7 / 32
攻守交替が激しい夫婦
しおりを挟む
体臭。それは体の匂い。人は誰も無臭では御座いませんので部位や体温によっては差があります。
しかし、先程から髪を撫でながらもスンスンと首の後ろや髪の至る部分、時折肩なども匂われている気がしてなりません。
「アルベルト様、何をされているのです」
「堪能」
「は?‥‥」
「至近距離での香りなんて…夢のようだ」
――間違いなく、現実ですけれどね――
「アルベルト様、荷物の事は明日以降で構いません」
「荷物?もう父上が頼んだ業者が搬入したはずだ。オールお任せコースだっただろう」
「いえ、あの絵姿やら隠蔽されている感、満載の他の荷物です」
「違うぞ。エトランゼは勘違いも可愛くて悶えそうだがあれは荷物ではない」
「では何だと仰るのです?」
「一言で言うならば、癒しだ」
――わたくしには、穢しですけどね――
「その件は明日、ゆっくりとお話いたしましょう」
「本当?僕と話をしてくれるのか?!…」
どうしたのでしょうか。突然、感極まったような表情をされた後、涙ぐんでおられます。夫婦が会話をしなくなった時は離縁の危機でございますよ?
ほろりと零れて頬を伝う涙を思わず、はしたないと思いつつ袖に吸わせると
「フォォォ!そんな事‥‥現人神となれば僕を煽るのか!試すのかっ!」
「いえ、煽ったりはしてい…ンギャッ!」
く、苦しい‥‥この突然首でないのが救いですが、上腕二頭筋で締めあげるようなスリーパーホールドを何度も決められると少々屈辱でございます。
ですが、アルベルト様は騎士。少々体力があったところでわたくしが敵うはずが御座いません。
タップを致しますが、タップをする部位はお背中。
何かを間違いなく勘違いされておられます。雄叫びのような声をあげられて益々絞めあがります。
「ア”…ア”ル”ベル”ド…ザマ・・・」
「何だい‥‥あっ…すまない…嬉しさと喜びの余り加減が出来なかった!」
おそらくは、また肺の空気が全部抜かれてしまったのでしょう。
いい加減垂直直滑降な胸元に角度を感じません。呼吸を整えましょう。
「アルベルト様、ここではなんですのでお部屋に参りましょう」
「わかった。運べばいいのか」
えっ?あの絵姿を運ぶというのですか?あ、違うのですね。運ぶのはわたくし‥‥わたくし?
両手を広げて、さぁ!と満面の笑みで促されても、戻る部屋はすぐそこです。歩けます。
「いえ、担がれなくても構いません」
「何を言ってるんだ。担ぐのではなく先刻倒れた時のように横抱きだ」
真顔で言われるとそれが正解のように感じます。しかしそれは間違い。
歩けるうちは歩かないと、筋力の衰えは家族を介護崩壊させるのです。
「それは今は結構ですので、まずはお部屋に。使用人にも聞かれてしまいます」
「何を言っている。使用人などこの時間にいるはずがないだろう」
――いるはずがない?いえ、いるはずですよね?――
不穏な発言に思わず、アルベルト様のお顔を直視致しますと、
「ヒョウワッ!‥‥そんな目で…僕を見ないでくれ…」
顔を手で隠されて、その場に跪いてしまわれます。
正直申しますと数々のこの現象に【_| ̄|○】と床伏せたいのはわたくしの方です。
しかし使用人さんがいないのであればここで言っても問題はないでしょう。
「アルベルト様、今夜はよろしくお願いいたします」
「どういう事?これからどこか行くのか?」
「いいえ?初夜でございます。限界ラヴァーのSH〇W-YAでは御座いませんのでお間違いなきよう」
「初夜‥‥初夜‥‥初夜っ?!」
――どこに驚くところがありました?昼間、教会で結婚式でしたよね?――
実技は未経験ですので初体験で御座いますが、貴族の娘とあれば座学だけはきっちりと、それはもう入念にご年配の未亡人となられた講師陣から教え込まれます。叩きこまれると言った方が適切でしょうか。
数回すれば慣れて痛みも取れると聞き、出来れば早めにそうなりたいと思うのは我儘ではない筈です。
それにその数回のうちに子を授かる事が出来れば大好きな本をゆっくり読む時間も出来るでしょう。
その間に、手などを使って殿方を悦ばせる知識も座学ですが学んでおります。
わたくしも出来れば子供は自分の子だけを育てたいのです。
出来るだけ、外に女性を作る事はやめて頂きたいですし、その方との子を押し付けられるのも回避したいと思うのです。お父様はお母様1人だけでしたが、友人には異母の弟妹が両手の数以上と言うものもおりますしね。
しゃがみ込んで、お尻を振り振りとしながら顔を覆っているアルベルト様を促して寝室に誘います。
恥ずかしいのですよ?何度も寝室に誘うなどこちらが顔から火が出そうです。
騎士の方は経験が豊富だとお聞きしましたが、もしやこれが【前戯】というもので女性をその気にさせる殿方のテクニックなのかも知れません。
講義の先生も仰っておりました。【誘い方や愛し方は人それぞれ】だと!
だとすれば、子供がイヤイヤをするようで可愛いものではありませんか。
国一番の騎士であるアルベルト様はこうやって女性を誘うのですね。
そう考えれば、先程の絵姿などとてつもない危険域に生息する変態と思わせておいてのギャップ萌え。
さすがは策士、隣国も舌を巻く軍師様でございます。
ならばこちらも‥‥と素っ気ないふりで先に寝室に向けて歩いていきます。
「あぁっ!エトランゼ!おいて行かないでくれっ!」
ほら?小さな子が玩具を買ってくれと転がって駄々をこねるのと同じです。
突き放してしまえば、向こうから寄ってくるのです。
幼いいとこ達でわたくしも学習済みでございますよ?
しかし、全てが悪手でございました。
だって、寝室に入った途端、背後から抱えあげられて寝台に倒されてしまったわたくしは驚愕したのです。
【いつの間にお召し物をお脱ぎになったのです?!】
全裸のアルベルト様の瞳には形勢逆転で怯えるわたくしが映っておりましたもの。
しかし、先程から髪を撫でながらもスンスンと首の後ろや髪の至る部分、時折肩なども匂われている気がしてなりません。
「アルベルト様、何をされているのです」
「堪能」
「は?‥‥」
「至近距離での香りなんて…夢のようだ」
――間違いなく、現実ですけれどね――
「アルベルト様、荷物の事は明日以降で構いません」
「荷物?もう父上が頼んだ業者が搬入したはずだ。オールお任せコースだっただろう」
「いえ、あの絵姿やら隠蔽されている感、満載の他の荷物です」
「違うぞ。エトランゼは勘違いも可愛くて悶えそうだがあれは荷物ではない」
「では何だと仰るのです?」
「一言で言うならば、癒しだ」
――わたくしには、穢しですけどね――
「その件は明日、ゆっくりとお話いたしましょう」
「本当?僕と話をしてくれるのか?!…」
どうしたのでしょうか。突然、感極まったような表情をされた後、涙ぐんでおられます。夫婦が会話をしなくなった時は離縁の危機でございますよ?
ほろりと零れて頬を伝う涙を思わず、はしたないと思いつつ袖に吸わせると
「フォォォ!そんな事‥‥現人神となれば僕を煽るのか!試すのかっ!」
「いえ、煽ったりはしてい…ンギャッ!」
く、苦しい‥‥この突然首でないのが救いですが、上腕二頭筋で締めあげるようなスリーパーホールドを何度も決められると少々屈辱でございます。
ですが、アルベルト様は騎士。少々体力があったところでわたくしが敵うはずが御座いません。
タップを致しますが、タップをする部位はお背中。
何かを間違いなく勘違いされておられます。雄叫びのような声をあげられて益々絞めあがります。
「ア”…ア”ル”ベル”ド…ザマ・・・」
「何だい‥‥あっ…すまない…嬉しさと喜びの余り加減が出来なかった!」
おそらくは、また肺の空気が全部抜かれてしまったのでしょう。
いい加減垂直直滑降な胸元に角度を感じません。呼吸を整えましょう。
「アルベルト様、ここではなんですのでお部屋に参りましょう」
「わかった。運べばいいのか」
えっ?あの絵姿を運ぶというのですか?あ、違うのですね。運ぶのはわたくし‥‥わたくし?
両手を広げて、さぁ!と満面の笑みで促されても、戻る部屋はすぐそこです。歩けます。
「いえ、担がれなくても構いません」
「何を言ってるんだ。担ぐのではなく先刻倒れた時のように横抱きだ」
真顔で言われるとそれが正解のように感じます。しかしそれは間違い。
歩けるうちは歩かないと、筋力の衰えは家族を介護崩壊させるのです。
「それは今は結構ですので、まずはお部屋に。使用人にも聞かれてしまいます」
「何を言っている。使用人などこの時間にいるはずがないだろう」
――いるはずがない?いえ、いるはずですよね?――
不穏な発言に思わず、アルベルト様のお顔を直視致しますと、
「ヒョウワッ!‥‥そんな目で…僕を見ないでくれ…」
顔を手で隠されて、その場に跪いてしまわれます。
正直申しますと数々のこの現象に【_| ̄|○】と床伏せたいのはわたくしの方です。
しかし使用人さんがいないのであればここで言っても問題はないでしょう。
「アルベルト様、今夜はよろしくお願いいたします」
「どういう事?これからどこか行くのか?」
「いいえ?初夜でございます。限界ラヴァーのSH〇W-YAでは御座いませんのでお間違いなきよう」
「初夜‥‥初夜‥‥初夜っ?!」
――どこに驚くところがありました?昼間、教会で結婚式でしたよね?――
実技は未経験ですので初体験で御座いますが、貴族の娘とあれば座学だけはきっちりと、それはもう入念にご年配の未亡人となられた講師陣から教え込まれます。叩きこまれると言った方が適切でしょうか。
数回すれば慣れて痛みも取れると聞き、出来れば早めにそうなりたいと思うのは我儘ではない筈です。
それにその数回のうちに子を授かる事が出来れば大好きな本をゆっくり読む時間も出来るでしょう。
その間に、手などを使って殿方を悦ばせる知識も座学ですが学んでおります。
わたくしも出来れば子供は自分の子だけを育てたいのです。
出来るだけ、外に女性を作る事はやめて頂きたいですし、その方との子を押し付けられるのも回避したいと思うのです。お父様はお母様1人だけでしたが、友人には異母の弟妹が両手の数以上と言うものもおりますしね。
しゃがみ込んで、お尻を振り振りとしながら顔を覆っているアルベルト様を促して寝室に誘います。
恥ずかしいのですよ?何度も寝室に誘うなどこちらが顔から火が出そうです。
騎士の方は経験が豊富だとお聞きしましたが、もしやこれが【前戯】というもので女性をその気にさせる殿方のテクニックなのかも知れません。
講義の先生も仰っておりました。【誘い方や愛し方は人それぞれ】だと!
だとすれば、子供がイヤイヤをするようで可愛いものではありませんか。
国一番の騎士であるアルベルト様はこうやって女性を誘うのですね。
そう考えれば、先程の絵姿などとてつもない危険域に生息する変態と思わせておいてのギャップ萌え。
さすがは策士、隣国も舌を巻く軍師様でございます。
ならばこちらも‥‥と素っ気ないふりで先に寝室に向けて歩いていきます。
「あぁっ!エトランゼ!おいて行かないでくれっ!」
ほら?小さな子が玩具を買ってくれと転がって駄々をこねるのと同じです。
突き放してしまえば、向こうから寄ってくるのです。
幼いいとこ達でわたくしも学習済みでございますよ?
しかし、全てが悪手でございました。
だって、寝室に入った途端、背後から抱えあげられて寝台に倒されてしまったわたくしは驚愕したのです。
【いつの間にお召し物をお脱ぎになったのです?!】
全裸のアルベルト様の瞳には形勢逆転で怯えるわたくしが映っておりましたもの。
168
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
禁断の関係かもしれないが、それが?
しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。
公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。
そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。
カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。
しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。
兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
後妻の条件を出したら……
しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。
格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。
だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。
しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
婚約者と王の座を捨てて、真実の愛を選んだ僕の結果
もふっとしたクリームパン
恋愛
タイトル通り、婚約者と王位を捨てた元第一王子様が過去と今を語る話です。ざまぁされる側のお話なので、明るい話ではありません。*書きたいとこだけ書いた小説なので、世界観などの設定はふんわりしてます。*文章の追加や修正を適時行います。*カクヨム様にも投稿しています。*本編十四話(幕間四話)+登場人物紹介+オマケ(四話:ざまぁする側の話)、で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる