では、こちらに署名を。☆伯爵夫人はもう騙されない☆

cyaru

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最終章☆それぞれの立ち位置(22話)

マルクスのお相手

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架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。

この章は最終章となりますので第一章から第四章のインシュアの保険販売とは読んだ時の受け取り方(感じ方)が変わるかも知れません。

中間にあるライアル伯爵家日記に近いと思って頂いて構いません。

架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。




◇~◇~◇

仕事を終えて離れに帰ると、リビングのソファにヨハンが寝ているのは週に3、4回あった。
インシュアを待っていたのだろうか、ヨハンが眠っているソファの向かいには空のグラス。
自分用に何杯か飲んだグラスも水差しと並んで置かれている。

あまりにも頻度が高いため、インシュアはヨハン用にベッドも用意をしたが、ヨハンはいつもリビングのソファで眠ってしまっていた。


ヨハンが来ることを前提にしてインシュアは食事にはならないがマドレーヌなどを菓子をリビングに置くようになった。ルーナがじぃぃっと見ていたが【これはお客様用】と言えば手を出す事はなかった。


スザコーザ公爵家の当主、ケルベロスが言った通り2か月半ほど経ったある日。



ヨハンは学院が夏季休暇に入っており昼間は離れで宿題をして過ごしているようだった。

先代ライアル伯爵夫妻は離れた地にある元々商会の事務所にしていた建物で生活をしている。
保険の販売をしていると小耳に挟んだ。
引っ越しをして早々に大部分の土地を売り、事務所兼使用人の仮眠室だった建物を直しながら住んでいると言う。

残った部分を抵当に入れて金を借りるのも時間の問題だろうが、インシュアは立場があるうちに売って現金化しないと本当に何もなくなりますよ~っと先代ライアル伯爵が住む方向を向かって呟いた。



ベンジャーはそれまでの仕事も辞めて伯爵家当主としての仕事をしていると言うが1本も売れない高効能水だけが商品なのだ。赤字でも使用人達の給料は払わねばならず、メイサに買ってやった宝石を売りなんとか凌いでいるようだったが、メイサはかなり暴れているらしい。

当主を継いだばかりの2,3か月は兎に角王宮に提出する書類に忙殺される。

「旦那様、またツケの回収に商人が来ておりますが」

「またか…メイサには売るなと言ってあるのに」

「いえ、その支払いもですが消耗品や食料などの支払いも含まれています」

「あの金箔を剥がすか…仕方ないだろう。趣味も悪いし売れるなら売るしかない」


豪華な馬車はそのままなら二束三文でしか買い取ってもらえなかったが、内装などをばらすとそちらのほうが高く売れた。今はその金で粗末な馬車が1台あるだけだ。


そんな中、売り上げもないのに司法議員の事務所から3千万が口座に入金になった。


「真面目にやってるからかな。それとも新人のうちだけ支給されるんだろうか」


よく考えないベンジャーは売り上げがなくても不正行為をしない者に与えられる支給かと思い、毎日のように訪れる請求書を持った商人への支払いに使ってしまった。こうやって執務をしていれば定期的に金が貰えると勘違いしたベンジャーは離れを訪れる事もなかった。






朝、離れから出ると、本宅の玄関前に大勢の債権者が集まっていた。

――午後は半休とらないといけないわね――

そう思いユズリッハ保険商会に出勤したインシュアは午後は休む上に2、3日は出社できないと支店長に告げる。そろそろかなとは思っていたのでご契約者様との約束も入れないようにしている。
当然給料は歩合で稼いでいたのでほぼ基本給。営業成績もトップからビリかブービーである。
やる気がないのではない。同時進行で進む事柄に双方全力投球が無理なだけなのだ。


離れに帰る前にインシュアは実家であるランス男爵家に立ち寄った。
やってきたインシュアを見て、当主となったマルクスが駆け寄ってくる。

「来たって事はいよいよ?」

「今朝、門の前に居たのは債権者ね。ごたごたになるから騎士団も今日入るはずよ」

「やっとだね。白紙になったら元に戻る。良かったじゃないか姉さん」

「それは良いんだけど、そちらの女性は?」

「あ、この子は‥‥その…あ、事務をやって貰ってるんだ。リンク男爵家の四女で仕事がないっていうから…学園で1年だけ一緒だったんだけど‥‥えっと…」



染めた頬を指でポリポリとしながら紹介をされたのはリンク男爵家の四女でベス。
学院で一緒だったという事はその頃からマルクスと仲が良かったのだろう。
リンク男爵家は昔のランス男爵家に負けず劣らずの貧乏男爵家である。
だが、保険販売で伺う商会では貧乏だが仕事は丁寧で兎に角真面目。
任せて間違いないと定評がある。

「ふふっ。やっとわたくしにも妹ができるのね?」

「そっそんなんじゃ…」

「あら?違うの?残~念。じゃぁスザコーザ公爵家にお見合い頼まないとね」

「やめてっ!姉さん、それだけはやめて!判った、いう!言うから!」


弟のマルクスから正式に紹介をされて、インシュアは満面の笑みである。明日にでもリンデバーグにはご令嬢紹介の任を解かないと!と思い、マルクスと伯爵家に向かった。


予想通り伯爵家の門の前は人だかりが野次馬も混じって更に凄くなっている。
いつもの門番ではなく、騎士団の隊服をきた騎士が数人立っていることからして屋敷の中は阿鼻叫喚だろう。

伯爵家には立ち寄らず、インシュアはマルクスと共に離れに入った。


「あ、おばさん。お帰りなさい…あの…屋敷にいっぱい人が来てこっちに来ちゃった」

「いいのよ。宿題は済んだ?毎日絵日記は書いた?」

「書いたよ。でも‥‥」

そっと日記帳を取るとグチャグチャだが、空は青だけで塗りつぶしている。
良い傾向じゃないかと、ヨハンの頭を撫でておやつを勧めた。


帰宅して1時間程だろうか。玄関の扉を強く叩く者がいる。


――やっと真打登場ね――


インシュアは、ヨハンにはここに居る様に言ってマルクスと玄関に向かった。
扉を開けると、数人の騎士に連れられたベンジャーと先代ライアル伯爵がいた。

「何事かと思えば…どうされましたの?」

「どうされたじゃない!なんだあのフェンスは!本宅から直接来られないだろう」

「当たり前ではありませんか。他家との境界にフェンスがあるのは当たり前です」

「へっ?…ここはお前の名義だろう。ひいてはライアル伯爵家の物だ。夫婦の共有財産だからな!債権者にこの土地を売った金で支払いをするから権利書を出せ!お前の名義だとは言ってもライアル伯爵家の者なんだから助けるのが当たり前だろう」


インシュアは、「プっ」と吹き出した。「はいはい」と後ろからマルクスがインシュアの肩を叩く。
婚約中にちらっと話をした程度のマルクスにベンジャーは何故ここに居るのだと驚いた。


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