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この頃、将来に向けて就職活動などの進路の話をよくするようになった。
みんなから将来へ向かおうとする話を聞くたびに俺はこの場にとどまりたいと思ってしまう。
奏、海斗、明、将。
みんな俺の作品の意図を汲み取ってくれるいい奴。
奏以外の3人は俺が“いぬい”ってことを知らないけれど何故か理解してくれる。
俺は居心地の悪い場所より、居心地いい場所に居続けたいからきっと奏の留学ついてくかもな。
そう思いながら薄く雲がかかって天の川が見えない空をぼんやり見上げていると、俺の腹に何かが抱きつく。
「ひぃ兄、遅い。」
やらかした。
まっすぐ前を見てれば妹の天に捕まる事はなかった。
一「…なんか用?家には戻る気ないけど。」
天「話、聞いてくれるだけでいいの。」
天の周りを見ると朝見た大荷物を持ってない。
一「荷物は?」
天「…盗られた。」
一「カードは?」
天「胸ポケットに入れてる。」
じゃあ、カード会社に連絡する必要ないか。
俺は家に家族を入れたくなかったので近くの公園に行き、ベンチに座って話を聞くことにした。
一「なんで来た?まだ学校あるだろ。」
天「もう学校行きたくない。」
一「そう思うなら行かなきゃいいじゃん。」
天「でも、お父さんたちに怒られるもん。」
天は不機嫌になるといつも唇を尖らし、目を潤ます。
本当、ガキだよなぁ…。
一「お前の人生は誰の物なんだよ。」
天「…何?」
天は俺を見て首を傾げる。
その間抜け面は生まれてからずっと変わらない。
一「幼稚園からエスカレーター式で中学来て、なんも気づかないの?」
天「意味分かんない。」
泣いてたかと思えば次は怒り出した。
だから精神年齢が1桁のガキは嫌いだ。
学習させるだけさせて、対人関係のことは全く教えない。
それってただのロボットだろ。
俺らは人間なんだから思った事やってくのが生きてる喜びだろ。
…って、言ってもバカには分かんないんだろうな。
何て言えばいいか…。
天「学校に友達いないし、部活ではレギュラーになれないし、生徒会長にも抜擢されない。…もう疲れた。
お父さんたちに怒られないように勉強も頑張ってきたけど、ひぃ兄が家出てから学年で1位取っても褒められる事もなくなった。
天、いっぱい頑張ってるはずなのに手を抜くなって言われるの。」
俺は天の話をぼんやりと聞きながらどんな言葉を噛み砕いて言おうか考える。
けれど、妹の服装が気になってしまった。
なんで天はこんな暑い日に長袖着てんだ?
暑がりな天は夏に長袖なんか着てた事ないぞ。
一「今日暑いだろ。なんでそんな暑苦しい服着てんだ。」
天「…。」
天はその言葉に驚いて体を強ばらせる。
その様子を見て俺は高校の時に付き合っていた元彼を思い出す。
…ここまで追い込んどいてお前たちは捨てた兄に自分の娘を任すのかよ。
俺は確証を得るために天の袖をめくり上げた。
一「…何がそうさせたんだよ。」
天「最初は友達が私をはぶった時。2回目はアンに教科書を盗まれた時。3回目はこの間お父さんに殴られた後。」
一「それをしてお前は満足出来たのか?」
天「…ううん。」
一「人生やめたいならお前の家の屋上から落ちれば1発だろ。本気で死にたいと思うならこんなちっぽけな傷で自分を傷つけるな。この傷がまたお前の重荷になるだけだ。」
天「でもこうしないと…」
一「こうしないとじゃねーんだよ。自分が自分を傷つけて何になるんだよ。誰にも大切にされてない自分を守れるのは自分だけなんだ。ちゃんと自分の声を聞け。」
天「ちゃんと鏡の前でお話してるもん。」
一「そのお前は何て言ってるんだよ。」
天「…もう嫌だって。」
一「じゃあ辞めろよ。何が邪魔してきても辞めればいいだろ。」
天「そしたら怒られるもん。」
一「怒られるから何になるんだよ。」
天「…怖いもん。」
怒られるのは誰だって怖いよ。
俺だって頭打った後、父親に殴られるとは思ってなかった。
好きなことをもっと出来るようにしようとしてた時、俺は2階の窓から滑り落ちて頭を地面にぶつけた。
その好きなことを全て取り上げて金回りがいい医者になることを勧めてきた父親がその時一瞬で大嫌いになった。
その様子を見て、俺の事より自分の身を守るために逃げた母親も嫌いだ。
どんなに金を持っていたって人間が出来上がってなかったら使い方を間違える。
今、俺に送ってきている金だってそう。
これで俺のご機嫌取りをしてる時点でもう人間として終わってる。
…こんな家に生まれてきたくなかった。
けど、そうしたら俺の存在はない訳で奏たちにも出会うことはなかったんだ。
まあ、産んでくれたことだけには感謝しとこう。
けどそれからの人生、操られるのはごめんだ。
俺はあの時、自分で気づいたことを気づかせるために天に質問する。
一「お前はあの家じゃなかったら何したいんだよ。」
天「…分かんない。」
あいつらはお前に何も欲しいものを与えてこなかったもんな。
欲しいという物よりあいつらが“必要なもの”と言う物をプレゼントしてくる。
小遣いさえ渡されず、母親と洋服や雑貨を選ぶ。
友達さえ母親が周りから聞いた噂を鵜呑みにして、新しい出会いさえしてこなかった。
天の全てをあいつらが作り上げた。
天は生きる人形になりかけてた。
けど、その過剰な子煩悩が天の体と心を追い詰めた。
そしてその生きた人形もどきが今日お前たちの家から逃げ出したんだ。
一「お前、服好きだよな?」
天「…うん。可愛いの好き。」
俺はその言葉を聞いて明に連絡する。
すると明はすぐにOKを出してくれた。
一「行くぞ。」
天「家はやだ。」
一「ちげぇよ。好きなもので生きてる人間に会いに行くんだ。」
俺は天とタクシーに乗り、明の家に向かった。
→シリウス
みんなから将来へ向かおうとする話を聞くたびに俺はこの場にとどまりたいと思ってしまう。
奏、海斗、明、将。
みんな俺の作品の意図を汲み取ってくれるいい奴。
奏以外の3人は俺が“いぬい”ってことを知らないけれど何故か理解してくれる。
俺は居心地の悪い場所より、居心地いい場所に居続けたいからきっと奏の留学ついてくかもな。
そう思いながら薄く雲がかかって天の川が見えない空をぼんやり見上げていると、俺の腹に何かが抱きつく。
「ひぃ兄、遅い。」
やらかした。
まっすぐ前を見てれば妹の天に捕まる事はなかった。
一「…なんか用?家には戻る気ないけど。」
天「話、聞いてくれるだけでいいの。」
天の周りを見ると朝見た大荷物を持ってない。
一「荷物は?」
天「…盗られた。」
一「カードは?」
天「胸ポケットに入れてる。」
じゃあ、カード会社に連絡する必要ないか。
俺は家に家族を入れたくなかったので近くの公園に行き、ベンチに座って話を聞くことにした。
一「なんで来た?まだ学校あるだろ。」
天「もう学校行きたくない。」
一「そう思うなら行かなきゃいいじゃん。」
天「でも、お父さんたちに怒られるもん。」
天は不機嫌になるといつも唇を尖らし、目を潤ます。
本当、ガキだよなぁ…。
一「お前の人生は誰の物なんだよ。」
天「…何?」
天は俺を見て首を傾げる。
その間抜け面は生まれてからずっと変わらない。
一「幼稚園からエスカレーター式で中学来て、なんも気づかないの?」
天「意味分かんない。」
泣いてたかと思えば次は怒り出した。
だから精神年齢が1桁のガキは嫌いだ。
学習させるだけさせて、対人関係のことは全く教えない。
それってただのロボットだろ。
俺らは人間なんだから思った事やってくのが生きてる喜びだろ。
…って、言ってもバカには分かんないんだろうな。
何て言えばいいか…。
天「学校に友達いないし、部活ではレギュラーになれないし、生徒会長にも抜擢されない。…もう疲れた。
お父さんたちに怒られないように勉強も頑張ってきたけど、ひぃ兄が家出てから学年で1位取っても褒められる事もなくなった。
天、いっぱい頑張ってるはずなのに手を抜くなって言われるの。」
俺は天の話をぼんやりと聞きながらどんな言葉を噛み砕いて言おうか考える。
けれど、妹の服装が気になってしまった。
なんで天はこんな暑い日に長袖着てんだ?
暑がりな天は夏に長袖なんか着てた事ないぞ。
一「今日暑いだろ。なんでそんな暑苦しい服着てんだ。」
天「…。」
天はその言葉に驚いて体を強ばらせる。
その様子を見て俺は高校の時に付き合っていた元彼を思い出す。
…ここまで追い込んどいてお前たちは捨てた兄に自分の娘を任すのかよ。
俺は確証を得るために天の袖をめくり上げた。
一「…何がそうさせたんだよ。」
天「最初は友達が私をはぶった時。2回目はアンに教科書を盗まれた時。3回目はこの間お父さんに殴られた後。」
一「それをしてお前は満足出来たのか?」
天「…ううん。」
一「人生やめたいならお前の家の屋上から落ちれば1発だろ。本気で死にたいと思うならこんなちっぽけな傷で自分を傷つけるな。この傷がまたお前の重荷になるだけだ。」
天「でもこうしないと…」
一「こうしないとじゃねーんだよ。自分が自分を傷つけて何になるんだよ。誰にも大切にされてない自分を守れるのは自分だけなんだ。ちゃんと自分の声を聞け。」
天「ちゃんと鏡の前でお話してるもん。」
一「そのお前は何て言ってるんだよ。」
天「…もう嫌だって。」
一「じゃあ辞めろよ。何が邪魔してきても辞めればいいだろ。」
天「そしたら怒られるもん。」
一「怒られるから何になるんだよ。」
天「…怖いもん。」
怒られるのは誰だって怖いよ。
俺だって頭打った後、父親に殴られるとは思ってなかった。
好きなことをもっと出来るようにしようとしてた時、俺は2階の窓から滑り落ちて頭を地面にぶつけた。
その好きなことを全て取り上げて金回りがいい医者になることを勧めてきた父親がその時一瞬で大嫌いになった。
その様子を見て、俺の事より自分の身を守るために逃げた母親も嫌いだ。
どんなに金を持っていたって人間が出来上がってなかったら使い方を間違える。
今、俺に送ってきている金だってそう。
これで俺のご機嫌取りをしてる時点でもう人間として終わってる。
…こんな家に生まれてきたくなかった。
けど、そうしたら俺の存在はない訳で奏たちにも出会うことはなかったんだ。
まあ、産んでくれたことだけには感謝しとこう。
けどそれからの人生、操られるのはごめんだ。
俺はあの時、自分で気づいたことを気づかせるために天に質問する。
一「お前はあの家じゃなかったら何したいんだよ。」
天「…分かんない。」
あいつらはお前に何も欲しいものを与えてこなかったもんな。
欲しいという物よりあいつらが“必要なもの”と言う物をプレゼントしてくる。
小遣いさえ渡されず、母親と洋服や雑貨を選ぶ。
友達さえ母親が周りから聞いた噂を鵜呑みにして、新しい出会いさえしてこなかった。
天の全てをあいつらが作り上げた。
天は生きる人形になりかけてた。
けど、その過剰な子煩悩が天の体と心を追い詰めた。
そしてその生きた人形もどきが今日お前たちの家から逃げ出したんだ。
一「お前、服好きだよな?」
天「…うん。可愛いの好き。」
俺はその言葉を聞いて明に連絡する。
すると明はすぐにOKを出してくれた。
一「行くぞ。」
天「家はやだ。」
一「ちげぇよ。好きなもので生きてる人間に会いに行くんだ。」
俺は天とタクシーに乗り、明の家に向かった。
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