追放されましたが、私は幸せなのでご心配なく。

cyaru

文字の大きさ
13 / 31

第13話  退位勧告

従者が二言三言、何かを会話した後でカーティスの部屋に入ってきたのは外務大臣だけではなかった。

小言を言うご意見番こそいなかったが現役の大臣が他に3人。
議会の議長と副議長も一緒だった。

何事かと思えば開口一番でカーティスにとんでもない事を言い出した。


「コーリー侯爵家とは話が付いています。即座に退位をされることを進言致します」

「は?いきなり何を言うんだ!」

「聞こえなかったようなのでもう一度言いましょう。退位をされるべきです」


コーリー侯爵家は3代前に王女が臣籍降嫁をした家。
直系ではないとされてはいるが、王家の血筋であることは間違いない。王女は側妃腹で血が薄くなったのか侯爵家に嫁ぎ6人の子供を産んだ。その6人も少ない者で3人、多いものは5人の子供に恵まれている。その先は言わずもがな。

カーティスは自分こそ唯一の直系と言いたいところだが、自身の母親もコーリー侯爵家のように血が薄くなったと言われる家から召し上げられていて、父である先代国王のように実の兄妹が両親という訳ではなかった。

なので「私は唯一の直系」を盾にすることは出来ず、カーティスが盾に出来るのは先代国王の血を引く唯一の子供という点のみ。


「馬鹿なことを。コーリー家?帝王学も学んでいないのに玉座を欲するとはなんとも欲深い事だ」

「馬鹿に玉座を温めて頂く必要はないからです」

「なっ!貴様、今、私に向かって何と言った!」

「馬鹿。と、申し上げましたが?腰を振るのだけはお得意のようですのでご希望とあれば男性専門の娼館をご紹介いたしますが?」

「貴様ぁ!誰に向かって!」


つい、拳を振り上げてしまったが魑魅魍魎が巣くうと言われる王城、そして決して綺麗ごとだけでは務まらない大臣職を長くしているからか、誰一人怯む者がいない。

先に手を出した方が負け。それは国王とて同じで貴族や議会を敵に回して玉座を守る事など出来はしない。

外務大臣は書類を差し出しながら言葉を続けた。

「貴方です。ここで私の向かいにいらっしゃるのはカーティス国王。貴方しかおりません。その拳、これから先にどうされるのかはこの書面を見てご判断願いたい」

カーティスはひったくるように書類を手にすると、書かれている文字を見て息を飲んだ。

執務や政務を側妃に丸投げにして遊び惚ける事5年。
ブランクがあっても、非常に不味い事態になった事は理解が出来た。


「レブレス王国はマルスグレット王国との交易を取りやめると通達をしてきました。とんでもない事をしてくれたものです。あの場に酒場の床を這う虫を連れ込まなければ…今更言ってもどうにもなりませんがね」

酒場の床を這う虫とはライラの事だ。
外務大臣はライラをゴキブリと同列でカーティスに告げている。

夕食会の日から今日で40日目。ウェルシェスを王都追放にして39日目。

日数から考えて夕食会に来ていた使者はまだ帰国の途にあるはず。それよりも早くレブレス王国には通達をされ、レブレス王国は即座に対応を決めたのである。

情報を伝える手段は早馬しかないが、早馬だとしてもあり得ない速さ。レブレス王国は何らかの通信手段を持っているという事にもなる。

それもカーティスを焦らせている原因の1つだった。


「国防の予算もかなり削られて愉しまれておりましたが、この5年でマルスグレット王国を囲む国は新技術を既に活用しているという事です。出遅れも甚だしいが今から追い付け追い越せになれば予算は如何ほどでしょう?国防だけで数年の国家予算に匹敵します。しかし‥‥その予算も今までの交易ありきの予算。レブレス王国に国境を封鎖され、交易を断られた今、何年いや何十年分の予算に換算すればよいでしょうかね。しかも国防だけに予算を割けば他が立ち行かなくなります。責任問題にしては退位をされただけで足りるかどうか」

「ま、待ってくれ。何か方法があるのではないのか」

「そうですね。レブレス王国は貴方が追放したウェルシェス・プリンガ―氏なら対話をしないでもない、そう言っていますが、無理でしょう」

「何故無理なんだ?まさか追放されるくらいならと自死したとでもいうのか?」

「自死?まさか。何故無理なのかと言えば貴方が王都から追放したからです」

「ならば連れて来ればいいんだな?解った。王都追放は撤回する。それで連れてくることが出来るだろう」

「それが出来れば苦労はしません。念のためプリンガ―伯爵家には問い合わせをしました。ウェルシェス・プリンガ―氏はあの日、王城を出て屋敷には戻っておらず、その後は所在確認が出来ていないと言えば解りますか?」

「まさか…行方不明だというのか?プリンガー家にいるのではないか?」

「そう思い、私たちも立ち入り調査をしましたよ。屋根裏だけでなく明らかに人が入れない天井裏や床下。隠し部屋がないかも調査をしました。元々あの屋敷は別の伯爵家が建設をしたものなので、間取り図も手に入れてくまなく探しましたが見つける事は出来ませんでした。何より伯爵家の馬車は届け出の台数と合致しているのですよ」

「なら城の馬車を使ったのだろう」

「そんな目立つ馬車で?冗談は休み休み言ってください。城の馬車も持ち出されてはいません。探そうにも東西南北どちらに向かったかも判らずでレブレス王国の通達している期日までにどうやって探せと?」

「なら国境を警備している部署に連絡しろ。国外に出たのなら国境を越えている。そこで身分確認をされるはずだ」


カーティスは必死だったが外務大臣の答えは冷静で冷たかった。

「そんなもの。とっくに問い合わせをしています。国境は超えていません。国内にいると思われる。それしか解らない状況ですよ?全て貴方の蒔いた種ですがね」

国内と言えど、手がかりもない状態で1人の令嬢を探すには無理があり過ぎた。
カーティスは力なくソファに倒れ込んだ。
感想 17

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

王太子殿下と婚約しないために。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ベルーナは、地位と容姿には恵まれたが病弱で泣き虫な令嬢。 王太子殿下の婚約者候補になってはいるが、相応しくないと思われている。 なんとか辞退したいのに、王太子殿下が許してくれない。 王太子殿下の婚約者になんてなりたくないベルーナが候補から外れるために嘘をつくお話です。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました

おりあ
恋愛
 アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。 だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。  失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。  赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。 そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。  一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。  静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。 これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。