自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村の冬編

第140話 ダンジョン攻略 1

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 一月も半ばを過ぎ、とうとう雪が一メールを超えた。こうなるともう一階の雨戸は開けられないのでしっかりと閉め切っている。
 そうすると、吹き抜けになっている二階から日差しが入るとはいえ、日がな一日曇天だと光量は乏しいわけで。冒険者用のランタンをみほんにして、魔石を利用したランプを作った。
 カンテラでもよかったんだけれどピンとこなくて、結局ランプにしたのだ。大きさもデザインもいい感じのものにしたかったしね。
 まあ、曇天とはいえ日中はそれなりに明るいので、使うのは夜だけだけれど。
 積もり始めたら積もり始めたで、外からの冷気が凄い。なので、囲炉裏にはずっと薪をくべっぱなしだ。
 家を建てた時、それなりに防寒をしたはずだったけれど、認識が甘かったことを実感した。まあ、屋根に近い上のほうに空気穴のような機能を持たせている穴があるから、仕方がないと諦めた。
 塞いでもいいが、囲炉裏がある以上、絶対に必要な機能なので塞ぐことはできないというジレンマに陥りつつ、それでも想像していたよりは温かいからいいかと自分を無理やり納得させた。
 その分、大型のストーブもどきを作ったり、炭炬燵が置いてある部屋へ行く木戸を閉め切って温まった空気がそっちに流れないように工夫したりしている。
 そんな中、ギルマス会議で帝都に行くことになったんだが。

「……ギルマスが飽きた言うな」
「いいじゃねぇか。雪に閉ざされていて暇だし、どのみち本部からも依頼はねえって言われてんだから」
「だからって! この村にいる冒険者たちでダンジョンに行こうはないでしょ!」
「別にいいじゃねえか。新人たちのレベル上げにもなるんだし」

 不貞腐れたような顔をして、尚且つ新人をダシに使うんじゃないっての!
 そりゃあずっと動きっぱなしだったヴィンからすれば、雪に閉ざされるこの村は退屈だろうけど……知ってるぞ? こっそりと村から出て、森で狩りをしてるのを。そして湖に行って釣りをしてるのを。
 くっそ寒いのによくやるよなあとは思うものの、どうもワカサギのような魚がいるらしく、それを目当てに釣りをしているらしい。まあ、まだ完全に凍っているわけではないから、本格的なシーズンはもう少し先になるみたい。
 湖が凍ったら釣りに行ってもいいね! もちろん、完全防寒をしてになるが。
 それはともかく。

「ダンジョンに行くのはいいわよ? 従魔たちもずっとそわそわしてたから、けど、どこのダンジョンに潜るの?」
「まずは鉱石が採れるあのダンジョンの攻略だな。あそこは新人向けだし、ある程度の魔物が揃っているから、訓練にもなる」
「とは言っても、彼らは種族に関係なく戦えているわよね?」
「動物型はな。人型は経験がないから、心配なんだと相談されたんだよ」
「あ~」

 なるほどね。確かにこの村にいるのであれば動物型というか獣型というか、それらの魔物はほぼ全種類いる。だけど、人型の魔物となるといないのだ。
 ゴブリンどころかオークすらいないんだぜ? 驚きだよね!

「コボルトしか戦ってないんだっけ?」
「ああ。あのダンジョンは、上層はコボルトとゴブリン、中層にゴブリンの上位種、下層にオークがいるからな。訓練にはちょうどいいんだ」
「なるほどね」

 対人型の魔物の訓練としては適正があるってことか。

「レベル上げと言っても新人も含めて俺らだとレベルは早々に上がらんだろうし、あくまでも訓練だな。時間が余ったら別のダンジョンに行く予定にしている」
「帝都にあるもうひとつのダンジョンよね? 食材が採れるって話の」
「ああ。マジックバッグがあれば荷物はいらねえし」
「確かにね」
「そこで、だ。アリサには荷物持ちポーターを兼任してほしいんだよ」

 なるほど、荷物持ちポーターを兼任なら納得だ。迷宮都市で買ったポーチを持っていると公言しているしね。

「別にいいけど、ハビエルに頼まなかったの? 彼なら作れるでしょ?」
「それがだな……一応時間停止で大容量のマジックバッグは作れるが、特定の素材にしか付与できないんだと」
「は?」
「もっと言えば、麻袋にしか付与できないと言われた」
「はあっ⁉ あれだけいろんなものが作れるのに!?」
「ああ」

 なんてこったい! ドワーフが不器用とか草生えるわ!
 そんな冗談はともかく。報酬を出すから、買ってくるか作ってくれと言われて溜息が出る。誰に聞いたんだよ、ヴィンさんや。
 まあ、十倍の水筒を作ってる時点でバレるか。

「作るのはいいけど、形は? ポーチがいい? それもリュック型?」
「動くことを考えるとポーチがいいだろうな」
「わかった。ヴィンはどうする?」
「んー……ないわけじゃねえが、そろそろ壊れそうなんだよなあ」
「だったら補修と補強するから貸して」
「いいのか⁉ 頼む!」

 子どものように喜ぶヴィンに、苦笑してしまう。いつも身に着けているからとすぐに手渡されたので、どんな状態か見る。
 布製なのかあちこちボロボロになっていて、場所によっては今に破けそうな箇所もあった。布で補強するよりもワイバーンの被膜を使ったほうが丈夫になりそうだからと、さっさと錬成して状態維持をかけておく。
 そのついでにヤミンとヤナ、新人二人の分のポーチを作り、ヴィンに預ける。

「……一瞬かよ」
「錬金しただけだしね」
「そ、そうか。なら、これは少年たちと新人たちに渡しておく」
「はいよー」

 出発は今日の昼なんだが、あと一時間しかない。もっともダンジョンに潜るための食料などは帝都で買うことに決めたので、持っていくのはテントと装備くらいか。
 まあ、家を空けることになる私と、ヤミンとヤナはある程度の食料を自分の家から持ち出すことになるとは思うが。私もある程度持ち出すつもりだしね。
 私が荷物持ちポーターになるので、そのほとんどを持ち歩くことになる。とはいえ、常にポーチにもアイテムボックスにも食材や鍋とか入ったままだ。
 時間ギリギリまで準備をして、リュミエールに祈って家を空けると伝える。その間はお供えできないしね。
 準備を整え、こまめに雪かきをしていた玄関から外に出る。帰ってきたらここも雪で埋まっていそうだ。
 二階の出入り口は外からも鍵がかけられるようになっているから大丈夫だろう。まあ、いざとなったら玄関周りの雪だけ雪かきするつもり。
 待ち合わせは我が家の前。ヴィンとランツ、ヤミンとヤナ、新人二人と従魔たち。今回は人数が多いので以前使った籠を出し、中へと入ってもらう。

「じゃあ、行くよ」

 一声かけてピオに跨ると、エバが籠を持って飛び立った。

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