密かな企み~☆~お嬢様は静かに過ごしたい

cyaru

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第09話  エナメルボンテージ

「どうなさいました?」
「あ、あの…ティニャ様に先触れを」
「お嬢様ですか?えぇーっと。何処にいたっけ?」
「今日は無理よ。ほら!アレよ。アレ!」
「あ、そうか!」

1人の女性がテラスを降りて従者に駆け寄ってきた。

「申し訳ございません。お嬢様は外出中でして本日の帰宅は未明となっております」
「み、未明?!そんな時間までどちらへ?!」
「それは…申し訳ございませんが教えることは出来ません」
「困ったな…先触れの返事を頂かないといけないんです」

従者も困るがメイドたちも困る。
返事を持って帰らねばロバートに何を言われることやら。そんな思いもあるが来客について従者個人も何か対応をしてくれないだろうか、そんな思いもあった。

「あのっ!!」
「何をしてるんだ?」

従者が言いかけた言葉を飲んだのはいつもティニャの傍にいるハリスンがやって来たからだった。

(うわぁ。男の僕から見ても爽やかイケメンだぁ♡)

今まで男に惚れたことはないけれど、二度見した後はチラ見をしてしまいそうなイケメンのハリスンに従者はちょっとだけトキメイてしまった。

「今は新規採用の面接をしてたんじゃなかったのか?」
「そうなんですけど」
「面接?!え?新規採用って?!」

給料面は同じサクターマ伯爵家だし基本給が変わらないのなら、和気藹々とお茶まで飲めるこっちで働きたいと思うのは労働者として当然だろう。
先代が領地に行った途端、毎月2回は休暇とは別に貰えていた休息日は無くなったし、残業は本人の力量不足だと残業代はカットされることになった。

病気になれば半額を先代は出してくれたが今月からは全額自費。
その上、爵位のある家に勤める者は半年に1度医療院で定期的に健康診断を受けねばならないけれど、その費用も個人負担だと言われてしまった。

昼食の時間も1時間が30分になったし、午前と午後に15分あった休憩タイムも撤廃。
支給される服はランドリーメイドが洗ってくれていたが、買い取り制度になった。ここでしか着られない服で給料の2か月分が丸丸消える金額なのでバタバタと使用人たちが辞めている。

従者の心は決まった。

「先触れの返事なんかどうでもいいです!私を雇ってください!!」
<< え? >>

「お願いです!あんな職場辞めます!私を雇ってください!!」
「そう言われても…。今は女の子限定の面接ですよ?」
「え…」


従者は股間に手を置き「ある」
胸に手を置き「ない」

(くぅぅ!逆だったら良かったのに!)

ダンダン!!足踏みして本気で悔しがる従者にハリスンは肩に手を置き尋ねた。

「で?ご用件は?」
「は、はい、旦那様がティニャ様に婚姻中の契約を見直ししたいので時間を取って欲しいと」
「却下です」
「はい?」

ハリスンはイケメンであることを最大に生かした超絶スマイルを従者に向けた。

(くわっ!眩しくて目が!)

「離縁届以外の2つは魔法契約です。異議のない場合のみ署名が出来ます。見直しをする可能性も考えず署名をしたのは…どこのどいつだぁい?お前だよッ!!と、ご当主にお伝えください」

従者の目にモーニングコート一般的執事の昼間の正礼装姿のハリスンがエナメルボンテージ着用に見えたのは秘密である。
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