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第25話 恋のパーセンテージは100%
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ガラガラと馬車の走って来る音に窓に張り付く男達。
フェルメルを送り出そうとしたのだが、玄関でムウトン伯爵が「フェルメルは何処?」と問う声が聞こえる。男達はフェルメルの胸ぐらを掴んでしまった事で皺になった部分を伸ばすためにピンと引っ張る。
「男は気合だ。覚悟を決めろ」
「ちゃんと言えよ?親父の選んだ女なんか嫌だ!って」
「追い出されたって心配すんな。俺が面倒見てやる」
「こっそり羊の群れに紛れてりゃわかりゃしねぇよ」
バーンと背中をひと叩きされたフェルメルは生まれたての子羊のように脚をガクガクさせながら玄関にいる父、ムウトン伯爵の元に向かった。
「そこにいたのか。残念だが嫁探しは振り出しだ。婚約は解消してきた」
「え・・・」
フェルメルの様子を伺っていた男達もだが、フェルメルも驚いて口をあんぐり。
「どうした?呆けた顔をして…お前も嫌だと言ってただろうが」
確かに言っていた。
フェルメルだけではなく、茶会の席には少し離れた場所にムウトン伯爵家の兵士もいたし執事もいた。フェルメルが何も言わなくても彼らは茶会の全てをムウトン伯爵に報告をする。
従者として当然の事である。
フェルメルもスナーチェの口の悪さには辟易していたし、スカッドとの距離にも疑問は感じていた。
ムウトン伯爵家も「仲の良いいとこ」という情報と度々の目撃という事実は当然知っていた。
ムウトン伯爵は「仲が良い」ではなくもう数段上の「必要以上に仲が良すぎる」という点が問題だった。どんな理由があろうとも托卵されてしまえば一族の中で乱闘が起きるのは間違いない。
そんな可能性がある者を何故と袋叩きにあうのは当然だし、1人目はフェルメルの子でも2人目、3人目と違う種が疑われても排除が出来なくなってしまう。
可能性が考えられた時点で早期発見、早期削除は基本中の基本。
「さて…どうするかな。ロマネ王国にはもう相手がいないだろうし」
「ちっ父上・・・あの…」
「どうした?」
「ケェッ!ケェッ!ケコーンしたっ…ごほっごほっ」
「なんだ?ものもらいの一番鳥みたいな声をだして。何かあったのか?」
フェルメルの背を執事が背骨を抉るように撫でる。
フェルメルは後ろに反り気味になりながら痛みに耐えた。
執事の手が尻まで到達し、バチーン!とフェルメルの尻を叩く。
1,2歩前につんのめったフェルメルは父の両肩を掴む事で転ぶのを食い止めた。
「なんだ?どうしたんだ?」
「父上、俺・・・好きな女性がいるんです」
「なんと!!何処の誰だ?・・・って待てよ?また揉めるな…うーん」
「揉めるかも知れません!でも…俺はショタ・・・ショタ‥」
「ショタって…お前・・・」
――うわ!言葉が切れるところがダメだろ!――
執事は慌てた。
心で応援のオールを必死で漕ぐが言葉の助け舟の方が早い!
