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思い出が切ない
しおりを挟む今日は、放課後に誰もいない空き教室で聡と話す約束をしている。
「直樹。ごめん。遅くなった。」
「いや、大丈夫だよ。」
・・・・・・・。
「聡。体育祭の時の話なんだけど。・・・あの時の『好き』って、恋愛的なやつ?」
「うん。ごめん。本当にごめん。あんな事して、許してもらえないのは分かってる。本当にごめんな。好きになってごめん。」
「聡。泣かないで。俺、怒ってないから、顔を上げてよ。」
「なおきぃ・・・。一年の時、お前と仲良くなって、こんなに一緒にいて楽しい奴がいるのかって。毎日楽しくて。」
「うん。」
「毎日一緒に居るうちに、お前の笑顔が可愛くて、かわいくて仕方なくなって。でも・・・友達だからこんなのダメだって思って。」
「うん。」
「一緒に居られるだけでよかったんだ。」
「うん。」
「だけど、冬休みにお前が家に泊まり来た時、横に居るだけでドキドキして、お前に触れたくて、でもすごく我慢して。」
「うん。」
「夜中に目が覚めた時、ベッドの下で寝ているお前の寝顔を見てたら我慢できなくなって、何回かキスした。」
「うん・・・うん?キスしたの?何回も?」
「う・・・うん。ごめん。」
「う、うん。俺知らないからノーカンな。」
「うん。一緒に居たかったから友達のふりをしようと決めたんだ。でも二年になってクラス分かれて隣に居られなくなった。」
「うん。」
「直樹は新しい友達も増えて・・・しかもあの王子だろ。そのうえ彼女までできて。俺、どうしたらいいか分からなくなって。どうしても直樹が欲しくて・・・最低なことした。」
「そっか。」
「本当にごめん。」
「聡。・・・俺、今好きな人がいるんだ。だから、お前の気持ちに応える事はできない。ごめん。」
「そっか。」
「でもさ、俺も本当に楽しかったよ。お前と毎日バカなことやって遊んだり、みんなでカラオケ行って騒いだりさ。いっつも一緒だったから・・・。」
「うん。」
「俺は、お前に恋愛感情はないけど、友達としては大好きだよ。」
「ありがとう。」
「それは今でも変わらない。だから、俺の事は諦めてほしい。」
「うん。」
「そしてさ、聡に新しく好きな人とか彼女とか彼氏とかできたら、また友達になってよ。」
「うん・・・うん。分かった。直樹・・・最後にちゃんと言わせて。それで諦める。」
「うん。なあに?」
「直樹・・・一年の時からずっと大好きでした。俺と付きあってください。」
「・・・好きな人がいます。だから、ごめんなさい。」
「・・・・はぁぁぁ。ちゃんと言えた。スッキリした。直樹、本当にありがとう。」
「おう。・・・じゃあ帰るわ!」
「うん。・・・なあ、また廊下とかで話しかけてもいいか?」
「はあ?いいに決まってんだろ!じゃーな!」
聡は最後まで泣いていたけど、最後は笑顔で手を振っていた。
ありがとう聡。俺を好きになってくれて。
一年の時の聡との思い出が頭の中に溢れてきて涙がでそうになった。
早く圭一郎の顔を見たくて走りだした。
自分の好きな人が、自分を好きになってくれる確率ってどのくらいなんだろう。多分それは奇跡みたいなもんだろう。
いつか、いつなのかは分からないけど、また聡と友達になれるといいな。
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