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VOL.10 サシャリィ、片付ける
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側付侍女のシェリーが筆頭になり、サシャリィの部屋は使用人でごった返していた。
「それは寄付の箱へ。あっと!待ってそれは金属を取り外して木材の箱と屑鉄の箱よ」
「シェリーさん。ドレスは殆ど片付きましたが普段使いの衣類をお願いします」
「普段使い?そんな物あったかしら?」
「購入は旦那様ですが、お色が…」
何をしているかと言えば婚約中の16年間でレオンやルーベス侯爵家から贈られた品、レオンをモチーフにして購入した品を片付けているのだ。レオンの事が好きだったサシャリィはそれまでリボンや靴の中敷きに至るまで色々な物を贈られていたし、レオンの色を取り入れた品を所有していた。
その品を処分するために片付けているのだ。
慰謝料は直ぐに支払われ、これまでに贈った品は自由にしていいと添え書きがあった。
一旦贈った物を突き返されてもルーベス侯爵家も処分に困るからだろう。
どちらかの家が金銭的に困窮し、支援を求めて婚約をしたのでもなく贈り物に付いては「侯爵家」からだという事を誇示するような金額が付けられていただろうと思われる品が多く、ヒカリモノは小さな宝飾品に至るまでイミテーションは1つもなかった。
片付けてしまえばサシャリィの部屋は笑ってしまうほど広さが出来た。
カーテンも壁に掛けてあった絵画も全て贈られたもの。
腰までの高さがあるチェストも取っ手の金具はレオンが選んだものと言うだけで入れ替えになった。
「わぁ…なにも無くなったわね。広さが倍増?」
「お嬢様、何を仰ってるんです。午後から家具屋が来ますので忙しくなりますよ」
「もうこのままでいいわよ。この広さを見たら物を置くのが勿体ないわ」
チェストを設置していた場所にはもう壁紙を張って家具は不要とサシャリィが言い出した。年齢的には19歳だし本来ならもう来年には嫁いで伯爵家から出る事も決まっていた。
今更物を買って増やしても、兄が妻を迎えれば自分がお邪魔虫になる。
そんな思惑も言葉の中に感じられた。
「そう言えば郊外になるんですが、海の向こうの国から絨毯や壁紙を仕入れて販売する商会が店舗を構えたようですよ?今日の事にはならないと思いますが奥様に聞いてみて…行ってみますか?」
「へぇー。海の向こうの?」
「2週間ほど前にオープンしたんですよ。でも輸送費がかかるからか良いお値段が付いてて、見に来る客は多いようですけど、繁盛しているかは判らないです」
サシャリィは心機一転でそれまでとは違う空間も面白そうだと感じた。
その日の夜。両親と夕食の際に切り出したサシャリィは気分転換にもなるだろうと外出の許可がもぎ取る事が出来た。
☆~☆
4日後、サシャリィはシェリーともう1人侍女を連れて郊外にある新しいものを扱う商会に出向いた。
確かに目新しい物で、今まで目にしてきたデザインとは全く異なる幾何学的な模様の絨毯やカラフルな壁紙。家具も扱っていたが収納のようで四方に飾り付けがされていて何処に使うのか考えるような品。
「確かに…見るには楽しいかも知れないわね。実用的にと考えると…」
シェリーは購入するかは別で品を見に来るものは多いと言っていたがまさにその通り。面白いなと思っても、使えるかとなれば首を傾げるし、絨毯や壁紙は見て楽しいが目が回りそうだ。
何も買わずに店を出るのも憚られると小ぶりの絨毯を3つ購入し屋敷に届けて貰うように手配をして店を出た。
ゴロロ‥‥ゴロゴロ‥‥。
来た時は青空が広がっていた空に重たい雲が広がり雷の音が頭の上なのに足元から地鳴りのように聞こえてくる。
「雨が降りそうですね。急いで帰りましょう」
「そうね。この雲の色なら土砂降りになりそうだわ」
サシャリィたちは急いで馬車に駆け込むと、扉に付いた窓にポツポツと雨粒が横に走った。
「雨ですね」シェリーがその短い言葉を言い終わるか。本当に一瞬だった。
ドォーン!!!「キャァァ!!」
空が光ると同時に近くに落雷の大きな音と共に、前が見えないほどの雨が空から一気に落ちてきた。まだ馬車は動いていないが、店の看板も見えないくらいの大雨。
御者は雨が降りそうだと雲を見てサシャリィたちが店にいる間に雨具を羽織り、馬にも雨除けのカバーを背に装着させていたが、とても走らせる事が出来ない。
見る間に石畳にも雨が川のようになって流れ始めた。
が…10分も経てば嘘のように雨が止み、もう10分もすれば空には青空が広がった。
激しい通り雨のようなものだと御者は馬に鞭を入れて馬車を動かし始めた。
「それは寄付の箱へ。あっと!待ってそれは金属を取り外して木材の箱と屑鉄の箱よ」
「シェリーさん。ドレスは殆ど片付きましたが普段使いの衣類をお願いします」
「普段使い?そんな物あったかしら?」
「購入は旦那様ですが、お色が…」
何をしているかと言えば婚約中の16年間でレオンやルーベス侯爵家から贈られた品、レオンをモチーフにして購入した品を片付けているのだ。レオンの事が好きだったサシャリィはそれまでリボンや靴の中敷きに至るまで色々な物を贈られていたし、レオンの色を取り入れた品を所有していた。
その品を処分するために片付けているのだ。
慰謝料は直ぐに支払われ、これまでに贈った品は自由にしていいと添え書きがあった。
一旦贈った物を突き返されてもルーベス侯爵家も処分に困るからだろう。
どちらかの家が金銭的に困窮し、支援を求めて婚約をしたのでもなく贈り物に付いては「侯爵家」からだという事を誇示するような金額が付けられていただろうと思われる品が多く、ヒカリモノは小さな宝飾品に至るまでイミテーションは1つもなかった。
片付けてしまえばサシャリィの部屋は笑ってしまうほど広さが出来た。
カーテンも壁に掛けてあった絵画も全て贈られたもの。
腰までの高さがあるチェストも取っ手の金具はレオンが選んだものと言うだけで入れ替えになった。
「わぁ…なにも無くなったわね。広さが倍増?」
「お嬢様、何を仰ってるんです。午後から家具屋が来ますので忙しくなりますよ」
「もうこのままでいいわよ。この広さを見たら物を置くのが勿体ないわ」
チェストを設置していた場所にはもう壁紙を張って家具は不要とサシャリィが言い出した。年齢的には19歳だし本来ならもう来年には嫁いで伯爵家から出る事も決まっていた。
今更物を買って増やしても、兄が妻を迎えれば自分がお邪魔虫になる。
そんな思惑も言葉の中に感じられた。
「そう言えば郊外になるんですが、海の向こうの国から絨毯や壁紙を仕入れて販売する商会が店舗を構えたようですよ?今日の事にはならないと思いますが奥様に聞いてみて…行ってみますか?」
「へぇー。海の向こうの?」
「2週間ほど前にオープンしたんですよ。でも輸送費がかかるからか良いお値段が付いてて、見に来る客は多いようですけど、繁盛しているかは判らないです」
サシャリィは心機一転でそれまでとは違う空間も面白そうだと感じた。
その日の夜。両親と夕食の際に切り出したサシャリィは気分転換にもなるだろうと外出の許可がもぎ取る事が出来た。
☆~☆
4日後、サシャリィはシェリーともう1人侍女を連れて郊外にある新しいものを扱う商会に出向いた。
確かに目新しい物で、今まで目にしてきたデザインとは全く異なる幾何学的な模様の絨毯やカラフルな壁紙。家具も扱っていたが収納のようで四方に飾り付けがされていて何処に使うのか考えるような品。
「確かに…見るには楽しいかも知れないわね。実用的にと考えると…」
シェリーは購入するかは別で品を見に来るものは多いと言っていたがまさにその通り。面白いなと思っても、使えるかとなれば首を傾げるし、絨毯や壁紙は見て楽しいが目が回りそうだ。
何も買わずに店を出るのも憚られると小ぶりの絨毯を3つ購入し屋敷に届けて貰うように手配をして店を出た。
ゴロロ‥‥ゴロゴロ‥‥。
来た時は青空が広がっていた空に重たい雲が広がり雷の音が頭の上なのに足元から地鳴りのように聞こえてくる。
「雨が降りそうですね。急いで帰りましょう」
「そうね。この雲の色なら土砂降りになりそうだわ」
サシャリィたちは急いで馬車に駆け込むと、扉に付いた窓にポツポツと雨粒が横に走った。
「雨ですね」シェリーがその短い言葉を言い終わるか。本当に一瞬だった。
ドォーン!!!「キャァァ!!」
空が光ると同時に近くに落雷の大きな音と共に、前が見えないほどの雨が空から一気に落ちてきた。まだ馬車は動いていないが、店の看板も見えないくらいの大雨。
御者は雨が降りそうだと雲を見てサシャリィたちが店にいる間に雨具を羽織り、馬にも雨除けのカバーを背に装着させていたが、とても走らせる事が出来ない。
見る間に石畳にも雨が川のようになって流れ始めた。
が…10分も経てば嘘のように雨が止み、もう10分もすれば空には青空が広がった。
激しい通り雨のようなものだと御者は馬に鞭を入れて馬車を動かし始めた。
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