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第16話 前略、紀元前より
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いつも貰うだけでは心苦しいと手伝える者が集まってバザーの品を選定していく。
何もせずにそのまま並べるだけで売れる品は全体の1割にも満たない。多少手を加えたり、衣類なら洗濯をしてほつれをどうにかすればなんとか買い手もいるだろうと思われる品が3割。
残りの6割は処分するしかない不用品ばかり。
今回も大量に出た不用品。
さてどうすると頭を悩ませるのだが例年とはちょっと違っていた。
「おーい。割れた、欠けたって陶器はこの木箱にいれてくれ」
食べ残しがあれば洗わねばならないが、売り物にならず、かといってその辺に捨てる事も出来なかった食器や花瓶などの陶器製品はバザーが始まる前に既に買い手がついていたのだ。
「ライネルさんから話がありましてね。いやぁこんなに沢山。昨年までの20年分ですか?納屋にあった分だけでも大助かりなのに追加でこんなにあるなんて。助かります」
国が違えばこうも違うのか。
陶器は土を焼いて作っているので、何千年経っても土には戻らない。
遺跡で出土するのはその為である。
数が少なければ鉢植えのポットとして庭に苗と一緒に植えたり、皿を仕切り代わりとインテリア風にも使えるが重さがトンの単位になる量となれば使い道がない。
ライネルはポメル王国に連絡をして、回収業者を手配してくれていた。
「こんな割れた皿とか何に使うんですか?」
「砕石の代わりです。再生路盤材として使うんですよ」
「再生路盤材?なんなんですか?それ」
「この国ももうすぐ必要に迫られると思いますが、トラックなんかの自動車が走るでしょう?土が剥きだしだと雨でぬかるんで凸凹になったり、深い轍が出来てしまうので舗装工事をするんですが、その材料ですよ」
ポメル王国にはかなり早くから石炭自動車が走っていた。今まで馬車が通っていた石畳は馬車よりさらに重量のある自動車が走るとガタガタになってしまった。
そこで、道となる部分は全て掘り返し、砕石を敷き詰めて上から圧力をかける。その上にもう一度土を敷いて砂、石灰を水で混ぜたモルタルを敷いた。
自動車が通っても以前ほどは道に凹凸は無くなったが問題が起きた。
道が割れてしまうのだ。亀裂が入るとそこから雨水が入り込み、下地となった土も流してしまう。
そこで、研究者が目をつけたのが天然アスファルトだった。
「大昔と言ってもホントの大昔。チャグリス・ニャーフラティス川って知ってます?その流域で紀元前3800年前に栄えたメソポターニャ文明では建材として使ってたようですけども、ポメル国王陛下が道路に使ってみてはと申されましてね。試験的に敷いてみたら…良かったんですよ」
しかし問題があった。砕石が更に大量に必要になる。下地として転圧する分に加えてアスファルトと一緒に混ぜ込んで固める砕石も必要になった。山を切り崩すにも限界がある。
色々と試した結果、レンガ造りで解体する家屋から出るレンガを粉砕したものと、食器など日用品で使用する陶器を砕いて混ぜ込むと結構良い数値が出たのだ。
「そのままじゃ先も尖ってますのでさらに砕きますけどね。こんなに沢山。本当に助かります」
教会で陶器を回収した業者は真っ黒い煙を吐くトラックに乗り込むと、轟音のようなエンジン音と共に何台ものトラックが次の回収場所に向かって行った。
何処かと言えば、何十年、何百年と民衆がゴミを捨てていた通称「ゴミ盆地」である。
ライネルは貧民窟や貧しい者達に声をかけ、勿論国の許可を得てその「ゴミ盆地」を国の管轄にしてもらい、労働者として彼らを雇い入れた。
そこで陶器だけでなく木製品や金属を選り分ける。
敬遠される汚い仕事ではあるが、その分対価を多く支払う事にすれば手を挙げる者は多かった。
始めたばかりだが、基本給は最低保証にして後は出来高とすれば、やった分だけ給金として返ってくる。争いごとが起きないように6時間の交代制としたら、不夜城のように24時間作業が続き、たった3カ月ほどで20年分のゴミが処理されて行った。
選別されて、洗浄を終えた品は買い取り業者が買って行く。
数年はポメル王国など他国に引き取られていくが、王太子はこの国でも再生材として売り出せるよう工場の建設も計画中なのだという。
工場が出来れば働き口も出来るので失業者対策にもなる。
