10 / 52
第二章☆境界線(5話)
レモンは甘いか酸っぱいか
しおりを挟む
架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。
◇~◇~◇
「では今日も一日をお客様の為に!」
ユズリッハ保険の王都西南支店長の大きなゲキが部屋の隅まで行きわたると「はいっ」と返事をする販売員たち。ここ1年ほど売り上げの首位を独走するインシュアの元にジェーンがやってきた。
「インシュアさん、ちょっといいかな?」
「申し訳ありません。今日は伺う約束のあるご契約者様がいますので」
「えっと…何時から?」
「14時に伺うお約束をしています。現在9時ですのであと5時間しかありません」
「フェッ??」
デスクで保険の見積書を契約内容確認シートのファイルに挟んでいるのだが、ジェーンが立ち去る様子はない。
「ジェーンさん。ここに立っているくらいならご契約者様にご機嫌伺いにでもでられたらどうです?こんな怪我じゃ給付金は出ないだろうなと思っているかも知れませんよ。小さな悩みを逃してはなりません」
「あの、途中まで一緒に行ってもいい?相談があるの」
「相談?私達は販売員です。相談はご契約者様や契約を考えてくださる方から受けるものです。いつ何時も受け答えできるよう日々商品への理解をするのが基本です」
「それが‥‥保険の事じゃないの。でも頼まれちゃって」
「自身で解決できないものを気安く引き受けたのは貴女。それを解決するのも貴女ではありませんか?」
「そうなんだけど、契約するからって言われちゃって…。ほらウチ、半年後に学院に入学するじゃない?お金が必要でかなりの大口を契約してくれそうだったから…つい…」
「ジェーンさん。入学するじゃない?と言われましてそうですかとしか言えません。事前に何の相談も報告もなかった話に同意を求めるのはおかしいと感じた事はありませんか?家族構成をわたくしが知っていたら気持ち悪くありませんか?」
インシュアは冷たいのだ。しかしこれもインシュアの処世術。
ヘタに首を突っ込むと碌なことにならない。インシュアには子供はいないが契約をしてくれている顧客からよく愚痴を聞かされることがあるのだ。
契約者様だけに無碍には出来ず、ベンジャーとの会話で培った「受け流し」を発動させてその場をやり過ごしている。
先日の事である。
「もう、聞いてよ」
「はい、お聞きいたします」
「ママ友でさぁ。ボス的な人がいるんだけど結構無茶ぶりしてくるの。でもね否定的な事を言っちゃうと除け者にされるんだよね。いや、私は良いの。私はね。除け者にされてもやっと解放されたぁってなるから良いんだけど、矛先が娘に向かうのよ。皆と遊んでても【あの子とお話しちゃダメ】みたいなことされちゃうのよ」
「そうですか」
「でね?大通りに雑貨店が出来たんだけど、そのボスママの子分Aがね、あ、ボス的な人にいつもベッタリなおべっかばかりいう人ね。断りは得てないわよ?私が勝手にそう言ってるだけなんだけど、【ワタクシ、24金はだめじゃない?】って聞かれたの。そんなん知るかって思ったんだけどそんな事言ったら大変だから、そうですねーって言ったの。だってさ、そこでそうですか?って言ったら、【私の事を何にも知らないのね】って言うのよ。知るかっての。旦那の事だって全部知ってるわけじゃないし、他人の事なんかもっと興味ないわよ」
「なるほど」
「そしたらね?その店の商品は王女殿下の監修だったのよ。で、それをボスママがね、子分Aと私が王女殿下を貶したって言うのよ。酷いと思わない?不敬罪とか言われちゃうし。雑貨店の品物可愛かったから幾つか買ったんだけど、【あら?24金はダメだったのでは?】なんて言われるし。私はダメなんて言ってなーい!あぁ~もぅ公園行くの止めようかな」
「それがよろしいかと」
その後も延々と続くボスママと愉快な仲間たちの愚痴。
解放されたのは3時間も後の事だったのだ。
