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王家の証って…
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「いくら帝国とはいえ、これでは内政干渉!酷すぎませんか」
国王は両手を文官という名の武官に後ろ手で教えられながらもグラディアスに吠えた。
ディレイドは国王の耳元で囁く。
「やめておいた方がいいよ?傷は浅いうちに引く。鉄則だよ?」
「傷が浅いだと?好き勝手しているのは帝国だろう!この国の教育についてまで口を出す権利が何処にある!」
「あ~…言っちゃった。知らないからね?」
ディレイドは数歩歩いて開いている椅子に逆向きに座り背もたれに腕を乗せてその上に頬を乗せる。
座りながらに首を傾げてグラディアスに手で「どうぞ」と指し示す。
「では、そこの愚息に聞いてみるとするか」
一斉にシリウスに視線が集まり、たじろいてしまう。
だが当然逃げられるはずはない。
「さて。昨日こちらが譲歩をするという形で宿題を持ち帰っておるであろう」
「そ、その件は…」
「どうしたんだ。シリウス」
「こ、この2人が責任者で…私は関知する所ではなく…」
「では、その2人か。責任者という事で話を聞きたいが」
シリウスはチラチラと次官2人の顔を見ているが、諦めたような顔に責任を取ってくれるのだと感じた。次官の2人は一歩前に出て一礼をした後、グラディアスを真っ直ぐに見て口を開いた。
「内政干渉という点では、シュバイツ王国に非が御座います」
「条約を締結するにあたり迂回路の3割に当たる部分は帝国で皇位継承権62番目を持たれているモスベル侯爵の所有する地であり、50年前まで国防の要であった砦がございました。シュバイツ王国側がその地を指定し、砦は解体をされましたが帝国側の国防について干渉をした事は間違い御座いません。修復し砦として機能させるという案は帝国側で議論をされていたのをシュバイツ王国の事情で譲歩頂いたのです」
「ただ現在もモスベル侯爵の所有している地については帝国議会、シュバイツ王国、メリル―プ神国からそれぞれ使用料が支払われる事になっておりましたがここ半年はシュバイツ王国は土地を無断占拠している状態でもあります。内政干渉どころか侵攻と思われてもなんら不思議ではありません。他国の土地への無断侵入に開発状態を何も言わずにいて下さったのは、アナスタシア様が所有者である侯爵様にもし、支払いが滞る事になっても条約更新時まで待って欲しいと頼まれていたからです」
「そんな事は!儂は知らん!初めて聞いたぞ!」
「いいえ、条約締結後に両陛下のサイン並びに確認の王印は頂いております。また締結の条件48番の24にこの件は記載をされております。内容は違えど帝国側に内政干渉というのであれば、既に半年以上他国の地へ違法に開発を進めているシュバイツ王国も内政干渉。しかも国防に関しての干渉となります」
「そんな…シリウスッ!どうなっているのだ」
「私は責任者じゃありません!」
「ほぅ?ではこの次官2人が責任者と考えても良いという事だな?」
「そうです!その2人が責任者なんです」
「相判った。では2人に聞こう。この条約。基本合意についてシュバイツ王国に総じて虚偽があり、ひいては国防の要である砦を解体させる意図があってのものだったと受け取っても良いという事か?」
グラディアスが次官2人に問いかけると、割り込むように国王が声をあげる。
「そんなっ!そんなつもりはありませんっ」
「うぬに聞いてはおらぬ!責任者であるこの2人に問うておるのだ!」
次官2人は顔を見合わせ、目線で会話をすると小さく頷いた。
「その通りです。砦がなくなれば国防については大きく後退。それを狙ったものとお考えになられても否定するだけの材料は持ち合わせておりません」
真っ青になる国王はもう言葉を発する事が出来なくなった。この2人を責任者と言ったシリウスを睨みつけるがシリウスは内容が理解できていないようで、立場を逃げられた事から笑みさえ見せている。
目の前には、口角をあげてこちらを見ている皇帝グラディアス。
「愚王。内政干渉とほざくのも結構。そのついでに面白いものを見せてやろう」
グラディアスが指でクイクイと指示をするとロザリアが背を押され1歩、2歩と近づいてくる。刺された肩を庇いつつも目線はディレイドに向けられていて何かを訴えているかのようだった。
「さて、こちらのお嬢さんがお前たちに言いたい事があるそうだ。耳の中の骨は人体で一番小さな骨だそうだが粉砕されれば【音】は聞こえなくなる。静寂の世界の扉を開く前に、この令嬢の囀りを聞かせてやろう」
「ロ。ロザリア‥‥お前何をしたんだ?」
シリウスがロザリアに問うも、ロザリアは顔ごとディレイドに向けておりシリウスのほうを見向きもしない。声すら聞こえているかどうかも判らない。
「ロザリア。お喋りしてあげなよ」
「えっ?‥‥ここで?…無理よ…そんなの無理だわ」
「へぇ、じゃこれはもういらないか」
小さな小瓶を指で挟んでロザリアに見せる。中の液体を瓶を逆さにしたりでチャプチャプと動かしディレイドは小瓶を弄んだ。
「先ずさぁ…流産の騒動って誰が起こしたのかな?」
「・・・・・」
「あれ?おかしいな?」
ディレイドは小瓶の蓋を開ける。ゆっくり傾け数滴が床に落ちた。
ロザリアは顔を引きつらせた。
「わたくしっ!全部わたくしなの!侍女に成りすましてアナスタシア様の宮に行って、毒をまぶした菓子を渡して、わざと流産したの!」
「なんだって!ロザリアッ!それは本当なのかッ!」
驚きすぎて思わずロザリアに掴みかかりそうになるシリウスを武官が力で制止する。
国王は目を丸くし、王妃は「どうして」と呟いた。
「でも、それで侍女は一人死んじゃうし、アナスタシア様も…ね?」
「違うの!ちょっと叱られるだけだと思ったのよ!侍女も自殺するなんて思わなかったし…アナスタシア様も幽閉されて‥‥でもっ!まだ生きてるじゃない!西の塔で!」
「なっ!何を言うんだ!ロザリアっ!」
「知ってるわ!シリウス殿下っあなたが会いに行ってることもっ!」
「誠か!シリウスっ!」
「答えなさい!幽閉後は毒杯をと…あれは嘘だったの?そう言えば運び出し前の確認も…騎士の名前だけで…あなたは王と王妃であるわたくし達を謀ったの!?」
詰め寄ってくる王と王妃にシリウスは答える事が出来ない。
生かしておくために食事や水を運ぶ兵すら厳選し少人数でやらせていたのだ。
パンパンとディレイドは手を打った。
「はいはい、それだけじゃないよね?一番大事な事忘れてるよね?」
「そっそれは…」
「言わないと。なんで自作自演で毒まで菓子に塗して子を流したのか。ほら!」
王、王妃、シリウスは、【まさか?】という考えが過ったが、シリウスは首を横に振る。
初夜、ロザリアは間違いなく処女だったのだ。誰かの子を身籠って王宮に上がったわけではない。
その破瓜の証は王も王妃も確認をしている。
ならばどうして?いったい何を隠しているのか。
「子っ子供っ…子供っ」
「はいはい、続きは?その先を皆が待ってるんだけど?」
小瓶をまた傾け、つつーっと液体が床に落ちていく。
ロザリアは叫ぶように声を出した。
「殿下の子供かどうかわからないの!いっ妹の夫のジャベルの子供かも知れないと思ったらどうしていいか判らなかっただけ!だって王家の子は証を持ってるんでしょ!なかったら…殺される…死にたくなかったの!」