――ライさんって、実は凄い人なのかしら――
走り去るトラックを見送ってシェイナはまだ見ぬ変貌を遂げた街並みを想像した。
何もせずにそのまま並べるだけで売れる品は全体の1割にも満たない。多少手を加えたり、衣類なら洗濯をしてほつれをどうにかすればなんとか買い手もいるだろうと思われる品が3割。
残りの6割は処分するしかない不用品ばかり。
今回も大量に出た不用品。
さてどうすると頭を悩ませるのだが例年とはちょっと違っていた。
「おーい。割れた、欠けたって陶器はこの木箱にいれてくれ」
食べ残しがあれば洗わねばならないが、売り物にならず、かといってその辺に捨てる事も出来なかった食器や花瓶などの陶器製品はバザーが始まる前に既に買い手がついていたのだ。
「ライネルさんから話がありましてね。いやぁこんなに沢山。昨年までの20年分ですか?納屋にあった分だけでも大助かりなのに追加でこんなにあるなんて。助かります」
国が違えばこうも違うのか。
陶器は土を焼いて作っているので、何千年経っても土には戻らない。
遺跡で出土するのはその為である。
数が少なければ鉢植えのポットとして庭に苗と一緒に植えたり、皿を仕切り代わりとインテリア風にも使えるが重さがトンの単位になる量となれば使い道がない。
ライネルはポメル王国に連絡をして、回収業者を手配してくれていた。
「こんな割れた皿とか何に使うんですか?」
「砕石の代わりです。再生路盤材として使うんですよ」
「再生路盤材?なんなんですか?それ」
「この国ももうすぐ必要に迫られると思いますが、トラックなんかの自動車が走るでしょう?土が剥きだしだと雨でぬかるんで凸凹になったり、深い轍が出来てしまうので舗装工事をするんですが、その材料ですよ」
ポメル王国にはかなり早くから石炭自動車が走っていた。今まで馬車が通っていた石畳は馬車よりさらに重量のある自動車が走るとガタガタになってしまった。
そこで、道となる部分は全て掘り返し、砕石を敷き詰めて上から圧力をかける。その上にもう一度土を敷いて砂、石灰を水で混ぜたモルタルを敷いた。
自動車が通っても以前ほどは道に凹凸は無くなったが問題が起きた。
道が割れてしまうのだ。亀裂が入るとそこから雨水が入り込み、下地となった土も流してしまう。
そこで、研究者が目をつけたのが天然アスファルトだった。
「大昔と言ってもホントの大昔。チャグリス・ニャーフラティス川って知ってます?その流域で紀元前3800年前に栄えたメソポターニャ文明では建材として使ってたようですけども、ポメル国王陛下が道路に使ってみてはと申されましてね。試験的に敷いてみたら…良かったんですよ」
しかし問題があった。砕石が更に大量に必要になる。下地として転圧する分に加えてアスファルトと一緒に混ぜ込んで固める砕石も必要になった。山を切り崩すにも限界がある。
色々と試した結果、レンガ造りで解体する家屋から出るレンガを粉砕したものと、食器など日用品で使用する陶器を砕いて混ぜ込むと結構良い数値が出たのだ。
「そのままじゃ先も尖ってますのでさらに砕きますけどね。こんなに沢山。本当に助かります」
教会で陶器を回収した業者は真っ黒い煙を吐くトラックに乗り込むと、轟音のようなエンジン音と共に何台ものトラックが次の回収場所に向かって行った。
何処かと言えば、何十年、何百年と民衆がゴミを捨てていた通称「ゴミ盆地」である。
ライネルは貧民窟や貧しい者達に声をかけ、勿論国の許可を得てその「ゴミ盆地」を国の管轄にしてもらい、労働者として彼らを雇い入れた。
そこで陶器だけでなく木製品や金属を選り分ける。
敬遠される汚い仕事ではあるが、その分対価を多く支払う事にすれば手を挙げる者は多かった。
始めたばかりだが、基本給は最低保証にして後は出来高とすれば、やった分だけ給金として返ってくる。争いごとが起きないように6時間の交代制としたら、不夜城のように24時間作業が続き、たった3カ月ほどで20年分のゴミが処理されて行った。
選別されて、洗浄を終えた品は買い取り業者が買って行く。
数年はポメル王国など他国に引き取られていくが、王太子はこの国でも再生材として売り出せるよう工場の建設も計画中なのだという。
工場が出来れば働き口も出来るので失業者対策にもなる。
――ライさんって、実は凄い人なのかしら――
走り去るトラックを見送ってシェイナはまだ見ぬ変貌を遂げた街並みを想像した。
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