愚痴を聞いたのはこのご夫人の御実家が孫に対して【敬老保険】を掛けてくれたからである。
敬老保険とはユズリッハ保険商会が独自で販売を開始した保険で、現金などを渡すと生前贈与とみなされる可能性がある富豪たちの為に販売された保険である。
主契約者が祖父母のどちらかで、被契約者が孫になるのだ。要は学資保険の主契約者が親ではなくジィバァになった保険だが満期の頃になるとジィバァの生存が危うい。6歳未満の子供が対象のため成人までは短くて15年、長い場合は20年である。金額もそこそこになるのだ。満期直前で被契約者の孫の保険に転換する事が出来るので相続や贈与の対象から外れるのだ。
この夫人が2人の他に、この夫人の兄となる息子の所に3人、この夫人の妹となる娘の所に2人。合計7人分を契約してくれているのでインシュアも愚痴に付き合ったのだ。
「お願い。インシュアさんしかもう頼る人がいないの」
「ジェーンさん。他人を頼る前にまず身内には相談をしたのですか?相談事を解決すれば契約という事は契約ではないのですから身内に相談できると思います」
「出来るわけないじゃない」
「身内にも相談できない事を他人に相談という選択肢こそわたくしは出来ません。あぁ9時半になってしまいました。準備もせねばなりませんのでこの辺で切り上げてくださいまし」
時計を見ていそいそと出かけていくインシュア。
しかし、ジェーンのお願いは図らずもインシュアも巻き込まれてしまうのだ。
◇~◇~◇
14:00
「フェオン未亡人。こんにちは。ユズリッハ保険商会のインシュアです」
「あぁよく来てくれたわ。さぁさぁ中に入って。ツィトローネンルラーデを用意してるわ」
「まぁ、そんな高価なお菓子。勿体ないですわ」
「まぁまぁ、インシュアさんに折り入って頼みがあるの。安いものよ」
こんな時、大抵は碌なお願いではない。タダほど高いものはないのだ。
いっぱしの保険販売員に豪華なロールケーキを普通は出さない。
「実はね…先日大伯父が亡くなってたの」
「それはお悔やみ申し上げます」
「いいのよ。ただ問題が起きちゃったのよ」
「ご契約を頂いていたのでしょうか?死亡保険金だけをご請求されてたという事ですか?」
よくいるのだ。
亡くなる前に病院に救急搬送をされて処置を受けたけれど亡くなってしまわれる方の中に、【入院給付金】を請求し忘れるご契約者様がいるのだ。退院という事にはならないが日帰り入院でも対応の場合は入院給付金も対象になるし入院御見舞金の対象になる事もある。
死亡保険金の金額が大きいのでうっかり請求をし忘れるご契約者様の遺族は多いのだ。
その上、インシュアが先輩から引き継いだ契約者様の中には見直しを一切されず昔のままの場合もある。その場合、入院御見舞金と言う名称ではなく退院お祝い金という名称の商品もある。
亡くなっているので【お祝い金?】と該当しないと勝手に判断する契約者様の遺族もいるのだ。
他にも病院が書いてくれる診断書の内容に大きく左右されるが、事故死亡の場合に死亡保険金が倍になる商品もある。例えば騎乗していた場合、亡くなって落馬したのか、落馬によって亡くなったのかで保険金の扱いが変わるのである。
遺族にしてみれば10万が20万ならまぁ仕方ないかで済ませる者もいるだろうが、1億が2億となれば訴訟に発展する事もある。
しかし、フェオン未亡人はその亡くなった大伯父はインシュアの顧客ではないだろうと言った。
「保険なんて掛けてるはずがないわ。借金だらけの博打王だったと聞いているもの。早々に勘当されたと聞いていたし、亡くなった主人も会った事があったかどうかも判らないってくらい疎遠中の疎遠だったのよ」
なんだか嫌な予感がするインシュア。
ツィトローネンルラーデの上にちょこんと乗せられているレモンの酸っぱさを誤魔化そうと一口食べたが甘いのか酸っぱいのかよく判らなくなっただけだった。
※結局聞き流し発動かぃっ!
◇~◇~◇
「では今日も一日をお客様の為に!」
ユズリッハ保険の王都西南支店長の大きなゲキが部屋の隅まで行きわたると「はいっ」と返事をする販売員たち。ここ1年ほど売り上げの首位を独走するインシュアの元にジェーンがやってきた。
「インシュアさん、ちょっといいかな?」
「申し訳ありません。今日は伺う約束のあるご契約者様がいますので」
「えっと…何時から?」
「14時に伺うお約束をしています。現在9時ですのであと5時間しかありません」
「フェッ??」
デスクで保険の見積書を契約内容確認シートのファイルに挟んでいるのだが、ジェーンが立ち去る様子はない。
「ジェーンさん。ここに立っているくらいならご契約者様にご機嫌伺いにでもでられたらどうです?こんな怪我じゃ給付金は出ないだろうなと思っているかも知れませんよ。小さな悩みを逃してはなりません」
「あの、途中まで一緒に行ってもいい?相談があるの」
「相談?私達は販売員です。相談はご契約者様や契約を考えてくださる方から受けるものです。いつ何時も受け答えできるよう日々商品への理解をするのが基本です」
「それが‥‥保険の事じゃないの。でも頼まれちゃって」
「自身で解決できないものを気安く引き受けたのは貴女。それを解決するのも貴女ではありませんか?」
「そうなんだけど、契約するからって言われちゃって…。ほらウチ、半年後に学院に入学するじゃない?お金が必要でかなりの大口を契約してくれそうだったから…つい…」
「ジェーンさん。入学するじゃない?と言われましてそうですかとしか言えません。事前に何の相談も報告もなかった話に同意を求めるのはおかしいと感じた事はありませんか?家族構成をわたくしが知っていたら気持ち悪くありませんか?」
インシュアは冷たいのだ。しかしこれもインシュアの処世術。
ヘタに首を突っ込むと碌なことにならない。インシュアには子供はいないが契約をしてくれている顧客からよく愚痴を聞かされることがあるのだ。
契約者様だけに無碍には出来ず、ベンジャーとの会話で培った「受け流し」を発動させてその場をやり過ごしている。
先日の事である。
「もう、聞いてよ」
「はい、お聞きいたします」
「ママ友でさぁ。ボス的な人がいるんだけど結構無茶ぶりしてくるの。でもね否定的な事を言っちゃうと除け者にされるんだよね。いや、私は良いの。私はね。除け者にされてもやっと解放されたぁってなるから良いんだけど、矛先が娘に向かうのよ。皆と遊んでても【あの子とお話しちゃダメ】みたいなことされちゃうのよ」
「そうですか」
「でね?大通りに雑貨店が出来たんだけど、そのボスママの子分Aがね、あ、ボス的な人にいつもベッタリなおべっかばかりいう人ね。断りは得てないわよ?私が勝手にそう言ってるだけなんだけど、【ワタクシ、24金はだめじゃない?】って聞かれたの。そんなん知るかって思ったんだけどそんな事言ったら大変だから、そうですねーって言ったの。だってさ、そこでそうですか?って言ったら、【私の事を何にも知らないのね】って言うのよ。知るかっての。旦那の事だって全部知ってるわけじゃないし、他人の事なんかもっと興味ないわよ」
「なるほど」
「そしたらね?その店の商品は王女殿下の監修だったのよ。で、それをボスママがね、子分Aと私が王女殿下を貶したって言うのよ。酷いと思わない?不敬罪とか言われちゃうし。雑貨店の品物可愛かったから幾つか買ったんだけど、【あら?24金はダメだったのでは?】なんて言われるし。私はダメなんて言ってなーい!あぁ~もぅ公園行くの止めようかな」
「それがよろしいかと」
その後も延々と続くボスママと愉快な仲間たちの愚痴。
解放されたのは3時間も後の事だったのだ。
愚痴を聞いたのはこのご夫人の御実家が孫に対して【敬老保険】を掛けてくれたからである。
敬老保険とはユズリッハ保険商会が独自で販売を開始した保険で、現金などを渡すと生前贈与とみなされる可能性がある富豪たちの為に販売された保険である。
主契約者が祖父母のどちらかで、被契約者が孫になるのだ。要は学資保険の主契約者が親ではなくジィバァになった保険だが満期の頃になるとジィバァの生存が危うい。6歳未満の子供が対象のため成人までは短くて15年、長い場合は20年である。金額もそこそこになるのだ。満期直前で被契約者の孫の保険に転換する事が出来るので相続や贈与の対象から外れるのだ。
