エンディングノート

環流 虹向

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MGR

ちゅちゅ檸檬

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雨瑞くんが言う通り、本当にオアシスさんはお酒が強いらしくて私が2杯しか呑んでないワインを2本空けてしまった。

そりゃ買い出しすることになるなと思いながら、自分は少し暑い頬を冷たいテーブルに置いて冷やす。

もう疲れなのか、酔いなのか、分からないけど、頭がふわふわしてきて今にでも眠っちゃいそうだ。

けど、こんなこと次はないかもだからしっかり記憶に残しておきたい。

私が意地で睡魔から逃れていると、冷蔵庫で冷やしていたレモンサワーを3つ持ってきたオアシスさんは私と腕が触れ合ってしまいそうな距離に座った。

多分、オアシスさんも少し酔ってて距離感が分からなくなってるんだろう。

私はお酒の神さまに感謝して、頬をテーブルから離し座り直すフリをして腕が密着する距離に座る。

明人「ありがとうございます。おこたで冷たいものを体に入れるのって最高ですよね。」

環酉「分かります。…あ!大福アイスありますよ。食べますか?」

オアシスさんは持ってきてすぐに開けたレモンサワーを使い、アルコールで温まってきた体を冷やしながら私に聞いてきた。

明人「半分食べたいです。」

環酉「分かりました。持ってきますね。」

と、すぐさま私のそばを離れてしまったオアシスさんがアイスを持って私の元に戻るとさっきよりも近くに座り、コタツの中でたまに脚が触れ合ってしまう。

…やばい。これ、成くんだったらやってるわ。

私は最近忙殺されていた欲求がお腹下で少し湧き、その気持ちを焦って止める。

環酉「分けっこ出来るから大福2つなんでしょうね。けど、いつもは1人で2つ食べちゃいます。」

明人「私もです。1人で食べるとお腹の満足感。2人で食べると気持ちの満足感って感じです。」

環酉「気持ちの満足感…。俺、アイス食べて初めてそう思うかもしれないです。」

明人「環酉さんは…、分けっこする相手いないんですか?」

私は思い切って彼女がいるのか聞いてみる。

彼女がいるのであれば分けっこせずに、すぐに帰らないと。

この場にいることがオアシスさんの彼女さんを傷つけることになるから足元がおぼつかなくても自分の家に帰ろう。

環酉「采原さんと分けっこだと思ってたんですけど…。」

そんな悲しそうな顔しないでください。
彼女持ちの人は好きにならないようにしたいんです。

明人「えっと…、彼女さんのことだったんですけど…。」

環酉「いないですよ。いたら采原さんを家にあげません。」

…好き。

やっぱ、りとがおかしいんじゃん。
彼女がいるのに、女の人を家にあげるなんておかしいって思ってた。

それが“お友達”だったらなおさらだよ。

本当…、なんで付き合っちゃったんだろう。

明人「そうですよね。もし、いたら申し訳ないなって思っちゃいました。」

環酉「いないです。恋人を傷つけることはしたくないので。」

はあ…、好き。

こういう人とちゃんと付き合いたかったよ。

りとみたいに目移り激しい人じゃなくて、成くんみたいに一方的な気持ちの押し付けじゃなくて、オアシスさんみたいに相手を尊重出来る人とちゃんと付き合いたいよ。

環酉「…あと、好きな子の虫除けのために、その子が気づかないようなところに自分の痕跡をつけたりしません。」

そう言ってオアシスさんはあのキスマークがついていたところに唇を1度置き、驚く私を見つめる。

環酉「采原さんってなんで明人あきとって名前なんですか?」

明人「…え?」

今の流れで私の名前聞く…?

環酉さんの行動が全く読めない。

明人「明人あきとじゃなくて、明人めりって言うんです。親が明るい人になりますようにって意味を込めたら男っぽい字面になりました。」

そう話した私はその字面で学生時代にいじめにあったことを思い出し、そのせいで歪んでしまった顔を環酉さんに見せたくなくて俯く。

するとその俯いた顔を環酉さんがそっと片手ですくいあげてくれた。

環酉「明人めりって呼んでいいですか…?」

明人「え…。」

環酉「さっちゃんより、明人の方が可愛いし、響きが好きです。」

明人「…っえ、え…あ、いいですけど…。なんか恥ずかしいです。」

環酉「じゃあ恥ずかしいの伝染してください。俺の名前、知ってます…?」

明人「…環酉かんどりさん。」

環酉「下の名前、分かります?」

明人「信之のぶゆきじゃないのは知ってます。」

信之「薫が教えました?」

明人「あ、はい。」

そう答えると、なぜか環酉さんはため息をつく。

環酉「…ノブユキじゃないとなんだと思います?」

と、環酉さんはため息で俯きかけた顔を動かさず私を上目遣いで見てきた。

その顔が少し切なそうで今にも抱きつきたくなったけど、それをしていいか分からないのでまずは環酉さんの名前を1発で当てられるように考える。

明人「…ヒント頂けますか?」

環酉「信は『の』です。これでだいぶ絞れますよ。」

…え?絞れます?

私は『之』の中で『』に1番合いそうな名前の読み方を引っ張り出す。

明人「…信之ののさん?」

私が自信なさげで口に出すと、環酉さんは目を見開き朝日を入れるために開けたたるむカーテンのように垂れた優しい笑顔を見せてくれた。

信之「信之ののです。さんなしで呼んでもらえるともっと嬉しいです。」

明人「…は、はい。」

信之「言って…?」

明人「え?」

信之「俺の名前。」

明人「…信之のの。」

信之「嬉しい。明人めりの名前も知れて嬉しい。」

そう言って無邪気に嬉しそうに笑う信之に私は自分の気持ちが抑えられなくなって、思い切って唇を合わせた。

信之「…俺も。」

明人「はい…。」

私の頬にずっとあった手が信之の顔へ私を引き寄せて、パチパチしたレモンとたるんだウォッカが私の口の中に広がり脳みそがとろけ始める。

信之「風邪引くからベッド行こ。」

私は信之の言葉に静かに頷き、テーブルの向かい側にあったベッドに信之と一緒に浮かんだ。


…………
信之ののって名前、可愛すぎ。
オアシスさんの本名も可愛いってどういうこと?
神さまのいたずらが過ぎない?
…………


環流 虹向/エンディングノート
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