42 / 45
ー番外編 3年生ー 創立記念イベント
しおりを挟む三年生は受験でピリピリしている中、創立記念の行事が開催されている。簡潔に言えば、学園祭だ。
うちのクラスは『クレープ屋さん』をする。
最初は、メイドカフェが候補になったが他のクラスと被り、委員長がクジでハズレを引いたから第二候補のクレープ屋さんになった。俺は兄ちゃんに習って、作る係になった。
でもさ、こんなの酷いよな・・・。俺、ズボンなんだけど見た目はミニスカートみたいなやつにピンクのポロシャツを着せられて、その上に白のフリフリエプロンさせられてるんだぜ。俺が作るって言ったから断れなかったんだけど・・・これはズルいよな。しかもさ、少し長くなった髪をさ、不衛生だからって可愛いピンで留められてるんだぜ。帽子被るって言ったのに。
これで、クレープ作るのが壊滅的に下手なら良かったんだけど、ほら俺って器用じゃん?メチャメチャ上手いんだよ。味覚的にも視覚的にもさ。そうしたら、逃げられないじゃんか。
他の男子は、自由な格好で呼び込みに行くかレジ係。
売り上げが一番だったクラスにはご褒美があるんだって。だからさ、腹を括ったんだよ!こんな恥ずかしい格好をさせられるなら意地でも一位になるしかないだろ!割に合わないだろ!
というわけで、今もゼロ円スマイルを振り撒きながら何十個目かも分からないクレープを作っている。
今日はシフトも合わないから圭一郎と一緒に回る事も出来ない。どうせ今頃あいつは女の子に囲まれてるんだろ。俺は営業スマイルで頬の筋肉が痙攣しようとしているのに。って言ってもしょうがないんだけど。
「まっきー!お疲れ!休憩行っていいよ。」
「咲ちゃん!マジ疲れる。あとは頼んだ。」
「本当!予想以上のお客さんの数だったもんね。まっきー、休憩でウロウロするときは気をつけてね!まっきーの事を女子だと思ってる人結構いたから!」
「はぁぁ。最悪。でも何か言われても話せば男だって分かるから大丈夫だろ。教えてくれてありがとう。」
―――なんて軽く考えていた事を、とても後悔しています。
今まさに全力で逃げている。名前も知らない他校生から。
名前とメアドを教えろと迫られ、断って逃げたから追いかけられているのだ。
全校舎開放されている今日でも他校生が踏み込めない場所は分かっている。職員室と生徒会室だ。とにかく近い方へ向かった。
「失礼します!!匿ってください!」
俺は急いでドアを閉める。
「・・・巻島君?どうしたの??」
「あっ・・・副会長!ごめん。追いかけられてる!ちょっと隠れさせて!」
「う・・ん・・・。そこのソファに座っていいよ。」
「ありがと!」
生徒会室には副会長がいて、見回りの合間に休憩していたらしい。
「生徒会って大変だな。こんな日も遊べないなんて。」
「そんな・・こと・・ないよ。」
「ふーん。俺、せっかく休憩だったのに変なのに追いかけられてさぁ~。休憩どころじゃねえよな。」
「ま、巻島君。大丈夫だったのか?ここで休んでいいよ。」
「わーい!ありがとう。小谷!」
「・・・え?ぼ、僕の名前・・・知ってるの?」
副会長は、何故かとても驚いた顔をしている。
「は?当たりまえだろ!選挙の時、俺は小谷に投票したんだぞ!」
そういうと、副会長はとても嬉しそうに「ありがとう」と笑顔を見せた。普段あまり表情を崩さない副会長の笑顔は少し幼く見えた。
二十分くらい他愛もない話をして過ごし、休憩させてもらったお礼に『クレープ特別割引券 巻島直樹より』とその場で書き、副会長にプレゼントして生徒会室を出た。
戻っている途中、不意に腕を掴まれ振り向くと圭一郎が居た。安心した。
「やっと直樹に会えた!!一緒に行こう!」
「えっ、一緒に回れるの?やったー!」
二人で回れると思っていなかったから嬉し過ぎて顔が緩みっぱなしだ。
「直樹、その格好すごく可愛いね。」
「俺は嫌だけどな。今はエプロンしてないから少しはマシだけど、あのフリフリは嫌だ。さっき店ではずそうとしたら委員長に怒られたし。」
「エプロンも可愛かったぞ。」
「・・・やめて。もう言うな。」
顔を赤くした俺を圭一郎がからかいながら歩いていると、カメラを持った生徒に声を掛けられる。
「すみません!お二人の写真を一枚撮らせて下さい!お願いします!!」
「え?写真?俺はいいよ。」
「後でもらえるの?」
「はい!!」
「じゃあ、いいよ!」
声を掛けてきたのは広報部の二年生らしい。
ハートとか星が飾り付けられた壁の前に立たされ「もう少しくっついて」とか「顔を寄せて!」とか指示され何枚か撮った。広報部二年は余程満足のいく写真が撮れたのか、何度もお礼を言いながら走ってどこかへ行ってしまった。
その後は休憩が終わって、また何十個ものクレープを作り、ゼロ円スマイルを振り撒き続けた。
副会長もクレープを買いに来てくれたけれど、俺の作った割引券を生徒会室に忘れたから定価で買うと言うので、「俺のおごりね」とスペシャルクレープをプレゼントした。
こうして一日目は終了した。
二日目は少ししかシフトに入ってなかったから、圭一郎と沢山遊べると思っていたのに「お前が居ないと稼ぎが少ない」と言われ、一日目よりも多く働く羽目になった。器用なのが裏目に出た結果だ。俺はこの二日間で一生分の営業スマイルを振り撒いたのではないかと思っている。
そして何より驚いたことがあった。まぁ~・・・驚いたというか、恥ずかしいというか、やめて欲しいというか・・・。
一日目に広報部の二年が撮った圭一郎と二人の写真。
ベストカップル写真コンテストで最優秀賞を獲得した。
何で!!!
おそらく、俺がクレープ屋の格好のままだったから女に間違われたのだろう。
恥ずかし過ぎるじゃないか!!写真を撮った広報部が二年生だったから俺の顔を知らなかったんだ。
忙しくて恥ずかしい創立記念イベントだったけど、圭一郎との楽しい思い出の一つになった。
ところで、例の写真だが・・・。あのまま本人達の手元には渡らず、ポスター大に引き伸ばされて広報部の活動部屋にいつまでも大切に飾られており、後輩達が部活動の一環と称し二人が通う大学に潜入し『ご本人見学会』を定期的に開催しているなんて、俺たちは知らない。
0
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる