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バレた!
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「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」
お正月明けの初出勤。ロッカーでは誰にもあわなかったので、食堂でみなさんに挨拶をする。
今日も今日とてお掃除なんだけど、途中で金本さんたちから慌しい雰囲気が伝わってきた。そして掃除をしている時に窓から外を見ると、いつもは訓練しているチヌークが二機、飛び立っていった。空を回って帰ってくることもあるから、その訓練なのかなあって気にもしなかったんだけど。
「……あれ? 帰ってこないなあ……」
いつものようにお弁当と水筒を持ってチヌークを見ながら食べようと思っていたのに、今日は一機も帰ってこなかった。チヌークがいないのに外にいても仕方がないので、そのまま部屋に帰ってお弁当を食べ、少しだけ眠った。
そしてお昼の食器洗いの時、いつもよりも人数が少なかった。そのことに首を傾げる。しかも、チヌークのパイロットをしている和樹さんや兄もいなかったのだ。
「あの、チヌークのパイロットさんがいないんですけど、何かあったのか聞いても大丈夫ですか?」
「ああ、平気だよ。山火事があったらしくて、その消化活動に行っているんだ」
「なるほど~」
一緒に洗い物をしていた人に聞くと、そう教えてくれた。この人はチヌークの整備をしている人で、和樹さんたちの班の人だそうだ。
私にも教えてくれたのは、防衛省のホームページにその情報が載っているからだそうだ。「帰ってから見るといいよ」と教えてくれたので、あとで見てみようと思う。
そして十二時半を過ぎたころ、兄と和樹さんたちが帰って来た。中じゃなくて食堂でご飯を食べている。帰って来たってことは消化活動は終わったのかな、と思って、洗い物をしながら和樹さんをちらちら見てた。
「お疲れ様です、乙幡さん」
「お疲れ、紫音」
「ん? 紫音ちゃんを呼び捨て?!」
「あ、やべっ!」
隣に同じ部隊の人がいるというのに、和樹さんは私の名前をちゃん付けではない呼び方で呼んでしまった。せっかく私は気を使って苗字で呼んだというのに、台無しだよ……。
「まさか、お前ら……」
「この際だから言っちゃうが、年末から付き合い始めた」
「なにぃーー?!」
彼の大きな声が食堂内に響き渡った。それを聞いたらしい、一般食堂と幹部食堂から視線がビシバシ飛んでくる。しかも幹部食堂には父もいて、兄と一緒にニヤニヤと笑っているし!
うう、は、恥ずかしい……!
「もう、俺の彼女だから! 誰にもやらん!」
『ふざけんなーーー!!』
和樹さん、そんな宣言しないでください! そしてみなさん、そんなことで騒がないでくださいよ……。
わいわいガヤガヤと煩いくらいの食堂に、木村さんと金本さんの怒号が飛んだ。
「「煩い! 飯を食わせないぞ!」」
『申し訳ありません!』
そんな二人の言葉に、全員が静かになる。
「もう……乙幡さんのせいですよ……」
「ごめん。でも、これで大っぴらにできる」
「うう……」
「俺も名前で呼ぶから、紫音も名前で呼んでくれ」
「わかりました……」
嬉々としてそんなことを話す和樹さんに、ガックリと項垂れながらも頷く。きっと帰ったら父や兄にからかわれるんだろうなあ……なんて思っていたらそれがフラグになったのか、しっかりからかわれたのはいう間でもない。
そしてそんな日々を過ごし、さらに二週間たった。
今日は午後から和樹さんとデートの約束をしていたんだけど、兄もお休みだったらしく、待ち合わせ場所でバッタリ会った。どうしたのか聞くと、夫婦で買い物に来たそうだ。
「あれ? じゃあ、お義姉さんは?」
