自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村編

第126話 ヤミンとヤナ、再び

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 緑と黒いローブ姿に、一般的な形の杖を持っている少年たち。杖には装飾が施されているが、それは見たことがあるものだ。
 ええ、ええ、めっちゃ憶えがあるぞ!

「もしかして……ヤミンとヤナ?」
「「うん! 久しぶり、アリサ!」」
「久しぶり」

 やっぱりアリサだったと喜ぶ二人に、ヘラルドが不思議そうな顔をして私たちを見る。そこでハンデル自由都市国でダンジョンに潜った時に出会ったことを話した。

「ずっとアリサを探してたんだけど、見つからなくて……」
「帝都でも探してたんだ。毎日ギルドに行ったりして聞いたけど、誰も知らないって言うし」
「あ~、今は山奥の村に住んでるの。この人がその村の村長むらおさで、ヘラルドよ」
「ヘラルドと申します。はじめまして」
「はじめまして。ボクはヤミンです」
「はじめまして。俺はヤナです」

 お互いに自己紹介をしたあと、少年二人が思い切ってヘラルドにお願いする。なんと、私と一緒に行動したいから、その村に住まわせてほしいと言ったのだ!
 おいおい、なんでそんな結論になったんだ?

「そうですね……。ギルドに出入りしていたということは、冒険者ですか?」
「はい。つい最近、Bマイナスになったんです」
「俺もです」
「ふむ……。得意なものはなんですか? 武器? それとも魔法?」
「「魔法です」」

 そんな感じでヘラルドが二人に質問していく。なんだか面接をしているみたいで、ちょっと面白い。
 他にもいくつか質問したヘラルドがゲレオンに目配せをすると、ゲレオンは小さく頷いている。おお? これは許可が出るかも?

「冒険者としての依頼はほとんどありませんが、それでも?」
「「構いません。畑仕事は得意だし、コッコなら世話をしたことがあります!」」
「いいでしょう。これから種を買ったあとでコッコを引き取りに行ったあと、村に帰ります。それまでは馬車の護衛として雇うことにします」
「帰ったらギルマスに依頼書を作ってもらうから、それまで頑張って。その働きに見合った報酬になるが、構わないかな?」
「「はいっ!」」

 やったー! と喜ぶヤミンとヤナに、ヘラルドもゲレオンも微笑ましそうな顔をしている。まあね……まだ少年だもんね。
 本来は旅に出れるような年齢じゃないけれど、二人の諸事情を考えるとしょうがない。それに、ヘラルドたち魔族ならば、ヤミンとヤナの種族を知っても、迫害することはないと確信できる。
 もし迫害したら、村から出ようと思った。
 まあ、それは置いといて。
 馬車に乗ってとヘラルドに言われた二人が乗ると、すぐに種を売っている花屋へと向かう。どの種が欲しいのか私にはわからないので、護衛ついでにヘラルドと一緒に入る。
 野菜と一緒に種イモと米ともち米の種籾、牧場に蒔くのか草の種も買うと店を出る。そしてそのまま西門に向かい、牧場へと足を向けた。
 牧場に着くとさっそくコッコを引き取りに来たことを話し、連れてきてもらう。ひとつの籠に五羽ずつで、全部で六籠になった。籠自体も大きいので運ぶのも大変かと思いきや、籠には重量軽減が付けられているんだそうだ。

「次回来る時に返してくれればいいですよ」
「助かります。その時はこちらから籠を持ってまいります」
「わかりました」

 コッコの籠を馬車に載せたあと、当面の餌と藁などをつけてくれた。これはコッコを五十羽引き取ってくれるお礼としてなので、代金はいらないという。
 その代わり、次回の時は有料だと豪快に笑っていた。なんとも太っ腹なおっさんだ。
 その後、契約を交わして買った肉や卵を馬車に入れ、私の分はポーチの中に入れたふりをしてアイテムボックスの中へとしまう。ヤミンとヤナも個人的に欲しいと言って、いくつかの種類の肉と卵を買っている。
 もう一度挨拶をしてから牧場をあとにし、村へと向かった。
 その途中で、リッキーたちやテイマーの少年がどうなったか聞いてみた。リッキーたちのことは聞いていないが、テイマーの少年に関しては一応リュミエールから話は聞いているけれど、確実な未来じゃないって言ってたからね。
 だから、確認のためにも二人に聞いてみたのだ。
 まず、少年。リッキーから追放を言い渡されたテイマーの少年は、ちゃんと反省して仲間たちに謝罪したあと、頭を下げてレベル上げを手伝ってほしいことと、テイムするまでは一緒にいてほしいと言ったという。
 呆れて突き放したとはいえ元は仲間だったこともあり、それくらいならばと全員一緒にダンジョンに一週間潜ってパワーレベリングをしたあと、なんとか外の森でフォレストウルフを一人でテイムしたそうだ。
 テイムしたあとは近くの村で下ろされてリッキーたちと別れたが、その後どうなったかは知らないらしい。その時はまだ少年を許す気になれなくて、動向を探ろうとすら思わなかったんだって。
 そして二人を含めたリッキーたちは、ガート帝国に入ったあとは東に向かい、米を作っている村にしばらく滞在。獣人や人間たちが混在している村でとても雰囲気がよく、リッチや樹人がいても誰も気にしたり迫害にあったりしなかったことから、その村に定住することを決めたそうだ。
 ヤミンとヤナもしばらく村で生活していたけれど、どうしても私と旅がしたくなってしまい、リッキーにきちんと許可をもらってから村を飛び出してきたんだって。初めて会った時はかなりおどおどしてたのに、ずいぶんと逞しくなったもんだ。
 で、東回りで依頼を請けながら帝都まで来たのが一ヶ月前。他国に行こうかどうしようか迷ったが、他国に行くにしてもランクもお金も全然足りない。
 しばらく旅の資金を貯めようと帝都で依頼を請けてお金を貯めつつ、ランク上げを頑張った結果、一週間前にBマイナスに昇格したらしい。短期間でそこまで上げるって……どれだけ頑張ったんだろうね、二人は。

「お~、おめでとう!」
「「ありがとう! アリサが杖と服をくれたからだよ!」」
「そんなことないでしょ? 二人が地道に頑張った結果じゃない」
「そうですよ? まだ小さいのに、よく頑張りましたね」
「「あ、ありがとうございます!」」

 私だけじゃなくヘラルドたちにも褒められ、照れる二人。そんな姿が微笑ましかったのか、ヘラルドもにっこり笑っている。
 話しているうちに村へと向かう山へと入ったので変装を解くと、ヤミンとヤナが驚いていた。そして二人して小さく頷いたあと、今まで一度もフードを取らなかったのに、自分からその種族をバラした。

「おやまあ……。樹人とリッチとは珍しい」
「だよな。国にいた時以来か?」
「かも」
「「え……?」」

 あ~、やっぱヘラルドたちならそういう反応だよなあ……と苦笑してしまう。思っていたような反応じゃなかったらしく、ヤミンとヤナはオロオロしているし。
 そこでヘラルドたちが自分たちは魔族であることと国を追われて散り散りになり、今の村に落ち着いたことを話すと、二人は「「ええーーっ!?」」と驚いた。
 まあねえ……普通に驚くよね。

「どのみち、コッコを飼育するための人手が欲しかったんです。村に着いたら、この二人と一緒にコッコの世話をしてくれませんか?」
「「はい! 喜んで!」」
「ありがとう。よろしくお願いしますね」

 どこぞの居酒屋のような返事をしたヤミンとヤナに、ヘラルドもにっこりと笑う。
 今はコッコが三十羽しかいないけれど、雪解けが来たらさらに二十羽増えるうえ、乳牛などを飼う予定だしね。ヘラルドたちにしてみれば、いくらでも人手が欲しいと思う。
 牧草地を広げるかどうかはヘラルドと兄さんたちの判断になるだろうけど、まずはコッコを越冬させることを考えないと。それは村に帰ってからにするとして。

「ヤミン、ヤナ。家はどうする?」
「うーん……」
「どうしよう……」
「しばらくギルドの宿を借りて生活してみたらどうでしょう? もしくは僕の家に住むか」

 おお、ヘラルドってば太っ腹!
 まあねえ。まだ成人前だから心配っていうのもあるし、これから冬がやってくる。そうなるとギルドも閉めてしまう可能性があるから、誰かの家にいたほうがいい。
 ただ、ギルドの三階には双子が住んでいるから別にギルドの宿でもいいし、従業員用の部屋も余ってるから、冬の間はそっちでもいいとヘラルドが説明している。結局二人は、村に行ってから決めるとヘラルドに話すと、ヘラルドもそれを了承した。
 そのあとは護衛依頼だからと二人して馬車の屋根の上に乗ろうとするのを止め、リコに乗ってもらう。リコも二人に会えて嬉しいのか、快諾してくれた。
 道中では二人のレベル上げも兼ねてできるだけ二人に戦闘してもらい、これから行く村の周辺の魔物がとても強いということをわからせた。それでも、二人はずっとコンビを続けてきただけあって危なげなく強い魔物を倒し、着実にレベルを上げてヘラルドたちを感心させていたのには驚く。
 あの時はおどおどしてたのになあ……と苦笑したが、それだけ彼らが真剣に取り組み、強くなりたいと願った結果なんだろうと私も納得。
 レベリングを兼ねていたので村に行くまでに四日かかってしまったけれど、ピオとエバの補助なしでも二人きりでブラックバイソンを倒したのが自信に繋がったのか、ずっと機嫌よさそうな二人を見て、とても逞しくなったなあと二人を眺めた。

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