あかりを追う警察官 ―希望が丘駅前商店街―

饕餮

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童顔女の正体

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 休暇も終え、ある程度日本の気候に身体が慣れたころには既に三ヶ月が過ぎていた。なかなかいいマンションが見つからず、相変わらず実家の豆腐屋から職場へと通っていた。
 たまに商店街内で童顔女を見かけることもあったが、相変わらずボーッとした感じで歩いていたりして、見ていて危なっかしかった。耳がいいと聞いていたから多分自衛のために余計なものを拾わないようにしてるのだろうが。

 そんな感じで過ぎた三ヶ月だったのだが。

「は? SP、ですか?」
「ああ。但し、対象者に悟られないように」
「なんですか、それは。そもそも民間のSSシークレット・サービスはどうしたんです? いつもならそちらに行くはずでは? あるいは日本の警察関連か」
「それがだな、なぜかウチに直接来て打診して行った」
「……どこのお偉いさんですか」
「護衛対象は防衛省に勤めているそうで、依頼人である海上保安庁のお偉いさんのお嬢さんだそうだ。しかも、巡洋艦や護衛艦クラスの艦長を務める程の」

 そう言った上司に、何だそれは、本人じゃなくて娘かよ、と内心毒を吐きながらも渡された資料の写真を見て首を傾げたあとで驚く。

「どっかで見たことあるな……。白崎しろさき 暁里あかり(27)……って、あれ? この写真……超絶ウサギ耳女?!」
「チョウゼツ……なんだって?」
「あ、すみません、何でもありません。と言うか、何で彼女は狙われてるんですか?」
「それは機密扱いだから言えないそうだ」

 疲れたように溜息をついた上司に、彼女の機密を何となく察する。
 電話で話していた高林との会話と、恭一から聞かされた話。それらを総合し、彼女の耳の良さが彼女の機密なんだろう……そう考える。

「どうする?」
「どうするったって、どうせ彼女と俺の住所を見て俺に決めたんでしょうが」
「そんなことはないぞ? 最初は高林に頼むつもりだったんだが……あれじゃあなあ……」

 再び溜息をつきながらほれ、と言った上司の視線の先にあるテレビには、宝石店強盗のライブ映像と店内で暴れている高林の姿が見えた。しかも犯人は国際指名手配犯。最近付合い始めた高林の恋人が宝石店の経営及び店長をしていることから、頻発している宝石強盗にいつか合うんじゃないかと心配をしている、とヤツから聞かされたばかりだった。
 そして高林自身は今日は非番である。非番とは言え、このSPが特殊な案件である以上、護衛役の面割れはまずい。

「卓さん、何やってんですか……」
「そんなわけなんでな……篠原、頼む!」

 この通り! と手を合わせて俺を拝んだ上司に半眼で見下ろす。

「……臨時ボーナス弾んでください」
「もちろん」
「銃も持ってていいんですよね?」
「SPだからな。もちろん、隠しも許す」
「発砲許可は」
「私たちは日本に出向って形だから、バンバン撃っちゃっていいぞ♪」

 楽しそうにそう言った上司に「それでいいのかよっ!」と突っ込めば「いいんだよ」って答えが返って来て、内心頭を抱える。

「はあ……。とりあえず、銃の手入れをしたあとで防衛省に挨拶がてら様子を見に行って来ます」
「早いな……写真見て惚れたか?」
「……土手っ腹か頭に風穴ブチ開けてやりましょうか?」
「……すまん」
「何と言うか……一刻も早いほうがいい気がするんですよ」

 もう一度資料を眺めながらある一点に注目していると、先ほどまでのふざけた感じは一切出さず、上司がふっと息を吐いて手を組み、そこに自身の顎を乗せる。

「お前の勘は当たるからな……まあ、依頼人に挨拶くらいは行って来い。時間の指定をしてくれれば、向こう防衛省で待っているそうだ」
「それは構いませんが、今日の護衛はどうするんですか」
「……忘れてた……」
「この案件より今日の重要事項なんだから忘れないでくださいよ。どのみち防衛省に行く予定があるので、隙を見てその時にでもお会いします」
「すまん。これが依頼人の写真だ。依頼人には私から連絡をしておく。何時の予定だ?」

 そう聞いて来た上司に写真を見て顔を覚えたあと防衛省の到着予定時間を告げ、「わかりました」と言って今日SPをするメンバーと一緒に装備を整え、今日の護衛対象である人物を出迎えに行くために外へと出た。

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