この夫人が2人の他に、この夫人の兄となる息子の所に3人、この夫人の妹となる娘の所に2人。合計7人分を契約してくれているのでインシュアも愚痴に付き合ったのだ。
「お願い。インシュアさんしかもう頼る人がいないの」
「ジェーンさん。他人を頼る前にまず身内には相談をしたのですか?相談事を解決すれば契約という事は契約ではないのですから身内に相談できると思います」
「出来るわけないじゃない」
「身内にも相談できない事を他人に相談という選択肢こそわたくしは出来ません。あぁ9時半になってしまいました。準備もせねばなりませんのでこの辺で切り上げてくださいまし」
時計を見ていそいそと出かけていくインシュア。
しかし、ジェーンのお願いは図らずもインシュアも巻き込まれてしまうのだ。
◇~◇~◇
14:00
「フェオン未亡人。こんにちは。ユズリッハ保険商会のインシュアです」
「あぁよく来てくれたわ。さぁさぁ中に入って。ツィトローネンルラーデを用意してるわ」
「まぁ、そんな高価なお菓子。勿体ないですわ」
「まぁまぁ、インシュアさんに折り入って頼みがあるの。安いものよ」
こんな時、大抵は碌なお願いではない。タダほど高いものはないのだ。
いっぱしの保険販売員に豪華なロールケーキを普通は出さない。
「実はね…先日大伯父が亡くなってたの」
「それはお悔やみ申し上げます」
「いいのよ。ただ問題が起きちゃったのよ」
「ご契約を頂いていたのでしょうか?死亡保険金だけをご請求されてたという事ですか?」
よくいるのだ。
亡くなる前に病院に救急搬送をされて処置を受けたけれど亡くなってしまわれる方の中に、【入院給付金】を請求し忘れるご契約者様がいるのだ。退院という事にはならないが日帰り入院でも対応の場合は入院給付金も対象になるし入院御見舞金の対象になる事もある。
死亡保険金の金額が大きいのでうっかり請求をし忘れるご契約者様の遺族は多いのだ。
その上、インシュアが先輩から引き継いだ契約者様の中には見直しを一切されず昔のままの場合もある。その場合、入院御見舞金と言う名称ではなく退院お祝い金という名称の商品もある。
亡くなっているので【お祝い金?】と該当しないと勝手に判断する契約者様の遺族もいるのだ。
他にも病院が書いてくれる診断書の内容に大きく左右されるが、事故死亡の場合に死亡保険金が倍になる商品もある。例えば騎乗していた場合、亡くなって落馬したのか、落馬によって亡くなったのかで保険金の扱いが変わるのである。
遺族にしてみれば10万が20万ならまぁ仕方ないかで済ませる者もいるだろうが、1億が2億となれば訴訟に発展する事もある。
しかし、フェオン未亡人はその亡くなった大伯父はインシュアの顧客ではないだろうと言った。
「保険なんて掛けてるはずがないわ。借金だらけの博打王だったと聞いているもの。早々に勘当されたと聞いていたし、亡くなった主人も会った事があったかどうかも判らないってくらい疎遠中の疎遠だったのよ」
なんだか嫌な予感がするインシュア。
ツィトローネンルラーデの上にちょこんと乗せられているレモンの酸っぱさを誤魔化そうと一口食べたが甘いのか酸っぱいのかよく判らなくなっただけだった。
※結局聞き流し発動かぃっ!
43
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。
ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」
夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。
元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。
"カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない"
「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」
白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます!
☆恋愛→ファンタジーに変更しました
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる