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15.守りし者
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イリヤの愛馬である海馬は、船など問題にならない速度で夜の海を疾走していく。
本来であれば海の中を駆けるように泳ぐのだろうが、俺はともかくソニアの息が続かない為、海上を進んでも貰っている。
海馬と言う種族は、前足にはヒレの付いた蹄、後ろ脚は無くそのまま魚のような尾びれへと変化している。見た目的にはケルピーと呼ばれる水の妖精に近いだろう。
「大丈夫?」
俺は海馬を操るイリアに尋ねる。傷が回復したとは言え体力はまだ全快ではない、無理をすれば再び気を失う恐れもある。
「ありがとうございます。大丈夫です」
イリヤは気丈に振る舞って見せる。しかしそれは焦燥感から来るモノだと俺は感じた。
[島に着いたらもう1度ポーションを飲ませた方がいいな。・・・この様子だとその場で待つように言っても無理だろう、ミレニア頼めるか?]
[無論じゃ。後詰めは妾に任せ、お主らは殲滅に尽力するがよい]
[ん、了解]
状況はまだ読めないが、俺達は最低限の作戦を心話で打ち合わせする。この中で最も強力な戦力であるミレニアには、イリアの護衛も兼ねた守りの役割をお願いする。逆に俺とソアラは打って出て、海人族の負担を減らす目算だ。
島が近づくにつれ、その周りの変化が俺達の目に飛び込んでくる。水面は細かくさざ波立ち、その色も濁り変色している。
「これは・・?」
「眷属共と海人族の戦いによるものじゃな。魚類を基礎とした眷属故に個体としての能力では海人族には劣るが、数の暴力にてかような凄惨な状況が生み出されておる」
「封じられた海域に棲息しているのに個数は減ってないのか・・・。それとも、それを上回る速度で増殖したのか」
[ちょっと嫌な予感がするな・・・]
ある可能性が脳裏に過り、イリヤを不安にさせないよう、声に出す事をせず俺は心の中で呟く。
「もうすぐ着きます!このままこの子で島へと駆け上がります、衝撃に備えて下さい!」
俺の思考を遮るように、イリヤの声が鋭く飛び込んでくる。
俺達は振り落とされないよう、海馬に跨る足に力を込める。そして身に轟く振動、海馬が浅瀬を超え、島の砂浜に駆け上がった。
「待って、コレを」
島に着くや否や、こちらですと息せき切って案内しようとするイリヤに、俺は無理やりポーションの容器を押し付ける。
一瞬呆けたような表情になるイリヤだが、その意味をすぐに理解し急ぎポーションを飲み下す。
「イリヤよ、本調子ではないお主は、妾のそばを離れるでないぞ?」
ミレニアが俺の肩から飛び降り、イリヤの隣へと並ぶ。そして俺達は案内されるまま、セインリットの入り口へと向かった。
「陸の方々はこちらの入り口から入ると、海中でも身体への影響を受けない加護を受けられるようになっております」
そう言ってイリヤは、洞窟内に敷設された階段を地下へと進んでいく。
少し進むと階段が水没しているのが見てとれる。桟橋の老人が言っていたのはこの事だろう。
「大丈夫、釣りをしている時に呼吸は出来ると聞いた」
俺は一瞬戸惑いを見せたソアラに、老人から聞いた情報を改めて伝える。それを聞いて安心したのか、ソアラは俺に続いて水の中へと歩を進める。
「なるほど、確かに身体の周りに薄く空気の層がある感じだ」
水の中に全身が浸かる。しかし不思議な事に、身体を取り巻く薄い空気の層により水に触れる事なく、服なども濡れていない。
呼吸も空気の層を消費する訳ではなく、どうやら空気の層に触れた海水から酸素を取り出し、それによって呼吸を可能としているようだ。
そしてイリヤの言った通り、海水はそこにあるが動きを阻害する事なく、陸上と同じように身体を動かす事が可能だ。
先へ進むごとに海水の濁りが強まる。俺達は逸る気持ちを抑えながら、それでも足早に出口を目指して進んでいく。
「なんて数だ・・・」
セインリットの街へと到達した俺達の目に飛び込んできたのは、街を覆うようにして広がる色違いの水と、その境目にびっしりと張り付く眷属達の姿だった。
「街を覆うように広がっているのは結界か?」
「私達海人族の住む地はどこも、産海母神様により外界の影響を軽減させる加護を賜っております。眷属がいるのはその境目ですが、数の暴力で無理やり侵入してきた個体もかなりいます」
どうやら街中の海水まで濁っていたのは、無理やり結界を抜けた個体が討たれたり、そのまま死亡した物の体液が広がった事によるものだったようだ。
「ふむ、数は多いけど、幸いこちらの被害は少ないみたいだ。街の側からあの境目を超える事は可能なのかな?」
「はい、あくまでも海人族の街を守る加護なので、害意さえなければ通行は可能ですが・・・」
「イリヤ!」
俺達の声を聞きつけたのか、数人の海人族がこちらへと泳いでくる。
「お父様!よくご無事で!」
「お前の方こそ・・・。しかしなぜ戻った、ニムルへの連絡は大丈夫なのか?」
再会を喜び合う親子。この眷属達の包囲を抜けるだけでも決死の覚悟だろう、もしかしたら父親の考えは、イリヤを逃がす為の口実も含まれていたのかもしれない。
「此度の問題はリヴェニアに代わり妾達が預かる故、ニムルへの連絡は無用じゃ」
ミレニアがイリヤの父親に近づきそう告げる。
「水紺竜様を呼び捨てに・・・、貴方様はもしや」
「白銀竜じゃ。ともかくじゃ、今はそんな事をしておる場合ではなかろう?はようあやつらの始末をつけるぞよ」
ミレニアは忙しく表情の変わるイリヤの父に喝を入れる。実際に動くのは俺達なのだが、街を率いる立場の人物が冷静さを失っていては話にならないという事だろう。
「失礼の段ご容赦を。私はこの街を治めておりますイザリムと申します。現在のところ産海母神様のご加護により街は守られ、我々の攻撃によって注意を引く事により、かろうじて膠着状態を維持しておるところです」
「押し寄せた眷属共はこやつらが最初かえ?」
「はい、まるで深海のように辺りが暗くなり、あっという間に囲まれました。状況を確認しようとしたところに水紺竜様のお声が響き、禁海の封が破られたと知りましてございます」
「ふむ、見たところまだ街への被害は軽微と言う所じゃな。ウォルフ、ソアラ、討って出るぞよ」
「お、お待ち下さい!これだけの数を相手に御三方でと言うのは流石に危険です!せめて我々の中より選りすぐりの者を・・・」
俺とソアラを伴い出撃しようとするミレニアに対し、イザリムが慌てて止めに入る。
「たわけ。お主らにはこの街に住まう民を守る責務があろうが。まだ被害が軽微な今の内に民を教会へと集めよ」
ミレニアの言葉にイザリム達は雷に打たれたかのように直立し、慌てて街中を巡回し始める。
「まずはこの邪魔くさいやつらの処分からじゃな。イリヤ、お主は病み上がりじゃ、ここは無理をするでない」
ミレニアは付いて来ようとするイリヤに釘を刺す。そして言い放つ。
「禁海の封が破られた以上、再度封印を施すまでの間、幾たびも眷属共が押し寄せる。今いるこやつらを処分したからと言って終わりではないのじゃ。この状況に至り、お主ら海人族は肉体的にも精神的にも疲弊しておる。ここは妾達に任せ、まずはその心身を癒すが良い」
「再封印はどのくらいかかるんだ?」
「それほどはかからん、おそらく1両日中には完了するじゃろう。じゃが、その間も眷属共は溢れ出ておる故、事態の鎮静化には最短で数日を要すると踏んでおる」
おそらく結界が破られてから、リヴェニアが動くまでにほとんどタイムラグはないだろう。だがその間にも、万を下らない数が押し寄せている事を考えると、再封印が完了するであろう30時間の間にどれほどの数が流出してくるか予想も付かない。
「つまり籠城って事だな、解った。さっさと退治して少しでも余裕を稼いでおこう」
「ん、了解」
そう言って俺達は動き出す。イリヤはミレニアの話に一瞬狼狽えた様子だったが、覚悟を決めたらしく、一つお辞儀をすると父と同様に民の誘導へと向かった。
「戦い方はお主らに任せるが、地の理は相手に有利じゃ。心してかかるが良い」
言うなりミレニアが弾丸のように飛び出し、もっとも敵影の多いところへと飛び込んでいった。
「正攻法じゃ流石に数が多すぎるな、ソアラは海底に近い奴を頼む。そこなら地の属性を存分に発揮できるだろう」
「ん、解った。気を付けて」
「ああ、ソアラも気を付けて」
お互いに手を振り、俺達は別々の方へと駆けて行く。
[水中戦か・・・。さてどうするかねこの数]
見上げる頭上にびっしりと張り付く、どこかデッサンの狂った魚類系。首を巡らせると、真っ先に飛び出したミレニアによる無双状況が目に飛び込んでくる。
ミレニア自体の姿は見て取れないが、その爪の衝撃波やブレスによって眷属達がどんどん滅殺されていくのが遠目にも確認出来る程だ。
[あれでも本来の力には程遠いってんだから・・・、存在の格が根本的に違うってやつかね]
ミレニアだけでもこのまま全部処理しきれるんじゃないかと思ったが、あとで文句を言われるのは間違いないので、俺は自分の出来る範囲で仕事こなす事に集中する。
俺は結界状になっている水の境界線へと近づくと、そこへ手を伸ばし、張り付く眷属達の中心に水圧をかける。そして境界線から引きはがすと中央の水圧をは別の圧力を作り水球を形成する。
水球の中には500匹程度がひしめきあう形で暴れているが、吸い寄せる圧力を持つ中央と弾く圧力を持つ外周に阻まれ脱出は不可能のようだ。
「ファストフリーズ」
そして俺がキーワードを呟くと同時に水球は完全に氷の塊へと変貌する。水球内の水の元素に干渉し、原子運動を止める事で熱の放出を停止、内部の水がもつ熱は全て変換され、一気にマイナスへと転じた。
その氷の塊と化した水球に、水の元素を高速振動させた波をぶつけ細かく破砕する。
魔力の消費を増やせばもっと大きな水球を生み出す事は可能だろうが、何せ眷属の数が多い。魔力の自動回復量を計算しても、確実に仕留めて行くにはこれが限界と言えるだろう。
とは言え、数を同時に生み出す事可能だ。俺は複数の場所で同じ様に水球を展開させ次々と氷の塊を生み出していく。内部まで完全に氷付いている水球は、そう簡単に溶ける事はないので、まずは眷属の活動数を減らしていく。
10個ほど作ったところで、先ほどと同様に高速振動させた波をぶつけ、氷の塊群を一気に砕く。
[今押し寄せてる奴らはあらかた処理出来たかな]
周りを見渡して見るが目立った敵影は存在しない。数は多かったものの、1個体が弱かったのが救いと言えるだろう。とは言え、辺り一面に眷属達の斬り裂かれた死体や体液が広がっており、正直目を覆いたくなるような惨状だ。
[ひとまず片付いたようじゃな]
時を同じくしてミレニアから心話が入る。
[それはいいんだが、この海の中の状況、何とかしたほうがいいんじゃないか?]
[構わぬ、眷属の襲来が終わらぬ事にはいくら浄化しようが同じことじゃ。それに、再封印さえ終わればリヴェニアが来る手筈になっておる、水の事はあやつに任せるのが一番じゃよ]
いつの間に連絡を取り合っていたのか、大立ち回りを繰り広げていたミレニアの口から予想外の言葉がでてきた。
[ともあれまずは教会へと集まろうぞ。イザリムらも民の誘導を終えたようじゃしのう]
言われてマップを確認すると、街の1ヶ所に人達が集合しているのが見て取れた。おそらくここが教会なのだろう。
「おお!皆さんご無事でしたか!」
俺達が教会に集合すると、それをに気付いたイザリム達が寄って来て両手の拳を付き合わせるという変わった挨拶をしてくる。海人族の礼の形なのだろう。
「ひとまず片付いたと言うところじゃ。とは言えまだ終わってはおらぬ、再封印が済み次第リヴェニアも駆けつける故、それまでの間耐えて貰わねばなるまい」
「おお、水紺竜様が・・・!これも全て産海母神様のお導き、このイザリム、感謝の念で胸が張り裂けんばかりです」
「ともかくじゃ、次の襲撃がいつになるか解らぬ以上、急ぎお主らを守る結界を構築せねばならぬ。民は全て教会内に集まっておるな?」
感謝と感激に身を震わせ、平伏しているイザリムに向かい、ミレニアは問いかける。
「はい、仰せの通り教会内へと避難させてございます」
「うむ、では始めるぞよ」
言うが早いかミレニアは教会の各所へ高速で移動しながら不思議な光の紋様を海底に描いて行く。その数6つ、丁度神々とも竜とも同じ数である。
そして最後の1つを描くと何やら不思議な文言を呟き始める。
「我は光、六柱が1柱、光が化身白銀竜、我が名に置いて母神へと願い奉る。光の銀、闇の黒、水の紺、地の黄、火の緋、六柱が力の一端を持って、この地への加護を与えたまえ」
ミレニアの言葉に呼応するかのように、教会を取り囲むように描かれた光の紋様からそれぞれ銀、黒、紺、黄、緋の光りが駆け上る。そしてそれは教会の上で合流し、虹のように色がいくつも織り成す光のベールのように教会を包む。
「ふぅ・・・。これで教会にいる限りは安全じゃ。その事を民へ伝え、心身を休ませるが良い」
珍しく疲れた様子のミレニアは、しかしはっきりとした口調でイザリムへと伝え、教会へと向かわせた。
「珍しく少し疲れたみたいだな」
俺はそう言いながらミレニアを抱き上げ、肩に乗せて休ませてやる。
「母神へと願い奉る結界じゃからのう。頑強である変わりに消耗も激しいのじゃよ。それに、本来幼生体で行うような事ではないからのう」
「それって結構無茶したって事じゃないか。ポーション飲むか?」
「無用じゃ。自身を構成する属性を媒介とする事で発動させる故、休養する以外に回復の手段が無いのじゃ。とは言え効果範囲を絞った事で、消耗も軽微に抑えておる。眷属の相手くらいであれば問題なかろう」
ミレニアの見立てに間違いは無いと理解しているが、それでも多少心配になった俺は、ミレニアの頭を軽く撫でる。
「ミレニアの事だから心配はないと思うけど、無理はするなよ」
「ん、ミレニア様無理ダメ」
ソアラも心配だったのだろう、一緒になってミレニアを撫で始める。
「解っておるわ。心配し過ぎじゃお主らは」
そう言ってそっぽを向くミレニア。しかしその言葉にはどこか照れ隠しのような声色が混ざっている。
「どうやら休憩は終わりのようじゃな」
そう言うとミレニアは海底へと降り立つ。マップを確認するとそこには無数の敵性反応が迫って来るのが確認できた。
「思ったより早いな」
眷属の第一陣を殲滅してからまだ1時間程度しか経っていない。確かにこのペースで襲撃が続けば、セインリットもニムルも飲み込まれていたかもしれないと軽く恐怖を感じた。
「海水が汚れて視界も悪い、充分に気を付けて対応しよう」
俺の言葉に頷きあい、俺達は先ほどのように三方へと散り迎撃体勢を取る。
[さっきのはカツオくらいのサイズだったが、今度のはマグロくらいあるなコレ]
名前が解らないので、とりあえず敵性生物でサーチを行ってみると、濁った海水の先に歪な魚影が見て取れた。
[やっぱり禁海の生物にも食物連鎖とかあるのかね]
まるで第一陣の後を追跡するように迫り来る魚影の動きを見て、俺はふとそんな感想を漏らす。
[数は最初より少ないけど、あのサイズだとさっきの戦法は無理そうだな]
水圧の牢獄へと閉じ込めるには、相手の推進力が前提となる。マグロサイズの体躯から生み出される推進力、それを押さえ付けるほどの水圧を作り出すには、流石に魔力の運用効率が悪すぎる。
[仕方ない、突っ込むか]
俺は刀をしまうと格闘装備に素早く着替える。影響はないと聞いているが、刀を海水の中で振り回すのは流石に錆びるのではないかと不安を感じた。それに小回りが利く格闘の方がこれから行う事に向いていると考えたのだ。
「エンチャント・アクアアーマー」
キーワードと共に全身を包む水流の鎧が生まれる。これであれば突撃を食らったとしても水流にって威力が受け流せるだろう。
「エンチャント・ウォーターネイル」
続けて手甲足甲の先に高水圧で振動する爪を展開させる。触れる物を全て斬り裂く水の高周波ブレードである。
準備ができた俺は、眷属に向かってそのまま駆けだすと、足元の水に干渉し推進力を生み出し群れの中に飛び込んで行く。
やる事は先ほどのミレニアを真似た物、敵のど真ん中で体術を駆使して大暴れする。
「ハッ!フンッ!セイッ!」
掛け声と共に拳を繰り出し、蹴りを放ち、水の爪に触れたところから眷属の身体を引き裂いて行く。
突進してくる個体には、それに合わせて体を捻り裏拳をお見舞いし、固まっている群体にはそれぞれを足場としながら同時に斬り裂いて行く。
先ほどより効率は落ちる物の、確実に個体数を削り減らして行く俺達。
[これでラスト!]
俺はサメのような個体にサマーソルトを繰り出し粉砕する。どうやら第二陣の殲滅も全て完了したようだ。
[では、教会前に集合じゃな]
俺達はミレニアの号令に合わせて再び教会前へと集合する。
「ソアラ、コレ」
「ん、ありがと」
集まった俺達はお互いの状況を確認し合う。精霊種とは言え、不慣れなフィールドである海中での戦闘だからか、多少なりダメージを負っていたソアラにポーションを渡す。
「朝までに事態の収束が付くといいんだが」
「こればかりはリヴェニア次第じゃな」
妖関連の事象は、極力人の目に触れないようにしたいと言うのが竜達の総意でもある。ただ、海人族に対しては、生活圏に関わる脅威である為か、禁海の情報を開示している。
「そもそも封印てどんなものなんだ?」
「本質的には妾が教会へと施した結界と同様、母神へと願い奉る事で行うのじゃが、禁海の範囲がひろいのでのう。施す時間はそれに比例する形になるのじゃ」
俺のふと口を付いてでた素朴な疑問にミレニアが応えてくれる。
「ふむ・・・。それって時間経過で効果が弱まったりはしないよな?」
「無論じゃ。教会へと施した物は属性の違いにより時間と共に消えるであろうが、水を司るリヴェニアが海中において、己が属性を媒介とし発現させるのじゃ、周りにその属性が滞留している状況で消える事はありえぬ」
「何かの力によって破る事は?」
「普通であれば考えられぬのう。少なくとも禁海側から結界へ干渉する事は出来ぬじゃろう。ならば外からという事になるが、母神の力を以て施した封印を破るなどと言う事は、誰であろうと不可能のはずじゃ」
「でも実際に破られた、と」
「そこじゃな、問題は・・・」
あり得ない事が起こっている。ミレニアの様子からその驚愕がありありと読み取れる。
[母神と並ぶ力、あるいはそれを相殺する力を持つ何者か、か・・・]
少なくとも、ミレニア達六柱の竜を生み出した存在である母神と同等の力を持つ時点で、それは神と同様の存在という事になる。
「もし仮に、封印を破れるほどの力を持つ妖が現れたら?」
「・・・それは間違いなく最悪の状況じゃが、それほどの力を持つのであれば今頃この世界は破滅へと向かっておるじゃろう」
「つまり、あくまでも可能性の範疇。現時点で具体的な証明は出来ないが、軽視出来る問題でもないって事か、今回の件は」
「そうじゃな」
「姉上、一度六柱を集め会談を行うべきかもしれませんわ」
それまで静かに成り行きを見守っていたソアラが意見を述べる。しかしその喋り方はソアラのものではなく、いつの間にそうしたのか居住まいも正されている。
「ルフィニアか。・・・確かに事が事じゃ、皆を集めて話し合うべきかもしれんのう。今、妹達の所在を尋ねているのも、あるいは何某かの因果が巡っておるやもしれん」
「解りました。私は常に姉上達の動向を見守っております。どうかご無事で」
ルフィニアは深々と頭を下げる。そして頭を上げた時にはすでにいつものソアラに戻っていた。 どうやら意見を直接伝える為に、一時的にソアラの身体を借りていたようだ。
「・・・面倒な事になりそうじゃな」
なぜか俺の顔を見ながらため息を付くミレニア。・・・なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
「おしゃべりはここまでじゃな」
そう言ってミレニアが動き出す。マップに映る敵性反応は20ほど。今までと比べると極端
に少ない。
「・・・大物のご登場って訳か」
急ぎ敵の迫って来る方へと向かいサーチをかける。浮かび上がるそれらは、巨大な生物の数々だった。
クジラのような巨大魚が5体、背中にひし形の甲殻を背負ったタコのような生物が6体、カニのような甲殻類が4体、そして、古生代のアノマロカリスのような巨大生物が5体、真っ直ぐセインリットへ向かってきている。
[ソアラは海底を移動してくる4体を頼む。あれは甲殻が固いだろうから地の属性魔法で叩くのが確実だ]
[ん、了解]
[ミレニアは一番数の多い軟体生物を頼む、普通に斬り付けてもおそらく効果が薄いだろうが、ミレニアの爪なら余裕で斬り裂けるだろう]
[そやつだけでなく、全部妾が相手をしても良いぞ?]
