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第21話 家を直すメリルと辺境伯の帰還
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切った木の皮を鎌で剥ぐようにして、平らな部分を作り、見つけた金づちと壊れてしまった壁に曲がってついたままだった釘を使って打ち付けて行く。
「窓は‥‥作らないとだめね」
枠が虫に食われてスカスカになっていて持ち上げようと手で触れた部分は脆く崩れてしまう。
窓はガラスは作る事が出来ないので、ガラスは諦めたが、壁の窓用穴に木の枝で長さを測り、枠を作った。
これもまたハンザに教えてもらった工夫。
『うわぁん!釘があとちょっとなのに足らない!』
『メリル、釘で打ち付ければ簡単だけど、壊れやすいんだよ』
『え?じゃぁどうするの』
『穴を塞いだりするときは仕方ないけど組み合わせる時はこっちの木の先端は凸にこっちは凹にして嵌め込むんだ。そうすると木は息をしているから夏は太るし冬は痩せる』
『えっ?冬に痩せたら隙間風で寒いんじゃ?』
『それでいいんだよ。暖炉は木を燃やす。消し炭になる時毒を出すんだ。でも隙間風が吹き抜ければ毒も流される。閉め切っている方が危険なんだ』
凹凸にした先端を90度にして組み合わせて枠を作ると中に枝を置いていく。
「作品だと思うんだけどごめんなさい!!」
メリルは勿体ないかな?と思いつつも蝋人形を一体溶かし、玄関の扉の板と板の間に溶かした蝋を流し込んで隙間を埋めた。少しだけ蝋を流し込まずに隙間のままにするのも忘れない。
窓も同じ。枝を並べた真ん中に蝋を流しこんで固めて窓を作った。
嵌め込む時はまだ手でフニフニと出来る柔さの蝋を枠の外側に巻くようにして、作った窓を捩じ込む。
蝋が固まれば窓は固定される。
モーセット王国の夏がどれほどの暑さかは判らないが、夏までに何か対策をすればいい。
一度に全ては出来ないので、雨が降ると雨漏りもするだろう天井を見上げるが、屋根に上ると板が抜けそうだし、屋根に上るための梯子もない。
「屋根は追々だわ。ジャガイモとか食べきる前に食べられるものを探さなきゃ」
幸いにカルボス村では薬草を取って来ては薬にして村人に託し、売って貰っていた。全部ではないけれどある程度草木は見たり、触れたりすれば判別も出来る。
季節はもう冬。取り敢えず3日目にして寒さは凌げるようになったし、水もある。メリルは食料を探しに向かった。
★~★
ハーゼスの砦で襲撃してきた敵を撃破し、辺境伯とシュバイツァー率いる本軍が屋敷に戻ってきたのはメリルに先に屋敷に行くようにと伝えて3週間後の事だった。
行きかえりで1週間。2万の兵で襲ってきた敵国を集めた3千の兵で実質2週間で蹴散らした。
「結婚式は1週間後・・・じゃ化膿した腫れは取れんな」
「こんなの薬草を塗れば明日にでも」
「馬鹿を言うな。腫れが治まってからの話にする」
「えぇーーっ。父上ぇそれじゃ話が違うじゃないか」
「無傷なら1週間でも良かったが、敵の太刀を受けるとはまだ未熟だ。己の腕のなさが悪いということだ。それに・・・石の加工は早くても1カ月はかかる。丁度だろう」
「知ってたなんて!」
「肌身離さず。夜は月に掲げて眺めていれば誰だって気が付く」
「見てたのかよ!チェッ!」
シュバイツァーがメリルに惹かれるのは過去の自分を見ているようで切なくもあった。
亡くなったと聞いて、自暴自棄になりかけたが全てを剣に込めて振るっているうちに今の立場にもなった。
シュバイツァーの母は、辺境伯がフランソワーノ王女を慕っている事を知って尚、嫁いできた。
「亡くなった方には敵いません。しかし生きているからこそ出来る事もありましょう」
そう言って尽くしてくれたが、シュバイツァーが7歳になる前に流感であっけなく神に召された。
