あなたの愛はいつだって真実

cyaru

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第26話  待つのは俺の仕事

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ロッソ家からの書簡が王家に届いたのはレティツィアがいなくなって3カ月も経過した時だった。

ヴィルフレードも馬鹿ではない。
テオドロとチッチョがボロボロになりながら戻って来て「アマニーに叱られる!」と急いでマルムズ子爵家に向かったが、辺境に戻る際、引き連れてきた部下の1部は王都に向かわせた。

クラン侯爵家は元より関係する家は全て調べ上げて、集まった情報を精査したため国王に知らせるまでに3か月を要した。

「ではツィアはハーベル公爵家に嫁いでいたという事か」
「はい。テオドロ隊長とチッチョ副長が保護した日から姿が確認されていません」
「その原因が元の婚約者絡みだったという事か」
「酷い話です。顔を知っていたからあやめようとしたそうですよ。髪は女の命とも言うのにバッサリですからね」


ギリっとヴィルフレードが奥歯を噛み締めた。レティツィアの髪は不揃い。
その事が着ているモノは明らかに貴族だが、ザンバラの髪に戸惑ったのも事実。

アマニーが取り敢えずは切り揃えてはくれているが、テオドロとチッチョが保護した時は無残なものであったことは容易に想像がつく。

次期公爵夫人が襲われたのだ。ゲルハ伯爵の実妹は襲った男と共に既に絞首刑となり城の裏側にある城壁に吊るされたそうだが、それでもヴィルフレードの怒りは収まらない。

刑の執行が緩いそんなものではない。
情報を集めている時、一番先に上がって来た情報はレティツィアがいなくなりこの辺境に来て数日目。まだあの告白をしておらずメイドに屋敷の中を案内されていた頃だ。

レティツィアの実家であるクラン侯爵家は一切捜索隊を出していない事が判明していた。
騎士団や警護団に捜索の依頼も出していない。

嫁がせたのだからハーベル公爵家の仕事だとでも思っているのか。それが一番先に舞い込んだ情報。ヴィルフレードはその報告書をグシャッと握りつぶし、ギリギリと報告書に八つ当たりをしてしまった。

「紙。タダじゃないですよ?」

従者に言われて慌ててゴシゴシと皺を伸ばしたので今もファイルに閉じているが直ぐに開けてしまう。


そのハーベル公爵家も捜索を主に行っているのはアルマンドの護衛部隊。しかし犯人が捕縛され刑が執行された事でアルマンドは捜索出来なくなった。

犯人を捜すことは出来ても、不明者の捜索に何時までも護衛騎士を就かせることは出来なかった。
ハーベル公爵家はどうしていたかとなれば、日を追うごとに捜索隊は縮小し、最新の情報は2週間ほど前の様子になるが既に捜索は行っていなかった。

「2か月半で捜索を止めたのか。非情な話だな」
「それですが、王宮にこちらを届け出たようです。書き写しになりますが…」

従者が出してきたのは失踪宣告の申し立て書類だった。
通常失踪宣告は捜索をしても見つからず5年以上を経過してから受付をしている。

以前は7年だったが、5年に短縮された。それは失踪したのが一家の家計を支える者だった場合、一気に生活が困窮してしまう。少しでも早く救済をする為に5年に短縮をされた経緯がある。

その失踪宣告をたった2,3カ月で申請しようとしている事に呆れてしまった。

「実はこの子息。レティツィア様との婚約時には恋人がいたようで、関係は婚姻後も続いていたと。その令嬢が他家の当主と一度結婚をしているのですが不仲、まぁ性格の不一致ですかね。出戻って現在離縁の調停中ですが、その令嬢が王都に戻った時期とレティツィア様が襲われた時期は一致しています。襲撃をした男と夫のバークレイが繋がっていたのではないかとも言われていますし…その辺は調査中ですが、離縁調停が始まり、失踪宣告の検討。噂も案外噂ではないのかも知れません」

「どっちにしてもツィアを王都に戻す事は出来ないな」

腹立たしさしかないが、下手に動いてこちらに乗り込まれても面倒。

そしてアルマンドがレティツィアを妃にと望んでいる話も当然把握していた。
ただ、こちらはハーベル公爵家のバークレイに嫁いだという事実があるのでアルマンドが吠えているだけとなっている。

それを踏まえて、国王には「素性を知っていて隠ぺい」などと言われては敵わないので報告をした。但し「妻にしようと思っている女性だ」と一筆加えている。

その意味が解らない兄なら反旗を翻してもいい。

ヴィルフレードはレティツィアの気持ちが固まるまでは待つことを決めた。
なのでハーベル公爵家の失踪宣告は早ければ早いほど都合もいい。碌に探してもいない事が露呈するのだからこれ以上の恥の上塗りもしたくはないだろう。

アルマンドにもその頃には政略結婚で相手が決まっているだろう。

「よし、取り敢えずは3,4年待つとするか」
「良いんですか?閣下はそうなると50が更に近づきますよ?」
「放っとけ。年の事は忘れることにしてるんだ。さて、ツィアとデート♡デート♡」


今日はレティツィアと山菜を取りに行く約束をしているのだ。
先日視察でウロウロとした時に、ヤブカンゾウとワラビを見つけたのだ。

「ヤブカンゾウですか。旨いですよね」
「おぉ。採ってきたら分けてやるよ」
「じゃぁ、俺も!」

ワイワイとしているとひょっこりレティツィアが顔を出す。

「まだお仕事中ですか?」
「ツィア!もう終わった。すぐ行く」
「良いんですよ?待てますし」
「待つのは俺の仕事!さ、行こうか」

いそいそとレティツィア用に用意した日除けの帽子を手に取ると手づからレティツィアに被せる。

「うん。良く似合ってる。可愛いな。ツバで顔が良く見えないのが残念だが」
「それ、見えていないんじゃないの?」
「俺はなんだってお見通しだからいいんだ。さ、行くぞ」
「では、皆さま。フレッド様をお借りしますね?」

従者に微笑むとヴィルフレードが「笑わなくていい。減る!勿体ない!」レティツィアの肩に手を置き、反転させて連れ出していく。

従者達に「いってらっしゃーい!」満面の笑みで見送られて母親になった愛馬に相乗りをしてヴィルフレードはレティツィアと出掛けて行ったのだった。
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