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選定の日
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これから起こる事を予見しているのであろうか。
昨夜から急激に冷え込み、朝には雪が庭を白く染め、吐く息も白く湯気立つ。
馬車を引く馬も鼻を鳴らすたびに蒸気機関車のように湯気を出す。
ルクセル公爵はそこに侍女のような見栄えのしないコートを着た女性と乗り込んでいく。
見送る夫人や公爵家の使用人達の顔色は寒さのせいか強張り白く見えた。
「ヴィアトリーチェ。いよいよだな」
「えぇ、わたくしの予見では教皇は選ばざるを得ないかと。陛下はその限りではないので一番年若いチャネル殿下と共に神殿に来ているやも知れませんが」
「しかし、チャネル殿下はまだ5歳。国王とするには陛下の退位の時期とは大きく時期が外れる。これからの教育や禁書を考えると選ばれるとは思えないがな」
「チャネル殿下を陛下が推す場合は摂政としてまだ玉座にしがみ付きたいのでしょう。次の選定が行われるのは順当であれば25年後。30歳となられるチャネル殿下は在位期間中は陛下が御存命の限り傀儡の王という事になるでしょうね。一旦即位が決まればお座成り。王家にある禁書庫の系統図では325年前と775年前に同じように前王が実質の国王であったという記述も御座います。前例を引っ張り出してくるかも知れません」
「だがチャネル殿下のご母堂は第二側妃殿下。すんなりと引き渡すとは思えない。離宮はここ6週間の間流行病に罹患したものが数名でたからと自主閉鎖したと聞いている」
「側妃殿下には後で隣国の菓子でも送っておきましょう。クレーム・ド・フランボワーズがお好きでしたわね。陛下にも最後の最後で甘酸っぱいご対応をされた事に感謝せねば」
「これは父としての独り言だ。ヴィアトリーチェ。アリオンと夫婦になり何も考えずに幸せになるという道もあるんだ。それを選ぶというのなら私達は――」
「あら?この辺りは雪が積もったのね」
父の言葉を途中で遮り、軒先に積もった雪を子供たちが小さな手で握っているのが車窓から見える。雪のように積もった父の娘への思いはその先を言わせまいとする娘の中でその身に雪融け、血となり肉となっているのだろうか。
熱心な信者が雪かきをしてなんとか形と色を見せている石畳みを素足で歩き、外に設置されている簡易の御神体に祈りを捧げている。その様子を横目にしながらルクセル公爵は深く外套を被った女性と歩いていく。
神官はすっぽりと外套を被り俯く女性を怪訝そうな目で見ながらも1人の付き人は認められているため2人を奥の選定が行われている部屋へと案内をした。
ルクセル公爵は男性の神官が、ヴィアトリーチェは女性の神官補助が暗器を隠していないか衣服の上からだがなぞるように確かめていく。
「失礼を致しました。これも決まりますので何卒ご容赦を」
「お気遣いは無用。では案内をお願い出来ますかな」
「はい、こちらへ。教皇様他、大神官5名、両陛下全員が揃っております」
2重になった扉が開かれ、教皇を挟んで右に3名、左に2名の大神官が着席している。
向かいには国王と王妃。予想をしていたチャネル殿下は出席しておらず「諦めたか?」と小さな安堵がヴィアトリーチェの心の中に過った。
「揃ったようですので、始めたいと思います」
進行係の神官が立ちあがり、一礼をすると国王がサッと手を挙げた。
外套を被ったヴィアトリーチェだけは俯いたままだが、他の全員は国王を見た。
国王は発言の許可を得ると、興奮を隠せないのか紅潮した頬をより染めて鼻息荒く口を開いた。
