自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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セガルラ国編

第40話 村をビフォーアフター 1

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 ラモンと一緒に歩きながら、村の現状を聞いてみた。歩いて十五分のところに海があるからなのか、風がとても強いこと。
 その関連で、畑もいい土ではなく、なんとか芋を育てている状態だということ。
 転生者が魚醤を使った海苔と佃煮の作り方を教えてくれたけれど、さっきも言った通り漁港に搾り取られてしまっていてお金が入って来ないことから、貧しい生活を余儀なくされていること。
 海風の関係で住宅がボロボロであることなどを聞いた。
 見ればわかりやすいというので、村に着いた早々見せてもらったが……。

「これは確かに酷いわね」
「だろう?」
「うーん……防風林があるだけで風の強さはかなり和らげりはずなんだけど、ないわね」
「ぼうふうってなんだ?」
「風を防ぐっていう意味よ。海からの風をかなり弱くしてくれるわね」
「おお!」

 まずは海側に案内してもらい、その状態を見る。かなり強い風が吹いているというのに、魔物除けの壁しかないのだ。その壁も塩が吹いている状態で、今にもボロボロと崩れそうになっている。
 これでは、大型の魔物が来たらひとたまりもないだろう。
 できればシカトしたい案件なんだけど、以前世話をした獣人の村に親戚がいるらしく、私の容姿や村にしてくれたことが伝わっているんだそうだ。それもあり、村に入った途端に囲まれて、ありがたや~! と拝まれ、ドン引きしたのは記憶に新しい。
 まあ、あの村の獣人たちと親戚なら悪い人はいないだろうし、怪我をして困っている人がいるそうで、ノンが<回復するのー>と張り切っている。そして、リコはリコで壁の修理や畑を耕したことが楽しかったのか、リコまで<修理をまたやりたい!>と言う始末。
 従魔たちが楽しいならいいかと、まずは村長むらおさを紹介してもらい、獣人の村でやったこと、防風林を作ること、家の補修を提案してみた。

「いいのか?」
「構わないわ。従魔たちがやる気になっているもの」
「おお……ありがとうございます!」
「まずは、怪我をした人を教えてくれる?」
「はい」

 村長に案内されて連れて行かれたのは、病院のような場所だ。そこには五人ほどの怪我人がいて、うんうん唸っている。怪我はノンに任せ、病気の人はいないか聞くと、風邪をひいている人はいるが、他は特にないという。
 まあ、栄養が足りなくて痩せ細ってはいるが。
 ノンが集めた薬草を使って風邪薬を錬成し、それを村長に渡す。その後、村の周辺をよく知っている人を紹介してもらい、その人たちと一緒に小山というか里山というか、そういう場所に向かう。

「アリサ、なにをするんだ?」
「防風林を作るための木を探しているの。そうね……松という木を知らないかしら? 葉っぱが針のように尖っているものがたくさんついた木なんだけど」
「おお、それなら、あっちのほうにいっぱいあるぜ」
「あの木にできる実も美味いんだよな」
「あら、松ぼっくりも松の実もあるのね。じゃあ、そこに行きましょう」

 ラモンがこのあたりに詳しいというので、彼ともう一人と一緒に松があるという場所に行く。五分も歩くとその場所に着いた。おお、本当にあったよ!
 状態を見てよさそうなものを【土魔法】で掘り起こしてもらい、どんどん並べていく。とりあえず十本見繕ったので、それを持って防風林の予定地に行き、等間隔で並べた。
 ノンには松ぼっくりを拾ってもらい、その中にある松の実をほじくり返してもらう。松の実も栄養があるし、体を温めたり眼精疲労やビタミンBが取れたりするからね~。スープに入れて食べさせよう。
 それはともかく。

「じゃあ、まずは穴を掘って、松を埋めようか」
「こんなに小さな木でいいのか?」
「今はそれでいいのよ」

 埋め終わったら、緑の手の出番だからね。まずは埋めてもらうのが先だ。
 等間隔で全部埋め終わったら緑の手を使い、松の木を大きくする。すると、そこにはとても立派な松がにょっきりと生えた。高さは五メートルくらいかな? その光景を見たラモンともう一人が、ぽかーんと口を開けている。

「す、すげえな、アリサは」
「ありがとう。こんな感じなんだけど、一度村に行って風の状態を確かめてみましょうか」
「「おう!」」

 近くに立っているだけでも、かなり違う。今は一列だけれど、できれば木をずらして植え直し、最終的には三列にしたいし、もう少し距離を長くしてみたい。
 そんな話をしながら村に戻ると、明らかに風の状態が弱まっているのを感じられた。乾燥させている海苔が飛ばないよう、必死に押さえつけていた人がポカーンとした顔をしていたことからも、かなり改善されたのがわかる表情だった。

