エンディングノート

環流 虹向

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TICKTACK

おはよう日様

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私は寝ながら変な声を出していることに気がつき、焦って目を覚ますと信之が私の寝ていた体を普段よりも丁寧に触れていた。

信之「…あ、おはよう。」

と、信之は私の大福アイスの間で顔を出した。

明人「お、おはよ…。するの?」

信之「…出来たら。」

私は信之の顔と腕の間から見えたものを見て、すぐに体制を整えて信之の思う通りに動いてもらう。

その信之はちょっと乱暴さんだったけど、朝起きて寝ぼけてた私にはいい刺激でしっかり目を覚まさせてくれた。

信之「昨日はごめん…。」

と、声が震える信之は私に抱きついて栓をしたまま謝った。

明人「いいの。信之、最近仕事忙しいもん。」

信之「けど…」

信之が言葉を詰まらせると私はなぜか目が潤んじゃうからちょっと辞めてほしいかも。

けど、そんなことは言えなくて私は信之から離れない限りずっと抱きついて信之を体いっぱい感じる。

明人「無理してすることじゃないよ。少し溜まってた方がいいって言うし、信之のタイミングでいいよ。」

信之「…うん。」

信之のその一言が最近とても寂しく感じるのはなんなんだろうな。

長いこと彼女してるはずなのに分からないのが悔しいよ。

明人「しなくても信之といられれば私は十分嬉しいから。…いなくならないでね。」

私はずっと不安に思ってたことを信之に伝えると、信之はその言葉を私に飲み込ませるようにキスをした。

信之「…ありがとう。明人は優しいね。」

信之は私の好きな垂れた笑顔をくれたけど、私が欲しい『うん。』はくれなかった。

私はそのことに我慢できずに涙を流してしまう。

信之「やっぱり嫌…?」

明人「ううん…っ。そういうことじゃないの…。」

私の涙を優しく拭く信之をもう困らせたくなくて私は全部を伝えきるのを諦めた。

その代わりに言葉を涙に変えて溢れ出してしまうのを信之の手に全て受け取ってもらう。

前はちゃんと我慢出来たのに、たくさん我慢することが多くなって、全部溢れちゃって、全部諦めちゃったから信之のこともダメになっちゃったんだろう。

もし、莉音のことがなければ我慢出来たかな。

もし、仕事が今も続けられる環境だったら我慢出来たかな。

もし、信之が子どもを作れる体だったら泣くことはなかったかな。

…もし、子どもが出来たら信之は私とずっと一緒にいようって思ってくれるかな。

信之「明人、ごはん食べようね。冷蔵庫に入ってたホタテ使ってもいいかな?」

明人「…うん。」

信之「明人の好きなワインのソテーにしよっか。」

明人「…うん。食べたい。」

信之「分かった。作ってきてもいいかな?」

明人「うん…。」

信之「明人はゆっくりしてて。すぐ戻ってくるね。」

私が余計なことを考えている時に信之は私のことだけを思って動いてくれた。

私はそんな信之がやっぱり好きで、信之を少しでも傷つける可能性を考えてしまった自分が嫌になった。

そのことで私はないはずの睡魔に襲われて意識が転げ落ちそうになっていると、優しく頭を撫でられて目を覚ます。

信之「出来たよ。今食べる?」

明人「うん。出来立て食べたい。」

私はまたちょっと前のように重くなった体を動かして信之が作ってくれた朝ごはんを完食した。


…………
朝・信之のホタテのワインソテー

すっごい美味しい朝ごはんなのに、気分が上がらないのはなんでなんだろな。
…………


環流 虹向/エンディングノート
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