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6 外見最高、中身残念な彼
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フィニアス・ペンデルトンの言ってることは、まともじゃない。
もしかして裕福な大学生に流行り始めた危ないクスリを常用してて、妄想が始まっているのだろうか……それとも。
わたしに向かって笑顔を見せるフィンに、別パターンを思い当てた。
きっと、絶対にこれだ!
「中庭に居る全員が協力者?
もしかしたら、ステラも仲間なの?
その貴方達の悪戯か、ゲームかは分からないけど、中庭まで付いてきたのは、わたしで何人目?」
「……もしかして君は、僕が皆を巻き込んで君を騙してる、と言いたいの?
そんなことして、何の得が?」
確かに、一見何の得にもならないけれど。
今日は学期途中の長い休みの前だから、普段から楽しく毎日過ごしているだろうフィンだって気分が盛り上がって浮かれて、地味女が舞い上がる様子を皆で笑おうとして、とか……
「あのさ、初めて会ったのに抱きついた僕を信用出来ないと思うけど。
それが面白いから、の理由で誰かを笑い者にするなんて、僕はしない。
それだけは神に誓える。
それにダニエルには信じて貰いたいから、これから君の友人に会う。
恐らく彼女には僕が見えないと思うから、君を騙しているのかは、友人の反応を見て判断して欲しい」
笑顔を消して、真面目な顔で訴えるフィンを見て、仕方なくわたしは頷いた。
仕方なく、だ。
神に誓ってまで否定する人に、あーだこーだ続けたって、平行線だもの。
「僕は君の隣に座るけど、彼女には言わずに、さりげなく僕の事を聞いて。
彼女にしてみれば、僕がその場に居ないから、忖度なく思う事を話してくれるはずだから」
フィンはまだ『見えるのは君だけ』設定を続けるつもりみたい。
わたしの隣に居るのは内緒にしてって言うけれど。
それって、わざわざ言わなくったって見れば分かるじゃない。
でも、もしもこれが、わたしを引っ掛けるゲームじゃなくて。
『自分の姿は誰にも見えない』なんて、本当に彼がクスリのせいで妄想しているのなら。
おかしな人には逆らわない方がいい。
ステラのところには案内するけど、彼に適当に合わせてやり過ごそう、と気付かれないように伝えないと。
わたしはそう考えて。
外見最高、中身残念なフィニアス・ペンデルトンと、ステラが待ってる第3カフェテリアへ歩き出した。
「皆には僕の姿は見えないから、絶対に話しかけないで。
じゃないと、君は1人で喋ってる変な女の子になる」
変なあんたに、変だと言われたくないよと文句を返したいけれど。
言われた通り、黙って歩く。
だけど……見事に誰もこちらを見ない。
わたしの手を、あのフィニアス・ペンデルトンがずっと掴んでいて、引っ張るように先を歩いているのに。
途中でペンデルトンガールズの1人ともすれ違ったが、どうしてだろう、彼女はフィンに視線もくれない。
……これは。
ここまで徹底して、ここに居る全員でわたしを騙す、なんて無理な話では……
これは、もしかして……本当に?
本当に、フィニアス・ペンデルトンは誰にも見えていないの?
そんな風にモヤモヤした不安定な迷宮に片足が入った状態で、カフェに戻れば。
ちゃんと待っててくれていたステラに、怒られた。
「何なの? ランチも食べかけのままで、バッグも置いて急に居なくなるなんて!
黙って消えたから、あなたの荷物なんか置いて行っちゃおうと思ってたのよ?」
お昼休みもそろそろ終わるし、次の教室へ移動しようと思ってた、とステラはポンポンと続けるけれど。
ステラ・ボーンズは普段の口調や態度はキツくても、実は性格はわたしよりも優しい。
だから面と向かっては心配していたのを隠して、可愛くない事を言っているが、わたしが戻ってくるまで、ずっと待っててくれているのは分かってた。
けれど……どうして?
わたしの隣、つまりステラの斜め前に座るフィンには、目もくれずに無視するなんて。
これって本当に? 本当にステラには彼が見えてないの?
不意に、左隣に座るフィンに肩を抱かれて引き寄せられた。
そして耳元で、
「ね、友達は僕の方を見てないだろ?