[まあ、ミレニアなら行けるだろうけど、一番厄介そうだからそっちから頼む。俺は残りを適当に相手しながら2人の手が空くのを待つよ]
心話にて打ち合わせを終え、俺達は巨大生物群へと特攻をかけて行く。
[見た目がアノマロカリスに似てるアレがおそらく頂点捕食者だろう。ならクジラっぽい巨大魚を傷つければ・・・って、この辺り一面血だらけだったな]
ならばと作戦を変更し、巨大魚の1匹に張り付く。そしてアノマロカリスのような生物から見えないように水で作った槍を当てる。
[よし、うまく誘導出来たみたいだ。他の奴らもこの調子で削りあって貰おう]
俺は自分の周りの水の屈折率を変化させ一種のステルスモードとし、巨大魚に張り付き水の槍を撃ち出すと言う作業を繰り返す。
そして最初の1匹目のところへ戻り、その背中に張り付く。襲われた巨大魚は抵抗を見せているが、太い2本の触腕に絡め捕られ、その身をゆっくりと削り取られて行く。
[さて、こいつどうやって倒そう。外皮は甲殻類と同じような硬さだし、サイズもクジラ以上だしな・・・。甲殻類と同じだと考えると、神経節で行動を制御している事になるからバラバラにしない限り倒せないか]
カニのように海底を行く甲殻類であれば、まだ地の元素魔法によって叩き潰すなど方法があるのだが、海中を自在に泳ぐ甲殻類がこれほど厄介な生物だとは考えもしなかった。
[効果があるか解らないが、沸騰させてみるか]
俺は意を決してアノマロカリスのような生物の頭と思われる場所へと張り付き、内部のへと魔力を注ぐ。そしてその体内の水の元素を高速運動させ熱を発生させた。
突如体内で発生した高熱に、アノマロカリスのような生物は抱えていた獲物を取り落とし、大暴れする。しかし次第にその動きは緩慢となり、ついには全身から力が抜ける。
[なんとかいけそうだな]
念のために触腕と目を切り落とし、次の標的へと向かう。
頂点捕食者故の油断なのか、絶対の自信なのか、食事中のアノマロカリスのような生物達はその場から動く事無く獲物を噛み砕いている。
とは言え、食事中であっても、目に入った獲物を襲うと言う説もあった気がするので油断は出来ない。おそらく、水の屈折率を変化させたステルス状態でなければ、背中側とは言え近づく事も困難ではないかと思われる。
俺は2匹目に張り付き、同じ様に体内を沸騰させる。
[よし、これであと2ひ・・・やばっ!]
体内を焼かれ暴れる、2匹目のアノマロカリスのような生物の動きに触発されたのか、急接近してきた3匹目がその身体に絡みつく。
[あぶな・・・。共食いの習性もあるのかこいつら。妖の眷属ってのも伊達じゃないって事か]
触腕に絡め捕られる直前、2匹目から飛び退いた俺は、間一髪のところで脱出する事が出来た。
[ウォルフ、その場から急ぎ離れよ]
そのまま3匹目に攻撃をしようと動き出したところで、ミレニアから心話が飛んでくる。
俺は言われるまま高速でその場を離れる。すると、遠くで光りがみえた。
そして目の前を瑠璃色の光りの奔流が迸る。
瑠璃色の光に包まれたアノマロカリスのような生物達は音もなく分解されるように消滅していき、光の通った場所の海水は清浄な物に変化していた。
[リヴェニアのブレスじゃ。どうやら持ちこたえたようじゃのう]
[アレが成体の放つブレスなのか・・・]
マップの範囲外から放たれた超威力の砲撃。確かに、幼生体のミレニアが本来の力を出せないと言うのも納得の一撃だった。
[あとの浄化はリヴェニアに任せ妾達は休むとしようぞ]
ミレニアに言われるままに俺達は教会へと向かい、そこに待つイザリム達海人族の人々と顔を合わせる。
「終わったぞえ。今こちらへとリヴェニアが向かっておる。この海域の浄化はリヴェニアに任せ、皆休むが良い」
「有難うございますっ!」
イザリムの感謝の言葉を合図としたかのように、海人族の人々は一斉に平伏する。
「気にするでない。この世界の安寧を守るのが我ら竜の宿命じゃ」
平伏する海人族の人々に、ミレニアは慈しむように言って諭す。
[とは言え少々疲れたのも事実じゃ、ウォルフ肩に乗せて貰えるかのう?]
[ああ、お疲れ様。リヴェニアさんとも話をしなきゃいけないし、しばらくこの街で休んで行くとしようか]
[ファリスとリュミエール]
[あ、そうか]
ソアラに袖を引かれ、ニムルの宿へと繋いだままのリュミエール達の事を思い出す。
[んじゃ一度戻って、目立たないところに待ってて貰って呼び出そうか]
[ん、賛成]
話がまとまるとさっそくイリヤへとお願いし、ニムル近郊の砂浜へと送って貰う。セインリットへ戻る事も考えて、イリヤにはそのまま待っていてくれるようお願いする。
宿に着く頃には早朝近くなっていたので、店主はすでに起きており、部屋の鍵を返しリュミエール達を連れてニムルを出る。
そのまま砂浜を進んでいくと、左手側にちょっとした木立が見えて来る。身を隠すには丁度いいのでそこにリュミエール達を待機させ再びセインリットへ。
島へと戻るとソアラとミレニアがぞれぞれ術式を展開し、リュミエール達を呼び出してくれる。
「さて、これで一通りの準備は終わったか」
「ともあれまずは休むぞよ」
「ん、賛成」
俺達は守りきれた充実感と心地よい疲れを味わいながら、昇り来る朝日を眺めていた。
本来であれば海の中を駆けるように泳ぐのだろうが、俺はともかくソニアの息が続かない為、海上を進んでも貰っている。
海馬と言う種族は、前足にはヒレの付いた蹄、後ろ脚は無くそのまま魚のような尾びれへと変化している。見た目的にはケルピーと呼ばれる水の妖精に近いだろう。
「大丈夫?」
俺は海馬を操るイリアに尋ねる。傷が回復したとは言え体力はまだ全快ではない、無理をすれば再び気を失う恐れもある。
「ありがとうございます。大丈夫です」
イリヤは気丈に振る舞って見せる。しかしそれは焦燥感から来るモノだと俺は感じた。
[島に着いたらもう1度ポーションを飲ませた方がいいな。・・・この様子だとその場で待つように言っても無理だろう、ミレニア頼めるか?]
