もしも貴女が愛せるならば、

cyaru

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聖乙女の御利益※閲覧注意

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この回はソフィーナの常識ではあり得ない発言があります。
女性としては【アカン】発言ですので、清廉潔白、純真無垢な方は勿論、広く読者様に読み飛ばしを推奨します。

読まれた場合のムカムカ、苛立ちについては責任を負えませんのでご注意ください。

☆~☆~☆ 以下本編 ☆~☆~☆





「ドルテ様、もしも貴女が愛せるのならば婚約者の椅子は差し上げますわ」

婚約破棄を受け入れるともとれる発言に誰もが言葉を失った。
問われたソフィーナは制服のスカートを少しつまみ片足を後ろに引いた。

「えぇ。わたくしは聖乙女。誰よりもルセリック様に相応しい、愛し愛されていると自負しているわ。ヴィアトリーチェさんのその言葉は婚約はもう無くなったと受け止めてよろしいのかしら」


ソフィーナは婚約者の座を渡された事で、ヴィアトリーチェよりも上に立ったのだと勘違いをして言葉使いまで上から言い聞かせるような口調で答えた。

ヴィアトリーチェは「ふふっ」と小さく笑うと国王と向き合った。

「陛下、述べねばならぬ事が御座いましょう?」

国王派少し顔を逸らせたが、直ぐにルセリックを憐みの目で上から下へ、下から上に見て息を一つ吐いた。

「ここに宣言をする。この宣言は未来永劫覆ることはない」

今度は全員が国王を注視した。ルセリックは頬を押さえたまま国王を見上げた。


「ルセリック。お前は廃嫡だ。誰か!この狼藉者をつまみ出せ」
「なっ!何故です?おかしいでしょう?どうして廃嫡なのですか!」
「そうですよ!陛下。年を取ってボケたんですか?お医者様に診てもらってください!」


警備兵が数人会場に走り込んでくると、生徒たちのざわめきもさらに高まる。
壇上に上がった警備兵はルセリックとソフィーナを押さえ込んだ。

「何するの!わたくしは聖乙女なのよ!こんな事をしてタダで済むと思っているの!」

「何が聖乙女だ。お前がした事は無料の娼婦の真似事に過ぎんではないか」

「娼婦?失礼ね!陛下だからって聖乙女をバカにすると天誅が下るんだから!みんな気持ちいいってフィニッシュしてくれてたわ!娼婦だったらそこまでの高揚感なんかないのよ!わたくしが聖乙女だからみんな癒されて気持ち良くなってくれてたんだから!」

「待て、ソフィー‥‥みんなって何だ?娼婦って…フィニッシュって?」

「ルセリック様も気持ちよかったでしょう?陛下に言ってあげて!ルセリック様だけじゃないわ。みんなわたくしと気持ちよくなってくれてたのよ!聖乙女じゃないとここまで出来ないわ。人を癒し愛されるのが聖乙女なのよ!」

「みんなと…シテたというのか」

「違うわ!時間をずらした事はあるけど、毎回相手は一人だけよ。そうじゃないと癒してあげられないでしょう?懺悔だって一人で懺悔室に入るでしょう?ちゃんと1対1で癒してあげたわ!聖乙女として当然の事よ!ルセリック様が避妊薬を教えてくれたからみんな最後まで興冷めせずに癒されてるの!だから陛下にもちゃんと言ってくださいませ!聖乙女を妃とするルセリック様を廃嫡するなんておかしいって!わたくしをこんな力づくで従わせようなんて許されない事だって!」


ルセリックは混乱の坩堝にいた。
妊娠をさせてしまうと継承権が剥奪をされるから経口避妊薬を飲ませていたのだ。
初めて抱いた時からソフィーナが純潔でない事は判っていた。だがそれは平民あがりのため強制的に誰かに散らされた可哀想な令嬢だと思い込んでいた。


ソフィーナの発する言葉でルセリックが同意できるのは【廃嫡するのはおかしい】という点のみである。

少なくとも自分と関係をした時からは【自分だけ】と思っていたが、ソフィーナにはそうではなかったらしい。途端にソフィーナが汚らしく思えてしまい、ルセリックは壇上で盛大に脱力してしまった。

「ち、父上…私が間違っていました‥‥先程の発言はなかった事に――」
「なかった事にはならぬ。申したであろう。未来永劫覆らないと」
「そんな‥‥ヴィ、ヴィアトリーチェっ!悪かった!冗談なんだ…判るだろ?」

国王にそっぽを向かれたルセリックはヴィアトリーチェに縋ろうと膝をすりながら近づいてくるが、フレイザーによってそれが叶うことはなかった。

ヴィアトリーチェは肩を落とす国王に微笑んだ。

「これで継承権を持つものはわたくし1人。意味がお判りですわね?」
「あぁ、判っている。こんな事になろうとは…」
「遅かれ早かれですわ。禁書を読み解けていないものは選ばれませんもの」
「なっ‥‥まさか…」

読み解けたかどうかという点を聞く事はしてはならない事だが、いつぞや「大丈夫だ」と答えたあの言葉が今となっては恨めしくて仕方がない。

「考えずとも判ったと思いますけれど?禁書を読んだものが聖乙女と名乗るものに纏わりつくかどうか。その点だけでも常日頃から陛下に彼はサインを出していたと思いますわよ」

「うぐっ…」

「まぁ、王家の許可は知った事では御座いませんが、神殿の認めた婚約をいとも簡単に‥‥面白い見世物でしたが、それも我が公爵家が締結時に述べたように婚姻時に神殿を絡ませればまだ審査で時間はあったかと思います。彼の継承を強固にしたいと先走りを致しましたわね」


警備兵に引きずられるように退去される中、ソフィーナはルセリックに縋りつく。
それをルセリックが払い除ける。

ソフィーナの基準は広く浅くのようだが、ルセリックが廃嫡になってもまだ日の目を見る事があると思っているようで「王妃になる聖乙女なのよ!」と叫んでいる。

国王はそんな2人を見て「愚かな…に――」と呟いて続きの言葉を飲み込み辺りを見回した。







折角の卒業式が前代未聞の醜聞となってしまったが、屋敷に戻ったヴィアトリーチェを驚かせる知らせが早速舞い込んできた。

ルセリックは囚人用の牢に入れられた後、相応の処分がされる。

「あの程度なら絞首刑どころか毒杯にもならないでしょうね」

「貧民窟に捨て置かれるそうですが、どうなる事やら」

執事がコポコポと茶を淹れ乍ら語った。

「見た目はいいから誰かに飼われるんじゃないでしょうかね。元王子というのも欲しがる人間はいますし18歳という年齢なら去勢はされても役に立つでしょうしね」


メイドが持ってきてくれた菓子の籠からクッキーを1枚手に取った時、慌ただしく使用人が駆け込んできた。

「旦那様、奥様っ!お嬢様っ大変です」
「どうしたと言うんだ。そんなに慌てて。第一王子の件ならもう聞いたぞ」
「違うんです。あの一緒にいた偽物のような聖乙女と言ってた‥あの娘です」
「アレがどうかしたのか」

【神殿が身柄を引き渡せと!強制的に連行したそうです】

使用人の思いもよらない報告にヴィアトリーチェは両親と顔を見合わせた。



☆~☆~☆ 作者より ☆~☆~☆

経口避妊薬の使い方、ソフィーナは間違っております。
リアルな世界ではそういう使い方をするお薬ではありません。<(_ _)>
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