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閑話②★ライアル伯爵家日記(2話)
まさかの留年
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ライアル伯爵家の本宅は殺伐とした空気が漂っている。
インシュアを離れに追いやってもうすぐ5年になる。その間にベンジャーは31歳になった。
息子のヨハンは8歳の誕生日を先日迎えたばかりである。
対外的にインシュアのランス男爵家の遠戚の子だという事で学院に通わせたいというインシュアの願いを聞き入れヨハンは学院に通い始めた。
本来なら初等科3年生なのだがヨハンは2回目の初等科2年生である。
所謂問題児で学院からは同じ学年にクラスは別でも第二、第三王子それぞれの娘である令嬢がいた。まもなく第一王子が王太子に立太子し、第二王子殿下、第三王子殿下は臣籍降下をする。
多少は護衛も緩くはなるが王族である事は変わりない令嬢が2人いるのだ。問題が起こる前にとライアル伯爵家のヨハンを開校以来初めて初等科生で留年としたのだ。
学院としては留年させれば一旦退学をして、伯爵家で家庭教師や講師を雇うなりして先ずは所作やマナー、他に常識を学ばせるだろうと思ったのだが猛烈な抗議をした男がいた。
◇~◇~◇
「どうして留年なんだ?あり得ないだろう!」
怒鳴り込んできたのはライアル伯爵だった。あまりの剣幕に誰もが驚いた。
無遅刻無欠席だったため、出席日数が足らないという理由は使えない。学院長は副学院長と共に「成績不振」「粗暴」「王族への不敬」を告げた。
「こんなかわいい子が粗暴?お前たちは子供の何を見てるんだ!」
「ですが、ヨハン君がケガをさせた子はもう20人以上。どこの家からも抗議文や治療費の請求が来ているのではないですか?」
「ケガって少し体に触れたら倒れただけだろう。倒れたほうが悪い!」
「少しって…後ろから助走をつけて飛び蹴りのどこが少しですか…あり得ません」
「それにだな。成績不振ってお前たちの教え方が悪いんだろう。自分を棚に上げて何を言ってるんだ」
「未だにアルファベットが書けない。おはようと言えても書けない。答えが10以下の算術も出来ない、何より国王陛下の名前が言えない…他にもあります。テストの答案を見た事がありますか?自分の名前すら2年経っても間違ってるんです。確かに平民の子供がぽっかりと入学する事がありますがそういう子の初期がずっとです。何かあれば付き人を呼んで他の子供たちの前で折檻の真似事をするんですよ?」
「こう言ってはなんですけどね。若奥様も勉強した方が良いんじゃないですか?ヨハン君が言ってますよ?【母様がいう事を聞かない使用人はこうやって躾ければいい】と棒で叩いていると。身分が下の者はそうやって躾けるのだと言ってるんです。ご家庭に問題があるんじゃないですかね?若奥様は届け出によれば伯母ですよね?呼び方についてもちゃんとされた方が良いですよ?男児のデヴュタントは10歳なんですから」
ヨハンが母様というのはインシュアの事ではない。メイサの事である。
学院長たちはその事を知らない。届け出はインシュアがヨハンの伯母で預かって学院に通わせているという事である。そこに伯爵家当主であるライアル伯爵と、次期当主ベンジャーの直筆署名もあるのだ。
ライアル伯爵は言い返す事出来ないし間違いを正す事も出来ない。
ただヨハンがバカにされたと逆キレをして屋敷に帰る事しか出来なかった。
◇~◇~◇
当のヨハンはかなりごねた。それまで一緒のクラスにいた者達は3年生になるので校舎そのものが違うのだ。教科も3年生からは一人の講師が色々な教科を教えるのではなく教科ごとに講師も変わる。
何よりブレザーの色も変わるのに自分だけどうして前と同じなんだと屋敷の中を暴れまわった。
伯爵夫妻はお小遣いをあげるから、馬を買ってあげるから、剣を新しくしてやるからと機嫌を取るが親であるベンジャーはヨハンの声を聞いただけで眉間に皺を寄せて足早に自室にこもり食事も自室で済ませた。