短い結婚生活だったが、亡くなった妻も愛していなかった訳ではない。だから再婚もせずに今に至る。
――不思議な巡り合わせかな?――
今は「かの人」の娘が、嫁いで来ることになった事に縁を感じずに入られない。
女性の事を面倒がっていたシュバイツァーがメリルに恋心を芽生えさせ、シュバイツァーなりに成長させていく様子を過去の自分に重ねていたのだった。
今でも悔いる事はある。一目見て恋に落ち一方的に迫ってしまった。
その事が負担になり、フランソワーノ王女が病で命を落としてしまったのではないかと。
シュバイツァーも恋に落ちるのは早かったのは親譲りかとも考えるが、過去の自分のように思いを押し付けるのではなく、まだ心に秘めて伝えられていないのは亡き妻の忍耐にも似ているような気がしていた。
が、屋敷に到着した辺境伯とシュバイツァーを待っていたのは喜びとは真逆の知らせだった。
「お兄様、申し訳ございません」
「何という事を!3週間も何をしていたんだ!」
「旦那様!捜索はしているのです」
「当たり前だ!物事の良しあしも判らんのか!」
メリルには温厚だった辺境伯はメリル失踪の知らせ、そしてその原因に激怒したのだった。
「いないって…いったいどこを探してたんだよ!」
「そ、それが当日は屋敷の敷地内にいるものと・・・その後は捜索の範囲を広げたのですが・・・」
メリルに渡したという地図と同じ物を見て、「知っている者なら迷わないだろうが」と辺境領に来て右も左も、大通りの名称すら知らないメリルが、東西南北が逆転した地図を見て辿り着けたとは思えない。
「直ぐに家屋も1軒いや、1部屋ごとにくまなく探すのだ」
「ハッ!承知仕りましたッ」
3週間も目撃証言もないとなれば、生きている可能性は限りなくゼロに近い。
行き倒れているか、人攫いに掴まってしまった可能性もある。
悲しいかな、考えられる可能性の中で生きているとすれば誰かに攫われ、慰み者にされていたり、娼館に売られて客を取っている場合。
「くっそ!!なんでっ!なんでだよ!」
シュバイツァーは厩舎に駆け込むと鞍も付けていない馬に跨り、飛び出していったのだった。
「窓は‥‥作らないとだめね」
枠が虫に食われてスカスカになっていて持ち上げようと手で触れた部分は脆く崩れてしまう。
窓はガラスは作る事が出来ないので、ガラスは諦めたが、壁の窓用穴に木の枝で長さを測り、枠を作った。
これもまたハンザに教えてもらった工夫。
『うわぁん!釘があとちょっとなのに足らない!』
『メリル、釘で打ち付ければ簡単だけど、壊れやすいんだよ』
『え?じゃぁどうするの』
『穴を塞いだりするときは仕方ないけど組み合わせる時はこっちの木の先端は凸にこっちは凹にして嵌め込むんだ。そうすると木は息をしているから夏は太るし冬は痩せる』
『えっ?冬に痩せたら隙間風で寒いんじゃ?』
『それでいいんだよ。暖炉は木を燃やす。消し炭になる時毒を出すんだ。でも隙間風が吹き抜ければ毒も流される。閉め切っている方が危険なんだ』
凹凸にした先端を90度にして組み合わせて枠を作ると中に枝を置いていく。
「作品だと思うんだけどごめんなさい!!」
メリルは勿体ないかな?と思いつつも蝋人形を一体溶かし、玄関の扉の板と板の間に溶かした蝋を流し込んで隙間を埋めた。少しだけ蝋を流し込まずに隙間のままにするのも忘れない。
窓も同じ。枝を並べた真ん中に蝋を流しこんで固めて窓を作った。
嵌め込む時はまだ手でフニフニと出来る柔さの蝋を枠の外側に巻くようにして、作った窓を捩じ込む。
蝋が固まれば窓は固定される。
モーセット王国の夏がどれほどの暑さかは判らないが、夏までに何か対策をすればいい。
一度に全ては出来ないので、雨が降ると雨漏りもするだろう天井を見上げるが、屋根に上ると板が抜けそうだし、屋根に上るための梯子もない。
「屋根は追々だわ。ジャガイモとか食べきる前に食べられるものを探さなきゃ」
幸いにカルボス村では薬草を取って来ては薬にして村人に託し、売って貰っていた。全部ではないけれどある程度草木は見たり、触れたりすれば判別も出来る。
季節はもう冬。取り敢えず3日目にして寒さは凌げるようになったし、水もある。メリルは食料を探しに向かった。
★~★
ハーゼスの砦で襲撃してきた敵を撃破し、辺境伯とシュバイツァー率いる本軍が屋敷に戻ってきたのはメリルに先に屋敷に行くようにと伝えて3週間後の事だった。
行きかえりで1週間。2万の兵で襲ってきた敵国を集めた3千の兵で実質2週間で蹴散らした。
「結婚式は1週間後・・・じゃ化膿した腫れは取れんな」
「こんなの薬草を塗れば明日にでも」
「馬鹿を言うな。腫れが治まってからの話にする」
「えぇーーっ。父上ぇそれじゃ話が違うじゃないか」
「無傷なら1週間でも良かったが、敵の太刀を受けるとはまだ未熟だ。己の腕のなさが悪いということだ。それに・・・石の加工は早くても1カ月はかかる。丁度だろう」
「知ってたなんて!」
「肌身離さず。夜は月に掲げて眺めていれば誰だって気が付く」
「見てたのかよ!チェッ!」
シュバイツァーがメリルに惹かれるのは過去の自分を見ているようで切なくもあった。
亡くなったと聞いて、自暴自棄になりかけたが全てを剣に込めて振るっているうちに今の立場にもなった。
シュバイツァーの母は、辺境伯がフランソワーノ王女を慕っている事を知って尚、嫁いできた。
「亡くなった方には敵いません。しかし生きているからこそ出来る事もありましょう」
そう言って尽くしてくれたが、シュバイツァーが7歳になる前に流感であっけなく神に召された。
短い結婚生活だったが、亡くなった妻も愛していなかった訳ではない。だから再婚もせずに今に至る。
――不思議な巡り合わせかな?――
今は「かの人」の娘が、嫁いで来ることになった事に縁を感じずに入られない。
女性の事を面倒がっていたシュバイツァーがメリルに恋心を芽生えさせ、シュバイツァーなりに成長させていく様子を過去の自分に重ねていたのだった。
今でも悔いる事はある。一目見て恋に落ち一方的に迫ってしまった。
その事が負担になり、フランソワーノ王女が病で命を落としてしまったのではないかと。
シュバイツァーも恋に落ちるのは早かったのは親譲りかとも考えるが、過去の自分のように思いを押し付けるのではなく、まだ心に秘めて伝えられていないのは亡き妻の忍耐にも似ているような気がしていた。
が、屋敷に到着した辺境伯とシュバイツァーを待っていたのは喜びとは真逆の知らせだった。
「お兄様、申し訳ございません」
「何という事を!3週間も何をしていたんだ!」
「旦那様!捜索はしているのです」
「当たり前だ!物事の良しあしも判らんのか!」
メリルには温厚だった辺境伯はメリル失踪の知らせ、そしてその原因に激怒したのだった。
「いないって…いったいどこを探してたんだよ!」
「そ、それが当日は屋敷の敷地内にいるものと・・・その後は捜索の範囲を広げたのですが・・・」
メリルに渡したという地図と同じ物を見て、「知っている者なら迷わないだろうが」と辺境領に来て右も左も、大通りの名称すら知らないメリルが、東西南北が逆転した地図を見て辿り着けたとは思えない。
「直ぐに家屋も1軒いや、1部屋ごとにくまなく探すのだ」
「ハッ!承知仕りましたッ」
3週間も目撃証言もないとなれば、生きている可能性は限りなくゼロに近い。
行き倒れているか、人攫いに掴まってしまった可能性もある。
悲しいかな、考えられる可能性の中で生きているとすれば誰かに攫われ、慰み者にされていたり、娼館に売られて客を取っている場合。
「くっそ!!なんでっ!なんでだよ!」
シュバイツァーは厩舎に駆け込むと鞍も付けていない馬に跨り、飛び出していったのだった。
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