「ちょっとトイレに言ってる」
「そうなんだ。追いかけなくていいの?」
「これから行くところ」
そんなことを話して、そこで別れた。そしてすぐに和樹さんが来たんだけど、なんだか暗い顔というか、怒っているというか、そんな顔に見えた。
「和樹、さん……?」
「……さっき、一緒にいたのは、岡崎だよな?」
「そうだけど、あの人は……」
「俺だけじゃなく、あいつと浮気でもしてたのか?!」
その言葉に固まる。
兄と浮気なんてあり得ない。だけど、そもそもな話、和樹さんに兄のことを言っていないことに気づいて、慌てて否定する。
「はあっ?! それはないです!」
「じゃあなんで一緒にいたんだよ!」
「ちょっ、落ち着いてください! きちんと説明します! しますけど、ここでは話せません!」
「なんで話せないんだよ!」
「逆に聞きますけど、こんな公衆の面前で、自分の秘密を話せるんですか?!」
ほとんど喧嘩に近い言い合いに、周囲が興味深そうに聞き耳を立てているのがわかる。和樹さんもそれに気づいたんだろう……一度大きく深呼吸すると私の手を引いて、歩き出した。
「……ちゃんと説明してくれるんだよな?」
「もちろんです。でも、その前にパン屋さんに寄ってほしいです……お腹が空きました……」
「あー……それは悪かった。どっかでってわけには行かない内容なんだな?」
そう聞かれて頷く。
「なら、以前行った、俺んちの近くのパン屋でいいか?」
「はい」
まだ怒っているらしい和樹さんに手を引かれたまま歩く。まあ、怒っているらしいとはいえ、私の歩調に合わせてくれているのにはちょっと感動した。
そして一度和樹さんが住んでいるマンションを通り過ぎ、パン屋さんに行く。そこでパンを数種類と、ジュースが売っていたのでそれを買った。そしてお店を出ると、そのまま和樹さんの家まで連れて行かれる。
そしてパンを食べながら、私の事情と、父や兄のことを話した……スマホに入っている写真を見せたりしながら。
「…………は? 兄?!」
「はい。一番上の兄が和樹さんと一緒にチヌークに乗っていて、二番目の兄が入間基地にいます」
「え……ってことは、司令が……」
「父、ですね。以前も言ったと思いますけど、駐屯地で父や兄と再会して、今は父と一緒に住んでいます」
「……」
「あと、父は、私たちが付き合っていることを知っています。私が言ったわけじゃないですよ? どうやら私や和樹さんの態度から推測したみたいで、デート初日から帰って来たら、一発で当てられてしまいました」
「あ゛ーーーー!!」
私の言葉に、とうとう頭を抱えてしまった和樹さん。
ですよねー。逆の立場なら、私だって頭を抱えるよ。
「最初から言えばよかったんですけど、何があるかわからないから、聞かれたら教えればいいと父や兄にも言われて……」
「あー……司令の娘となると、やっぱなあ……」
「そうなんですか?」
「ああ。中にはそういったのが目的で近づいてくる輩もいるみたいだしな……確かに、外では話せない内容だわ」
それ以上のことは何も言わなかったけど、中には情報を聞きだそうとする人もいるんだろう。そこらへんは父にも言われていたので、気をつけてはいた。
「うん、俺が悪かった。ごめん。あと、勘違いしたことも」
「あのっ、それは言わなかった私も悪かったからっ」
「そうかも知れないけど、逆の立場だったら俺も言わないと思うぞ? それに、今だって任務の関係上、紫音に言えないこともあるし」
「そこはわかってます……きゃっ!」
はーっ、っと大きく息を吐いた和樹さんが頭を下げた。だから私も慌てて頭を下げたんだけど、いきなり抱き上げられた。
「ちょっ、和樹さん?! デートに行くんじゃっ!」
「そのつもりだったけど、なんだか紫音を抱きたくなった」
「はい?!」
「はいって言ったな? お詫びといっちゃなんだが、時間をかけてたーっぷりと抱くから」
