【完結】貴方を愛するつもりはないは 私から

Mimi

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絆されます! ~グレイス~

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朝目覚めて、ここが一瞬何処なのか、判りませんでした。

目の前に広がる高い天井。

まるで宗教画の様な、厳かで美しい場面が描かれた天井を見たのは初めてで、私はベッドの上で身体を回転させながら、色々な方向から天井画を眺めました。

ここは美術館、或いは教会?
立派な絵画が飾られているのは、その二つしかありません。


……お恥ずかしい話ですが、私に文化的な教養はありません。
どちらかと言えば、体を動かす方を好みます。

大叔母様に言われたように、本も読まないし、刺繍も苦手、ピアノも巧くありません。

(こんな私を旦那様がお好きな筈がない)


昨夜こちらに通された時は『豪華な感じ』としか思わなくて気付かなかったのですが、明るい朝の光の中で室内を見渡せば、とても凝った意匠のお部屋だと知りました。


特に天井の天使の絵が素敵です。
天使に手を伸ばしている人間の男性は旦那様に似ている気がしました。


……そう思いながら、さっきから自分の胸がしくしく痛いことに気付いてしまったのです。

(平気だと思っていたのに、本当に言われて私は悲しかったんだ。
きっと、私が通して貰えなかった夫婦の寝室は、旦那様が真実に愛する人との為の部屋なんだ。
その方との結婚が許されなくて、旦那様は仕方なく私と結婚したんだ)

その証拠に。
旦那様は昨夜も私のスケスケを見て口を押さえられ、吐きたいのを我慢されていました。

(もう判っています。
『お前を愛するつもりはない』ですよね。
 言っちゃってください、私は平気だから)


昨日は一日中、お姉様の言葉が頭から離れなくて。
花嫁の控え室に食べやすいようにと用意されていた、ひとくち大の軽食にも手は伸ばせなくて。

(切り換えなくっちゃ)


頭の中を食べ物の事でいっぱいにしました。
胸の辺りがしくしく痛むのは……
何だか泣きたくなるようなのは……
絶対に、お腹が空いているせいなのです。
きっとそうに違いない!

(そうだ、何か食べたら元気になる!)


枕元の呼び鈴を鳴らしました。

扉がノックされて、入ってきたのはメイドではなく、旦那様でした。


「君の足が余りに速くて、追い付けなくて、ごめん」

旦那様はベッドサイドのテーブルに朝食を置きました。

昨夜も恥ずかしかったのですが、この明るさでは私のスケスケ具合がひどくて、隠せるだけ隠したいと思いました。
私はガウンの前を合わせ、シーツを更に巻き付けました。


「走るのだけは得意なんです」

「カン蹴りのキックが正確なのと、一輪車の蛇行が見事なのも知ってる」

「……」

「君の鉄棒の前回りはすごく美しいし、使用した遊具は率先して片付ける。
 ひとりで居る子を見つけたら遊びに誘って、それから、後は……」


旦那様の話は続いていますが、仰る事が理解出来ません。
全部、昔の私の初等部の頃の話です。


「俺、気持ち悪くてごめん。
 ずっと見に行ってたんだ、昼休みに」


 ◇◇◇


取り敢えず朝食をいただいていますが、目の前に旦那様が居てじっと私の顔を見つめているので、食べている気がしません。

今まで、こんな感じで正面から見つめられる事はなかったのです。


「10年間、ずっと君に片想いしてたよ」

(うっ、)

サラダを食べていたのですが、玉子を噛まずに飲み込んでしまって。

噎せて咳き込んだ私にお水のグラスを旦那様が手渡してくれて、お互いの指が触れてしまい、心臓が飛び上がりました。

(何なんだ、これ、あま、甘過ぎるっ!)


今までの旦那様とは違い過ぎます。
もしかして、今目の前にいらっしゃるのは旦那様の双子の弟さんか、と思うレベルの別人です。


「自分の変な所をバレるのが嫌で、格好つけてて素直になれなかったんだ」

ちょっと頬が赤くなって照れている旦那様がたまりません。

(何か私もおかしくなってる!)


「でも昨夜君に逃げられて、そこの廊下で夜を過ごして気がついた」

廊下? そこの廊下で?
夜を過ごしたの?


「もうすぐ俺は死ぬ」

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