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VOL.21 太鼓持ちも見限る
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「ハァー。やっと終わったァ」
「疲れましたわぁ。劇が終わって2時間。おしゃべりに付き合うのがこんなに苦痛だなんて」
集まった8人のうち、面識のない3人は居心地も悪そうに早々にその場を後にすると、残った5人は今後について話をし始めた。
侯爵夫人とのおしゃべりは苦痛でも仲間内のおしゃべりには花が咲く。
「次の観劇。どうされます?憂鬱ですわ」
「わたくしは不参加。3カ月後でしょう?即位されて一番先に視察するのが当家の領地ですもの。観劇どころか来月の茶会も無理ですわ。そんな暇は御座いませんもの」
「わたくしも。その視察の2番目の宿泊地が領地ですもの。整備などもありますし実のところ、今日のこの観劇も夫に散々嫌味を言われましたのよ?わたくしだって断れるならそうしていますわ」
「今回不参加の方が出席すればいいのよ。それよりもわたくし、この会を抜けさせて頂くの」
「えっ?!ズルいですわ。どうやって抜けますの?!」
「メドル公爵夫人のお茶会に出席した時に、あちらの会に入れて頂く事が出来ましたの。夫からもルーベス侯爵家との付き合いは見合わせるようにと再三再四。もう何度喧嘩になった事か」
「だいたい考えが古いのよ。お聞きになりまして?第5騎士団への賄賂の件」
「知らない方がいらっしゃるの?新体制になれば騎士団は一本化されて第1も第5も無く、軍隊になるのに賄賂で息子を第5で居候させておられますでしょ?」
「今までのままが続くならあのご子息にも裏から金を回していれば良かったけれど、もうそんな時代では無くなりますものね。塹壕掘りにでもするおつもりなのかしら?それはそうと侯爵夫人の下のお兄様、お聞きになりまして?」
「あの散財で有名な放蕩息子?50を前に当主のお兄様に放逐されたと聞きましたわ」
「それだけじゃなく、子息のレオンでしたっけ?話を耳にして夫人にも支援するなら縁を切ると言ったそうよ」
「侯爵夫人のお兄様は頑固ですものね。ご実家は立派なのにねぇ」
「長く夫婦でいると感染するんじゃありませんの?ルーベス侯爵も先代様が前国王陛下に補佐で良いからとごり押ししての宰相補佐で御座いましょう?昔馴染の息子だからと温情を掛けて担当にしたばかりにあの事業も3歩進んで2歩下がるの繰り返し。どれだけ迷惑を掛けられたことか」
「くくっ!思い出しましたわ。その息子。侯爵に弁明する際にアガントス伯爵家のご令嬢の事は力不足と叫んだそうよ?」
「やだ…力不足なのはルーベス侯爵じゃない。父親と元婚約者を見間違ったのかしら?」
「結局のところ、足元である家の事も出来てなかったって事でしょう?そんな男が国の事業なんて。結果的に名前だけはルーベス侯爵で実務は他の方が片付けられましたものね」
「新体制は実力主義の上に、民間からの登用も始まりますものね。真っ先にコレではなくて?」
「皆さま、触らぬ神に祟りなしですわ。次回は茶会も観劇も…」
<< 欠席で >>
ルーベス侯爵夫人の願った「結束」は侯爵夫人を抜きにすれば固い御夫人方。
彼女たちもまたそれぞれの家の当主夫人であり、家を揺るがすような事由はどんな些細な事でも回避し、家の為になる、ひいては己の生活を守るためにはそれまでの縁もバッサリ切って世を渡り歩かねばならない。
新体制で変わるのは貴族の結婚の在り方だけではなく、「透明性」が要求される。貴族として隠してきた闇の部分も今まで以上に広く民衆には周知をされる事になる。
貴族が考えている以上に民衆は「感情」で動く。
形振り構わずではなく、恩を受ければ感謝を返し、困っていれば無償で手を差し出す。
権力や金がない分、信用と信頼で民衆は深く、固く結びついている。
貴族が己を律し、意図しない婚姻で血を繋いできた意味は理解をしている。
だが時代は何時までも同じところに留まってはいない。
民衆こそ、国という1つの枠ではなく他国も含めて世界の流れを読んでいる。
もう「誰かを人身御供」にしなくても回ることを知った。
だからこそ子供の意向を無視した親の利権による婚約は見直しをされるし、民衆が汗水流し食べる物も節約して納めた税で不正をしたり、税を貪っていればどうなるのか。それらを幇助したと見なされれば、どんなしっぺ返しを食らうのか。