「我が王家としては、第一王子ルセリックを次期国王に推挙する。理由としては継承者としては第一王子ルセリックとルクセル公爵家のヴィアトリーチェ嬢のみとなっていた。知っての通りルセリックは過日、学園の卒業式で言い訳の出来ない失態を犯し廃嫡とする予定だったが処置をする前に何者かによって拉致をされてしまった」
拉致と言う言葉を発する際に教皇の顔をちらりと伺うが、教皇の表情は変わらない。
隣に陣取る大神官たちも知っているのか知らないのか、国王の話を聞いているだけである。
「王家としてはヴィアトリーチェ嬢に女王として国を統べて頂くのが最良と考えていたが、ヴィアトリーチェ嬢が病に倒れ、儚くなったと聞き胸を痛めると同時に国王については継承権を持つものに改めて考えを問うたが各々意向は変わらず、致し方なく…断腸の思いで第一王子ルセリックの廃嫡を撤回。ルセリックを次期王として推挙する。尚、ルセリックは禁書を読み解くに至ってはいないが継承権を放棄していないのはルセリックのみ。神殿憲章の7条第二項の2にある但し書きに従って緊急措置による禁書解読の免除を申し出る次第である」
言い終わった国王は今までにこれだけの仕事をした事はあるのだろうかと思うほど達成感に満ち溢れた顔をしていた。しかし反応が全くない事に他の参加者の顔を見やった。
スっと手を挙げたのは大神官の1人。国王には目もくれずルクセル公爵を見て、隣の外套を未だかぶったままのヴィアトリーチェに怪訝な顔をしながらも問うた。
「ルクセル公爵。ご息女が亡くなったとは誠か?神殿にはそのような届けはなされていないが?」
ルクセル公爵は「なんと失礼な!」と聊か芝居がかった表情をしたが、直ぐに表情を消し去り手を挙げた。席から立ちあがると、コホンと一つ咳ばらいをして教皇の方だけを見る。
「何かの冗談かと少々混乱をしてしまいましたが、陛下、我が娘が天に召されたと?子を持つ親なら看過できない言葉に返答次第ではこのルクセル。全てを賭けて陛下を弾劾いたします。尚、我が娘ヴィアトリーチェですが思えば9歳の折にくしゃみを一つしたのは記憶に御座いますが以降は至って健康。本日もこうやって隣に鎮座しております…ヴィアトリーチェ、挨拶をなさい」
「なんだと?!」
ガタっと立ち上がる国王に「お静かに。着席を」と進行の神官が諫めるとヴィアトリーチェは立ち上がり、外套を脱いだ。以前よりはかなり短くなった髪だが相変わらず光にあたれば煌めく銀髪をゆっくりと指で耳にかけると椅子の後ろに回り、外套を脱いでその場でカーテシーを取り名を名乗った。
「国王陛下、ヴィアトリーチェ嬢はここに居られるが、それよりも禁止事項に触れる発言があったようなのだが‥先程の発言をもう一度ゆっくりと赤子にも判るよう噛み砕いて説明をしてくれないだろうか」
どうして生きているのか‥‥だが短くなった髪の毛を見て総毛立った。
フレイドが死んだと思い髪を切り取ったが息を吹き返したのか…それともフレイドに騙されたのか。どちらにしても口にしてしまった以上国王は分が悪かった。
単にヴィアトリーチェが死んだからという事に言及していればよかったものを、ルセリックが禁書を読み解いていない事もこの場で暴露をしてしまった。
それだけではない。禁書を読み解いているか否か。それは当人だけが知る事で他の者は知らない筈なのである。しかし国王は意気揚々と「ルセリックは禁書を読み解くに至ってはいない」と発言してしまった。
「あ、いや、禁書を読み解いていないのはそうではないかと推測をしただけで…問いただしたわけではなく…も、勿論そんな事をしてはならないという事は存じていますから…言葉のあやと申しますか、聞き流して頂ければ」
先ほどまでの威勢の良さは吹き飛び真っ青な顔で首元の汗が襟に染みこんでいく。
隣の王妃は汚いものでも見るかのように、身を傾け距離を取っている。
「では、継承権を持つものは当家、ルクセル公爵家が娘ヴィアトリーチェのみ。教皇様、陛下もよろしいでしょうか?わたくしも過去には継承権を与えられた身。禁書については存在は疎か内容も読み解いております故、ここにいるヴィアトリーチェより継承に足るかどうかその言葉にてご判断を頂きたく思います」
「聞くまでもないでしょう。次代の王はヴィアトリーチェ嬢。神殿としても認めざるを得ないでしょうね。1年10カ月後の即位の礼、戴冠式の際には各国より多くの祝辞を得られる事でしょう。決まりですから多数決を取りましょう。私は評決を取るものですので神殿からは大神官が5人、王家は陛下と王妃殿下の2人、そしてルクセル公爵家はルクセル公爵と…フフ‥付き人の2名。ま、当人でも構いませんがね。1人1票で9票で満票。5票取れば賛成多数という事です。では挙手を。ルクセル公爵家ヴィアトリーチェを次期国王にと望む者は挙手を」
国王の望みも立ち消えになる。大神官5人とルクセル公爵、ヴィアトリーチェは手を挙げた。
仮にここにルセリックがいたとしてその数が認められても大神官5人ともヴィアトリーチェを押すとなれば勝つことは出来ない。
「賛成多数という事で次の裁決を取るまでもない。次期国王はルクセル公爵家のヴィアトリーチェとする。では禁書にある様に儀式を執り行う。儀式は神殿奥にある創元の間。各々をご案内せよ」
サッと高い恵比寿帽、顔を白いヴェールで覆った神官の1人がヴィアトリーチェの半歩前に付いた。顔は見えなくても優しく香る匂いにそれが誰なのか気が付いたヴィアトリーチェは指に力を入れて自分で自分の指をきつく握った。
広く大きな背中が、創元の間への歩数分だけヴィアトリーチェに勇気をくれる。
しかし、開かれた扉の前には異様な光景が広がっていた。
胸に手を当てて、軸足を少し後ろに引いて軽く頭を垂れているのはチャールズだった。
「皆さま。お待ちしていましたよ」
昨夜から急激に冷え込み、朝には雪が庭を白く染め、吐く息も白く湯気立つ。
馬車を引く馬も鼻を鳴らすたびに蒸気機関車のように湯気を出す。
ルクセル公爵はそこに侍女のような見栄えのしないコートを着た女性と乗り込んでいく。
見送る夫人や公爵家の使用人達の顔色は寒さのせいか強張り白く見えた。
「ヴィアトリーチェ。いよいよだな」
「えぇ、わたくしの予見では教皇は選ばざるを得ないかと。陛下はその限りではないので一番年若いチャネル殿下と共に神殿に来ているやも知れませんが」
「しかし、チャネル殿下はまだ5歳。国王とするには陛下の退位の時期とは大きく時期が外れる。これからの教育や禁書を考えると選ばれるとは思えないがな」
「チャネル殿下を陛下が推す場合は摂政としてまだ玉座にしがみ付きたいのでしょう。次の選定が行われるのは順当であれば25年後。30歳となられるチャネル殿下は在位期間中は陛下が御存命の限り傀儡の王という事になるでしょうね。一旦即位が決まればお座成り。王家にある禁書庫の系統図では325年前と775年前に同じように前王が実質の国王であったという記述も御座います。前例を引っ張り出してくるかも知れません」
「だがチャネル殿下のご母堂は第二側妃殿下。すんなりと引き渡すとは思えない。離宮はここ6週間の間流行病に罹患したものが数名でたからと自主閉鎖したと聞いている」
「側妃殿下には後で隣国の菓子でも送っておきましょう。クレーム・ド・フランボワーズがお好きでしたわね。陛下にも最後の最後で甘酸っぱいご対応をされた事に感謝せねば」
「これは父としての独り言だ。ヴィアトリーチェ。アリオンと夫婦になり何も考えずに幸せになるという道もあるんだ。それを選ぶというのなら私達は――」
「あら?この辺りは雪が積もったのね」