ロザリアの告白にシリウスはがっくりと膝を付いた。
自作自演とわかっても、それでもどうしてと思う気持ちがまだ残っていた。
「ロザリア…証って…なんだ」
「髪の色とか瞳の色とか‥‥殿下も陛下と同じじゃない…あの子だって!」
「そんな事あるわけがない!迷信だ!継承権を持つ公爵家や侯爵家を見てみろ!当主の髪の色が同じか?王太后や先王と同じ緑や山吹色の髪色もあれば瞳だって同じ色合いもあれば違う者もいる!父親だけの容姿を受け継ぐなんて!それがずっと続くなんてありえないだろう!生まれて僕の色がなかったとしても判る訳がないじゃないか!どうして子を流した!どうして子を殺したんだ!僕の子かも知れないだろう!!」
「そんなぁ‥‥じゃぁ証って何なの?わたくしは騙されたの!?」
「誰も騙してないだろう?!勝手に思いこんだだけだ!証なんて生まれてから教会の洗礼で貰うクリスチャンネームの事だ!そんな事も知らなかったのか!!」
「嘘よ…嘘っ…」
シリウスは床を拳で叩き、ロザリアは両腕を押さえられているため中腰でぶら下がったまま「嘘よ」と呟き続ける。半面、王と王妃はシリウスに詰め寄る。
「そんなっ…じゃぁアナスタシアは…冤罪?シリウス…調べなかったのか?」
「何てことなのっ…でも生きてるの?生きてるのよね?なら死んだのは下民の侍女だけじゃないの!何も問題ないわ。アナスタシアを呼び戻して――陛下っ教会は何とでもなるでしょう?寄付を増やすとか‥そうだわ。新しい教会を建ててやればいいわ。それで元通りよ」
「元通り?なるわけがないだろう」
ディレイドが小瓶をグラディアスに向けて投げる。チャっとキャッチしたグラディアスは小瓶を指で掴み、パっと指を放した。ストーンと落ちていく小瓶。
ロザリアは咄嗟に手を伸ばしたが届く位置にいない。
トット‥と床に転がった小瓶をグラディアスは足で踏みつける。
バリっとガラスが割れる音、靴底部分に染み出た液体にロザリアは悲鳴をあげた。
国王は両手を文官という名の武官に後ろ手で教えられながらもグラディアスに吠えた。
ディレイドは国王の耳元で囁く。
「やめておいた方がいいよ?傷は浅いうちに引く。鉄則だよ?」
「傷が浅いだと?好き勝手しているのは帝国だろう!この国の教育についてまで口を出す権利が何処にある!」
「あ~…言っちゃった。知らないからね?」
ディレイドは数歩歩いて開いている椅子に逆向きに座り背もたれに腕を乗せてその上に頬を乗せる。
座りながらに首を傾げてグラディアスに手で「どうぞ」と指し示す。
「では、そこの愚息に聞いてみるとするか」
一斉にシリウスに視線が集まり、たじろいてしまう。
だが当然逃げられるはずはない。
「さて。昨日こちらが譲歩をするという形で宿題を持ち帰っておるであろう」
「そ、その件は…」
「どうしたんだ。シリウス」
「こ、この2人が責任者で…私は関知する所ではなく…」
「では、その2人か。責任者という事で話を聞きたいが」
シリウスはチラチラと次官2人の顔を見ているが、諦めたような顔に責任を取ってくれるのだと感じた。次官の2人は一歩前に出て一礼をした後、グラディアスを真っ直ぐに見て口を開いた。
「内政干渉という点では、シュバイツ王国に非が御座います」
「条約を締結するにあたり迂回路の3割に当たる部分は帝国で皇位継承権62番目を持たれているモスベル侯爵の所有する地であり、50年前まで国防の要であった砦がございました。シュバイツ王国側がその地を指定し、砦は解体をされましたが帝国側の国防について干渉をした事は間違い御座いません。修復し砦として機能させるという案は帝国側で議論をされていたのをシュバイツ王国の事情で譲歩頂いたのです」
