白馬の王子様を探していたら現れたハイスペストーカー男に尽くされてる

チャトラン

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第4話 恋愛偏差値ゼロ

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「それで? 朝になったら家に帰ってたんだ?」

「そう。全然記憶ないんだよね」

「ふ~~ん」

よかったね、ウッカリ死んでなくて。
細いタバコを指に挟んだキャバ嬢のあの子が言った。
かわいいウサギみたいな顔してるのに言うことがシビアなとこ、面白くていいと思う。

「シーナってマジで男運悪いよね。いくらでも寄ってくるでしょ、その顔に騙されて」

「、」

騙されてとはなんだ人聞きの悪い。
そう視線を上げると、黒々とした長いまつ毛の下の大きな瞳と目があった。「……つけま着けてる?」と、やけに真面目なトーンで聞かれて首を振った。
なにいきなり。つけてないよ。

「大体さあ、大勢寄ってくる男の中でわざわざ一番ヤバいやつ選んじゃうのはなんでなの? そういう特技?」

「なんででしょうね……」

……俺が一番聞きたい。なんでだと思う?

「なんか多分だけど、遺伝子に組み込まれてるんだと思う」

「クズ男を選んじゃう遺伝子が?」

「そう。クズ男に惹かれる遺伝子」

「ウケる。悲劇じゃん」

ほんとにな。まさに、俺の人生って悲劇だと思う。俺がボンヤリした人間だから、それなりにやれてるってだけで。
飲み会で話すネタには困らないよ。悲劇と喜劇は紙一重、とかよく言うし。近況を面白おかしく話すだけで盛り上がる。いいことって言ったらそれだけだけど。

「今度から彼氏できたらシーナに見せにこようかな。シーナがいいなって思ったらクズ確定ってでしょ。……あ、そういう占い始めたら?」

あんまり好き勝手言うもんだから、怒った顔を作ってたのに笑えてきてしまった。

「ありかもね」

確かに割とこの街なら需要あるかも。自虐的すぎてやる気にはなれないけど。

「ていうかさ、前から思ってたんだけど。クズばっかり捕まえちゃうって分かっててなんで時々オーケーするの?」

「ん? ……あ~、」

言葉を選びながら、洗い終わったグラスに手を伸ばす。

「……まあ、アレ。熱烈な告白だとさ、断るのも大変だし。頑なに突っぱねる体力がないんだよ」

我ながら最低な答え。
「ふーん……」と、何を考えてるのかわからない黒々とした目が俺を見た。「……カラコンつけてる?」と聞くと、「つけてないよ」と答えが返ってくる。

「……前から思ってたけどさ、私とシーナ、似てるよね」

――似てる? 俺らが?
思いっきり眉間に皺を寄せた顔を上げる。

目の前にいるのは、ツヤッツヤの髪をしたボンキュッボンの美女。高級ブランドのバッグとダイヤのピアス付き。

かたや働き詰めの不健康なフリーター。
髪なんか勿論痛みまくりだし、体は薄っぺらすぎてたまに「内臓全部揃ってる?大丈夫?」とか失礼なこと聞かれる始末だし、余裕で貧乏。今は頬と口元にどでかい絆創膏付き。

「……いや、どこが? 少しも似てないでしょ」

嫌味言われてる?と首を傾げるけど、答える気はないらしい。
キャバ嬢は俺の顔を見てニッと小さな白い歯を見せた。

「自覚があるだけ私の方がマシ。シーナの方がエグいわ」

「なに? ディスられてんの? はっきり言ってくんないとわかんないよ、俺。文脈読むとか苦手だから」

現代文の成績とかまじでクソだったし。
そう言うと、「私も」とまた彼女が笑う。

「その顔が悪いよ。儚げ王子様フェイス。中身がこんな人でなしなんて気づけないもん」

「……」

儚げ王子様フェイス。ちょっとハーフっぽいだけでしょ、と思いつつ肩をすくめる。

「オマケに金融会社のお兄さんたちがついてくる王子様ってアリ?」

「うーーん……ナシ!」

ダメじゃん。
アハハ、と馬鹿二人で笑いあっていると、ピタ、と彼女の笑いが止まった。あ、たしかにこれ俺もよくある。笑いが急に止まるやつ。そんなことを思いながら俺も笑いを収め、彼女の様子を伺う。

「……私達さ、幸せになるのに何が足りないんだと思う?」

長いまつ毛が伏せられて、視線は手元のグラスに向けられている。あれ、なんか嫌なことでもあったかな。いや、俺に会いにくる時は大抵、嫌なことがあった時だからきっとそうなんだろうけど。

「……、」

俺も別に首を突っ込む気はないので、彼女に倣って、金色の液体に視線を移した。――中身は有名どころのウイスキーだ。その度数43%。今のところ、陶器のような彼女の肌に化粧以外の赤みは見当たらない。

「……かわいげじゃん?」

グラスを見つめながらそう言うとパッと大きな目がこちらを向いた。

「確かに。一人で生きていけるもんなあ、私」

俺もそう。

「……結局さ、モテるのは一人で馬車も降りられないような女なのかもよ」

知らないけど。

「じゃあダメだ。私この間ひったくりに10cmヒールで飛び蹴りかましちゃったもん」

吹き出すのを堪えたせいで喉仏が震える。

「……ふ、強。俺は良いと思うけど」

「……んー、なんなら私がシーナの王子様になろうか。優しく抱いたげるよ」

髪をかき上げながらわざとらしくウインクをする彼女にゲラゲラ笑った。
案外こういう子ってちゃんといい人に好かれてちゃんと幸せになりそうだ。俺の願望かもしれないけど。かわいい容姿に釣られてやってくる中身ペラッペラの男じゃ勿体無いし。





俺と馬鹿話をして気が晴れたらしい彼女は帰り際「情操教育」なんて訳のわからないことを言って、俺におススメ映画のDVDを押しつけていった。
例の、タイトルからしてサッパリ見る気になれないアレである。

「……これ、持って帰らなきゃダメ?」

俺ら気は合うけどさ。映画の趣味は壊滅的に合わないね。まじで。
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