さっき頼んだみたいに聞いてみてよ」
こんな風に目の前で、フィニアス・ペンデルトンに肩を抱かれるわたしを見たら、絶対ステラも他のテーブルの人達も騒いだはずだ。
なのに、誰も何も言わない……のは……
もしかして裕福な大学生に流行り始めた危ないクスリを常用してて、妄想が始まっているのだろうか……それとも。
わたしに向かって笑顔を見せるフィンに、別パターンを思い当てた。
きっと、絶対にこれだ!
「中庭に居る全員が協力者?
もしかしたら、ステラも仲間なの?
その貴方達の悪戯か、ゲームかは分からないけど、中庭まで付いてきたのは、わたしで何人目?」
「……もしかして君は、僕が皆を巻き込んで君を騙してる、と言いたいの?
そんなことして、何の得が?」
確かに、一見何の得にもならないけれど。
今日は学期途中の長い休みの前だから、普段から楽しく毎日過ごしているだろうフィンだって気分が盛り上がって浮かれて、地味女が舞い上がる様子を皆で笑おうとして、とか……
「あのさ、初めて会ったのに抱きついた僕を信用出来ないと思うけど。
それが面白いから、の理由で誰かを笑い者にするなんて、僕はしない。
それだけは神に誓える。
それにダニエルには信じて貰いたいから、これから君の友人に会う。
恐らく彼女には僕が見えないと思うから、君を騙しているのかは、友人の反応を見て判断して欲しい」
笑顔を消して、真面目な顔で訴えるフィンを見て、仕方なくわたしは頷いた。
仕方なく、だ。
神に誓ってまで否定する人に、あーだこーだ続けたって、平行線だもの。
「僕は君の隣に座るけど、彼女には言わずに、さりげなく僕の事を聞いて。
彼女にしてみれば、僕がその場に居ないから、忖度なく思う事を話してくれるはずだから」
フィンはまだ『見えるのは君だけ』設定を続けるつもりみたい。
わたしの隣に居るのは内緒にしてって言うけれど。
それって、わざわざ言わなくったって見れば分かるじゃない。
でも、もしもこれが、わたしを引っ掛けるゲームじゃなくて。
『自分の姿は誰にも見えない』なんて、本当に彼がクスリのせいで妄想しているのなら。
おかしな人には逆らわない方がいい。
ステラのところには案内するけど、彼に適当に合わせてやり過ごそう、と気付かれないように伝えないと。
わたしはそう考えて。
外見最高、中身残念なフィニアス・ペンデルトンと、ステラが待ってる第3カフェテリアへ歩き出した。
「皆には僕の姿は見えないから、絶対に話しかけないで。
じゃないと、君は1人で喋ってる変な女の子になる」
変なあんたに、変だと言われたくないよと文句を返したいけれど。
言われた通り、黙って歩く。
だけど……見事に誰もこちらを見ない。
わたしの手を、あのフィニアス・ペンデルトンがずっと掴んでいて、引っ張るように先を歩いているのに。
途中でペンデルトンガールズの1人ともすれ違ったが、どうしてだろう、彼女はフィンに視線もくれない。
……これは。
ここまで徹底して、ここに居る全員でわたしを騙す、なんて無理な話では……
これは、もしかして……本当に?
本当に、フィニアス・ペンデルトンは誰にも見えていないの?
そんな風にモヤモヤした不安定な迷宮に片足が入った状態で、カフェに戻れば。
ちゃんと待っててくれていたステラに、怒られた。
「何なの? ランチも食べかけのままで、バッグも置いて急に居なくなるなんて!
黙って消えたから、あなたの荷物なんか置いて行っちゃおうと思ってたのよ?」
お昼休みもそろそろ終わるし、次の教室へ移動しようと思ってた、とステラはポンポンと続けるけれど。
ステラ・ボーンズは普段の口調や態度はキツくても、実は性格はわたしよりも優しい。
だから面と向かっては心配していたのを隠して、可愛くない事を言っているが、わたしが戻ってくるまで、ずっと待っててくれているのは分かってた。
けれど……どうして?
わたしの隣、つまりステラの斜め前に座るフィンには、目もくれずに無視するなんて。
これって本当に? 本当にステラには彼が見えてないの?
不意に、左隣に座るフィンに肩を抱かれて引き寄せられた。
そして耳元で、
「ね、友達は僕の方を見てないだろ?
さっき頼んだみたいに聞いてみてよ」
こんな風に目の前で、フィニアス・ペンデルトンに肩を抱かれるわたしを見たら、絶対ステラも他のテーブルの人達も騒いだはずだ。
なのに、誰も何も言わない……のは……
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