自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ファウルハーバー領編

第200話 依頼終了

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 翌朝、めっちゃ元気なルードルフが離れにやってきた。しかも、肌艶はツルッツルだし、くっそ爽やかな笑顔付きの挨拶で。
 ……ロジーネとヤったんだなと若干ゲスイことを考えつつ挨拶を返すと、さっそくとばかりに本題に入るルードルフ。

「アリサ、ヤミン、ヤナ。そして三人の従魔たち。本当に助かった!」
「役に立てたんならよかったわ」
「そうですよ、ルードルフさん」
「俺も楽しかったし」
「そう言ってくれると助かる」

 ホッとしたような顔をして軽く頭を下げるルードルフ。おい、元王子で高位貴族なんだから、簡単に頭を下げるんじゃない!
 そんなやりとりをしたあと、ルードルフは一枚の紙を私たちに差し出す。中身を読むと依頼達成票で、依頼を達成したこととその報酬金額、ルードルフとロジーネのサインが書かれていた。
 しかも、報酬はパーティー単位ではなく一人ずつ書かれているし、依頼された金額よりも、一人当たりの報酬額がそれ以上だったことに驚く。
 ルードルフいわく、巻き込んでしまったことと依頼外の仕事をしたことなどを含めた迷惑料、純粋な報酬の上乗せだそうな。

「砂糖の精製に関しては、まだまだ実験段階だ。それに、原料となる甜菜とビーツが未だ手探りな状態の栽培で、あの工場を稼働させるにしても、原料が不足している」
「確かに。てことは、しばらくはドルト村に行き来しながらの栽培かしら」
「ああ。あとはスライムゼリーを混ぜた肥料が、どこまでいい仕事をしてくれるかだな。当面の間は陛下に献上及び、陛下や宰相、農業大臣と相談しつつ、帝都とファウルハーバー領内での販売となるだろう」

 さすがは高位貴族ってか。しっかりと先を見据えたうえで、少しずつ販路を拡大していくんだろう。
 まあ、国家事業だもんな。国との連携は当然か。

「あの村で会ったら、また話をしよう」
「そうね。進捗くらいは教えてほしいかな。ただ、狩りに出て村にいない場合もあるから、そこはご容赦を」
「ああ、わかっている」

 狩りに行くと言っても、長期間村を空けるわけじゃないしね。夜に話せばいいでしょ。
 あとは、ロジーネが手紙の交換をしたいと言っていたそうで、やり取りができる魔法陣を交換。珍しい植物を見つけたら、送ってくれとも言われた。おい!

「では、また」
「ええ」
「植物のことでなにかわからないことがあれば、ボクに聞いてください」
「俺もヤミンと一緒に手伝うよ」
「ありがとう。その時は遠慮なく」

 代わる代わる挨拶と握手を交わすと、ルードルフは離れを出ていった。依頼を達成したことで、私たちも公爵家を離れないといけない。
 すぐに使用した部屋や道具の掃除をして、荷物の確認。忘れ物がないか確認したあと、一旦公爵家へと向かう。
 玄関で会った執事さんに別れの挨拶と離れの掃除をしたこと、ルードルフとロジーネによろしく伝えてくださいと伝言を残し、その場をあとにした。そしてそれぞれの従魔に乗り、冒険者ギルドを目指す。
 特に問題なくギルドに着き、達成票を提出。書かれている通りの報酬をもらったあとは、旅に必要な分だけ受け取り、残りはギルドに貯金したあと、さっさとギルドを出る。
 金目当てなのか、チラチラと視線を寄越すのがウザいし、ノンがめっちゃ警戒しているからだ。ノンは神獣なだけあって、悪意には敏感だからね。
 さっさとギルドから、そして領都から離れるに限る。

「当面の食料はあるけど、どうする?」
「うーん……。ボクもまだあるし」
「俺も。どうせなら途中で買ってもいいし」
「そうね。とはいえ、迷宮都市は行ったことがあるから、転移で行けるわよ?」
「「マジ!?」」
「マジ。だから、買うならここか、迷宮都市のどっちかね」

 転移できると聞いて、ヤミンとヤナが興奮している。
 いやあ、普通なら旅をするんだろうけど、ファウルハーバー領から迷宮都市ラビラントまで行くとなると、一回西回りの主要街道に出てから行くことになるため、すんごく遠回りすることになるのだ。
 バトルホースの脚力で、だいたい三週間から一ヶ月。リコだけの脚力であればそこまでかからないだろうけれど、ヤミンとヤナの従魔であるグレンとアロンのレベルがまだ低いから、彼らに合わせるとなるとどうしても日数がかかってしまうのだ。
 ヤミンとヤナもそれに思い至ったんだろう。行きは転移で、迷宮都市から帰る時はきちんとした旅がしたいというので頷いた。

「じゃあ、門を抜けて、林に入ったら転移するよ」
「「はーい!」」

 そうと決まればさっさと行動あるのみ。絡まれてたかられるのも面倒だしね。てなわけでさっさと門を抜けるとしばらく走り、林の中に入る。
 途中で出て来たスライムや一角兎はグレンとアロンが踏みつぶしたり、コハクとライが雷を落としたりしてちまちま経験値稼ぎをしていた。ある程度奥に入ったあと、マップを出して迷宮都市ラビラント手前にある森にピンを打つ。

「これから飛ぶのは、ラビラント手前にある森の中よ。みんな、準備はいい?」
「大丈夫!」

 ヤミンとヤナだけではなく、従魔たちも元気よく頷く。一声かけたあと転移魔法を発動し、森に飛んだあとしばらく警戒する。
 近くに魔物はいないようで、とりあえず警戒をといた。とはいえ、きちんと周囲は見ているが。
 ホッとしたのもつかの間、ヤミンとヤナはマップを開いたのか、目を輝かせている。

「「おお~! 本当にラビラントの近くにある森の中だ!」」

 すげえ! と騒ぐ二人を宥め、落ち着かせる。

「レベル上げのダンジョンはどこにあるの? ここから近い?」
「えっと……、うん。街道を出たらラビラントに行く方向と逆に進むとあるよ」
「わかった。森での警戒の仕方を二人の従魔たちに教えつつ、ダンジョンに向かおうか」
<<<<ありがとう! よろしくお願いします!>>>>

 二人の従魔たちが元気よく返事をする。よっぽど強くなりたいと考えているんだろう。目を輝かせつつも決意に満ち溢れている。
 一生懸命で可愛いねぇ。
 だからこそ、ヤミンもヤナも従魔たちをとても大切に扱い、可愛がっている。もちろん、うちの子たちも可愛いぜ!
 ジルとリコを筆頭に、ヤミンとヤナの従魔たちに森での注意点を教えつつ、飛び出してきたボアと戦闘。まだ単独で倒すことができないので、ピオとエバがコハクとライに雷魔法で支援するよう伝え、痺れたところをグレンとアロンが角で突いたり前足で蹴りを入れたりしている。
 その時に、素材を活かすためにもできるだけ首を狙うように話している。……いや、間違ってないけど、どうにもえげつねえな、おい。
 他人ひとのことは言えないなあと苦笑しているうちに、戦闘が終わった。
 その後はヤミンが解体し、使えないものは土に埋めて移動する。
 森を出るまでにボアとディアに二回ずつ遭遇したが、若干危ない場面があったものの大きな怪我もなく、森を抜ける。そこから歩いて十五分ほどだというので歩き、ダンジョンに着いた。

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