「そっちの意味じゃないですよーーー!」
そう叫んだけど、和樹さんはニヤニヤ笑うばかりで……。
結局、なんだかんだと和樹さんにいいように翻弄されて、夜までみっちり抱かれてしまったのだった。
お正月明けの初出勤。ロッカーでは誰にもあわなかったので、食堂でみなさんに挨拶をする。
今日も今日とてお掃除なんだけど、途中で金本さんたちから慌しい雰囲気が伝わってきた。そして掃除をしている時に窓から外を見ると、いつもは訓練しているチヌークが二機、飛び立っていった。空を回って帰ってくることもあるから、その訓練なのかなあって気にもしなかったんだけど。
「……あれ? 帰ってこないなあ……」
いつものようにお弁当と水筒を持ってチヌークを見ながら食べようと思っていたのに、今日は一機も帰ってこなかった。チヌークがいないのに外にいても仕方がないので、そのまま部屋に帰ってお弁当を食べ、少しだけ眠った。
そしてお昼の食器洗いの時、いつもよりも人数が少なかった。そのことに首を傾げる。しかも、チヌークのパイロットをしている和樹さんや兄もいなかったのだ。
「あの、チヌークのパイロットさんがいないんですけど、何かあったのか聞いても大丈夫ですか?」
「ああ、平気だよ。山火事があったらしくて、その消化活動に行っているんだ」
「なるほど~」
一緒に洗い物をしていた人に聞くと、そう教えてくれた。この人はチヌークの整備をしている人で、和樹さんたちの班の人だそうだ。
私にも教えてくれたのは、防衛省のホームページにその情報が載っているからだそうだ。「帰ってから見るといいよ」と教えてくれたので、あとで見てみようと思う。
そして十二時半を過ぎたころ、兄と和樹さんたちが帰って来た。中じゃなくて食堂でご飯を食べている。帰って来たってことは消化活動は終わったのかな、と思って、洗い物をしながら和樹さんをちらちら見てた。
「お疲れ様です、乙幡さん」
「お疲れ、紫音」
「ん? 紫音ちゃんを呼び捨て?!」
「あ、やべっ!」
隣に同じ部隊の人がいるというのに、和樹さんは私の名前をちゃん付けではない呼び方で呼んでしまった。せっかく私は気を使って苗字で呼んだというのに、台無しだよ……。
「まさか、お前ら……」
「この際だから言っちゃうが、年末から付き合い始めた」
「なにぃーー?!」
彼の大きな声が食堂内に響き渡った。それを聞いたらしい、一般食堂と幹部食堂から視線がビシバシ飛んでくる。しかも幹部食堂には父もいて、兄と一緒にニヤニヤと笑っているし!
うう、は、恥ずかしい……!
「もう、俺の彼女だから! 誰にもやらん!」
『ふざけんなーーー!!』
和樹さん、そんな宣言しないでください! そしてみなさん、そんなことで騒がないでくださいよ……。
わいわいガヤガヤと煩いくらいの食堂に、木村さんと金本さんの怒号が飛んだ。
「「煩い! 飯を食わせないぞ!」」
『申し訳ありません!』
そんな二人の言葉に、全員が静かになる。
「もう……乙幡さんのせいですよ……」
「ごめん。でも、これで大っぴらにできる」
「うう……」
「俺も名前で呼ぶから、紫音も名前で呼んでくれ」
「わかりました……」
嬉々としてそんなことを話す和樹さんに、ガックリと項垂れながらも頷く。きっと帰ったら父や兄にからかわれるんだろうなあ……なんて思っていたらそれがフラグになったのか、しっかりからかわれたのはいう間でもない。
そしてそんな日々を過ごし、さらに二週間たった。
今日は午後から和樹さんとデートの約束をしていたんだけど、兄もお休みだったらしく、待ち合わせ場所でバッタリ会った。どうしたのか聞くと、夫婦で買い物に来たそうだ。
「あれ? じゃあ、お義姉さんは?」
「ちょっとトイレに言ってる」
「そうなんだ。追いかけなくていいの?」
「これから行くところ」