[無論じゃ。後詰めは妾に任せ、お主らは殲滅に尽力するがよい]
[ん、了解]
状況はまだ読めないが、俺達は最低限の作戦を心話で打ち合わせする。この中で最も強力な戦力であるミレニアには、イリアの護衛も兼ねた守りの役割をお願いする。逆に俺とソアラは打って出て、海人族の負担を減らす目算だ。
島が近づくにつれ、その周りの変化が俺達の目に飛び込んでくる。水面は細かくさざ波立ち、その色も濁り変色している。
「これは・・?」
「眷属共と海人族の戦いによるものじゃな。魚類を基礎とした眷属故に個体としての能力では海人族には劣るが、数の暴力にてかような凄惨な状況が生み出されておる」
「封じられた海域に棲息しているのに個数は減ってないのか・・・。それとも、それを上回る速度で増殖したのか」
[ちょっと嫌な予感がするな・・・]
ある可能性が脳裏に過り、イリヤを不安にさせないよう、声に出す事をせず俺は心の中で呟く。
「もうすぐ着きます!このままこの子で島へと駆け上がります、衝撃に備えて下さい!」
俺の思考を遮るように、イリヤの声が鋭く飛び込んでくる。
俺達は振り落とされないよう、海馬に跨る足に力を込める。そして身に轟く振動、海馬が浅瀬を超え、島の砂浜に駆け上がった。
「待って、コレを」
島に着くや否や、こちらですと息せき切って案内しようとするイリヤに、俺は無理やりポーションの容器を押し付ける。
一瞬呆けたような表情になるイリヤだが、その意味をすぐに理解し急ぎポーションを飲み下す。
「イリヤよ、本調子ではないお主は、妾のそばを離れるでないぞ?」
ミレニアが俺の肩から飛び降り、イリヤの隣へと並ぶ。そして俺達は案内されるまま、セインリットの入り口へと向かった。
「陸の方々はこちらの入り口から入ると、海中でも身体への影響を受けない加護を受けられるようになっております」
そう言ってイリヤは、洞窟内に敷設された階段を地下へと進んでいく。
少し進むと階段が水没しているのが見てとれる。桟橋の老人が言っていたのはこの事だろう。
「大丈夫、釣りをしている時に呼吸は出来ると聞いた」
俺は一瞬戸惑いを見せたソアラに、老人から聞いた情報を改めて伝える。それを聞いて安心したのか、ソアラは俺に続いて水の中へと歩を進める。
「なるほど、確かに身体の周りに薄く空気の層がある感じだ」
水の中に全身が浸かる。しかし不思議な事に、身体を取り巻く薄い空気の層により水に触れる事なく、服なども濡れていない。
呼吸も空気の層を消費する訳ではなく、どうやら空気の層に触れた海水から酸素を取り出し、それによって呼吸を可能としているようだ。
そしてイリヤの言った通り、海水はそこにあるが動きを阻害する事なく、陸上と同じように身体を動かす事が可能だ。
先へ進むごとに海水の濁りが強まる。俺達は逸る気持ちを抑えながら、それでも足早に出口を目指して進んでいく。
「なんて数だ・・・」
セインリットの街へと到達した俺達の目に飛び込んできたのは、街を覆うようにして広がる色違いの水と、その境目にびっしりと張り付く眷属達の姿だった。
「街を覆うように広がっているのは結界か?」
「私達海人族の住む地はどこも、産海母神様により外界の影響を軽減させる加護を賜っております。眷属がいるのはその境目ですが、数の暴力で無理やり侵入してきた個体もかなりいます」
どうやら街中の海水まで濁っていたのは、無理やり結界を抜けた個体が討たれたり、そのまま死亡した物の体液が広がった事によるものだったようだ。
「ふむ、数は多いけど、幸いこちらの被害は少ないみたいだ。街の側からあの境目を超える事は可能なのかな?」
「はい、あくまでも海人族の街を守る加護なので、害意さえなければ通行は可能ですが・・・」
「イリヤ!」
俺達の声を聞きつけたのか、数人の海人族がこちらへと泳いでくる。
「お父様!よくご無事で!」
「お前の方こそ・・・。しかしなぜ戻った、ニムルへの連絡は大丈夫なのか?」
再会を喜び合う親子。この眷属達の包囲を抜けるだけでも決死の覚悟だろう、もしかしたら父親の考えは、イリヤを逃がす為の口実も含まれていたのかもしれない。
「此度の問題はリヴェニアに代わり妾達が預かる故、ニムルへの連絡は無用じゃ」
ミレニアがイリヤの父親に近づきそう告げる。
「水紺竜様を呼び捨てに・・・、貴方様はもしや」
「白銀竜じゃ。ともかくじゃ、今はそんな事をしておる場合ではなかろう?はようあやつらの始末をつけるぞよ」
ミレニアは忙しく表情の変わるイリヤの父に喝を入れる。実際に動くのは俺達なのだが、街を率いる立場の人物が冷静さを失っていては話にならないという事だろう。
「失礼の段ご容赦を。私はこの街を治めておりますイザリムと申します。現在のところ産海母神様のご加護により街は守られ、我々の攻撃によって注意を引く事により、かろうじて膠着状態を維持しておるところです」
「押し寄せた眷属共はこやつらが最初かえ?」
「はい、まるで深海のように辺りが暗くなり、あっという間に囲まれました。状況を確認しようとしたところに水紺竜様のお声が響き、禁海の封が破られたと知りましてございます」
「ふむ、見たところまだ街への被害は軽微と言う所じゃな。ウォルフ、ソアラ、討って出るぞよ」
「お、お待ち下さい!これだけの数を相手に御三方でと言うのは流石に危険です!せめて我々の中より選りすぐりの者を・・・」
俺とソアラを伴い出撃しようとするミレニアに対し、イザリムが慌てて止めに入る。
「たわけ。お主らにはこの街に住まう民を守る責務があろうが。まだ被害が軽微な今の内に民を教会へと集めよ」
ミレニアの言葉にイザリム達は雷に打たれたかのように直立し、慌てて街中を巡回し始める。
「まずはこの邪魔くさいやつらの処分からじゃな。イリヤ、お主は病み上がりじゃ、ここは無理をするでない」
ミレニアは付いて来ようとするイリヤに釘を刺す。そして言い放つ。
「禁海の封が破られた以上、再度封印を施すまでの間、幾たびも眷属共が押し寄せる。今いるこやつらを処分したからと言って終わりではないのじゃ。この状況に至り、お主ら海人族は肉体的にも精神的にも疲弊しておる。ここは妾達に任せ、まずはその心身を癒すが良い」
「再封印はどのくらいかかるんだ?」
「それほどはかからん、おそらく1両日中には完了するじゃろう。じゃが、その間も眷属共は溢れ出ておる故、事態の鎮静化には最短で数日を要すると踏んでおる」
おそらく結界が破られてから、リヴェニアが動くまでにほとんどタイムラグはないだろう。だがその間にも、万を下らない数が押し寄せている事を考えると、再封印が完了するであろう30時間の間にどれほどの数が流出してくるか予想も付かない。
