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Re:FRAIL
まわるよ遊馬
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…やばいっ。
あの日と同じで信之に意識飛ばされた。
私は信之に誕生日プレゼントで貰った夜空に色とりどりの宝石を散りばめたような手鏡を使い、きっちりメイクをして、クリスマスプレゼントで貰った今日行くプラネタリウムのチケットとMGRのみんなへのお土産を持ったことを確認して家を出る。
私は今まで蓄積されたルーティンでモーニングギリギリに滑り込み、珍しくお客さんがいないちょっと懐かしいMGRのあのカウンター席に座った。
明人「今日空いてるね。平日だから?」
雨瑞「そんなとこ。みんなクリスマスに浮かれすぎて多分寝てる。」
浦田「…俺も寝たいです。」
私は珍しく空いてるMGRのカウンターで暇していた雨瑞くんと浦田さんと話していると、エプロン姿じゃない信之が大きなトレイに7人分のピカイチサンドを持って私の隣にやってきた。
明人「もう上がったの?」
信之「うん。みんな分作り終わったから。」
どういうこと?
お客さん全員分ってことなの?
「「「「Happy birthday!」」」」
と、私が信之を見上げ首を傾げていると急な破裂音と共に天井から紙吹雪が降ってきた。
私は何が起きたか理解出来ずにいるとキッチンからバースデーソングを歌いながら綺咲さんと成くんが大きな2段ケーキを恐る恐る持って私の前にやってきた。
綺咲「1日遅れちゃったけど、誕生日おめでとう!」
成「誕生日、嘘つくの今後一切禁止。」
信之「明人の誕生日伝えたら綺咲さんがみんなでお祝いしたいって言ってくれたんだ。」
…もう、みんな好き。大好きだよ。
明人「ありがとう…っ。うれし…ぃ。」
私はまた幸せに溺れて涙が出る。
せっかくメイクしたのに後でまたやり直しだよ。
けど、それよりみんなが私のために集まってくれたことが嬉しくて感謝を伝えながらクリスマスマーケットで買ったお土産を渡す。
綺咲「わぁ…!このキャンドルホルダー初めて見た!」
中でも私が1番渡したかった物を綺咲さんは目を輝かせて飛び出そうなほど目を見開く。
明人「ここにキャンドル置くとくるくる馬が回るんです。このお店にぴったりだなって思って信之と即決しました。」
私は綺咲さんが切り分けしてくれたケーキを食べながら、メリーゴーランドみたいなキャンドルホルダーの説明をする。
綺咲「そうなんだ…!ありがとう!最高のお土産は特等席の前に置こっと!」
そう言って綺咲さんは私の目の前にそれを置き満足そうにする。
浦田「そういえばなんでメリーゴーランドなんですか?」
「「「え?」」」
MGRの従業員全員が浦田さんに視線を向けて驚く。
成「俺も知らなーい。可愛いから?」
明人「…私も。なんか聞きそびれちゃってた。」
私はいつか聞こうと思っていたけれど、常連太客古参ババアになっても知らなかった。
綺咲「うまくいく。」
と、綺咲さんは紅茶の茶葉やコーヒー豆が置かれた棚の上段にいる9体の馬の置き物を指し、嬉しそうに微笑む。
成「うまくいく?」
綺咲「おじいちゃんの受け売り。翔ける馬が9頭描かれた絵が私の実家にあるんだけど、その額縁についた埃とか汚れを取るといい事あるの。」
明人「馬、九、行く?」
私は指先で空に漢字を書きながら綺咲さんに聞く。