メイサは夜遅くまで商人を呼んでドレスのデザインに注文を付けたり宝飾品を選んだり、時には屋敷の庭に作った舞台で劇団を呼んで劇を観賞する。
商人や劇団のものはインシュアの事は知らないし夜会などに行ったこともないため、メイサの事を伯爵夫人だと思い込んでいる。
商人や劇団のものは噂だけは知っていた。
ライアル伯爵の次期当主は妻をこよなく愛し、側に居てくれるだけいいからと溺愛していると。しかし同時に言うのだ。「噂通りだが、あんな我儘な女はごめんだな」と。
メイサもヨハンの暴れる声などお構いなしである。
放っておいても伯爵夫妻が面倒を見てくれるのだから。
しかし前代未聞の初等科留年についてはベンジャーにも黙っている事は出来ない。
父の言葉に留年を知ったベンジャーはヨハンを呼ぶよう執事に言った。
執事が呼びに行っている間、独り言ちた。
「所詮は平民の子だからな」
自分が父親だという事は棚に上げている。
執事は心の中で【種も最悪】と呟いた。
「もう一度2年生が出来るんだ。良かったじゃないか」
「良くないです。みんなブレザーの色も違うのに!」
「校舎も違うから会う事もないだろう。つまらんことで私に手間を掛けさせるな」
「でもっ!」
「しつこいぞ。ブレザー?そんなものより留年したという事を恥ずかしいと思え。いいか?もう一度言う。手間を掛けさせるな」
父親には歯向かえない。ヨハンは下唇を噛み締めてペコリと頭を下げると部屋を出た。
◇~◇~◇
5年も近くになればベンジャーはメイサを見るとうんざりした気持ちになった。
ヨハンが手がかからなくなったとなればベンジャーにすり寄って来るのだ。
話の内容は何時も同じ。
「もういいんじゃない?あの女を追い出しましょうよ」
「もう1人くらい子供が居たっていいんじゃない?」
「ヨハンが出来る前みたいに一緒に街に行ったり観劇がしたいの」
かつて嫌っていた令嬢たちのように華美なドレスを着て宝飾品をぶら下げ香水の匂いを振りまく。
強い物言いになる時は自分の思い通りにならなかった時だ。そんな声にベンジャーがときめく事はない。そこにあるのは嫌悪であって恋慕ではないのだ。
「仕事で疲れてるんだ。1人にしてくれないか」
「そういうベンジャーを癒すために私がいるんでしょう?」
「余計に疲れるから離れてくれ」
「酷いわ。私はこの屋敷から出られないのに!あの女は街をぶらぶらしてるのに!」
「じゃぁ同じように働いてみてもいいよ。そうするといい。話は終わりだ」
「いやよ!どうしてもうすぐ伯爵夫人の私が働かなきゃいけないのよ」
酷い形相で睨みつけてくるメイサは醜かった。
肌に艶も張りもなく、毎日のように使用人に手入れをされているからこそ見られるが衰えは隠せない。その上見た目だけでなく中身もかつての令嬢たちのように薄いのだ。
同じ事も何度も何度も繰り返すが令嬢たちと違うのはベンジャーを持ち上げる事ではなく自分がいかに我慢をしているか、耐えているか、そしてベンジャーに相応しいのかという自分の事ばかりなのだ。
メイサが部屋から出て行くと入れ替わるように父のライアル伯爵が入ってくる。
「何かあればヨハンを連れて出て行きます!」
というメイサにライアル伯爵夫妻は強く言えないのだ。
その矛先はベンジャーに向かってくる。
「もう1人作ったらどうだ?ヨハンさえいればいい。次の子はメイサにある程度金を握らせて領地にでも閉じ込めればいいじゃないか。まだ31だろう?執務はやっておくから子供を作ってこい」
何処の世界に仕事はしておくから子供を作ってこいと息子に言う父がいるのだろうか。
そんな父にもうんざりするベンジャーは髪をかきむしる事で返事をした。
動きそうにない息子に「忘れてた」と王宮から【春の夜会】に来いという招待状を手渡す。
ベンジャーは破顔した。夜会シーズンの解禁を告げる【春の夜会】
これをきっかけに爵位に関係なく貴族たちは夜会や茶会を開くのだ。
特に春から初夏にかけては自慢の庭園を見て欲しいと夫婦宛に招待状が頻繁に届くのだ。
今年はインシュアに夜会や茶会のたびにドレスと宝飾品を贈ろう。
そのまま突き返されても悶絶するほど嬉しいが、自分の色を纏ったインシュアに冷たくされるのもまた贈り物をした甲斐があるというものだ。
◇~◇~◇
夜会の日。わざわざ離れまで迎えに行ったのにインシュアはいなかった。
王宮には直接向かうと言っていたというルーナを睨みつけたベンジャーは急いで王宮に向かった
インシュアを離れに追いやってもうすぐ5年になる。その間にベンジャーは31歳になった。
息子のヨハンは8歳の誕生日を先日迎えたばかりである。
対外的にインシュアのランス男爵家の遠戚の子だという事で学院に通わせたいというインシュアの願いを聞き入れヨハンは学院に通い始めた。
本来なら初等科3年生なのだがヨハンは2回目の初等科2年生である。
所謂問題児で学院からは同じ学年にクラスは別でも第二、第三王子それぞれの娘である令嬢がいた。まもなく第一王子が王太子に立太子し、第二王子殿下、第三王子殿下は臣籍降下をする。
多少は護衛も緩くはなるが王族である事は変わりない令嬢が2人いるのだ。問題が起こる前にとライアル伯爵家のヨハンを開校以来初めて初等科生で留年としたのだ。
学院としては留年させれば一旦退学をして、伯爵家で家庭教師や講師を雇うなりして先ずは所作やマナー、他に常識を学ばせるだろうと思ったのだが猛烈な抗議をした男がいた。
◇~◇~◇
「どうして留年なんだ?あり得ないだろう!」
怒鳴り込んできたのはライアル伯爵だった。あまりの剣幕に誰もが驚いた。
無遅刻無欠席だったため、出席日数が足らないという理由は使えない。学院長は副学院長と共に「成績不振」「粗暴」「王族への不敬」を告げた。
「こんなかわいい子が粗暴?お前たちは子供の何を見てるんだ!」
「ですが、ヨハン君がケガをさせた子はもう20人以上。どこの家からも抗議文や治療費の請求が来ているのではないですか?」
「ケガって少し体に触れたら倒れただけだろう。倒れたほうが悪い!」
「少しって…後ろから助走をつけて飛び蹴りのどこが少しですか…あり得ません」
「それにだな。成績不振ってお前たちの教え方が悪いんだろう。自分を棚に上げて何を言ってるんだ」
「未だにアルファベットが書けない。おはようと言えても書けない。答えが10以下の算術も出来ない、何より国王陛下の名前が言えない…他にもあります。テストの答案を見た事がありますか?自分の名前すら2年経っても間違ってるんです。確かに平民の子供がぽっかりと入学する事がありますがそういう子の初期がずっとです。何かあれば付き人を呼んで他の子供たちの前で折檻の真似事をするんですよ?」
「こう言ってはなんですけどね。若奥様も勉強した方が良いんじゃないですか?ヨハン君が言ってますよ?【母様がいう事を聞かない使用人はこうやって躾ければいい】と棒で叩いていると。身分が下の者はそうやって躾けるのだと言ってるんです。ご家庭に問題があるんじゃないですかね?若奥様は届け出によれば伯母ですよね?呼び方についてもちゃんとされた方が良いですよ?男児のデヴュタントは10歳なんですから」
ヨハンが母様というのはインシュアの事ではない。メイサの事である。
学院長たちはその事を知らない。届け出はインシュアがヨハンの伯母で預かって学院に通わせているという事である。そこに伯爵家当主であるライアル伯爵と、次期当主ベンジャーの直筆署名もあるのだ。
ライアル伯爵は言い返す事出来ないし間違いを正す事も出来ない。
ただヨハンがバカにされたと逆キレをして屋敷に帰る事しか出来なかった。
◇~◇~◇
当のヨハンはかなりごねた。それまで一緒のクラスにいた者達は3年生になるので校舎そのものが違うのだ。教科も3年生からは一人の講師が色々な教科を教えるのではなく教科ごとに講師も変わる。
何よりブレザーの色も変わるのに自分だけどうして前と同じなんだと屋敷の中を暴れまわった。
伯爵夫妻はお小遣いをあげるから、馬を買ってあげるから、剣を新しくしてやるからと機嫌を取るが親であるベンジャーはヨハンの声を聞いただけで眉間に皺を寄せて足早に自室にこもり食事も自室で済ませた。
メイサは夜遅くまで商人を呼んでドレスのデザインに注文を付けたり宝飾品を選んだり、時には屋敷の庭に作った舞台で劇団を呼んで劇を観賞する。
商人や劇団のものはインシュアの事は知らないし夜会などに行ったこともないため、メイサの事を伯爵夫人だと思い込んでいる。
商人や劇団のものは噂だけは知っていた。
ライアル伯爵の次期当主は妻をこよなく愛し、側に居てくれるだけいいからと溺愛していると。しかし同時に言うのだ。「噂通りだが、あんな我儘な女はごめんだな」と。
メイサもヨハンの暴れる声などお構いなしである。
放っておいても伯爵夫妻が面倒を見てくれるのだから。
しかし前代未聞の初等科留年についてはベンジャーにも黙っている事は出来ない。
父の言葉に留年を知ったベンジャーはヨハンを呼ぶよう執事に言った。
執事が呼びに行っている間、独り言ちた。
「所詮は平民の子だからな」
自分が父親だという事は棚に上げている。
執事は心の中で【種も最悪】と呟いた。
「もう一度2年生が出来るんだ。良かったじゃないか」
「良くないです。みんなブレザーの色も違うのに!」
「校舎も違うから会う事もないだろう。つまらんことで私に手間を掛けさせるな」
「でもっ!」
「しつこいぞ。ブレザー?そんなものより留年したという事を恥ずかしいと思え。いいか?もう一度言う。手間を掛けさせるな」
父親には歯向かえない。ヨハンは下唇を噛み締めてペコリと頭を下げると部屋を出た。
◇~◇~◇
5年も近くになればベンジャーはメイサを見るとうんざりした気持ちになった。
ヨハンが手がかからなくなったとなればベンジャーにすり寄って来るのだ。
話の内容は何時も同じ。
「もういいんじゃない?あの女を追い出しましょうよ」
「もう1人くらい子供が居たっていいんじゃない?」
「ヨハンが出来る前みたいに一緒に街に行ったり観劇がしたいの」
かつて嫌っていた令嬢たちのように華美なドレスを着て宝飾品をぶら下げ香水の匂いを振りまく。
強い物言いになる時は自分の思い通りにならなかった時だ。そんな声にベンジャーがときめく事はない。そこにあるのは嫌悪であって恋慕ではないのだ。
「仕事で疲れてるんだ。1人にしてくれないか」
「そういうベンジャーを癒すために私がいるんでしょう?」
「余計に疲れるから離れてくれ」
「酷いわ。私はこの屋敷から出られないのに!あの女は街をぶらぶらしてるのに!」
「じゃぁ同じように働いてみてもいいよ。そうするといい。話は終わりだ」
「いやよ!どうしてもうすぐ伯爵夫人の私が働かなきゃいけないのよ」
酷い形相で睨みつけてくるメイサは醜かった。
肌に艶も張りもなく、毎日のように使用人に手入れをされているからこそ見られるが衰えは隠せない。その上見た目だけでなく中身もかつての令嬢たちのように薄いのだ。
同じ事も何度も何度も繰り返すが令嬢たちと違うのはベンジャーを持ち上げる事ではなく自分がいかに我慢をしているか、耐えているか、そしてベンジャーに相応しいのかという自分の事ばかりなのだ。
メイサが部屋から出て行くと入れ替わるように父のライアル伯爵が入ってくる。
「何かあればヨハンを連れて出て行きます!」
というメイサにライアル伯爵夫妻は強く言えないのだ。
その矛先はベンジャーに向かってくる。
「もう1人作ったらどうだ?ヨハンさえいればいい。次の子はメイサにある程度金を握らせて領地にでも閉じ込めればいいじゃないか。まだ31だろう?執務はやっておくから子供を作ってこい」
何処の世界に仕事はしておくから子供を作ってこいと息子に言う父がいるのだろうか。
そんな父にもうんざりするベンジャーは髪をかきむしる事で返事をした。
動きそうにない息子に「忘れてた」と王宮から【春の夜会】に来いという招待状を手渡す。
ベンジャーは破顔した。夜会シーズンの解禁を告げる【春の夜会】
これをきっかけに爵位に関係なく貴族たちは夜会や茶会を開くのだ。
特に春から初夏にかけては自慢の庭園を見て欲しいと夫婦宛に招待状が頻繁に届くのだ。
今年はインシュアに夜会や茶会のたびにドレスと宝飾品を贈ろう。
そのまま突き返されても悶絶するほど嬉しいが、自分の色を纏ったインシュアに冷たくされるのもまた贈り物をした甲斐があるというものだ。
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