あかりを追う警察官 ―希望が丘駅前商店街―

饕餮

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知らされた情報

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 週明けの月曜日。またもや暁里と一緒におまけの璃人がくっついて来ていた。そのことに内心溜息をつきつつ冷ややかな目を璃人に向けると、相変わらず喧嘩腰の璃人が睨み付ける。

「おはよう。何か用か? お子様」
「誰がお子様だ!」
「お前と、お前のその態度がな」

 冷ややかにそう言えば、璃人はぐっ、と言葉に詰まる。

「く……っ。そ、それはともかく……今日は挨拶に来た」
「ほう? 宣戦布告でもしに来たか? 受けて立つぞ?」
「違う! そうじゃなくて……父同様に海上に戻ることになった」

 激昂しかかった璃人は一旦息を吐き出すとその怒りを綺麗に消し去り、としての顔を見せてそう言った。

「そうか。気をつけて」
「……それだけか?」
「それだけ、って……。仕事の顔でそう言ったヤツに、他にどう言えと?」

 唖然とした顔をした璃人にしれっと言う。

俺の仕事は人を護ること。そしてこれから仕事に行くお前は国と海を護ること。……違うか?」
「ああ、そうだ」
「仕事によって役割が違う。俺は人の命と秩序を護り、お前は国の命を護る……それが適材適所、分を弁えるってことだろ。どうなってもいいなら、お前の代わりに俺が海に行くが?」
「ふざけるな! それこそ分を弁えろよ! ……って、ああ……そういうことか」

 はぁ、と大きく息を吐き出して肩を落とした璃人は、心なしかガックリしているように見える。

「確かにお子様だな、俺は」
「否定はしない。ただ、プライベートと仕事を混同するのはいただけないな」
「それは認めるが、少しは否定しろよ……」
「否定したところで、過去は変わらん」

 バッサリと切り捨てるようにそう言えば、璃人は盛大に顔をしかめながら溜息をつき、暁里の家族の、そして仕事の顔になる。

「戻るのは三ヶ月後……春先だ。それまで暁里とお袋を頼む」

 そんなことを言って頭を下げた。

「任せろ。ついでに、二度と悪さできないよう国際社会的にキッチリ潰しておくさ」

 ニヤリとしながらそう告げれば、璃人は顔をひきつらせながらも頷き、駅のロータリー方向へと歩き出す。

「おい、璃人、電車には乗らないのか?」
「同僚が迎えに来てるんだよ。そのまま何人かで同乗して職場に向かう」
「そうか……気をつけてな」
「おう!」

 お互いに「じゃあな」と言って手を上げると、璃人は外へ、俺と暁里は改札の中へと向かう。俺と璃人が話していた間、暁里は口を挟むことなく唖然とした顔をしていた。そんな暁里を促し、いつも通りに防衛省へと暁里を送り届けた。


 ***


「全部ではないが、奴らのアジトが割れたぞ」

 職場に着くなり俺にそう言った上司に、鞄を一旦自分の机の引き出しにしまってから上司の側へと行く。上司は部分的な地図に赤丸を付けた紙や、赤丸の上に赤いバツを付けた紙を何枚も机の上に広げていて、左上には国名と地名や都市の名前が書かれている。俺の他にも高林を始めとした数人が上司の机の周りに集まっていた。

「日本、アメリカ、中国、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア……他にも結構ありますね」
「まあな。その中のアメリカと日本以外の関連組織は、下部組織も含めて綺麗さっぱり潰してある」

 しれっとそう言った上司に、顔がひきつる。

「いつの間に……。誰が潰したんですか?」
「ヨーロッパは本部が主体となり、各国の警察組織などでチームを組んでフランス時間の同日・同時刻で摘発、アメリカはFBIと共同で現在作戦行動中だ。中国は高林を中心に中国出身のヤツや本部連中と、だな」
「卓さん……何やってんですか……。つうか、しばらく居なかったのは中国行ってたからなんですか」
「ああ。尤も、は予定通りだがな」

 おいおい出張言うな、とは思うものの口には出さない。暁里の護衛がなければ俺も隣国へ行ったり、要請があればお偉いさんの護衛で国内に限らず海外へ行くこともあるからだ。

「アメリカは時間の問題として、問題は日本ですね」
「一部の下部組織は、宝石強盗にでくわした高林が潰してるし、それに準ずる中間組織とも言えるのも芋づる式に潰してるしなあ……」
「ということは、あとは日本支部的な上位組織ですか」
「ああ。それと、その本部組織だな。どうやらアメリカにあるらしいんだが、大体の場所はわかっていても、未だにはっきりした場所を特定できていないらしい」

 それも時間の問題だがな、と言った上司に、何処まで潰す気でいるんだと内心溜息をつく。
 そもそも、指名手配犯を複数抱えている組織とはいえ、暁里の件がなければ組織自体がここまで明るみに出ることも、注目されることもなかった組織だ。ただ、中東などのテロ組織と繋がっているという噂が絶えない組織であったことから、常に警戒と監視がつけられ、情報は集められていた。

 それが急に一斉に潰され始めている。どこかの国で何かあったか何かやらかしたんじゃなかろうかと思っていたら、上司が更に情報を出した。

「実は、アメリカやヨーロッパ各地で公人を暗殺しようとしていた国際指名手配犯やその下っぱが捕まってな? さすがにこれ以上の監視及び放置はマズイということから、そいつらから引き出した情報を元に組織を壊滅させたそうだ」

 自分の指先で首を切る動作をしながらそう言った上司に、他の連中も知らなかったのか、俺と同様に驚いた顔をした。

「そんなわけで、今後は報復もあり得るかも知れないってことで、事件処理が終わり次第関係者が数人日本こっちに来ることになった」
「それは移動、ってことですか?」
「いや。だ。いつ来るかは聞いていないが、一斉に壊滅させたし、しばらく混乱が続くうえに情報も膨大だしな……かなりの時間を要するだろう。本部やここの上層部と監視員が言うには、日本にいる組織連中もかなり混乱しているらしいから、しばらくは鳴りを潜めるだろう、とのことだ」

 そう告げた上司に、数人が考え込む素振りを見せながら、上司の指示待ち態勢に入る。

「アメリカも時間の問題だと言うなら、奴らも同時に潰される可能性を考えてしばらく地下潜るでしょうしね」

 別の人間がそう言えば、上司も頷いている。

「ああ。だからと言って、監視を緩める気はない」

 そう話したあとで俺を見た。

「白崎家の面々に関しては……」
「親父さんは先週末報告した通り既に海上に、長男の璃人も今朝、護衛対象者と一緒に駅に来てそこで会い、今日から海上に行くと言われたので男二人に関しては問題ないかと」
「そうか……なら、白崎家の自宅周辺と入院している母親、対象者の護衛が主だな」

 そんなことを話しながらも、上司は高林を含めて次々に指示を出して行く。

「篠原は引き続き対象者のほうを頼む」
「了解です」
「では解散。田中と笹木は残ってくれ」

 指示を出した上司に、指名された二人以外の集まっていた人間は各自の机やら部屋の外へと向かう。
 俺自身も自分の机へと向かい、高林に渡された未処理の書類を片付け始めた。

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