「ただ現在もモスベル侯爵の所有している地については帝国議会、シュバイツ王国、メリル―プ神国からそれぞれ使用料が支払われる事になっておりましたがここ半年はシュバイツ王国は土地を無断占拠している状態でもあります。内政干渉どころか侵攻と思われてもなんら不思議ではありません。他国の土地への無断侵入に開発状態を何も言わずにいて下さったのは、アナスタシア様が所有者である侯爵様にもし、支払いが滞る事になっても条約更新時まで待って欲しいと頼まれていたからです」
「そんな事は!儂は知らん!初めて聞いたぞ!」
「いいえ、条約締結後に両陛下のサイン並びに確認の王印は頂いております。また締結の条件48番の24にこの件は記載をされております。内容は違えど帝国側に内政干渉というのであれば、既に半年以上他国の地へ違法に開発を進めているシュバイツ王国も内政干渉。しかも国防に関しての干渉となります」
「そんな…シリウスッ!どうなっているのだ」
「私は責任者じゃありません!」
「ほぅ?ではこの次官2人が責任者と考えても良いという事だな?」
「そうです!その2人が責任者なんです」
「相判った。では2人に聞こう。この条約。基本合意についてシュバイツ王国に総じて虚偽があり、ひいては国防の要である砦を解体させる意図があってのものだったと受け取っても良いという事か?」
グラディアスが次官2人に問いかけると、割り込むように国王が声をあげる。
「そんなっ!そんなつもりはありませんっ」
「うぬに聞いてはおらぬ!責任者であるこの2人に問うておるのだ!」
次官2人は顔を見合わせ、目線で会話をすると小さく頷いた。
「その通りです。砦がなくなれば国防については大きく後退。それを狙ったものとお考えになられても否定するだけの材料は持ち合わせておりません」
真っ青になる国王はもう言葉を発する事が出来なくなった。この2人を責任者と言ったシリウスを睨みつけるがシリウスは内容が理解できていないようで、立場を逃げられた事から笑みさえ見せている。
目の前には、口角をあげてこちらを見ている皇帝グラディアス。
「愚王。内政干渉とほざくのも結構。そのついでに面白いものを見せてやろう」
グラディアスが指でクイクイと指示をするとロザリアが背を押され1歩、2歩と近づいてくる。刺された肩を庇いつつも目線はディレイドに向けられていて何かを訴えているかのようだった。
「さて、こちらのお嬢さんがお前たちに言いたい事があるそうだ。耳の中の骨は人体で一番小さな骨だそうだが粉砕されれば【音】は聞こえなくなる。静寂の世界の扉を開く前に、この令嬢の囀りを聞かせてやろう」
「ロ。ロザリア‥‥お前何をしたんだ?」
シリウスがロザリアに問うも、ロザリアは顔ごとディレイドに向けておりシリウスのほうを見向きもしない。声すら聞こえているかどうかも判らない。
「ロザリア。お喋りしてあげなよ」
「えっ?‥‥ここで?…無理よ…そんなの無理だわ」
「へぇ、じゃこれはもういらないか」
小さな小瓶を指で挟んでロザリアに見せる。中の液体を瓶を逆さにしたりでチャプチャプと動かしディレイドは小瓶を弄んだ。
「先ずさぁ…流産の騒動って誰が起こしたのかな?」
「・・・・・」
「あれ?おかしいな?」
ディレイドは小瓶の蓋を開ける。ゆっくり傾け数滴が床に落ちた。
ロザリアは顔を引きつらせた。
「わたくしっ!全部わたくしなの!侍女に成りすましてアナスタシア様の宮に行って、毒をまぶした菓子を渡して、わざと流産したの!」
「なんだって!ロザリアッ!それは本当なのかッ!」
驚きすぎて思わずロザリアに掴みかかりそうになるシリウスを武官が力で制止する。
国王は目を丸くし、王妃は「どうして」と呟いた。
「でも、それで侍女は一人死んじゃうし、アナスタシア様も…ね?」
