残念な婚約者～侯爵令嬢の嘆き～

オーロラの勝負服

沢山のドレスをクロゼットから出して部屋がトンデモナイ事になっていますね。

「お嬢様、これはどうなさいます？」
「いらないなぁ…これも…これも！バザーに出して頂戴」

バザーに出したり、親戚のご令嬢にあげるというドレスがてんこ盛りですね。
侍女たちも片付けるのに大忙しです。

体調不良という事でお茶会を流した後も、卒業試験のためとか領地視察のため、孤児院訪問のためと尽く理由をつけて断ってきてもう半年。

とどめに中庭の情事事件があり、父の侯爵も陛下の返事を待たず婚約解消の申し入れを行っております。
オーロラにとって残念なのはその正式な返事がまだ来ていない事ですが、父が言うには身ごもったという男爵令嬢が子を産むまでは王家も返事をしないだろうと。

「なによそれ！まるで保険じゃない！」

っと憤慨するオーロラ。そうだよねぇ。男爵令嬢の子が本当にエリックの子ならお役御免で違うなら続行って事ですもんね。怒る気持ちはわかりますよ。うんうん。

そしてその気持ちは父母であるガセット侯爵夫妻も同じです。
ある程度片づけの終わったオーロラが食事室に来ましたよ。

「オーロラ。大事な話がある。座りなさい」

何時になく固い口調のガセット侯爵。夫人のベラも真面目な顔ですね。

「もうすぐ卒業式だ。その後の事は何か希望はあるかい？」
「うーん‥‥今のところは何も。だたゆっくりしたいなぁとは思いますわ」
「そうか。ならベラの領にしばらく行くといいよ」
「ペッパー領に？」
「あぁ、ペッパー領はレイエノート国じゃない。２，３か月後に大学の選抜試験があるから受験をして合格すればそこの大学に行くといい」

「そうね。その頃にはあの男爵令嬢の出産となるわ。全く…婚約者を何だと思っているのかしらね。こちらには清純である事を要求するのに王子には‥‥婿に迎えるなんて！婿入りさせる前で良かったわ」

「お母様、殿下もそれだけご執心でしたし、わたくしは嫌われていたので仕方ないですわ。それに幼い頃は仕方なかったとしても、殿下にも女性の好みはあったでしょうし。何より今はわたくし感謝してますの」

＜＜感謝？？＞＞

「えぇ。ずっと我慢してたらそのまま結婚ですわ。でもこうなった事でお友達も出来ましたし、なんというか…楽しい！って思う事が増えましたの。だから感謝していますわ」

「でもねぇ‥‥あの殿下がねぇ‥‥仲の良い夫婦になると思ったんだがな」

「それはそうと、オーロラ、あなたパーティのドレスはどうするの？」

そうです、学園の卒業パーティ。高位貴族の子息令嬢は皆その日は気合を入れたドレスや正装でやってきますもんね。

「うふっ。わたくし制服で行きますのよ」
「制服？ドレスではなくて？」
「えぇ！約束をしましたの。色違いのお揃いのリボンで皆で手を繋いで校門を出ますの！」
「まぁ！それはそれで楽しそうね」
「そうよ！こんな事が出来るなんて！それも含めて殿下には感謝していますの！」

どうする？エリック！！ドレス作ってもオーロラ要らないってよ！！
ほらぁ…変な心得とかバイブルのせいでどうすんの。オーロラほんとにどっか行っちゃうよ？
まぁ、謹慎してるから仕方ないけどね。辛抱を覚えな！！

っと、そこにガセット侯爵家の家令が何かを持ってやってきますね

「旦那様、先程こちらが届きました」
「ん？‥‥王家から？何だろう」
「返事を待つと使者の方が待っておられます」
「急ぎか？わかった。応接室に通しておいてくれ」
「かしこまりました」

「お父様！！」「あなた！！」
「ふむ‥‥なんだろうな」

書簡に急いで目を通すガセット侯爵。しかし表情は良くありませんね。どんどん眉間に皺が深く刻まれていきます。

「オーロラ。お前にだ」
「わたくしですの？」
「エリック殿下が卒業式の前に茶会の席をもうけたいそうだが…」
「はぁ？最後の最後に呼び出しておいてバックレる気かしら？」
「それならそれで本当に王家に引導を渡せるんじゃないかしら？」
「にゃるほど。ムフフ‥‥お母様、それは良いチャンスですわね」
「どうする？行くか？」
「えぇ！その決闘！受けて立ちますわ。まぁどうせ敵前逃亡でしょうけどね！そうと決まれば勝負服ですわ！」

＜＜勝負服？？＞＞

「えぇ！先週バザーに幾つか品を持って行った際に面白い服を見つけましたの」
「どんな服？」
「ニャッポンという遠い東の国でショーワァという時代に大流行したとってもカラフルな色合いに意味不明な文字や記号を沢山あしらったトッコー服というものですわ！頭に微妙なハッチマキをするのも良いそうですわ！土いじりに丁度と思いましたがこんな所で役に立つとは！」

いや・・・それ、まぁ勝負服と言えばそうかも知れませんが、かなり痛いですよ？