「つまり籠城って事だな、解った。さっさと退治して少しでも余裕を稼いでおこう」
「ん、了解」
そう言って俺達は動き出す。イリヤはミレニアの話に一瞬狼狽えた様子だったが、覚悟を決めたらしく、一つお辞儀をすると父と同様に民の誘導へと向かった。
「戦い方はお主らに任せるが、地の理は相手に有利じゃ。心してかかるが良い」
言うなりミレニアが弾丸のように飛び出し、もっとも敵影の多いところへと飛び込んでいった。
「正攻法じゃ流石に数が多すぎるな、ソアラは海底に近い奴を頼む。そこなら地の属性を存分に発揮できるだろう」
「ん、解った。気を付けて」
「ああ、ソアラも気を付けて」
お互いに手を振り、俺達は別々の方へと駆けて行く。
[水中戦か・・・。さてどうするかねこの数]
見上げる頭上にびっしりと張り付く、どこかデッサンの狂った魚類系。首を巡らせると、真っ先に飛び出したミレニアによる無双状況が目に飛び込んでくる。
ミレニア自体の姿は見て取れないが、その爪の衝撃波やブレスによって眷属達がどんどん滅殺されていくのが遠目にも確認出来る程だ。
[あれでも本来の力には程遠いってんだから・・・、存在の格が根本的に違うってやつかね]
ミレニアだけでもこのまま全部処理しきれるんじゃないかと思ったが、あとで文句を言われるのは間違いないので、俺は自分の出来る範囲で仕事こなす事に集中する。
俺は結界状になっている水の境界線へと近づくと、そこへ手を伸ばし、張り付く眷属達の中心に水圧をかける。そして境界線から引きはがすと中央の水圧をは別の圧力を作り水球を形成する。
水球の中には500匹程度がひしめきあう形で暴れているが、吸い寄せる圧力を持つ中央と弾く圧力を持つ外周に阻まれ脱出は不可能のようだ。
「ファストフリーズ」
そして俺がキーワードを呟くと同時に水球は完全に氷の塊へと変貌する。水球内の水の元素に干渉し、原子運動を止める事で熱の放出を停止、内部の水がもつ熱は全て変換され、一気にマイナスへと転じた。
その氷の塊と化した水球に、水の元素を高速振動させた波をぶつけ細かく破砕する。
魔力の消費を増やせばもっと大きな水球を生み出す事は可能だろうが、何せ眷属の数が多い。魔力の自動回復量を計算しても、確実に仕留めて行くにはこれが限界と言えるだろう。
とは言え、数を同時に生み出す事可能だ。俺は複数の場所で同じ様に水球を展開させ次々と氷の塊を生み出していく。内部まで完全に氷付いている水球は、そう簡単に溶ける事はないので、まずは眷属の活動数を減らしていく。
10個ほど作ったところで、先ほどと同様に高速振動させた波をぶつけ、氷の塊群を一気に砕く。
[今押し寄せてる奴らはあらかた処理出来たかな]
周りを見渡して見るが目立った敵影は存在しない。数は多かったものの、1個体が弱かったのが救いと言えるだろう。とは言え、辺り一面に眷属達の斬り裂かれた死体や体液が広がっており、正直目を覆いたくなるような惨状だ。
[ひとまず片付いたようじゃな]
時を同じくしてミレニアから心話が入る。
[それはいいんだが、この海の中の状況、何とかしたほうがいいんじゃないか?]
[構わぬ、眷属の襲来が終わらぬ事にはいくら浄化しようが同じことじゃ。それに、再封印さえ終わればリヴェニアが来る手筈になっておる、水の事はあやつに任せるのが一番じゃよ]
いつの間に連絡を取り合っていたのか、大立ち回りを繰り広げていたミレニアの口から予想外の言葉がでてきた。
[ともあれまずは教会へと集まろうぞ。イザリムらも民の誘導を終えたようじゃしのう]
言われてマップを確認すると、街の1ヶ所に人達が集合しているのが見て取れた。おそらくここが教会なのだろう。
「おお!皆さんご無事でしたか!」
俺達が教会に集合すると、それをに気付いたイザリム達が寄って来て両手の拳を付き合わせるという変わった挨拶をしてくる。海人族の礼の形なのだろう。
「ひとまず片付いたと言うところじゃ。とは言えまだ終わってはおらぬ、再封印が済み次第リヴェニアも駆けつける故、それまでの間耐えて貰わねばなるまい」
「おお、水紺竜様が・・・!これも全て産海母神様のお導き、このイザリム、感謝の念で胸が張り裂けんばかりです」
「ともかくじゃ、次の襲撃がいつになるか解らぬ以上、急ぎお主らを守る結界を構築せねばならぬ。民は全て教会内に集まっておるな?」
感謝と感激に身を震わせ、平伏しているイザリムに向かい、ミレニアは問いかける。
「はい、仰せの通り教会内へと避難させてございます」
「うむ、では始めるぞよ」
言うが早いかミレニアは教会の各所へ高速で移動しながら不思議な光の紋様を海底に描いて行く。その数6つ、丁度神々とも竜とも同じ数である。
そして最後の1つを描くと何やら不思議な文言を呟き始める。
「我は光、六柱が1柱、光が化身白銀竜、我が名に置いて母神へと願い奉る。光の銀、闇の黒、水の紺、地の黄、火の緋、六柱が力の一端を持って、この地への加護を与えたまえ」
ミレニアの言葉に呼応するかのように、教会を取り囲むように描かれた光の紋様からそれぞれ銀、黒、紺、黄、緋の光りが駆け上る。そしてそれは教会の上で合流し、虹のように色がいくつも織り成す光のベールのように教会を包む。
「ふぅ・・・。これで教会にいる限りは安全じゃ。その事を民へ伝え、心身を休ませるが良い」
珍しく疲れた様子のミレニアは、しかしはっきりとした口調でイザリムへと伝え、教会へと向かわせた。
「珍しく少し疲れたみたいだな」
俺はそう言いながらミレニアを抱き上げ、肩に乗せて休ませてやる。
「母神へと願い奉る結界じゃからのう。頑強である変わりに消耗も激しいのじゃよ。それに、本来幼生体で行うような事ではないからのう」
「それって結構無茶したって事じゃないか。ポーション飲むか?」
「無用じゃ。自身を構成する属性を媒介とする事で発動させる故、休養する以外に回復の手段が無いのじゃ。とは言え効果範囲を絞った事で、消耗も軽微に抑えておる。眷属の相手くらいであれば問題なかろう」
ミレニアの見立てに間違いは無いと理解しているが、それでも多少心配になった俺は、ミレニアの頭を軽く撫でる。
「ミレニアの事だから心配はないと思うけど、無理はするなよ」
「ん、ミレニア様無理ダメ」
ソアラも心配だったのだろう、一緒になってミレニアを撫で始める。
「解っておるわ。心配し過ぎじゃお主らは」
そう言ってそっぽを向くミレニア。しかしその言葉にはどこか照れ隠しのような声色が混ざっている。
「どうやら休憩は終わりのようじゃな」