父の言葉を途中で遮り、軒先に積もった雪を子供たちが小さな手で握っているのが車窓から見える。雪のように積もった父の娘への思いはその先を言わせまいとする娘の中でその身に雪融け、血となり肉となっているのだろうか。
熱心な信者が雪かきをしてなんとか形と色を見せている石畳みを素足で歩き、外に設置されている簡易の御神体に祈りを捧げている。その様子を横目にしながらルクセル公爵は深く外套を被った女性と歩いていく。
神官はすっぽりと外套を被り俯く女性を怪訝そうな目で見ながらも1人の付き人は認められているため2人を奥の選定が行われている部屋へと案内をした。
ルクセル公爵は男性の神官が、ヴィアトリーチェは女性の神官補助が暗器を隠していないか衣服の上からだがなぞるように確かめていく。
「失礼を致しました。これも決まりますので何卒ご容赦を」
「お気遣いは無用。では案内をお願い出来ますかな」
「はい、こちらへ。教皇様他、大神官5名、両陛下全員が揃っております」
2重になった扉が開かれ、教皇を挟んで右に3名、左に2名の大神官が着席している。
向かいには国王と王妃。予想をしていたチャネル殿下は出席しておらず「諦めたか?」と小さな安堵がヴィアトリーチェの心の中に過った。
「揃ったようですので、始めたいと思います」
進行係の神官が立ちあがり、一礼をすると国王がサッと手を挙げた。
外套を被ったヴィアトリーチェだけは俯いたままだが、他の全員は国王を見た。
国王は発言の許可を得ると、興奮を隠せないのか紅潮した頬をより染めて鼻息荒く口を開いた。
「我が王家としては、第一王子ルセリックを次期国王に推挙する。理由としては継承者としては第一王子ルセリックとルクセル公爵家のヴィアトリーチェ嬢のみとなっていた。知っての通りルセリックは過日、学園の卒業式で言い訳の出来ない失態を犯し廃嫡とする予定だったが処置をする前に何者かによって拉致をされてしまった」
拉致と言う言葉を発する際に教皇の顔をちらりと伺うが、教皇の表情は変わらない。
隣に陣取る大神官たちも知っているのか知らないのか、国王の話を聞いているだけである。
「王家としてはヴィアトリーチェ嬢に女王として国を統べて頂くのが最良と考えていたが、ヴィアトリーチェ嬢が病に倒れ、儚くなったと聞き胸を痛めると同時に国王については継承権を持つものに改めて考えを問うたが各々意向は変わらず、致し方なく…断腸の思いで第一王子ルセリックの廃嫡を撤回。ルセリックを次期王として推挙する。尚、ルセリックは禁書を読み解くに至ってはいないが継承権を放棄していないのはルセリックのみ。神殿憲章の7条第二項の2にある但し書きに従って緊急措置による禁書解読の免除を申し出る次第である」
言い終わった国王は今までにこれだけの仕事をした事はあるのだろうかと思うほど達成感に満ち溢れた顔をしていた。しかし反応が全くない事に他の参加者の顔を見やった。
スっと手を挙げたのは大神官の1人。国王には目もくれずルクセル公爵を見て、隣の外套を未だかぶったままのヴィアトリーチェに怪訝な顔をしながらも問うた。
「ルクセル公爵。ご息女が亡くなったとは誠か?神殿にはそのような届けはなされていないが?」
ルクセル公爵は「なんと失礼な!」と聊か芝居がかった表情をしたが、直ぐに表情を消し去り手を挙げた。席から立ちあがると、コホンと一つ咳ばらいをして教皇の方だけを見る。
「何かの冗談かと少々混乱をしてしまいましたが、陛下、我が娘が天に召されたと?子を持つ親なら看過できない言葉に返答次第ではこのルクセル。全てを賭けて陛下を弾劾いたします。尚、我が娘ヴィアトリーチェですが思えば9歳の折にくしゃみを一つしたのは記憶に御座いますが以降は至って健康。本日もこうやって隣に鎮座しております…ヴィアトリーチェ、挨拶をなさい」
