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Chapter7
7-2
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数日後の金曜日。哲平は、会社の会議室で康平と最後の打ち合わせを終えた。
「お帰りになる前に、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか」
「え?あ、はい。何でしょう」
呼び止めた哲平に、康平は首を傾げる。
「……こちらを」
ス、と康平の前に差し出した一通の真っ白な封筒。
「これは……?」
「後藤からです」
「……!」
哲平の言葉に目を見開いた康平は、受け取れないと渋ったものの。
「どうか、読んでやってください。後藤なりの、ケジメだそうです」
「……」
"一つ、お願いしたいことがあるのですが"
和葉が哲平にしたお願い事は。
"彼……康平に、渡してほしいものがあるんです"
"渡してほしいもの?"
"はい。私なりの、ケジメです"
康平が恐る恐る封筒を開けると、そこには一枚の便箋が。
折り畳んである便箋を開いて読み始めた康平は徐々に言葉を失うように唇を噛み締め、目に涙を溜めながら読み終わった便箋を置いて自分の両手を強く握った。
「……彼女から、全てを聞きました」
「……そうでしたか」
「……やっぱり、貴方は最低です」
「ハハッ。そうですね。……俺は最低です」
最低な人間なんですよ。
そう呟いた康平は、置いた便箋の文字をもう一度眺める。
今更このような手紙を、それも人伝いにお渡しする事をお許しください。
若葉は、貴方のことが大好きでした。
貴方のことを話す時、いつも本当に楽しそうで嬉しそうで。
聞いているこちらが恥ずかしくなるくらい、愛しさが溢れていた。
貴方は若葉が私ばかりに構う、と私に嫉妬していたようでしたが、私も貴方に嫉妬していました。
だって、若葉はいつも貴方の話ばかりだったから。
若葉の笑顔を一番見ていたのは、きっと貴方です。
二人の幸せな未来を奪ってしまって、本当にごめんなさい。
私を許さないでなんて、縛りつけるようなことを言ってしまってごめんなさい。
私は若葉に貰った命を無駄には出来ない。
だから私は若葉への償いを持って、若葉と共に生きていきます。
これを読んだら、封筒ごと捨ててくれて構いません。
だけどどうか。これからも毎年、花束を手向けに行くことだけは許してほしい。
若葉を愛してくれて、本当にありがとう。
後藤和葉
「俺は、自分のことしか考えられない最低な人間です。けどアイツはっ……和葉はそうじゃない。和葉は、自分のことはとにかく後回しで。人のことを思いやれる、とても優しい奴なんですよね」
「……はい」
哲平の頷きにフッと笑った康平は、便箋を封筒に仕舞おうとしてまだ中に何か入っていることに気が付いた。
「?……っこれは」
それはポストカードを少し小さくしたような物で。
カンパニュラ
花言葉
【感謝、誠実、節操、後悔】
別名
【守れなかった命の花】
「感謝、誠実、節操、……後悔。
守れなかった、命の、花……?」
書かれた文字を呆然と見つめ、ゆっくりと裏返す。
そこには真っ白な鐘のような形をした可愛らしい花で出来た花束の写真。
その花束はまさに、和葉が若葉に手向けた物で。康平が若葉のお墓で見たものだった。
「……後藤が言ってました。今度こそ、この命を守るんだって」
"もう後悔したくないんです。今度こそは、しっかりこの命を守りたい。若葉の姿形が無くても、若葉はここに生きてますから。もうあんな想いはしたくないから、今度こそはって。それを若葉に毎年誓ってるんです"
"まぁ、ただの自己満足なんですけどね"
「……中西さん」
「はい」
「俺も、前に進まないと。ですね」
一筋涙を流した康平は、そっと写真と便箋を仕舞って席を立つ。
「……若葉も。生きていたら、アイツみたいに綺麗になってたんですかね」
遠い目をして微笑みながらポツリと呟いた康平は、哲平の言葉を聞くこともなく会議室を出た。
そのまま振り返ることなくエレベーターに乗っていく康平。
和葉もまた、そちらを見ることは無かった。
「お帰りになる前に、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか」
「え?あ、はい。何でしょう」
呼び止めた哲平に、康平は首を傾げる。
「……こちらを」
ス、と康平の前に差し出した一通の真っ白な封筒。
「これは……?」
「後藤からです」
「……!」
哲平の言葉に目を見開いた康平は、受け取れないと渋ったものの。
「どうか、読んでやってください。後藤なりの、ケジメだそうです」
「……」
"一つ、お願いしたいことがあるのですが"
和葉が哲平にしたお願い事は。
"彼……康平に、渡してほしいものがあるんです"
"渡してほしいもの?"
"はい。私なりの、ケジメです"
康平が恐る恐る封筒を開けると、そこには一枚の便箋が。
折り畳んである便箋を開いて読み始めた康平は徐々に言葉を失うように唇を噛み締め、目に涙を溜めながら読み終わった便箋を置いて自分の両手を強く握った。
「……彼女から、全てを聞きました」
「……そうでしたか」
「……やっぱり、貴方は最低です」
「ハハッ。そうですね。……俺は最低です」
最低な人間なんですよ。
そう呟いた康平は、置いた便箋の文字をもう一度眺める。
今更このような手紙を、それも人伝いにお渡しする事をお許しください。
若葉は、貴方のことが大好きでした。
貴方のことを話す時、いつも本当に楽しそうで嬉しそうで。
聞いているこちらが恥ずかしくなるくらい、愛しさが溢れていた。
貴方は若葉が私ばかりに構う、と私に嫉妬していたようでしたが、私も貴方に嫉妬していました。
だって、若葉はいつも貴方の話ばかりだったから。
若葉の笑顔を一番見ていたのは、きっと貴方です。
二人の幸せな未来を奪ってしまって、本当にごめんなさい。
私を許さないでなんて、縛りつけるようなことを言ってしまってごめんなさい。
私は若葉に貰った命を無駄には出来ない。
だから私は若葉への償いを持って、若葉と共に生きていきます。
これを読んだら、封筒ごと捨ててくれて構いません。
だけどどうか。これからも毎年、花束を手向けに行くことだけは許してほしい。
若葉を愛してくれて、本当にありがとう。
後藤和葉
「俺は、自分のことしか考えられない最低な人間です。けどアイツはっ……和葉はそうじゃない。和葉は、自分のことはとにかく後回しで。人のことを思いやれる、とても優しい奴なんですよね」
「……はい」
哲平の頷きにフッと笑った康平は、便箋を封筒に仕舞おうとしてまだ中に何か入っていることに気が付いた。
「?……っこれは」
それはポストカードを少し小さくしたような物で。
カンパニュラ
花言葉
【感謝、誠実、節操、後悔】
別名
【守れなかった命の花】
「感謝、誠実、節操、……後悔。
守れなかった、命の、花……?」
書かれた文字を呆然と見つめ、ゆっくりと裏返す。
そこには真っ白な鐘のような形をした可愛らしい花で出来た花束の写真。
その花束はまさに、和葉が若葉に手向けた物で。康平が若葉のお墓で見たものだった。
「……後藤が言ってました。今度こそ、この命を守るんだって」
"もう後悔したくないんです。今度こそは、しっかりこの命を守りたい。若葉の姿形が無くても、若葉はここに生きてますから。もうあんな想いはしたくないから、今度こそはって。それを若葉に毎年誓ってるんです"
"まぁ、ただの自己満足なんですけどね"
「……中西さん」
「はい」
「俺も、前に進まないと。ですね」
一筋涙を流した康平は、そっと写真と便箋を仕舞って席を立つ。
「……若葉も。生きていたら、アイツみたいに綺麗になってたんですかね」
遠い目をして微笑みながらポツリと呟いた康平は、哲平の言葉を聞くこともなく会議室を出た。
そのまま振り返ることなくエレベーターに乗っていく康平。
和葉もまた、そちらを見ることは無かった。
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