大局を見る時期は終わり、誰もが地盤固めに動く時期。
取り巻きの夫人たちはルーベス侯爵夫人とは袂を分かつ事を決め家路についた。
「疲れましたわぁ。劇が終わって2時間。おしゃべりに付き合うのがこんなに苦痛だなんて」
集まった8人のうち、面識のない3人は居心地も悪そうに早々にその場を後にすると、残った5人は今後について話をし始めた。
侯爵夫人とのおしゃべりは苦痛でも仲間内のおしゃべりには花が咲く。
「次の観劇。どうされます?憂鬱ですわ」
「わたくしは不参加。3カ月後でしょう?即位されて一番先に視察するのが当家の領地ですもの。観劇どころか来月の茶会も無理ですわ。そんな暇は御座いませんもの」
「わたくしも。その視察の2番目の宿泊地が領地ですもの。整備などもありますし実のところ、今日のこの観劇も夫に散々嫌味を言われましたのよ?わたくしだって断れるならそうしていますわ」
「今回不参加の方が出席すればいいのよ。それよりもわたくし、この会を抜けさせて頂くの」
「えっ?!ズルいですわ。どうやって抜けますの?!」
「メドル公爵夫人のお茶会に出席した時に、あちらの会に入れて頂く事が出来ましたの。夫からもルーベス侯爵家との付き合いは見合わせるようにと再三再四。もう何度喧嘩になった事か」
「だいたい考えが古いのよ。お聞きになりまして?第5騎士団への賄賂の件」
「知らない方がいらっしゃるの?新体制になれば騎士団は一本化されて第1も第5も無く、軍隊になるのに賄賂で息子を第5で居候させておられますでしょ?」
「今までのままが続くならあのご子息にも裏から金を回していれば良かったけれど、もうそんな時代では無くなりますものね。塹壕掘りにでもするおつもりなのかしら?それはそうと侯爵夫人の下のお兄様、お聞きになりまして?」
「あの散財で有名な放蕩息子?50を前に当主のお兄様に放逐されたと聞きましたわ」
「それだけじゃなく、子息のレオンでしたっけ?話を耳にして夫人にも支援するなら縁を切ると言ったそうよ」
「侯爵夫人のお兄様は頑固ですものね。ご実家は立派なのにねぇ」
「長く夫婦でいると感染するんじゃありませんの?ルーベス侯爵も先代様が前国王陛下に補佐で良いからとごり押ししての宰相補佐で御座いましょう?昔馴染の息子だからと温情を掛けて担当にしたばかりにあの事業も3歩進んで2歩下がるの繰り返し。どれだけ迷惑を掛けられたことか」
「くくっ!思い出しましたわ。その息子。侯爵に弁明する際にアガントス伯爵家のご令嬢の事は力不足と叫んだそうよ?」
「やだ…力不足なのはルーベス侯爵じゃない。父親と元婚約者を見間違ったのかしら?」
「結局のところ、足元である家の事も出来てなかったって事でしょう?そんな男が国の事業なんて。結果的に名前だけはルーベス侯爵で実務は他の方が片付けられましたものね」
「新体制は実力主義の上に、民間からの登用も始まりますものね。真っ先にコレではなくて?」
「皆さま、触らぬ神に祟りなしですわ。次回は茶会も観劇も…」
<< 欠席で >>
ルーベス侯爵夫人の願った「結束」は侯爵夫人を抜きにすれば固い御夫人方。
彼女たちもまたそれぞれの家の当主夫人であり、家を揺るがすような事由はどんな些細な事でも回避し、家の為になる、ひいては己の生活を守るためにはそれまでの縁もバッサリ切って世を渡り歩かねばならない。
新体制で変わるのは貴族の結婚の在り方だけではなく、「透明性」が要求される。貴族として隠してきた闇の部分も今まで以上に広く民衆には周知をされる事になる。
貴族が考えている以上に民衆は「感情」で動く。
形振り構わずではなく、恩を受ければ感謝を返し、困っていれば無償で手を差し出す。
権力や金がない分、信用と信頼で民衆は深く、固く結びついている。
貴族が己を律し、意図しない婚姻で血を繋いできた意味は理解をしている。
だが時代は何時までも同じところに留まってはいない。
民衆こそ、国という1つの枠ではなく他国も含めて世界の流れを読んでいる。
もう「誰かを人身御供」にしなくても回ることを知った。
だからこそ子供の意向を無視した親の利権による婚約は見直しをされるし、民衆が汗水流し食べる物も節約して納めた税で不正をしたり、税を貪っていればどうなるのか。それらを幇助したと見なされれば、どんなしっぺ返しを食らうのか。
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