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第16話 厄介な客を追い返せ
困った、困ったと訴えてくるアルバートだったがジャクリーンにはどうしようもない。
執務を手伝っていたのはアルバートの婚約者という立場があったからこそで、そうでなければ難関試験を突破した文官や事務次官で無ければ見ることも出来ない書類を扱う事は出来ない。
今やただの公爵令嬢、しかも間もなく帝国の第4皇子に嫁ぐので国から国籍すらも無くなるのに王太子が扱う書類を閲覧するなど他国の諜報と繋がっていたらどうするつもりなのか。
「アルバート殿下」
「リーン。前みたいに殿下は省略してよ」
「申し訳ございませんが出来兼ねます」
「僕が構わないと言っても??それに・・・扉は締めてくれないか?」
「申し訳ございませんが、それも出来兼ねます」
「どうして。僕とリーンの仲なのに」
――だから!どんな仲だというのよ!――
アルバートの頭の中はすっかり恋愛脳でイカれてしまったのだろうか。
少なくとも今のお互いの立場を考えれば解りそうなもの。
成婚の議をあと1カ月に控えている。つまりお互い未婚で婚約者同士でもない。そんな男女が密室となる部屋にいたら問題しか起きないではないか。
アビゲイルで経験済みなのだろうが一緒にされても困る。
ジャクリーンはソファに向かい合って座り、アルバートに最善の回答を返した。
「アルバート殿下。お心遣いは大変結構なのですが先ずは扉。閉めることは出来ません」
「何故だ」
「わたくし達は婚約者同士ではないからです。その婚約者だった期間でも必ず従者がついておりました。間違いを防ぐためです」
間違いという言葉を少し強調するとアルバートは息を飲む。
アビゲイルとの関係は決して褒められたものではない事は理解出来ているようで何より。
ジャクリーンは言葉を続けた。
「執務の件もですが、アビゲイルが引き起こした事の後始末。全てわたくしには出来兼ねます。ご希望に添えない返事しか出来ない無礼をお許しくださいませ」
「なんでだよ。今までやってくれてた事をしてくれと言ってるだけだ」
「殿下、もうお忘れですか?わたくしは ”何もしなかった” と殿下の隣に立つ資格をはく奪されたのですよ?あの日から間もなく1年になります。その間も ”何もしなかった” わたくしに何が出来ると?」
「うっ・・・それは・・・それは違う!少なくとも僕は執務についてはリーンは出来ると認めている」
「まぁ、それはありがとうございます。しかしながら・・・殿下の執務を手伝うのはわたくしの役目では御座いません。出来る人間は内容、成果品の良し悪しは別として限られている事もご承知おきかと存じますが?」
「それは…。判った!では特例を出す。それならいいだろう?」
――よくないわよ。何言ってるの――
どうにも引き下がりそうにないアルバートだが、従者も連れずにここに来たと言う事は相当に困っているのは判るのでアルバート単独での考えでここに来たのだろう。
だからこそ、ジャクリーンもしたくもない賭けに出るしかなくなった。
「では、国王陛下、並びに王妃殿下の許可証をご持参ください。検討いたします」
国王はアルバートに甘い。だから許可証を出す可能性はある。
しかし王妃は違う。こうやって奇妙かつ自己都合な前例を作ってしまうと後々問題が置き兼ねないので許可証は出すか出さないかの割合でいえば出すが1割、出さないが9割。
王妃が反対をすれば国王も手のひらを返す。何故か。我が身が可愛いからだ。
「許可証・・・時間はかかるかも知れないが…頼んでみるよ」
――やっぱり独断かぁぁぁーい!!――
「えぇ。じっくりと時間をかけてお考えになってくださいませね?」
――出来れば1か月以上!!トンズラ出来るから!――
最後は笑顔で「お帰りはあちらです」と優雅に手で示すとアルバートは大人しく引き上げて行った。
警戒はしなくてはならない。従者付きで来ていたら強硬手段もないわけではない。
――予定入れなくちゃ――
ジャクリーンはアルバートが馬車に乗り、車輪の音が小さく聞こえたのを確認して使用人に頼みごとをした。
「この部屋、お祓いしてくださる?そのままだとエヴァンに申し訳ないわ」
執務を手伝っていたのはアルバートの婚約者という立場があったからこそで、そうでなければ難関試験を突破した文官や事務次官で無ければ見ることも出来ない書類を扱う事は出来ない。
今やただの公爵令嬢、しかも間もなく帝国の第4皇子に嫁ぐので国から国籍すらも無くなるのに王太子が扱う書類を閲覧するなど他国の諜報と繋がっていたらどうするつもりなのか。
「アルバート殿下」
「リーン。前みたいに殿下は省略してよ」
「申し訳ございませんが出来兼ねます」
「僕が構わないと言っても??それに・・・扉は締めてくれないか?」
「申し訳ございませんが、それも出来兼ねます」
「どうして。僕とリーンの仲なのに」
――だから!どんな仲だというのよ!――
アルバートの頭の中はすっかり恋愛脳でイカれてしまったのだろうか。
少なくとも今のお互いの立場を考えれば解りそうなもの。
成婚の議をあと1カ月に控えている。つまりお互い未婚で婚約者同士でもない。そんな男女が密室となる部屋にいたら問題しか起きないではないか。
アビゲイルで経験済みなのだろうが一緒にされても困る。
ジャクリーンはソファに向かい合って座り、アルバートに最善の回答を返した。
「アルバート殿下。お心遣いは大変結構なのですが先ずは扉。閉めることは出来ません」
「何故だ」
「わたくし達は婚約者同士ではないからです。その婚約者だった期間でも必ず従者がついておりました。間違いを防ぐためです」
間違いという言葉を少し強調するとアルバートは息を飲む。
アビゲイルとの関係は決して褒められたものではない事は理解出来ているようで何より。
ジャクリーンは言葉を続けた。
「執務の件もですが、アビゲイルが引き起こした事の後始末。全てわたくしには出来兼ねます。ご希望に添えない返事しか出来ない無礼をお許しくださいませ」
「なんでだよ。今までやってくれてた事をしてくれと言ってるだけだ」
「殿下、もうお忘れですか?わたくしは ”何もしなかった” と殿下の隣に立つ資格をはく奪されたのですよ?あの日から間もなく1年になります。その間も ”何もしなかった” わたくしに何が出来ると?」
「うっ・・・それは・・・それは違う!少なくとも僕は執務についてはリーンは出来ると認めている」
「まぁ、それはありがとうございます。しかしながら・・・殿下の執務を手伝うのはわたくしの役目では御座いません。出来る人間は内容、成果品の良し悪しは別として限られている事もご承知おきかと存じますが?」
「それは…。判った!では特例を出す。それならいいだろう?」
――よくないわよ。何言ってるの――
どうにも引き下がりそうにないアルバートだが、従者も連れずにここに来たと言う事は相当に困っているのは判るのでアルバート単独での考えでここに来たのだろう。
だからこそ、ジャクリーンもしたくもない賭けに出るしかなくなった。
「では、国王陛下、並びに王妃殿下の許可証をご持参ください。検討いたします」
国王はアルバートに甘い。だから許可証を出す可能性はある。
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警戒はしなくてはならない。従者付きで来ていたら強硬手段もないわけではない。
――予定入れなくちゃ――
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