「違うの!ちょっと叱られるだけだと思ったのよ!侍女も自殺するなんて思わなかったし…アナスタシア様も幽閉されて‥‥でもっ!まだ生きてるじゃない!西の塔で!」
「なっ!何を言うんだ!ロザリアっ!」
「知ってるわ!シリウス殿下っあなたが会いに行ってることもっ!」
「誠か!シリウスっ!」
「答えなさい!幽閉後は毒杯をと…あれは嘘だったの?そう言えば運び出し前の確認も…騎士の名前だけで…あなたは王と王妃であるわたくし達を謀ったの!?」
詰め寄ってくる王と王妃にシリウスは答える事が出来ない。
生かしておくために食事や水を運ぶ兵すら厳選し少人数でやらせていたのだ。
パンパンとディレイドは手を打った。
「はいはい、それだけじゃないよね?一番大事な事忘れてるよね?」
「そっそれは…」
「言わないと。なんで自作自演で毒まで菓子に塗して子を流したのか。ほら!」
王、王妃、シリウスは、【まさか?】という考えが過ったが、シリウスは首を横に振る。
初夜、ロザリアは間違いなく処女だったのだ。誰かの子を身籠って王宮に上がったわけではない。
その破瓜の証は王も王妃も確認をしている。
ならばどうして?いったい何を隠しているのか。
「子っ子供っ…子供っ」
「はいはい、続きは?その先を皆が待ってるんだけど?」
小瓶をまた傾け、つつーっと液体が床に落ちていく。
ロザリアは叫ぶように声を出した。
「殿下の子供かどうかわからないの!いっ妹の夫のジャベルの子供かも知れないと思ったらどうしていいか判らなかっただけ!だって王家の子は証を持ってるんでしょ!なかったら…殺される…死にたくなかったの!」
ロザリアの告白にシリウスはがっくりと膝を付いた。
自作自演とわかっても、それでもどうしてと思う気持ちがまだ残っていた。
「ロザリア…証って…なんだ」
「髪の色とか瞳の色とか‥‥殿下も陛下と同じじゃない…あの子だって!」
「そんな事あるわけがない!迷信だ!継承権を持つ公爵家や侯爵家を見てみろ!当主の髪の色が同じか?王太后や先王と同じ緑や山吹色の髪色もあれば瞳だって同じ色合いもあれば違う者もいる!父親だけの容姿を受け継ぐなんて!それがずっと続くなんてありえないだろう!生まれて僕の色がなかったとしても判る訳がないじゃないか!どうして子を流した!どうして子を殺したんだ!僕の子かも知れないだろう!!」
「そんなぁ‥‥じゃぁ証って何なの?わたくしは騙されたの!?」
「誰も騙してないだろう?!勝手に思いこんだだけだ!証なんて生まれてから教会の洗礼で貰うクリスチャンネームの事だ!そんな事も知らなかったのか!!」
「嘘よ…嘘っ…」
シリウスは床を拳で叩き、ロザリアは両腕を押さえられているため中腰でぶら下がったまま「嘘よ」と呟き続ける。半面、王と王妃はシリウスに詰め寄る。
「そんなっ…じゃぁアナスタシアは…冤罪?シリウス…調べなかったのか?」
「何てことなのっ…でも生きてるの?生きてるのよね?なら死んだのは下民の侍女だけじゃないの!何も問題ないわ。アナスタシアを呼び戻して――陛下っ教会は何とでもなるでしょう?寄付を増やすとか‥そうだわ。新しい教会を建ててやればいいわ。それで元通りよ」
「元通り?なるわけがないだろう」
ディレイドが小瓶をグラディアスに向けて投げる。チャっとキャッチしたグラディアスは小瓶を指で掴み、パっと指を放した。ストーンと落ちていく小瓶。
ロザリアは咄嗟に手を伸ばしたが届く位置にいない。
トット‥と床に転がった小瓶をグラディアスは足で踏みつける。
バリっとガラスが割れる音、靴底部分に染み出た液体にロザリアは悲鳴をあげた。
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