あかりを追う警察官 ―希望が丘駅前商店街―

饕餮

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童顔女と依頼主と……

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 某国のお偉いさんのSPをしながら回ること数ヶ所。道路の渋滞に嵌ったりなどの問題もなく、予定時刻よりも少し早く防衛省に着いた。
 防衛省の出迎え職員の中に童顔女がいたことに内心驚きつつも、車を降りて辺りを警戒しながら護衛対象者が乗る車のドアを開けた。

 職員と護衛対象者との間で握手と会話がなされていく中、小さく「殺し屋……」と言った童顔女にチラリと視線を向ければ、彼女は一瞬驚いた顔をしながらも黙った。……サングラスしてんのによくわかったな、おい。
 そのまま建物に向かえば入口の隅に依頼主の顔を見つけ、前以て防衛省で依頼主との顔合わせの話をしてあった同僚に断って彼に近付くと、なぜか童顔女も一緒に近付いて来た。

(おいおい、彼女に内緒じゃないのか?)

 そんなことを考えながらも、依頼主である白崎の前に立つ。

「初めまして。職務中ですので、サングラスはこのままで失礼します。白崎さん、でよろしいですか?」
「……君は?」
「お父さん、その人、殺し屋よ!」
「おい暁里、殺し屋って……」

 俺たちの話を遮り、近付いて来た童顔女が父である依頼主を庇うように側に立った。依頼主は困惑した顔をしながらも、娘である童顔女と俺を交互に見ていた。

「おい、超絶ウサギ耳女! 誰が殺し屋だ、誰が! えー……午前中に上司から連絡が行っていると思いますが、自分は国際刑事警察機構インターポールの日本支部所属、警視正の篠原と言います。今回の件は自分が担当することになりましたので、そのご挨拶を」

 ムッとしながら童顔女に突っ込みつつも、一度サングラスを外して俺の身分証を二人に見えるように提示しながら名乗れば、依頼主は苦笑しながら娘を見、童顔女は驚いた顔をしたあとで

「嘘ーーー!!」

 と、そこら中の響き渡る声で叫んだのだった。


 ***


「それはうちの娘が失礼をした」
「いえ、お気になさらず」
「本当にごめんなさい……」

 童顔女にした俺の突っ込みに疑問を持ったのか、依頼主である白崎がなぜそんなことを言ったのかを聞いて来たので、彼女と二度ほど遭遇した話をしたら白崎は苦笑し、童顔女は顔を赤らめながら俯いて謝った。

「言っとくが、『狩り』とは警察用語で、一斉検挙のことだからな?」
「そうなの?! じゃあ、あの日『狩りに行く』とか『やってもいい』とかって、殺すって意味の殺るじゃなくて……」
「国際刑事の俺たちが一斉検挙に混ざってもいいのか、って意味。尤も、一斉検挙には行ってないがな。落とし物を渡そうとしただけなのに、あんたはさっさと逃げるし」
「だからごめんなさいって言ってるでしょ?!」

 勘違いを暴露されたせいなのか、自分の父親の前だと言うのに童顔女はあたふたしながら謝っている。脱線したものの、いざ本題に入ろうとしたところで童顔女の上司らしき人が来て、彼女はそのままその場を離れた。その隙にサングラス掛け直す。

「さて。今回のことだが……」
「申し訳ありません。少し待っていただけますか?」

 話し始めようとした白崎を遮って立ち上がると、近くにある奥へと繋がっているらしい場所へ、音を立てずに近付く。俺の様子に何かを感じとったのか、白崎は眉間に皺を寄せて頷いた。
 途中からこちらをちらちら窺っている輩がいることには気付いていた。外部の人間にしろ、ここの職員にしろ、盗み聞きされて外に漏らされるのはまずい。一気に近寄り腕を捻りあげて逃げられないように固定すれば「痛てー! 離せ!」と声が上がった。

「離せと言われて離すヤツがどこにいるんだ? いいからこっちに来い!」

 俺より多少低いくらいの身長の男に向かってそう言い、白崎の前まで引きずって行けば、白崎は男の顔を見て目を瞠った。

璃人りひと……何をやっているんだ、お前は。仕事はどうした?」

 そのあと、呆れたようにそう言って溜息をついた。

「お知り合いですか?」
「私の息子で、暁里の兄にあたる。私と同じ海上保安庁に勤めているんだ。確か、三等海上保安正になったんだったかな」
「俺はストーカーかと思いましたよ」
「誰がストーカーだ、誰が! いい加減に離せ!」
「まあ、いいですがね」

 ふっと溜息をついて男の腕を離してやれば、男は「馬鹿力め!」と言いながら腕をさすっていた。大して力を入れてないんだがなあ、と思いながらいろいろと話を聞けば俺と同じ年齢で、誕生日もやつのほうが一ヶ月早いだけということだった。

「で、父さん、こいつは?」
「篠原くんだ。国際刑事警察機構の警視正だそうだ」
「はあ?! インターポール?! 嘘つけ!」
「嘘じゃないさ」

 ほれ、と言って童顔女の兄――璃人に身分証を見せれば、一瞬呆けた顔をしたあとで眉間に皺を寄せる。

「何でこんなところにいるんだ?」
「俺はSPの仕事で来てる。護衛対象は現在、別の人間に護衛されながら、防衛省のお偉いさんと会談中だ。それに、話があると呼ばれた身でね。そっちこそ、あんたの職場でもないのに、なんでこんなところにいるんだ?」
「……」

 そう言って白崎の方を見れば、彼も頷く。そして半眼で璃人を見て質問を返すと、ヤツは黙り込んでしまった。勝手に入ってくんなよ。つうか、仕事をほっぽって来たのか?

「そういうわけだから、璃人には悪いが二人だけにしてくれ」
「だが……」
「帰ったら話をする。ここだと誰が聞いているかわからんから、いろいろとまずい」

 そう言った白崎に、璃人は溜息をついたあと「わかった」と言い、こちらを気にしながらも離れて行った。

「重ね重ねすまんな、篠原くん」
「いえ、お気になさらず」
「では、あまり時間もないことだし本題に入ろうか」

 そう言って白崎は、今回の案件ヤマのことを話始めた。

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