そう言うとミレニアは海底へと降り立つ。マップを確認するとそこには無数の敵性反応が迫って来るのが確認できた。
「思ったより早いな」
眷属の第一陣を殲滅してからまだ1時間程度しか経っていない。確かにこのペースで襲撃が続けば、セインリットもニムルも飲み込まれていたかもしれないと軽く恐怖を感じた。
「海水が汚れて視界も悪い、充分に気を付けて対応しよう」
俺の言葉に頷きあい、俺達は先ほどのように三方へと散り迎撃体勢を取る。
[さっきのはカツオくらいのサイズだったが、今度のはマグロくらいあるなコレ]
名前が解らないので、とりあえず敵性生物でサーチを行ってみると、濁った海水の先に歪な魚影が見て取れた。
[やっぱり禁海の生物にも食物連鎖とかあるのかね]
まるで第一陣の後を追跡するように迫り来る魚影の動きを見て、俺はふとそんな感想を漏らす。
[数は最初より少ないけど、あのサイズだとさっきの戦法は無理そうだな]
水圧の牢獄へと閉じ込めるには、相手の推進力が前提となる。マグロサイズの体躯から生み出される推進力、それを押さえ付けるほどの水圧を作り出すには、流石に魔力の運用効率が悪すぎる。
[仕方ない、突っ込むか]
俺は刀をしまうと格闘装備に素早く着替える。影響はないと聞いているが、刀を海水の中で振り回すのは流石に錆びるのではないかと不安を感じた。それに小回りが利く格闘の方がこれから行う事に向いていると考えたのだ。
「エンチャント・アクアアーマー」
キーワードと共に全身を包む水流の鎧が生まれる。これであれば突撃を食らったとしても水流にって威力が受け流せるだろう。
「エンチャント・ウォーターネイル」
続けて手甲足甲の先に高水圧で振動する爪を展開させる。触れる物を全て斬り裂く水の高周波ブレードである。
準備ができた俺は、眷属に向かってそのまま駆けだすと、足元の水に干渉し推進力を生み出し群れの中に飛び込んで行く。
やる事は先ほどのミレニアを真似た物、敵のど真ん中で体術を駆使して大暴れする。
「ハッ!フンッ!セイッ!」
掛け声と共に拳を繰り出し、蹴りを放ち、水の爪に触れたところから眷属の身体を引き裂いて行く。
突進してくる個体には、それに合わせて体を捻り裏拳をお見舞いし、固まっている群体にはそれぞれを足場としながら同時に斬り裂いて行く。
先ほどより効率は落ちる物の、確実に個体数を削り減らして行く俺達。
[これでラスト!]
俺はサメのような個体にサマーソルトを繰り出し粉砕する。どうやら第二陣の殲滅も全て完了したようだ。
[では、教会前に集合じゃな]
俺達はミレニアの号令に合わせて再び教会前へと集合する。
「ソアラ、コレ」
「ん、ありがと」
集まった俺達はお互いの状況を確認し合う。精霊種とは言え、不慣れなフィールドである海中での戦闘だからか、多少なりダメージを負っていたソアラにポーションを渡す。
「朝までに事態の収束が付くといいんだが」
「こればかりはリヴェニア次第じゃな」
妖関連の事象は、極力人の目に触れないようにしたいと言うのが竜達の総意でもある。ただ、海人族に対しては、生活圏に関わる脅威である為か、禁海の情報を開示している。
「そもそも封印てどんなものなんだ?」
「本質的には妾が教会へと施した結界と同様、母神へと願い奉る事で行うのじゃが、禁海の範囲がひろいのでのう。施す時間はそれに比例する形になるのじゃ」
俺のふと口を付いてでた素朴な疑問にミレニアが応えてくれる。
「ふむ・・・。それって時間経過で効果が弱まったりはしないよな?」
「無論じゃ。教会へと施した物は属性の違いにより時間と共に消えるであろうが、水を司るリヴェニアが海中において、己が属性を媒介とし発現させるのじゃ、周りにその属性が滞留している状況で消える事はありえぬ」
「何かの力によって破る事は?」
「普通であれば考えられぬのう。少なくとも禁海側から結界へ干渉する事は出来ぬじゃろう。ならば外からという事になるが、母神の力を以て施した封印を破るなどと言う事は、誰であろうと不可能のはずじゃ」
「でも実際に破られた、と」
「そこじゃな、問題は・・・」
あり得ない事が起こっている。ミレニアの様子からその驚愕がありありと読み取れる。
[母神と並ぶ力、あるいはそれを相殺する力を持つ何者か、か・・・]
少なくとも、ミレニア達六柱の竜を生み出した存在である母神と同等の力を持つ時点で、それは神と同様の存在という事になる。
「もし仮に、封印を破れるほどの力を持つ妖が現れたら?」
「・・・それは間違いなく最悪の状況じゃが、それほどの力を持つのであれば今頃この世界は破滅へと向かっておるじゃろう」
「つまり、あくまでも可能性の範疇。現時点で具体的な証明は出来ないが、軽視出来る問題でもないって事か、今回の件は」
「そうじゃな」
「姉上、一度六柱を集め会談を行うべきかもしれませんわ」
それまで静かに成り行きを見守っていたソアラが意見を述べる。しかしその喋り方はソアラのものではなく、いつの間にそうしたのか居住まいも正されている。
「ルフィニアか。・・・確かに事が事じゃ、皆を集めて話し合うべきかもしれんのう。今、妹達の所在を尋ねているのも、あるいは何某かの因果が巡っておるやもしれん」
「解りました。私は常に姉上達の動向を見守っております。どうかご無事で」
ルフィニアは深々と頭を下げる。そして頭を上げた時にはすでにいつものソアラに戻っていた。 どうやら意見を直接伝える為に、一時的にソアラの身体を借りていたようだ。
「・・・面倒な事になりそうじゃな」
なぜか俺の顔を見ながらため息を付くミレニア。・・・なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
「おしゃべりはここまでじゃな」
そう言ってミレニアが動き出す。マップに映る敵性反応は20ほど。今までと比べると極端
に少ない。
「・・・大物のご登場って訳か」
急ぎ敵の迫って来る方へと向かいサーチをかける。浮かび上がるそれらは、巨大な生物の数々だった。
クジラのような巨大魚が5体、背中にひし形の甲殻を背負ったタコのような生物が6体、カニのような甲殻類が4体、そして、古生代のアノマロカリスのような巨大生物が5体、真っ直ぐセインリットへ向かってきている。
[ソアラは海底を移動してくる4体を頼む。あれは甲殻が固いだろうから地の属性魔法で叩くのが確実だ]
[ん、了解]
[ミレニアは一番数の多い軟体生物を頼む、普通に斬り付けてもおそらく効果が薄いだろうが、ミレニアの爪なら余裕で斬り裂けるだろう]
[そやつだけでなく、全部妾が相手をしても良いぞ?]
[まあ、ミレニアなら行けるだろうけど、一番厄介そうだからそっちから頼む。俺は残りを適当に相手しながら2人の手が空くのを待つよ]
心話にて打ち合わせを終え、俺達は巨大生物群へと特攻をかけて行く。
[見た目がアノマロカリスに似てるアレがおそらく頂点捕食者だろう。ならクジラっぽい巨大魚を傷つければ・・・って、この辺り一面血だらけだったな]
ならばと作戦を変更し、巨大魚の1匹に張り付く。そしてアノマロカリスのような生物から見えないように水で作った槍を当てる。
[よし、うまく誘導出来たみたいだ。他の奴らもこの調子で削りあって貰おう]
俺は自分の周りの水の屈折率を変化させ一種のステルスモードとし、巨大魚に張り付き水の槍を撃ち出すと言う作業を繰り返す。
そして最初の1匹目のところへ戻り、その背中に張り付く。襲われた巨大魚は抵抗を見せているが、太い2本の触腕に絡め捕られ、その身をゆっくりと削り取られて行く。
[さて、こいつどうやって倒そう。外皮は甲殻類と同じような硬さだし、サイズもクジラ以上だしな・・・。甲殻類と同じだと考えると、神経節で行動を制御している事になるからバラバラにしない限り倒せないか]
カニのように海底を行く甲殻類であれば、まだ地の元素魔法によって叩き潰すなど方法があるのだが、海中を自在に泳ぐ甲殻類がこれほど厄介な生物だとは考えもしなかった。
[効果があるか解らないが、沸騰させてみるか]
俺は意を決してアノマロカリスのような生物の頭と思われる場所へと張り付き、内部のへと魔力を注ぐ。そしてその体内の水の元素を高速運動させ熱を発生させた。
突如体内で発生した高熱に、アノマロカリスのような生物は抱えていた獲物を取り落とし、大暴れする。しかし次第にその動きは緩慢となり、ついには全身から力が抜ける。
[なんとかいけそうだな]
念のために触腕と目を切り落とし、次の標的へと向かう。
頂点捕食者故の油断なのか、絶対の自信なのか、食事中のアノマロカリスのような生物達はその場から動く事無く獲物を噛み砕いている。
とは言え、食事中であっても、目に入った獲物を襲うと言う説もあった気がするので油断は出来ない。おそらく、水の屈折率を変化させたステルス状態でなければ、背中側とは言え近づく事も困難ではないかと思われる。
俺は2匹目に張り付き、同じ様に体内を沸騰させる。
[よし、これであと2ひ・・・やばっ!]
体内を焼かれ暴れる、2匹目のアノマロカリスのような生物の動きに触発されたのか、急接近してきた3匹目がその身体に絡みつく。
[あぶな・・・。共食いの習性もあるのかこいつら。妖の眷属ってのも伊達じゃないって事か]
触腕に絡め捕られる直前、2匹目から飛び退いた俺は、間一髪のところで脱出する事が出来た。
[ウォルフ、その場から急ぎ離れよ]
そのまま3匹目に攻撃をしようと動き出したところで、ミレニアから心話が飛んでくる。
俺は言われるまま高速でその場を離れる。すると、遠くで光りがみえた。
そして目の前を瑠璃色の光りの奔流が迸る。
瑠璃色の光に包まれたアノマロカリスのような生物達は音もなく分解されるように消滅していき、光の通った場所の海水は清浄な物に変化していた。
[リヴェニアのブレスじゃ。どうやら持ちこたえたようじゃのう]
[アレが成体の放つブレスなのか・・・]
マップの範囲外から放たれた超威力の砲撃。確かに、幼生体のミレニアが本来の力を出せないと言うのも納得の一撃だった。
[あとの浄化はリヴェニアに任せ妾達は休むとしようぞ]
ミレニアに言われるままに俺達は教会へと向かい、そこに待つイザリム達海人族の人々と顔を合わせる。
「終わったぞえ。今こちらへとリヴェニアが向かっておる。この海域の浄化はリヴェニアに任せ、皆休むが良い」
「有難うございますっ!」
イザリムの感謝の言葉を合図としたかのように、海人族の人々は一斉に平伏する。
「気にするでない。この世界の安寧を守るのが我ら竜の宿命じゃ」
平伏する海人族の人々に、ミレニアは慈しむように言って諭す。
[とは言え少々疲れたのも事実じゃ、ウォルフ肩に乗せて貰えるかのう?]
[ああ、お疲れ様。リヴェニアさんとも話をしなきゃいけないし、しばらくこの街で休んで行くとしようか]
[ファリスとリュミエール]
[あ、そうか]
ソアラに袖を引かれ、ニムルの宿へと繋いだままのリュミエール達の事を思い出す。
[んじゃ一度戻って、目立たないところに待ってて貰って呼び出そうか]
[ん、賛成]
話がまとまるとさっそくイリヤへとお願いし、ニムル近郊の砂浜へと送って貰う。セインリットへ戻る事も考えて、イリヤにはそのまま待っていてくれるようお願いする。
宿に着く頃には早朝近くなっていたので、店主はすでに起きており、部屋の鍵を返しリュミエール達を連れてニムルを出る。
そのまま砂浜を進んでいくと、左手側にちょっとした木立が見えて来る。身を隠すには丁度いいのでそこにリュミエール達を待機させ再びセインリットへ。
島へと戻るとソアラとミレニアがぞれぞれ術式を展開し、リュミエール達を呼び出してくれる。
「さて、これで一通りの準備は終わったか」
「ともあれまずは休むぞよ」
「ん、賛成」
俺達は守りきれた充実感と心地よい疲れを味わいながら、昇り来る朝日を眺めていた。
0
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