「旦那様、お相手はボーン子爵令嬢です。私見ですが可能性は高いと思いますっ!」
「え?ショタ・・・は?」
「所帯を持ちたいと言いたかったんだと思いますっ!」
情報過多となったムウトン伯爵は目にハテナが飛び交ったがフェルメルの一声に直ぐに正常に戻った。
「父上、俺はボーン子爵家のヘリン嬢を妻に迎えたいッ!」
「ん?・・・いいけど?」
あっさりとした父、ムウトン伯爵の返事に今度はフェルメルの目にハテナが飛ぶ。
「え?」
「その子がいいんだろ?ニードルも可能性高いって言ってるじゃないか」
「そうなんだけど!ゼスト公爵子息の――」
「婚約者なんだろ?それがどうかしたのか?」
「いやいや、待ってくれ。婚約者がいるんだって!」
キョトン?とムウトン伯爵はフェルメルを見る。
その目は先ほどの男達のように「押せ押せ」ではなく、「何言ってんの?」と訴えている。
「ニードルが可能性が高いと言っている。この事はそのヘリン嬢とゼスト公爵子息との関係が上手く行ってない事を示しているんだろう?その件があったんで婚約を解消してきたんだからな」
「そうなのか…」
「で?何を躊躇ってるんだ?」
――いや、躊躇うだろ?問題しかないじゃないか――
フェルメルは父親が判らない。略奪をしてしまえば大問題になる。しかも相手は公爵家。その後ろには王家がいるといっても過言ではない。戦争をする気なのだろうかと考えてしまった。
「公爵家だろうと平民だろうと犬だろうと羊だろうと変わらない事を知っているか?」
「変わらない?いや身分が違うし、犬や羊なら人間とも違うじゃないか!」
フェルメルの言葉にやはりムウトン伯爵の目は「何言ってんの?」と訴えている。
「あのな?世の中の殆どの生き物は女から生まれるんだ。そりゃ中には例外もあるが、基本は女から生まれる。女を大事にしないような奴に女の生き方をどうこうする権利はないんだ。お前が幸せにしてやればいいだろう。それとも何か?公爵家相手なら喧嘩も出来ないくらいの気持ちしかないのか?お前の気持ちは好きだのなんだのの他に混ぜ物があるのか?」
「あるわけないだろう!純度100%だ!ウチの製品のウール100%と同じだ!」
「ならそれでいいじゃないか。100%をぶつけてこい。99%ダメでも1%残れば御の字だ」
「そ、そんな簡単に言うなよ・・・相手の気持ちも――」
「相手の気持ちもだが、フェルメル、お前にも気持ちがあるだろう?」
ムウトン伯爵は嬉しかったのだ。
女性から忌み嫌われる事で自信を無くしたフェルメルは言われるがままに反論する事もなく婚約を受け入れた。たいした我儘も言わなかったフェルメルの我儘は砕けたとしても骨を拾ってやればいい。
そして自身の経験から思うのだ。
頭部が寂しく「ウッスウス」とどの令嬢も父や祖父を見て見合いの断りを入れてきた。
だが夫人は「貴方がいいの」嫁いできてくれた。
――見た目がダメなら被り物でもさせるかな――
クルンと巻き癖の強い髪のフェルメル。
ムウトン伯爵は巻いた角でも帽子に付ければ流行りのネコ耳、ウマ耳、ウサギ耳のように愛でてくれるかも??早速お抱えのお針子に依頼しようと微笑んだ。
フェルメルを送り出そうとしたのだが、玄関でムウトン伯爵が「フェルメルは何処?」と問う声が聞こえる。男達はフェルメルの胸ぐらを掴んでしまった事で皺になった部分を伸ばすためにピンと引っ張る。
「男は気合だ。覚悟を決めろ」
「ちゃんと言えよ?親父の選んだ女なんか嫌だ!って」
「追い出されたって心配すんな。俺が面倒見てやる」
「こっそり羊の群れに紛れてりゃわかりゃしねぇよ」
バーンと背中をひと叩きされたフェルメルは生まれたての子羊のように脚をガクガクさせながら玄関にいる父、ムウトン伯爵の元に向かった。
「そこにいたのか。残念だが嫁探しは振り出しだ。婚約は解消してきた」
「え・・・」
フェルメルの様子を伺っていた男達もだが、フェルメルも驚いて口をあんぐり。
「どうした?呆けた顔をして…お前も嫌だと言ってただろうが」
確かに言っていた。
フェルメルだけではなく、茶会の席には少し離れた場所にムウトン伯爵家の兵士もいたし執事もいた。フェルメルが何も言わなくても彼らは茶会の全てをムウトン伯爵に報告をする。
従者として当然の事である。
フェルメルもスナーチェの口の悪さには辟易していたし、スカッドとの距離にも疑問は感じていた。
ムウトン伯爵家も「仲の良いいとこ」という情報と度々の目撃という事実は当然知っていた。
ムウトン伯爵は「仲が良い」ではなくもう数段上の「必要以上に仲が良すぎる」という点が問題だった。どんな理由があろうとも托卵されてしまえば一族の中で乱闘が起きるのは間違いない。
そんな可能性がある者を何故と袋叩きにあうのは当然だし、1人目はフェルメルの子でも2人目、3人目と違う種が疑われても排除が出来なくなってしまう。
可能性が考えられた時点で早期発見、早期削除は基本中の基本。
「さて…どうするかな。ロマネ王国にはもう相手がいないだろうし」
「ちっ父上・・・あの…」
「どうした?」
「ケェッ!ケェッ!ケコーンしたっ…ごほっごほっ」
「なんだ?ものもらいの一番鳥みたいな声をだして。何かあったのか?」
フェルメルの背を執事が背骨を抉るように撫でる。
フェルメルは後ろに反り気味になりながら痛みに耐えた。
執事の手が尻まで到達し、バチーン!とフェルメルの尻を叩く。
1,2歩前につんのめったフェルメルは父の両肩を掴む事で転ぶのを食い止めた。
「なんだ?どうしたんだ?」
「父上、俺・・・好きな女性がいるんです」
「なんと!!何処の誰だ?・・・って待てよ?また揉めるな…うーん」
「揉めるかも知れません!でも…俺はショタ・・・ショタ‥」
「ショタって…お前・・・」
――うわ!言葉が切れるところがダメだろ!――
執事は慌てた。
心で応援のオールを必死で漕ぐが言葉の助け舟の方が早い!