綺咲「そう。だじゃれみたいなものだけど、私はそれで馬が好きだし、メリーゴーランドが好き。」
浦田「店名が“馬九行く”じゃないのは?」
なんだか微妙な店名を浦田さんはわざわざ口に出して綺咲さんに聞いた。
綺咲「うまくいくはいい事が起きるってことだから、何度もいいことが起きますようにって願いを込めてMGRにしたよ。一応、うらちゃんには面接の時に話したけどね。」
そういう意味でMGRだったのかと納得していると、隣に座っている信之は私が選んだキャンドルホルダー指して微笑んだ。
信之「大きいのと小さいの合わせて9頭。明人は本当に買い物上手だね。」
明人「…ほんとだ。」
私が可愛いと思って選んだ5頭の大きな馬たちの間にいる子馬が4頭で9頭。
これを作った職人さんが綺咲さんのお爺様からの受け売りを知ってたのかもしれないけど、これを選んだ私、ナイス。
信之「その受け売りをお店の外に貼られてた求人広告で見て、感激した俺と薫は叶さんの元で働くことにしたんだ。」
雨瑞「2人してまだ開店準備してる途中のMGRに入って面接したよね。」
信之「そうだったね。2人して無職だったから叶さんには本当に感謝してます。」
綺咲「いえいえ!2人が来てくれたからこそ今まで続けられてるんだよ。ありがとう。」
そんな過去があったのか。
私の知らない信之は元々無職でこっちに引っ越してきたんだなぁと信之の行動力に驚いていると、成くんはピカイチサンドを食べ終えて私の隣にやってきた。
成「次の誕生日、お祝い予約していい?」
明人「なにそれ。」
成「明人の誕生日、少しだけ俺に時間ちょうだいってこと。」
明人「えー…。」
私は昨日の1日デートが最高過ぎて信之以外と過ごす時間が考えられず、声を漏らすと信之が私の口をつまんだ。
信之「24時間のうち1時間くらいならいいんじゃない?」
そう言うと信之は私の口から手を離し、笑いかけてきた。
明人「…朝一の1時間だったらいいよ。」
成「ありがと♡楽しみにしてて♡」
私の妥協だけで喜んでしまう成くんってなんなんだろ。
私は信之との記念日をMGRのみんなと成くんで少しの間過ごし、プラネタリウムで満天の星空を見た後に信之の好きなお味噌汁とホイル焼きを食べて、記念日を終えた。
…………
幸せ渋滞し過ぎなのなんとかならないかな。
こんなにてんこ盛りだと、幸せで溺れて死んじゃうよ。
けど、みんな私の誕生日、お祝いしてくれてありがとう。大好き。
…………
環流 虹向/エンディングノート
あの日と同じで信之に意識飛ばされた。
私は信之に誕生日プレゼントで貰った夜空に色とりどりの宝石を散りばめたような手鏡を使い、きっちりメイクをして、クリスマスプレゼントで貰った今日行くプラネタリウムのチケットとMGRのみんなへのお土産を持ったことを確認して家を出る。
私は今まで蓄積されたルーティンでモーニングギリギリに滑り込み、珍しくお客さんがいないちょっと懐かしいMGRのあのカウンター席に座った。
明人「今日空いてるね。平日だから?」
雨瑞「そんなとこ。みんなクリスマスに浮かれすぎて多分寝てる。」
浦田「…俺も寝たいです。」
私は珍しく空いてるMGRのカウンターで暇していた雨瑞くんと浦田さんと話していると、エプロン姿じゃない信之が大きなトレイに7人分のピカイチサンドを持って私の隣にやってきた。
明人「もう上がったの?」
信之「うん。みんな分作り終わったから。」
どういうこと?
お客さん全員分ってことなの?
「「「「Happy birthday!」」」」
と、私が信之を見上げ首を傾げていると急な破裂音と共に天井から紙吹雪が降ってきた。
私は何が起きたか理解出来ずにいるとキッチンからバースデーソングを歌いながら綺咲さんと成くんが大きな2段ケーキを恐る恐る持って私の前にやってきた。
綺咲「1日遅れちゃったけど、誕生日おめでとう!」
成「誕生日、嘘つくの今後一切禁止。」
信之「明人の誕生日伝えたら綺咲さんがみんなでお祝いしたいって言ってくれたんだ。」
…もう、みんな好き。大好きだよ。
明人「ありがとう…っ。うれし…ぃ。」
私はまた幸せに溺れて涙が出る。
せっかくメイクしたのに後でまたやり直しだよ。
けど、それよりみんなが私のために集まってくれたことが嬉しくて感謝を伝えながらクリスマスマーケットで買ったお土産を渡す。
綺咲「わぁ…!このキャンドルホルダー初めて見た!」
中でも私が1番渡したかった物を綺咲さんは目を輝かせて飛び出そうなほど目を見開く。
明人「ここにキャンドル置くとくるくる馬が回るんです。このお店にぴったりだなって思って信之と即決しました。」
私は綺咲さんが切り分けしてくれたケーキを食べながら、メリーゴーランドみたいなキャンドルホルダーの説明をする。
綺咲「そうなんだ…!ありがとう!最高のお土産は特等席の前に置こっと!」
そう言って綺咲さんは私の目の前にそれを置き満足そうにする。
浦田「そういえばなんでメリーゴーランドなんですか?」
「「「え?」」」
MGRの従業員全員が浦田さんに視線を向けて驚く。
成「俺も知らなーい。可愛いから?」
明人「…私も。なんか聞きそびれちゃってた。」
私はいつか聞こうと思っていたけれど、常連太客古参ババアになっても知らなかった。
綺咲「うまくいく。」
と、綺咲さんは紅茶の茶葉やコーヒー豆が置かれた棚の上段にいる9体の馬の置き物を指し、嬉しそうに微笑む。
成「うまくいく?」
綺咲「おじいちゃんの受け売り。翔ける馬が9頭描かれた絵が私の実家にあるんだけど、その額縁についた埃とか汚れを取るといい事あるの。」
明人「馬、九、行く?」
私は指先で空に漢字を書きながら綺咲さんに聞く。
綺咲「そう。だじゃれみたいなものだけど、私はそれで馬が好きだし、メリーゴーランドが好き。」
浦田「店名が“馬九行く”じゃないのは?」
なんだか微妙な店名を浦田さんはわざわざ口に出して綺咲さんに聞いた。
綺咲「うまくいくはいい事が起きるってことだから、何度もいいことが起きますようにって願いを込めてMGRにしたよ。一応、うらちゃんには面接の時に話したけどね。」
そういう意味でMGRだったのかと納得していると、隣に座っている信之は私が選んだキャンドルホルダー指して微笑んだ。
信之「大きいのと小さいの合わせて9頭。明人は本当に買い物上手だね。」
明人「…ほんとだ。」
私が可愛いと思って選んだ5頭の大きな馬たちの間にいる子馬が4頭で9頭。
これを作った職人さんが綺咲さんのお爺様からの受け売りを知ってたのかもしれないけど、これを選んだ私、ナイス。
信之「その受け売りをお店の外に貼られてた求人広告で見て、感激した俺と薫は叶さんの元で働くことにしたんだ。」
雨瑞「2人してまだ開店準備してる途中のMGRに入って面接したよね。」
信之「そうだったね。2人して無職だったから叶さんには本当に感謝してます。」
綺咲「いえいえ!2人が来てくれたからこそ今まで続けられてるんだよ。ありがとう。」
そんな過去があったのか。
私の知らない信之は元々無職でこっちに引っ越してきたんだなぁと信之の行動力に驚いていると、成くんはピカイチサンドを食べ終えて私の隣にやってきた。
成「次の誕生日、お祝い予約していい?」
明人「なにそれ。」
成「明人の誕生日、少しだけ俺に時間ちょうだいってこと。」
明人「えー…。」
私は昨日の1日デートが最高過ぎて信之以外と過ごす時間が考えられず、声を漏らすと信之が私の口をつまんだ。
信之「24時間のうち1時間くらいならいいんじゃない?」
そう言うと信之は私の口から手を離し、笑いかけてきた。
明人「…朝一の1時間だったらいいよ。」
成「ありがと♡楽しみにしてて♡」
私の妥協だけで喜んでしまう成くんってなんなんだろ。
私は信之との記念日をMGRのみんなと成くんで少しの間過ごし、プラネタリウムで満天の星空を見た後に信之の好きなお味噌汁とホイル焼きを食べて、記念日を終えた。
…………
幸せ渋滞し過ぎなのなんとかならないかな。
こんなにてんこ盛りだと、幸せで溺れて死んじゃうよ。
けど、みんな私の誕生日、お祝いしてくれてありがとう。大好き。
…………
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