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第15話 手詰まりの捜索
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王都では大変な騒ぎになっていた。
王家や公爵家からロッカス伯爵家にはエメリーの所在について問い合わせが来る。
その度に「知らない」と同じ返事を返すのだが、1週間前には屋敷に匿っているのではないかと家宅捜索をさせてくれと言い出し、断ったほうが面倒だとロッカス伯爵は「お好きにどうぞ」と屋敷の中を探させた。
屋根裏まで騎士が覗いて探したけれどエメリーがいるはずがない。
それでも「どこに隠した」「帰って来ていないか」と毎日やって来るし、屋敷の周囲には人を配置して出入する人間をチェックする。
流石に1か月もすると敷地の中には居ないと判断をしたのか問い合わせだけになったが、屋敷の周囲は公爵家が寄越した私兵に監視をされていた。
隠すものはここにはないのでロッカス伯爵は堂々と出入りもするし、正門から出入りする馬車の中も「覗きたければどうぞ」と中を確認させる。
最初は面倒だと思っても、慣れて来ればどうという事はない。
但し、心外であることは事実なので後日公爵家には抗議文と一緒に迷惑料を請求する予定である。
茶会や夜会でも娘を放逐した非道な親とオーブルストン公爵夫人が触れ回っているが、表向き同意をする夫人方も眉をしかめる。
「当たり前じゃないの。だけど元を正せばアチラのご子息の不貞でしょう?よく触れ回れるわね」
「王女時代から厚顔無恥だもの。仕方ありませんわ」
「そもそもで欲の皮が張っておりますものね。お肌にハリを持たせるのが欲だなんて贅沢ですわねぇ」
「あら?機嫌を損ねればトリモチになりましてよ?」
公爵夫人だから話を振られれば意に添うように受け答えをする夫人たちもその場を離れれば言いたい放題。
同時にオーブルストン公爵家の評判も落ちて、豊作なのに不作を理由にしたりと一部の貴族や商会は取引量を減らす方向に動き始めてもいた。
捜索をするもののエメリーの所在は一向に掴めないまま。
オーブルストン公爵夫人の苛立ちは最高潮にまで達していた。
「そもそもでお前が!余計な事をするから!」
「仕方ないじゃないか。そういう母上だってどうしてさっさと魔導師に引き渡さなかったんだ!何もかも俺のせいにするのは辞めてくれよ」
「まぁっ!言うに事欠いて。いい?お前が勝手に鍵を使ったりしたことをあの程度で済ませてやったのは何処の誰?いい年をした息子のために頭まで下げたのは何処の誰よ。言ってごらんなさい!」
「父上だろう?」
カイルは言い合いになると面倒になって部屋に引き籠もる。
少し前までは気晴らしに街に出向いていたが、渦中の人となったカイルを迎えてくれるのはこの件についてフレッシュな情報を知りたい者ばかりで居心地の悪さを感じたカイルの足は外に向かなくなってしまった。
国王も王妃もランドリーメイドがした事とは言え、鍵を一時でも入れ替えられたのは事実で公には出来ない。今は入浴時でも鍵に紐をつけて正真正銘片時も肌身離さず鍵を持ってはいるが、肝心の金庫にそこまで保管せねばならない品がないのは笑い話にもならない。
それよりも困ったのはエメリーが王都を離れて1か月だというのに魔導師達の魔力が目に見えて減少していることが国王にとっては頭の痛い問題だった。
10年周期で魔導師達の魔力は増減を繰り返すので、たまたまその年に当たっただけではあるものの民衆たちはその事も加味して好き放題に噂をし始める。
「よくある事だ。5年も経てば元に戻る」
幾ら説明をしても、為政者に反感を持つのは何時の時代も同じ。
まして今回は15年前に「大聖女の再来」とも言われたエメリーをその魔力欲しさに取り込もうと婚約までさせたのに不貞をし放題、さらに自分の事は棚に上げて婚約を一方的に解消したことで伯爵家は飛び火を恐れて娘を放逐。
数百年に1度と言われる厄災が国を襲うのではないかとデマまで流れ始めてしまった。
火消しに王家が躍起になればなるほどデマは真実味を帯びてしまって悪循環を辿っている。
噂を収束させるためにはエメリーを呼び戻すしかないが、ロッカス伯爵家の敷地内には居ないし、カイルに婚約解消を言われた当日にエメリーの乗った馬車が入ったのは確実でも、その後にロッカス伯爵家の馬車は外に出ていない事も確認済みで、身一つで出されたとされるエメリーの捜索は手詰まりに近かった。
王家や公爵家からロッカス伯爵家にはエメリーの所在について問い合わせが来る。
その度に「知らない」と同じ返事を返すのだが、1週間前には屋敷に匿っているのではないかと家宅捜索をさせてくれと言い出し、断ったほうが面倒だとロッカス伯爵は「お好きにどうぞ」と屋敷の中を探させた。
屋根裏まで騎士が覗いて探したけれどエメリーがいるはずがない。
それでも「どこに隠した」「帰って来ていないか」と毎日やって来るし、屋敷の周囲には人を配置して出入する人間をチェックする。
流石に1か月もすると敷地の中には居ないと判断をしたのか問い合わせだけになったが、屋敷の周囲は公爵家が寄越した私兵に監視をされていた。
隠すものはここにはないのでロッカス伯爵は堂々と出入りもするし、正門から出入りする馬車の中も「覗きたければどうぞ」と中を確認させる。
最初は面倒だと思っても、慣れて来ればどうという事はない。
但し、心外であることは事実なので後日公爵家には抗議文と一緒に迷惑料を請求する予定である。
茶会や夜会でも娘を放逐した非道な親とオーブルストン公爵夫人が触れ回っているが、表向き同意をする夫人方も眉をしかめる。
「当たり前じゃないの。だけど元を正せばアチラのご子息の不貞でしょう?よく触れ回れるわね」
「王女時代から厚顔無恥だもの。仕方ありませんわ」
「そもそもで欲の皮が張っておりますものね。お肌にハリを持たせるのが欲だなんて贅沢ですわねぇ」
「あら?機嫌を損ねればトリモチになりましてよ?」
公爵夫人だから話を振られれば意に添うように受け答えをする夫人たちもその場を離れれば言いたい放題。
同時にオーブルストン公爵家の評判も落ちて、豊作なのに不作を理由にしたりと一部の貴族や商会は取引量を減らす方向に動き始めてもいた。
捜索をするもののエメリーの所在は一向に掴めないまま。
オーブルストン公爵夫人の苛立ちは最高潮にまで達していた。
「そもそもでお前が!余計な事をするから!」
「仕方ないじゃないか。そういう母上だってどうしてさっさと魔導師に引き渡さなかったんだ!何もかも俺のせいにするのは辞めてくれよ」
「まぁっ!言うに事欠いて。いい?お前が勝手に鍵を使ったりしたことをあの程度で済ませてやったのは何処の誰?いい年をした息子のために頭まで下げたのは何処の誰よ。言ってごらんなさい!」
「父上だろう?」
カイルは言い合いになると面倒になって部屋に引き籠もる。
少し前までは気晴らしに街に出向いていたが、渦中の人となったカイルを迎えてくれるのはこの件についてフレッシュな情報を知りたい者ばかりで居心地の悪さを感じたカイルの足は外に向かなくなってしまった。
国王も王妃もランドリーメイドがした事とは言え、鍵を一時でも入れ替えられたのは事実で公には出来ない。今は入浴時でも鍵に紐をつけて正真正銘片時も肌身離さず鍵を持ってはいるが、肝心の金庫にそこまで保管せねばならない品がないのは笑い話にもならない。
それよりも困ったのはエメリーが王都を離れて1か月だというのに魔導師達の魔力が目に見えて減少していることが国王にとっては頭の痛い問題だった。
10年周期で魔導師達の魔力は増減を繰り返すので、たまたまその年に当たっただけではあるものの民衆たちはその事も加味して好き放題に噂をし始める。
「よくある事だ。5年も経てば元に戻る」
幾ら説明をしても、為政者に反感を持つのは何時の時代も同じ。
まして今回は15年前に「大聖女の再来」とも言われたエメリーをその魔力欲しさに取り込もうと婚約までさせたのに不貞をし放題、さらに自分の事は棚に上げて婚約を一方的に解消したことで伯爵家は飛び火を恐れて娘を放逐。
数百年に1度と言われる厄災が国を襲うのではないかとデマまで流れ始めてしまった。
火消しに王家が躍起になればなるほどデマは真実味を帯びてしまって悪循環を辿っている。
噂を収束させるためにはエメリーを呼び戻すしかないが、ロッカス伯爵家の敷地内には居ないし、カイルに婚約解消を言われた当日にエメリーの乗った馬車が入ったのは確実でも、その後にロッカス伯爵家の馬車は外に出ていない事も確認済みで、身一つで出されたとされるエメリーの捜索は手詰まりに近かった。
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