そんなことを話して、そこで別れた。そしてすぐに和樹さんが来たんだけど、なんだか暗い顔というか、怒っているというか、そんな顔に見えた。
「和樹、さん……?」
「……さっき、一緒にいたのは、岡崎だよな?」
「そうだけど、あの人は……」
「俺だけじゃなく、あいつと浮気でもしてたのか?!」
その言葉に固まる。
兄と浮気なんてあり得ない。だけど、そもそもな話、和樹さんに兄のことを言っていないことに気づいて、慌てて否定する。
「はあっ?! それはないです!」
「じゃあなんで一緒にいたんだよ!」
「ちょっ、落ち着いてください! きちんと説明します! しますけど、ここでは話せません!」
「なんで話せないんだよ!」
「逆に聞きますけど、こんな公衆の面前で、自分の秘密を話せるんですか?!」
ほとんど喧嘩に近い言い合いに、周囲が興味深そうに聞き耳を立てているのがわかる。和樹さんもそれに気づいたんだろう……一度大きく深呼吸すると私の手を引いて、歩き出した。
「……ちゃんと説明してくれるんだよな?」
「もちろんです。でも、その前にパン屋さんに寄ってほしいです……お腹が空きました……」
「あー……それは悪かった。どっかでってわけには行かない内容なんだな?」
そう聞かれて頷く。
「なら、以前行った、俺んちの近くのパン屋でいいか?」
「はい」
まだ怒っているらしい和樹さんに手を引かれたまま歩く。まあ、怒っているらしいとはいえ、私の歩調に合わせてくれているのにはちょっと感動した。
そして一度和樹さんが住んでいるマンションを通り過ぎ、パン屋さんに行く。そこでパンを数種類と、ジュースが売っていたのでそれを買った。そしてお店を出ると、そのまま和樹さんの家まで連れて行かれる。
そしてパンを食べながら、私の事情と、父や兄のことを話した……スマホに入っている写真を見せたりしながら。
「…………は? 兄?!」
「はい。一番上の兄が和樹さんと一緒にチヌークに乗っていて、二番目の兄が入間基地にいます」
「え……ってことは、司令が……」
「父、ですね。以前も言ったと思いますけど、駐屯地で父や兄と再会して、今は父と一緒に住んでいます」
「……」
「あと、父は、私たちが付き合っていることを知っています。私が言ったわけじゃないですよ? どうやら私や和樹さんの態度から推測したみたいで、デート初日から帰って来たら、一発で当てられてしまいました」
「あ゛ーーーー!!」
私の言葉に、とうとう頭を抱えてしまった和樹さん。
ですよねー。逆の立場なら、私だって頭を抱えるよ。
「最初から言えばよかったんですけど、何があるかわからないから、聞かれたら教えればいいと父や兄にも言われて……」
「あー……司令の娘となると、やっぱなあ……」
「そうなんですか?」
「ああ。中にはそういったのが目的で近づいてくる輩もいるみたいだしな……確かに、外では話せない内容だわ」
それ以上のことは何も言わなかったけど、中には情報を聞きだそうとする人もいるんだろう。そこらへんは父にも言われていたので、気をつけてはいた。
「うん、俺が悪かった。ごめん。あと、勘違いしたことも」
「あのっ、それは言わなかった私も悪かったからっ」
「そうかも知れないけど、逆の立場だったら俺も言わないと思うぞ? それに、今だって任務の関係上、紫音に言えないこともあるし」
「そこはわかってます……きゃっ!」
はーっ、っと大きく息を吐いた和樹さんが頭を下げた。だから私も慌てて頭を下げたんだけど、いきなり抱き上げられた。
「ちょっ、和樹さん?! デートに行くんじゃっ!」
「そのつもりだったけど、なんだか紫音を抱きたくなった」
「はい?!」
「はいって言ったな? お詫びといっちゃなんだが、時間をかけてたーっぷりと抱くから」
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