは国王の第一子で第1王女キュリアナ。年齢は15歳になったばかり。
言葉を発する事は無かったが、メリルはその態度に嫌悪感を覚えた。
キュリアナが去った後、隣に立っていたマイケルから「第1王女殿下です」と聞かされて「なるほど」と思ってしまった。
王都に向かう道中は確かに緊張も感じたのだが、謁見の間に入った時にはもう開き直ったメリル。今更暴れようが泣き喚こうがどうにもならない事くらいは判る。
ならば見たもの、聞いたものを土産話で村の皆に話して聞かせた方がいい。
生きている間に1度行くかどうかの王都なのだからネタは溢れているだろうと完全に開き直った。
そうこうしていると、部屋の空気が一遍する。
国王が入って来たのだ。
ゆっくりと玉座に腰を下ろした国王シュルタスは暫く何も言わずにメリルを見た。
「フランソワーノによく似ているな。よく来た。メリル」
やっと言葉を発したシュルタスだったが、メリルとしてはマナーや所作はある程度教えては貰ったが実地訓練はなかったし、披露する場もなかったので返事を返すタイミングが判らない。
「メリル様、陛下にカーテシーを」
ぼそっと小さな声でマイケルが教えてくれるが、居並ぶ王族や貴族からはクスクスとこちらも小さな笑いが聞こえて来るがそれどころではない。
――カーテシー・・・カーテシー、どうだったっけ――
スカートの裾を軽く抓んで片足を後ろに引き、腰を落とそうとした時だった。
ダンッ!!
大きな音がしてメリルは動きを止めた。
「先程笑った者。一歩前に出よ」
シュルタスの声が謁見の間にビリビリと響く。
クスクスと笑い声は幾つも聞こえたのに誰も動こうとしない。
「自ら名乗り出れば温情も考えたが、必要はなさそうだな」
先ほどメリルがキュリアナにされたように今度はシュルタスが居並ぶ物をゆっくりと舐めるように見回すと、1人、2人と前に出て片膝をついた。
「殊勝な事だ。私の前で失笑しておいて誤魔化し切れると考える愚か者がまだその身を隠せると思っているとはな。前に出たものは絞首刑、名乗り出なかった者は斬首とする」
「お、お待ちください!兄上!違うのです。虫が!虫が目の前を飛びクシャミが出るのを堪え――」
「ならば虫を入れてしまった者も処分をせねばならんな」
言い訳をしたのは王弟となった元第3王子だったが「王族だからと忖度も容赦もしない」シュルタスは言い放った。
「メリルは訳がありここに来た。呼んだのは私だ。つまりは国賓級の扱いをして然り。それを失笑するなど私を笑ったも同然だ」
――ひぇぇ。国王陛下ってこんな独裁者みたいな人だったのぉ?――
バタバタと倒れる音がするのはご夫人方だろうか。
メリルはどうやらシュルタスは有言実行でこんなに空気がヒリついているのは誰もが恐怖を感じているからなのだと感じた。
しかし、だとしても自分が原因で絞首や斬首など穏かな話ではない。
「お待ちください!国王陛下!」思わず声を出していた。
「メリル。どうしたのだ」
「み、見ての通りここで明らかな場違いは私なのです。陛下だって見世物小屋の芝居や喜劇、珍獣を見れば笑ってしまわれると思います。日頃見慣れないものが目の前にある!つい笑ってしまうのは喜怒哀楽の有る人間である証拠です!彼らを処罰されるというなら原因を作った私も同様にしょ・・・処分を!」
生唾を飲み込む音すら響きそうな静寂の中、シュルタスは目を細めた。
「どこまでもフランソワーノに似ているな。慈悲深いところも。相判った。メリルの頼みとあれば聞き入れよう。だが、二度目はない心得よ」
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