「なんだと?!」
ガタっと立ち上がる国王に「お静かに。着席を」と進行の神官が諫めるとヴィアトリーチェは立ち上がり、外套を脱いだ。以前よりはかなり短くなった髪だが相変わらず光にあたれば煌めく銀髪をゆっくりと指で耳にかけると椅子の後ろに回り、外套を脱いでその場でカーテシーを取り名を名乗った。
「国王陛下、ヴィアトリーチェ嬢はここに居られるが、それよりも禁止事項に触れる発言があったようなのだが‥先程の発言をもう一度ゆっくりと赤子にも判るよう噛み砕いて説明をしてくれないだろうか」
どうして生きているのか‥‥だが短くなった髪の毛を見て総毛立った。
フレイドが死んだと思い髪を切り取ったが息を吹き返したのか…それともフレイドに騙されたのか。どちらにしても口にしてしまった以上国王は分が悪かった。
単にヴィアトリーチェが死んだからという事に言及していればよかったものを、ルセリックが禁書を読み解いていない事もこの場で暴露をしてしまった。
それだけではない。禁書を読み解いているか否か。それは当人だけが知る事で他の者は知らない筈なのである。しかし国王は意気揚々と「ルセリックは禁書を読み解くに至ってはいない」と発言してしまった。
「あ、いや、禁書を読み解いていないのはそうではないかと推測をしただけで…問いただしたわけではなく…も、勿論そんな事をしてはならないという事は存じていますから…言葉のあやと申しますか、聞き流して頂ければ」
先ほどまでの威勢の良さは吹き飛び真っ青な顔で首元の汗が襟に染みこんでいく。
隣の王妃は汚いものでも見るかのように、身を傾け距離を取っている。
「では、継承権を持つものは当家、ルクセル公爵家が娘ヴィアトリーチェのみ。教皇様、陛下もよろしいでしょうか?わたくしも過去には継承権を与えられた身。禁書については存在は疎か内容も読み解いております故、ここにいるヴィアトリーチェより継承に足るかどうかその言葉にてご判断を頂きたく思います」
「聞くまでもないでしょう。次代の王はヴィアトリーチェ嬢。神殿としても認めざるを得ないでしょうね。1年10カ月後の即位の礼、戴冠式の際には各国より多くの祝辞を得られる事でしょう。決まりですから多数決を取りましょう。私は評決を取るものですので神殿からは大神官が5人、王家は陛下と王妃殿下の2人、そしてルクセル公爵家はルクセル公爵と…フフ‥付き人の2名。ま、当人でも構いませんがね。1人1票で9票で満票。5票取れば賛成多数という事です。では挙手を。ルクセル公爵家ヴィアトリーチェを次期国王にと望む者は挙手を」
国王の望みも立ち消えになる。大神官5人とルクセル公爵、ヴィアトリーチェは手を挙げた。
仮にここにルセリックがいたとしてその数が認められても大神官5人ともヴィアトリーチェを押すとなれば勝つことは出来ない。
「賛成多数という事で次の裁決を取るまでもない。次期国王はルクセル公爵家のヴィアトリーチェとする。では禁書にある様に儀式を執り行う。儀式は神殿奥にある創元の間。各々をご案内せよ」
サッと高い恵比寿帽、顔を白いヴェールで覆った神官の1人がヴィアトリーチェの半歩前に付いた。顔は見えなくても優しく香る匂いにそれが誰なのか気が付いたヴィアトリーチェは指に力を入れて自分で自分の指をきつく握った。
広く大きな背中が、創元の間への歩数分だけヴィアトリーチェに勇気をくれる。
しかし、開かれた扉の前には異様な光景が広がっていた。
胸に手を当てて、軸足を少し後ろに引いて軽く頭を垂れているのはチャールズだった。
「皆さま。お待ちしていましたよ」
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