「旦那様、お相手はボーン子爵令嬢です。私見ですが可能性は高いと思いますっ!」
「え?ショタ・・・は?」
「所帯を持ちたいと言いたかったんだと思いますっ!」
情報過多となったムウトン伯爵は目にハテナが飛び交ったがフェルメルの一声に直ぐに正常に戻った。
「父上、俺はボーン子爵家のヘリン嬢を妻に迎えたいッ!」
「ん?・・・いいけど?」
あっさりとした父、ムウトン伯爵の返事に今度はフェルメルの目にハテナが飛ぶ。
「え?」
「その子がいいんだろ?ニードルも可能性高いって言ってるじゃないか」
「そうなんだけど!ゼスト公爵子息の――」
「婚約者なんだろ?それがどうかしたのか?」
「いやいや、待ってくれ。婚約者がいるんだって!」
キョトン?とムウトン伯爵はフェルメルを見る。
その目は先ほどの男達のように「押せ押せ」ではなく、「何言ってんの?」と訴えている。
「ニードルが可能性が高いと言っている。この事はそのヘリン嬢とゼスト公爵子息との関係が上手く行ってない事を示しているんだろう?その件があったんで婚約を解消してきたんだからな」
「そうなのか…」
「で?何を躊躇ってるんだ?」
――いや、躊躇うだろ?問題しかないじゃないか――
フェルメルは父親が判らない。略奪をしてしまえば大問題になる。しかも相手は公爵家。その後ろには王家がいるといっても過言ではない。戦争をする気なのだろうかと考えてしまった。
「公爵家だろうと平民だろうと犬だろうと羊だろうと変わらない事を知っているか?」
「変わらない?いや身分が違うし、犬や羊なら人間とも違うじゃないか!」
フェルメルの言葉にやはりムウトン伯爵の目は「何言ってんの?」と訴えている。
「あのな?世の中の殆どの生き物は女から生まれるんだ。そりゃ中には例外もあるが、基本は女から生まれる。女を大事にしないような奴に女の生き方をどうこうする権利はないんだ。お前が幸せにしてやればいいだろう。それとも何か?公爵家相手なら喧嘩も出来ないくらいの気持ちしかないのか?お前の気持ちは好きだのなんだのの他に混ぜ物があるのか?」
「あるわけないだろう!純度100%だ!ウチの製品のウール100%と同じだ!」
「ならそれでいいじゃないか。100%をぶつけてこい。99%ダメでも1%残れば御の字だ」
「そ、そんな簡単に言うなよ・・・相手の気持ちも――」
「相手の気持ちもだが、フェルメル、お前にも気持ちがあるだろう?」
ムウトン伯爵は嬉しかったのだ。
女性から忌み嫌われる事で自信を無くしたフェルメルは言われるがままに反論する事もなく婚約を受け入れた。たいした我儘も言わなかったフェルメルの我儘は砕けたとしても骨を拾ってやればいい。
そして自身の経験から思うのだ。
頭部が寂しく「ウッスウス」とどの令嬢も父や祖父を見て見合いの断りを入れてきた。
だが夫人は「貴方がいいの」嫁いできてくれた。
――見た目がダメなら被り物でもさせるかな――
クルンと巻き癖の強い髪のフェルメル。
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