一なつの恋

環流 虹向

文字の大きさ
78 / 188
7/26

12:00

しおりを挟む
昼前から夢衣と一緒にサイクリングがてら、フードデリバリーの仕事をしていく。

俺はただ夢衣の後をついて行くだけで仕事自体はやってないけど、結構いい運動になる。

一応作った動画をどんどん投稿していくつもりだけど、振込は1ヶ月後だからその間のちょっとした金稼ぎのために始めたは良いものの、ずっと暑いと言ってる夢衣の言葉でさらに汗をかく。

一「今は昼時だからピーク過ぎたら家帰ろう。」

夢衣「もう家帰りたーい。」

と言いながらも、ある程度自由があるこの仕事は夢衣に向いているのか天気に対しての愚痴は言うけど、仕事に対しての愚痴は言うことはなく仕事を終えた。

近場にレンタサイクルを返し、夢衣の家に涼みに行くと夢衣が冷蔵庫から冷えたトマトを出して子ども用のプラスチック包丁で切り始めた。

一「え?夢衣って料理するの?」

夢衣「この頃、奏くんに貰ったこの包丁で料理してるよー。すごく切りにくくてイラつく。」

夢衣は少し機嫌が悪そうに少し日焼けした頬を赤く染めながら調理を始めた。

あの子ども用の包丁は奏が俺の命の危機を感じて勝手にすり替えた包丁で、夢衣はそんなことも知らずまだ使ってるらしい。

夢衣は切りにくいと言ってる割には使いこなしていて、少し乱雑な切り方をしたトマトに砂糖をパラパラとかけた。

夢衣「ママが夏休みのおやつでいつも作ってくれたんだ。」

と言って、俺の目の前にトマト5つ分入った皿を置く。

一「俺、砂糖かけたことない。」

夢衣「え!?すっごい美味しいよ!食べてー♡」

あーん、と言いながら夢衣は2口分のひとかけトマトを俺の口に詰め込む。

俺は若干トマトで溺れながらも、普段より増した甘みが口いっぱいに広がり感動する。

野菜に砂糖をかけるなんてことあるのか、と思ったけどこれは美味すぎる!

俺は夢衣に詰め込まれるまま、トマトを食べるがその美味しさに文句はなかったので腹一杯食べさせてもらった。

一「夢衣ってカップ麺しか食べないんだと思ってた。」

俺は腹一杯になって、ソファーに横になりながら余ったトマトを食べる夢衣の髪の毛を三つ編みにして遊ぶ。

夢衣「元彼もとかれのために料理教室行ってたもん。」

この間から意外な夢衣の生活力に俺は驚く。

俺が思ってるより、夢衣はもう危ない奴じゃないのかもしれない。

一「すごいじゃん。もっと作ってよ。」

夢衣「えー?今トマトしかないよ。」

どう買い物したらそうなるんだと思ったが、この間久しぶりに再会した時よりだいぶいろんなことに前向きに取り組んでくれていて嬉しい。

一「今度一緒に行く旅行でいっぱい美味いの作ってくれるか?」

夢衣「うん!女の子って私だけ?」

一「ううん。音己ねぇいる。」

夢衣「…ねこねぇ?」

一「奏の姉ちゃん。夢衣の2つ上で今は同じくニート。」

夢衣「クビにされたの?」

一「エロじじい成敗したらクビにされたんだって。」

夢衣「本当、上の人って理不尽だよね。」

一「夢衣のクビはまた別の話だろ?」

夢衣「違くないし。」

そう言うと夢衣は拗ねたのか俺に寄りかかり、天井を見上げる。

夢衣「音己ねぇはいつから一緒にいるの?」

一「えー…っと、奏と出会ってからだから3歳くらいの時から。」

夢衣「…ずるい。」

一「って言っても、俺が5歳の時ヘマやらかして音己ねぇに嫌われてからまともに話すことあんまりないよ。」

夢衣「そうなの?」

一「あんまり目合わして話してくれないし、いつも自分優先だから外で会ってもすぐにどっかに行っちゃう。」

夢衣「音己ねぇは彼氏いる人?」

一「仕事はないけど彼氏はいるっぽい。」

この間、俺と海を見たときに彼氏と電話してたことを軽く話す。

夢衣「…私もひーくんと海行きたい。」

夢衣は唇を尖らして不機嫌を表す。

一「コンクールの絵、提出し終わったら行こう。」

夢衣「うん!」

夢衣はそれだけで機嫌を直し、最後のトマトを食べて俺の脚の間に入りドラマを見始める。

その後、少し涼んだ俺は夢衣と別れて学校にいる奏と海斗と一緒に絵を進めた。





→ Looking your eyes
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...