「な、なにをしたのかね、アリサ」
「防風林という、風除けのための木を植えたの。そのおかげかしら。あとで確認するといいわ」
「お、おお、そうさせてもらうとしよう」

 不思議そうな顔をした村長だけど、もっと風が弱くなると話すと、とても嬉しそうな顔をする村人たち。手伝うと言ってくれた人がいたので彼らも一緒に松林に行き、また松を掘り起こしては防風林にした場所に持っていってもらう。
 私は植えられた松を大きくし、一列を長くしたあと、二列目を作る。そして三列目が出来上がったころには、風はとても穏やかになっていた。
 うん、これなら、煩くて寝られないってことはないだろう。あとは、魔物除けの柵や住宅をしっかりした作りにすればいいだけだ。
 住宅に関しても、松を見つけた場所に行き、歩き回って立派な木を探し、何本も伐採した。もちろん、その傍には小さな木を植樹している。その木材を利用して家を修理したり、魔物除けの柵を綺麗にするのだ……あの獣人の村と同じようにね。
 今回は、まず柵の構築から。二十センチの厚さの土壁を作り、合間合間に風が通り抜ける穴も作る。その外側に木の柵を作り、両方に魔物除けの液体を塗っていった。
 それらはリコを中心に、【土魔法】が得意な人に手伝ってもらう。

「なるほどなあ。こうすれば便利だな」
「雨が降ったあとはまた塗りなおさないとダメだけどね」
「それくらいの手間なんか、手間じゃないよな」
「全員でやれば早いし」
「確かに」

 村人たちにも手伝ってもらい、さくっと終わらせる。その段階で夕方になってしまったので、晩ご飯。
 今日は炊き出しも兼ねて村人全員に集まってもらった。
 明らかに栄養が足りてなくて、痩せている人ばかりだからね。野菜とキノコを多く使ったスープに松の実を入れ、フライパンだけで作れるパンを焼く。中身はリンゴとサツマイモを入れてみた。
 オーク肉がたくさんあったからそれを放出し、ステーキや串焼きなどにして振舞う。もちろん魚醤を使ったたれを作ったり、ハーブ塩や藻塩を使ったものにしてみたり。
 この村にある冒険者と商業の両ギルド職員を含めた全員で、たくさん食べた。他にも、溜めに溜め込んだ魚貝を放出して網焼きにしたりもしたから、肉と野菜だけ、なんてことにはならないだろう。
 飲んで食べて話をして。それらを聞く限り、彼らはとても真面目に生活しているというのが窺える。料理も、作り方を教えたらすぐに真似をして、自分たちで作っていたのは好印象だ。

「とても美味しいわ、アリサ」
「本当に。それに、これなら近くの海で採れるから、すぐにでも料理できるしね」
「そうね。他にも、魚醤を使った煮物もあるの」
「知りたいわ!」
「教えて!」
「いいけど、それは明日以降にしましょうか。さすがに今日は食べきれないだろうし」
「そうね」

 各家庭の女性たちが集まってきて、口々にお礼を述べてくれる。そして料理に対する貪欲さも見られた。これならすぐに栄養も戻るだろう。
 新しい料理は明日また教えるからと話すと、嬉しそうに顔を綻ばせる女性たち。あとは、自分たちで野菜が作れるようになれば大丈夫じゃなかろうか。
 あの里山には、一角兎とボアがいたからね~。毎日間引きするようにすれば、それだけで食卓が豊かになるだろうし。
 狩りができないのであれば、罠を仕掛けて採ることも可能なんだから、選択肢はたくさんあったほうがいい。
 まあ、狩りに関しては、毎日しているそうなので、特に問題はないかな?
 あとは、この村が独自で土産が作れるようになると、お金を落とす人が増えると思う。そこまでの口出しはしないが、その手助けというか、知識くらいは授けられるだろうし。
 いずれにせよ、それは明日以降の話だ。
 炊き出しという宴会も終わり、それぞれが自分の家に戻る。私は広場を借りてテントに入ることにした。

「さて、明日はまず、畑からか、それとも、大工に教えて住宅からか……」
<畑がいいと思うの、ノンは>
「どうして?」
<畑も土地も、ちょっと穢れているの。だから、畑も元気がないの>
「そう……。なら、先にノンに穢れを祓ってもらったあとで、畑を元気にしようか。栄養も足りないし、塩害も除去しないといけないだろうし」
<うん、任せて! リコもノンと一緒に手伝うの!>
<もちろん! ノンを手伝うよ>
<あたしは?>
<オレもなにか手伝いたい>
「ピオとエバには、炎を使ったものをやってもらいたいわ。それは明日、説明するわね」
<<うん!>>

 それぞれができることを手伝いたいって、可愛いことを言うなあ、従魔たちは。ほんとうにほのぼのするし、癒される~!
 明日もやることがあるし、結界を張ってさっさと眠りにつく。
 明日も忙しくなるぞー!

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