我が家の猫は王様である

饕餮

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初散歩

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 我が家に来て一ヶ月半。その日は雨だった。
 来たころよりも躰が少しだけ大きくなり、自作のキャットタワーに自分で登れるようにもなってきた。と言っても、まだ最初の一段目だけ。
 それでも自分で登れることが嬉しいのか、しっぽを揺らして一段目に飛びつくのがなんとも可愛い。

 そんな日々を過ごしていたけど、雨が降っているのを見るのが初めてだったからなのか、一番上に乗せてあげるとしきりに外を見て、上から下へと頭を動かしていた。
 どうやら雨の滴を追っていたようで、それが楽しいらしい。

 雨が降ってるけど、散歩に連れて行ってみようか――。

 そう思って龍を抱き上げた。

「お散歩に行こうか」

 少し肌寒いのでパーカーを羽織り、その中に龍を入れて支え、傘を差して外へ。その時住んでいた家の近くには川があって、犬の散歩コースにもなっており、近くに橋もあった。その橋には鯉が何匹もいて、夏にはホタルが舞い、冬にはシロサギやアオサギ、カモが来るような、自然豊かな川――玉川上水。
 江戸時代に水路としてだけではなく、飲み水として作られたここは、住人しか車を走らせないこともあって、とても静かな場所だ。
 昔は船を浮かべて江戸まで行っていたそうだが、今はそこまでの水量はなく、一部地域の飲み水として使われているだけなのだ。

 それはともかく。

 初めての雨の中の散歩だからなのか、しきりに鼻をひくひくさせて、匂いをかいでいる。そして傘のはじっこの部分から落ちる水滴に手を出し、ちょいちょいと滴に触ろうとしている。

「こらこら、暴れなさんなって。濡れるよ?」

 そう言ったところで言葉などわかるはずもなく、悪戯心で傘を少しだけずらし、水滴に近づけたら、偶然にも龍の頭にポツンと一適、滴が落ちた。冷たかったのかビクッ! と躰を震わせて、頭を振っていた。
 それに笑みを溢し、持っていたタオルで頭を拭いてあげると、また少し移動する。

 草の匂いを嗅がせたり、走ってきた自転車に怯えて爪を立てたり。いろんな経験ができた龍は、ますます暴れん坊になったり脱走したりするのだけど、この時の私はそんなこと知りもしなかった。


 玉川上水



 4歳くらいの龍。お昼寝大好き(笑)


 
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