22 / 36
第22話 メリル、パンを手に入れる
しおりを挟む
「うわっ。見~っけた♡」
ガサガサと小屋から離れた場所を日を変えて回るメリルはこの付近には人もあまり入って来ないのか、自生する野菜やリスが隠したと思われる木の実、そして薬草をかつての桶を応急処置した籠に入れる。
ついでにほとんどがもう何処かに飛んだか、落ちてしまって土に埋もれたと思われる花の残骸から数粒の種も採取する。
「これは・・・ヒッカキ草の種だわ。上手く育ってくれれば痒み止めになるのよね。ホント…どうしてこの森に誰も来ないのかしら・・・薬草の宝庫なのに」
来ない訳ではない。もう冬なので収穫や採取の時期が終わっているだけである。
ウロウロしていると新たな発見もあった。
もう歩けないと森の先は諦めたが、4時間ほどかけて行ってみると小さな集落があった。
出来れば薬草を煎じて作った薬を買い取ってもらえる店があればと思ったのだが、15軒ほどの農夫の家が密集しているだけで「店」と呼べそうな建物はないと遠目でも判る。
「仕方ないか・・・」
諦めて小屋に戻ろうとした時、荷馬車に乗った男性アルバンに声を掛けられた。
「どうしたんだ?こんなところで。道に迷ったのか?」
「いいえ。薬を買い取ってくれる店はないかなと思って」
「薬?アンタが作ってるのかい?」
「はい」
「良かったら見せてくれないか。私は行商をして各村を回っているアルバンと言う者なんだけど薬類は先ず辺境伯様のお屋敷に卸すから数が幾つあっても足りないんだよ。良い品なら買い取るよ」
「本当ですか!今日はちょっとしかないんですけど・・・」
ちょっとしかない。と、言っても今はウロウロしているだけ。
その最中に転んだりした時に傷口に塗りこんだりして化膿を止める自分用が数個。
ポケットから取り出すとアルバンは丸薬になった薬草の薬玉を指で抓んで爪でカリっと引っ掻き、ペロッと舐めた。
「これはトンデキ草かい?」
「はい。擦り傷や切り傷の患部に水で溶かして擦り込むと痛みが取れるのと化膿止めにもなります」
「かなりいい品だ。今はねこれだけ薬草を混ぜてるの少ないんだよ。嵩増しをするのに混ぜ物するからね」
「そうなんですか。私はこの作り方しか知らなくて」
「いや、いいんだ。で?どうだろう。その5粒だけど銅貨2枚で買い取らせてくれないか」
「そんなに?!」
メリルはびっくりである。村人とせっせと作った薬は20粒で銅貨1枚。それ以上では薬問屋は買い取ってくれなかった。決して足元を見られている訳ではなく、ありふれた薬で、その値でもかなり高値で買い取ってくれていた方なのだ。
銅貨2枚で良い・・・そう言おうとしたのだが、荷台にあるアルバンの荷物にパンが見えた。
――パンだ!パンがある!――
小屋に来て今日で20日目。味付きのスープもだがパンは御無沙汰過ぎる。
今ならブートレイア王国の宿屋の食事だってお代わり出来るかも知れない。それほどにメリルは質素な食事で耐えていた。
「あのぅ…そこにあるパンじゃだめですか?」
「パン?‥‥あれかい?」
「はい」
「構わないけど・・・あれだけじゃ銅貨1枚にもならないよ。こちらに分があり過ぎる」
「では・・・塩とか?欲張りすぎですかね?」
「塩?いいよ。売り物だけどもってる」
「そ、そしたらですね!村を回っているんでしょう?次はいつこちらに?」
「3日に1度来てるけど・・・」
メリルの目がキラ☆っと光る。
――チャンス!チャンス!チャーンス!!――
トキメキに愛を込めるのではなく、外貨獲得に使命を帯びるっ!
