エンディングノート

環流 虹向

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Re:FRAIL

ゆめみの寝具

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私は成くんとお日様散歩を終えて、家に行きいつも通り寝室に入って照明をつけるとなぜかキラキラとした星空のような寝室になっていて驚く。

成「誕生日おめでとう♡」

明人「え?」

成「12月15日はお祭りあったし、信之さんお休みだったからお祝い出来るタイミングなかったんだ。ごめんね。」

いつのまにか私の背後にいた成くんは大きいプレゼント袋を抱えてにっこり笑顔で私に謝った。

そういえば、成くんの誕生日に合わせて嘘言ったんだったけ…。

こんなにしてもらったのは嬉しいけど、嘘の誕生日を言ってしまって後悔していると成くんはお礼を言いそびれたまま俯く私の顔を覗き込んできた。

成「当日がよかった?」

明人「…ううん。今日が嬉しいよ。ありがとう。」

私はたまたま自分の出産予定日だった日に成くんがお祝いしてくれた事にちょっと嬉しくなり、素直にお礼を伝えた。

成「よかった。これ、プレゼント。」

成くんは大きい袋を担ぎ、私をベッドに座らせるとそれを目の前に置いた。

明人「サンタさんみたい。」

成「クリスマス近いしちょうどいいね。」

成くんは下手くそなサンタさんのモノマネをして、私に袋を開けるように促した。

私はクリスマスカラーの5色でしっかりと閉じられたリボンを解くと、中からはほんのりピンク色のマフラーをつけた大きなベージュのクマさんが出てきた。

明人「ぬいぐるみ?」

成「うん。俺がいないときはこれ抱いて。」

明人「…その理由ならもらいたくない。」

私は可愛いぬいぐるみの陰に隠れた色欲が嫌で受け取り拒否をしようとすると、成くんは私の膝の上にそのクマのぬいぐるみを置いた。

成「明人が寂しい時にちゃんと一緒にいてくれる助兵衛すけべいだよ。よろしく♡」

名前のセンス皆無な成くんは私の前で初めて出した裏声をしながら助兵衛を操りお辞儀させた。

明人「じゃあとりあえず枕になってもらお。」

私はベッドに助兵衛を寝転がらせてその脚の間に入り、信之の代わりをしてもらう。

成「気に入ってくれたみたいで嬉しい♡ケーキあるけど食べる?」

明人「え?そうなの?」

成「うん。誕生日だもん。」

…なんか本当に心苦しくなってきた。

けど、私の生まれる予定日だったからいいよねと自分を言い聞かせて、お昼ごはんを食べた後にケーキを食べることにして成くんと新しく見始めたドラマを見進める。

結構グロ怖なホラー系のドラマを見ているはずなのに私は助兵衛の脚の居心地が良くてそのまま意識を落とすと、次に意識を戻ってきた時は体がポカポカしていて助兵衛の保温効果に寝ぼけ脳のまま、静かに驚く。

まだ眠いと感じた私はまた寝ようと少し意識がある中、静かな寝室で過ごしていると助兵衛よりもしっかりとした肉付きのある腕が私の体を包んでいる事に気がつき、目を開けてみると目の前に成くんのとろけた顔があって一気に頭が覚める。

成「…お、はよ。」

私と目が合った成くんは1度瞬きをすると、焦った顔になり薄く開けていた唇を噛んだ。

明人「なんで…、こんな近くにいるの?」

成「明人が寝てる間はハグ券使えるって言ってたから。」

いつの話してるんだよ…。

しかも、温かい空気を上げてくる布団の中から成くんの濃い匂いがしてくるし…。

…やばい。ダメだ。

今の私に毒過ぎる。
いないはずの信之といる時みたいに鼓動が早くなる。

成「…暑い?」

と、私が自分の欲に抗っていると成くんはころんと横向きから仰向けになってエアコンを消した。

けど、その動きでまた上がってきた匂いが私の鼻につき、朝の欲張りな私がまた起きそうになる。

落ち着け、采原 明人。
今目の前にいるのは友達だ。

匂いをさせてるからってそうなってるとは限らない。

というより、この布団が成くんの匂いを蓄えてたんだ。

だからあの濃い匂いもしてるわけなんだからいちいち反応するな。

成「もう一眠りする…?」

そう言って成くんは肘を立てそこに頭を乗せると私を優しく見下ろした。

その顔は穏やかだけど少し頬が染まっていて、何か隠してるような雰囲気だった。

明人「…なんで。」

成「ハグ券ほし…、くて…。」

明人「なんで…?」

成「ちょっと…、明人の顔見て…たかったから…。」

この雰囲気と表情は昔から何度も味わってきたから分かってるけど、ダメだって。

分かってるよ。
ちゃんと理性働いてる。

けど、喉奥から出そうな言葉を押さえつけるのに必死で成くんの顔が迫っているのに拒否れない。

成「…だめ?」

と、成くんは寸前で顔を止めて私に聞いてきた。

私はそのまま1度顔を縦に動かす。

成「……いい?」

 私の表情を見て心情を見透かしてきた成くんはそう聞いてきた。

私は答えられずにそのままぎゅっと目を瞑ると、信之とは違う柔らかい唇が私の唇に触れた。

…これは夢。

そう、ちょっと欲求不満すぎて過去と今が混合した夢を見ちゃっただけ。

このまま目を瞑ってれば信之のベッドで目を覚まして、いつものようにMGRで朝ごはんを食べるの。

だけど、ちょっとだけ。
夢の中でこの気持ち、発散させて。


…………

ゆめをみてるだけなの。

…………



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