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VOL.9 充実のエマ、全力の笑顔
エマはいつも通り辻馬車を使い、居候をしている屋敷に戻った。
責められるかと思ったのだが、屋敷の中はいつも通りだった。
違ったと言えばアンジー夫婦が留守であることだけで、使用人は帰宅したエマに夕食の時間を告げた。
――なんだ、心配したけど損しちゃった――
軽い足取りで与えられた部屋に入る。
ゆっくりと住み慣れた部屋を見回すと、「ふふっ」声が漏れた。
――まるでお伽噺のお姫様みたいだわ――
記憶にある一番古い家はもう鮮明には思い出せないが、いつも暗くて汚れた灰色の壁があった。そこで殴られる母親。それは鮮明だったが、他の事はあまり思い出せない。
領主の義父ジェームズと母が結婚して専用の部屋が与えられた。
最初は母親と一緒だったが、7歳、8歳だっただろうか。部屋を貰ったのだ。
『なんでも好きにしていいんだよ?壁紙から選ぼうか』
ジェームズは色取り取りの模様が入った本を開いてエマに壁紙を選ばせた。
飽きれば別の壁紙に張り替えてくれた。
田舎なので夜会などはなかったが、最新のワンピースを着ているのはいつもエマでジェームズは強請れば月に2、3着のワンピースを買ってくれた。
付近にいる女の子の中で一番のお洒落をしているのはエマだったし、男の子に一番人気があるのもエマだった。
田舎にいる時は、ここで幼馴染の誰かと結婚をして子供を産んで死んでいくのだろうと考えていた。そこ以外を知らなかったエマにはそれ以上の欲も無かったし納得をしていた。
「でも‥‥王都に来た時はこの部屋も凄いなって思ったけど…きゃっ♡侯爵夫人だなんてぇ~」
寝台に横たわり、枕をレオンに見立てて抱きしめ転がった。2回転目をすると寝台から落ちてしまうので何度も往復し体を転ばせた。
だが、ふっと動きを止めた。
「わっすれてた!大変っ!」
あと3カ月もすれば学園を卒業するのだ。今は最終試験を待つ時期。
登校そのものはもう自由登校にはなっているが、最終試験は3年間の集大成とも言えて今までの試験のように出題される範囲が限定はされていない。
学んだ事の中から出されるため、前の2学年を復習しておかねば最後の最後で順位を落としてしまう。
「最後で何とか20位以内に入ればジェームズ叔父さんも養子縁組をしてくれるわ。そうすれば伯爵令嬢だもの。レオンに嘘を言った事にならないように頑張らなくっちゃ」
自学をしていると侍女が夕食だと呼びに来た事でもう夕刻になったのだと窓の外を見た。
「おば様はもう?」
「旦那様も奥様も食堂でお待ちで御座います」
「わっ。待たせちゃったのね。直ぐに行きます」
食堂までの廊下でエマはもしかするとアンジーにはもう話が聞こえているかも知れないと緊張をしていた。だが、それも杞憂に終わる。
アンジーもその夫も夕食の最中はいつもと同じで何を聞かれる事も、何を咎められる事も無かった。
――サシャリィは何も言ってないのかしら?だとしたらまだ婚約中?――
2人の様子を伺いながら口に入れる食事は味がしなかったが、貴族の婚約は一両日中にどうにか出来るものでもないのかも知れないとエマは自分で自分を納得させた。
――そう、私はレオンが来るのを待っていればいいの――
翌日も、その翌日もアンジー夫婦がエマに何かを問う事はない。
問うとすれば、自由登校である今、どこかに出掛けるのなら行き先と帰宅時間を侍女に伝えておくようにといういつもと同じの言葉だけだった。
そんな日を10日、いや11日目だっただろうか。
朝食を終えたエマの耳に「これから出かける」と使用人に告げたアンジーが続けて言葉をかけた。
「エマさん?試験勉強をしているの?」
「はいっ!最終試験なんです。集大成って感じで」
「そう。困っている事はない?」
「ないです!全て順調で。今までで一番充実しているかも知れません」
「良かったわね」
エマはアンジーの問いかけに全力の笑顔で答えた。
責められるかと思ったのだが、屋敷の中はいつも通りだった。
違ったと言えばアンジー夫婦が留守であることだけで、使用人は帰宅したエマに夕食の時間を告げた。
――なんだ、心配したけど損しちゃった――
軽い足取りで与えられた部屋に入る。
ゆっくりと住み慣れた部屋を見回すと、「ふふっ」声が漏れた。
――まるでお伽噺のお姫様みたいだわ――
記憶にある一番古い家はもう鮮明には思い出せないが、いつも暗くて汚れた灰色の壁があった。そこで殴られる母親。それは鮮明だったが、他の事はあまり思い出せない。
領主の義父ジェームズと母が結婚して専用の部屋が与えられた。
最初は母親と一緒だったが、7歳、8歳だっただろうか。部屋を貰ったのだ。
『なんでも好きにしていいんだよ?壁紙から選ぼうか』
ジェームズは色取り取りの模様が入った本を開いてエマに壁紙を選ばせた。
飽きれば別の壁紙に張り替えてくれた。
田舎なので夜会などはなかったが、最新のワンピースを着ているのはいつもエマでジェームズは強請れば月に2、3着のワンピースを買ってくれた。
付近にいる女の子の中で一番のお洒落をしているのはエマだったし、男の子に一番人気があるのもエマだった。
田舎にいる時は、ここで幼馴染の誰かと結婚をして子供を産んで死んでいくのだろうと考えていた。そこ以外を知らなかったエマにはそれ以上の欲も無かったし納得をしていた。
「でも‥‥王都に来た時はこの部屋も凄いなって思ったけど…きゃっ♡侯爵夫人だなんてぇ~」
寝台に横たわり、枕をレオンに見立てて抱きしめ転がった。2回転目をすると寝台から落ちてしまうので何度も往復し体を転ばせた。
だが、ふっと動きを止めた。
「わっすれてた!大変っ!」
あと3カ月もすれば学園を卒業するのだ。今は最終試験を待つ時期。
登校そのものはもう自由登校にはなっているが、最終試験は3年間の集大成とも言えて今までの試験のように出題される範囲が限定はされていない。
学んだ事の中から出されるため、前の2学年を復習しておかねば最後の最後で順位を落としてしまう。
「最後で何とか20位以内に入ればジェームズ叔父さんも養子縁組をしてくれるわ。そうすれば伯爵令嬢だもの。レオンに嘘を言った事にならないように頑張らなくっちゃ」
自学をしていると侍女が夕食だと呼びに来た事でもう夕刻になったのだと窓の外を見た。
「おば様はもう?」
「旦那様も奥様も食堂でお待ちで御座います」
「わっ。待たせちゃったのね。直ぐに行きます」
食堂までの廊下でエマはもしかするとアンジーにはもう話が聞こえているかも知れないと緊張をしていた。だが、それも杞憂に終わる。
アンジーもその夫も夕食の最中はいつもと同じで何を聞かれる事も、何を咎められる事も無かった。
――サシャリィは何も言ってないのかしら?だとしたらまだ婚約中?――
2人の様子を伺いながら口に入れる食事は味がしなかったが、貴族の婚約は一両日中にどうにか出来るものでもないのかも知れないとエマは自分で自分を納得させた。
――そう、私はレオンが来るのを待っていればいいの――
翌日も、その翌日もアンジー夫婦がエマに何かを問う事はない。
問うとすれば、自由登校である今、どこかに出掛けるのなら行き先と帰宅時間を侍女に伝えておくようにといういつもと同じの言葉だけだった。
そんな日を10日、いや11日目だっただろうか。
朝食を終えたエマの耳に「これから出かける」と使用人に告げたアンジーが続けて言葉をかけた。
「エマさん?試験勉強をしているの?」
「はいっ!最終試験なんです。集大成って感じで」
「そう。困っている事はない?」
「ないです!全て順調で。今までで一番充実しているかも知れません」
「良かったわね」
エマはアンジーの問いかけに全力の笑顔で答えた。
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