――お金は大事だよ~そう!生きるのにお金は大事よ!――
メリルだってあの小屋がカレドア達の言った「妾の館」だとは思っていない。そのうち向かわなくてはいけないが4時間かけてやって来た目の前の集落よりまだ先にあるのは確からしい。
ここじゃないと小屋を追い出されたら向かわねばならない。
なら「旅費」が必要なのである。
ついでに食べ物も必要。と、なればやはりお金は必要。
「あの!この他にも住まいに戻れば腹痛の薬に痛み止め、熱さましに便秘薬もあるんです。買い取ってもらえませんか?3日後必ず持ってきます」
「そんなに?!嘘じゃないだろうね」
「メェちゃん。嘘吐かな~い。なんですけども信じて貰えませんか?」
メリルの必死な様子にアルバンは「まぁ騙されたと思って3日後楽しみにしてるよ。どうせ3日に1度は回ってる村だからね」と引き受けてくれた。それだけでなくたった5粒しかない薬の対価としてバゲットを2本、塩に少しの砂糖、そしてリンゴを3つくれた。
「ありがとうございます!3日後。ここでお待ちしております」
「お待ちしておりますなんて。丁寧だなぁ。まぁいいや。じゃあ3日後」
メリルはアルバンの荷馬車が小さくなるまで何度も頭を下げて見送ったあと、軽い足取りで小屋までまた4時間かけて戻って行った。
ガサガサと小屋から離れた場所を日を変えて回るメリルはこの付近には人もあまり入って来ないのか、自生する野菜やリスが隠したと思われる木の実、そして薬草をかつての桶を応急処置した籠に入れる。
ついでにほとんどがもう何処かに飛んだか、落ちてしまって土に埋もれたと思われる花の残骸から数粒の種も採取する。
「これは・・・ヒッカキ草の種だわ。上手く育ってくれれば痒み止めになるのよね。ホント…どうしてこの森に誰も来ないのかしら・・・薬草の宝庫なのに」
来ない訳ではない。もう冬なので収穫や採取の時期が終わっているだけである。
ウロウロしていると新たな発見もあった。
もう歩けないと森の先は諦めたが、4時間ほどかけて行ってみると小さな集落があった。
出来れば薬草を煎じて作った薬を買い取ってもらえる店があればと思ったのだが、15軒ほどの農夫の家が密集しているだけで「店」と呼べそうな建物はないと遠目でも判る。
「仕方ないか・・・」
諦めて小屋に戻ろうとした時、荷馬車に乗った男性アルバンに声を掛けられた。
「どうしたんだ?こんなところで。道に迷ったのか?」
「いいえ。薬を買い取ってくれる店はないかなと思って」
「薬?アンタが作ってるのかい?」
「はい」
「良かったら見せてくれないか。私は行商をして各村を回っているアルバンと言う者なんだけど薬類は先ず辺境伯様のお屋敷に卸すから数が幾つあっても足りないんだよ。良い品なら買い取るよ」
「本当ですか!今日はちょっとしかないんですけど・・・」
ちょっとしかない。と、言っても今はウロウロしているだけ。
その最中に転んだりした時に傷口に塗りこんだりして化膿を止める自分用が数個。
ポケットから取り出すとアルバンは丸薬になった薬草の薬玉を指で抓んで爪でカリっと引っ掻き、ペロッと舐めた。
「これはトンデキ草かい?」
「はい。擦り傷や切り傷の患部に水で溶かして擦り込むと痛みが取れるのと化膿止めにもなります」
「かなりいい品だ。今はねこれだけ薬草を混ぜてるの少ないんだよ。嵩増しをするのに混ぜ物するからね」
「そうなんですか。私はこの作り方しか知らなくて」
「いや、いいんだ。で?どうだろう。その5粒だけど銅貨2枚で買い取らせてくれないか」
「そんなに?!」
メリルはびっくりである。村人とせっせと作った薬は20粒で銅貨1枚。それ以上では薬問屋は買い取ってくれなかった。決して足元を見られている訳ではなく、ありふれた薬で、その値でもかなり高値で買い取ってくれていた方なのだ。
銅貨2枚で良い・・・そう言おうとしたのだが、荷台にあるアルバンの荷物にパンが見えた。
――パンだ!パンがある!――
小屋に来て今日で20日目。味付きのスープもだがパンは御無沙汰過ぎる。
今ならブートレイア王国の宿屋の食事だってお代わり出来るかも知れない。それほどにメリルは質素な食事で耐えていた。
「あのぅ…そこにあるパンじゃだめですか?」
「パン?‥‥あれかい?」
「はい」
「構わないけど・・・あれだけじゃ銅貨1枚にもならないよ。こちらに分があり過ぎる」
「では・・・塩とか?欲張りすぎですかね?」
「塩?いいよ。売り物だけどもってる」
「そ、そしたらですね!村を回っているんでしょう?次はいつこちらに?」
「3日に1度来てるけど・・・」
メリルの目がキラ☆っと光る。
――チャンス!チャンス!チャーンス!!――
トキメキに愛を込めるのではなく、外貨獲得に使命を帯びるっ!
――お金は大事だよ~そう!生きるのにお金は大事よ!――
メリルだってあの小屋がカレドア達の言った「妾の館」だとは思っていない。そのうち向かわなくてはいけないが4時間かけてやって来た目の前の集落よりまだ先にあるのは確からしい。
ここじゃないと小屋を追い出されたら向かわねばならない。
なら「旅費」が必要なのである。
ついでに食べ物も必要。と、なればやはりお金は必要。
「あの!この他にも住まいに戻れば腹痛の薬に痛み止め、熱さましに便秘薬もあるんです。買い取ってもらえませんか?3日後必ず持ってきます」
「そんなに?!嘘じゃないだろうね」
「メェちゃん。嘘吐かな~い。なんですけども信じて貰えませんか?」
メリルの必死な様子にアルバンは「まぁ騙されたと思って3日後楽しみにしてるよ。どうせ3日に1度は回ってる村だからね」と引き受けてくれた。それだけでなくたった5粒しかない薬の対価としてバゲットを2本、塩に少しの砂糖、そしてリンゴを3つくれた。
「ありがとうございます!3日後。ここでお待ちしております」
「お待ちしておりますなんて。丁寧だなぁ。まぁいいや。じゃあ3日後」
メリルはアルバンの荷馬車が小さくなるまで何度も頭を下げて見送ったあと、軽い足取りで小屋までまた4時間かけて戻って行った。
160
あなたにおすすめの小説
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる