一なつの恋

環流 虹向

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「そろそろ準備しないと。」

と、言って夜が明けるまで電話をしていた明が外に出る準備を始めるらしい。

一「…ぁあ、たのしんでこいよー。」

俺はぼーっとした頭のまま返事をして電話を切り、重い頭のまま体を起こしてこの間買ったスケッチブックとえんぴつを取り、ベッドに寝転がる。

隣には天がいるけれど、だいぶ遅くまで一緒に電話していたからまだ起きないだろう。

あの日、思い立ってから何度か姐さんを描いているけど、納得いくものは描けていない。

やっぱり姐さんが目の前にいてくれないと柔らかい長い髪も、つるんとした鼻も、ツヤツヤな唇にある2つの別れたほくろも、全て死んでるようにしか書けない。

頭の中ではあんなに優しく笑っている姐さんなのに、俺が描ける姐さんは最後に見たあの目を潤ませ寂しそうな姐さんしか描けない。

そんな姐さんの絵を俺はこの間登録したSNSに載せると、ここ最近フォローしてくれた『みやこ』さんから1番で♡が送られてくる。

その後も他の人からたくさんのシェアやイイネをしてくれるけど、それで俺の心は満たされることはないんだ。

今日もそんな姐さんしか描けなくて枕に涙を埋めていると誰かからメッセージが届いた音がする。

俺は姐さんかと毎回淡い期待を寄せながら毎回メッセージアプリを開くが今回も違うらしい。

『いっくん、やほー・:*+.\(( °ω° ))/.:+』

るあくんから久しぶりにメッセージが来た。
そういえば月末になったら遊べるって言ってたもんな。

『おはよー。』

今のるあくんはいつも通りみたいですぐにレスがくる。

『おはおは(๑˃̵ᴗ˂̵)♡』
『今週の金曜日にいっくんと俺と俺の友達で遊ぼうと思うんだけどどう?』

友達?

いつもるあくんは遊び仲間を連れてくる時は“知り合い”と言っていたけど、結構仲がいい子なのかもしれない。

この間の紹介してくれようとした子か?

『この間遊んでた子?』

『ううん!この間の子も誘ったんだけど旅行行くから来れないんだ.°(ಗдಗ。)°.』
『金曜に来る子は俺と同じ仕事場で働いてるめっちゃいい子♡♡♡』
『前から紹介したいと思ってたけど、時間合わなかったの(´・ω・`)』

そうなんだ。

意外とるあくんってちゃんとした友達いたんだと1人納得しながらレスを送る。

『仕事あるから21時集合でもいい??』

『え!?いっくん仕事始めたの!?』
『どんなっっっっ!?』

あー…、言ったはいいけどなんて返すか考えてなかったな。

『知り合いの銭湯で色々やってる。』

『へー!この時代に銭湯のバイトって珍しいよね!』
『今度行きたい!( ´³`)♡』

『そのうちね。』

もっと違うものを言えばよかったんだろうけど頭が回らないから仕方がない。

『じゃあ、金曜の21時にいつものところでいい??』

『いいよ。』

『わぁっ♡楽しみ(๑˃̵ᴗ˂̵)♡♡♡』
『俺、イメチェンして行くから楽しみにしといて!』

るあくんまた髪色変えるんだろうか。
俺もそろそろヘアカットしてもらわないと、いい加減もさいからるあくんたちに会う前に行っとくか。

俺はるあくんとのメッセージを終えて、描き終えたスケッチブックを枕の下にしまい夢衣との約束した昼まで寝ることにした。




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